連載
東京レトロゲームショウ2016:第49回 31年ぶりに「道化師殺人事件」に再挑戦したら,犯人がついに分かってしまった!
今週の「東京レトロゲームショウ2016」は,1985年にPC-8801版がシンキングラビットから発売されたアドベンチャーゲーム「道化師殺人事件」を取り上げたい。
本作は,1983年にリリースされた同社の推理アドベンチャーゲームシリーズ第一弾「鍵穴殺人事件」に続くタイトルで,パソコン雑誌の広告や,ショップに並ぶパッケージに描かれた,「悲しげにこちらを見ているピエロ」の姿が,個人的にとても印象に残っている。
プロジェクトEGG「道化師殺人事件」(PC-8801版)紹介ページ
プロジェクトEGG「道化師殺人事件」(X68000版)紹介ページ
(C)THINKING RABBIT CO., LTD.(C)2016 D4Enterprise Co.,Ltd. / (C)2016 MSX Licensing Corporation.
アドベンチャーゲームは筆者が中学生の頃にハマっていたジャンルで,シンキングラビットはそんな筆者のために(?)「鍵穴殺人事件」「道化師殺人事件」「カサブランカに愛を」「THE MAN I LOVE」,そして「マデリーン 〜亡き王女のためのパヴァーヌ〜」などを立て続けにリリースしてくれたメーカーだ。
そのほか,エニックス(現スクウェア・エニックス)の「ポートピア連続殺人事件」,ボンドソフトの「タイムシークレット」「タイムトンネル」,ハドソンソフトの「デゼニランド」「デゼニワールド」「サラダの国のトマト姫」など,今でも有名なアドベンチャーゲームもこの頃にリリースされている。要するに1980年代半ばから後半にかけては日本のアドベンチャーゲームの絶頂期で,筆者もこれらのアドベンチャーゲームを次々にプレイしたというわけだ。
当時のアドベンチャーゲームの特徴を言うなら,子供向け,あるいはカジュアル向けではなかったためにそれなりに難度が高く,筆者がエンディングを迎えられなかった作品も多いということだろう。入力方法は,現在のように会話の内容を選択肢から選ぶものではなく,いくつかのキーワードを1つ1つキーボードで打ち込んでいくという形式だった(「コマンド入力式」とも呼ばれる)。例えば「ドア アケル」「カベ シラベル」といった感じに名詞+動詞(逆も可能)を組み合わせて入力し,その反応を見ながら進めていくわけだ。
もちろん,ピント外れな文字列を入力すると「イミガ ワカリマセン」的な反応しか返ってこないのだが,それだけに打ち込んだ言葉が見事にヒットして次の展開に進んだときは非常に嬉しかった。画面内の情報を元に単語を推理して入力していくのは,ある意味,言葉探しゲームに近いのかもしれない。
ちなみに,現在のアドベンチャーゲームは,用意された会話を選択肢から選んでいくスタイルが多いが,それは必ずしも最近の発明ではなく,道化師殺人事件のリリース以前から同タイプの作品は存在していた。それに対してシンキングラビットはコマンド入力式のアドベンチャーばかり発売しており,使い慣れたシステムでどのゲームでプレイできたことも,筆者がシンキングラビットのゲームを気に入っていた理由の一つだ。
さて,冒頭から話があさってに飛んでいったので,このへんで道化師殺人事件に話を戻そう。とはいえ,いかに発売後31年が経過したとはいえ,ゲーム情報サイトとしてネタバレは御法度なので,そのへんはお含み置きを。
設定はこんな感じだ。1932年8月6日,イギリスのブライトンで殺人事件が起きた。同地にはサーカス団が訪れており,興行のためのテントも張り終え,あとは開幕を待つばかりだったその日の21:00頃,ピエロのシャルル・デュボワがシャワーワゴンで死んでいるのをブランコ乗りのメリー・マッコーランが発見して警察に通報したのだ。デュボワは背中からナイフで心臓を一突きされており,流れるシャワーによって,血液はほとんど洗い流されていた。凶器はナイフ投げの曲芸で使用されているものだった……と,こんな感じの殺人事件が用意されており,プレイヤーはロンドン警視庁の刑事として,解決に向けて奮闘することになる。
ちなみにストーリーは,シンキングラビットの代表であり,有名なパズルゲーム「倉庫番」の作者でもある今林宏行氏が担当している。
ただし,いつの間にか詰まっていることも多く,それに気が付かずに必死に捜査を続けたあげく,にっちもさっちも行かなくなることも起きる。例えば,ドアを開ける際にはノックをするのがマナーだが,ノックせずにドアを開けて部屋に入ろうとすると,それ以降,会ってくれなくなったり,警察が嫌いな店主に手帳を見せたら何も買えなくなったりなど,クリア不可能な状態になってしまうのだ。もっとも,任意のタイミングで最大10か所セーブできるので,途中で失敗に気づいてもなんとかなったりする場合もある。
というわけで,懐かしさを感じながらプレイした筆者だったが,やはり新たな展開へ進んだ際の嬉しさは変わっておらず,今回,これまで迎えた記憶のないエンディングに無事たどり着いてしまったのだ。今回紹介した道化師殺人事件のほか,上に書いたシンキングラビットのアドベンチャーシリーズは,レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」で購入できる。興味のある人は,ぜひ挑戦しちゃってほしい。
プロジェクトEGG「道化師殺人事件」(PC-8801版)紹介ページ
プロジェクトEGG「道化師殺人事件」(X68000版)紹介ページ
- 関連タイトル:
プロジェクトEGG
- この記事のURL:
(C)2013 D4Enterprise Co.,Ltd.