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「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!
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印刷2022/06/14 13:43

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「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

 米国時間2022年6月10日と11日に,カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたゲームイベント「Summer Game Fest: Play Days」にて,2Dプラットフォームアクション「Cuphead」PC / Xbox One / Nintendo Switch / PS4)で初の大型DLCとなる「The Delicious Last Course」がID@Xboxブースに展示されており,そのプレイアブルデモが公開されていた。また,同社のアーティストであり,現在はプロデューサーを担うマヤ・モールデンハウワー(Maja Moldenhauer)氏に話が聞けた。

画像集#001のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

 2017年にリリースされた「Cuphead」は,アメリカにおける1930年代のセル画アニメーションの映画群をオマージュした作品だ。賭けごとにハマるあまり,悪魔に魂を売ってしまった主人公のカップヘッドマグマンの兄弟が,悪魔から逃げ回っているモンスターたちを追い詰めて魂を取り立ててることで,自分たちの借りを返そうとしていくストーリーが展開する。

 地獄界を含めて4つのエリアからなるインクウェル諸島の島々には,プラットフォームアクションが楽しめる「ラン&ガン」と,ボスとの戦いだけに絞った「ボスファイト」,そして聖杯を狙うオバケを撃退して必殺技を獲得できる「霊廟」の3種類のステージが用意されている。そのコミカルなアクションや,時代モノに見える“滲み”や“ザラつき”が描写されたグラフィックス,そして何度も倒されながら進めていくという非常に難度の高いゲームシステムが定評となった作品だ。
 PS4版が発売された2020年7月までに600万本のヒットとなり,ファーストフードのチェーン店やTeslaとのコラボ,さらにNetflixでアニメシリーズが公開されるなど,高い知名度を誇るまでに成長している。

画像集#003のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

 そんな「Cuphead」のDLCとなる「The Delicious Last Course」がアナウンスされたのは,なんとPC版がリリースされて間もない2018年6月のこと。もっとも,その時点で「しばらくはオーブンの中で寝かせることになります」とされていたが,結局はその後に発表された2020年にリリースという予定は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大の影響により延期(関連記事)となっていた。そして,さらに2年も経過することになった今月末(6月30日)に,ようやくリリースされるという発表がSummer Game Fest 2022でなされたわけだ。

 それほどまで開発が遅れても問題なかったように感じられたのは,まさに“キャラが立った”というのに相応しい,独創的なアイデンティティを持つ「Cuphead」シリーズのメーカーだったからこそと言えるかもしれない。今回,モールデンハウワー氏に,そうした過去の軌跡を追いながら,新作についても語ってもらった。

4Gamer:
 「The Delicious Last Course」の制作がアナウンスされてから,長い時間が経ってのリリースとなりますが,その理由についてお聞かせください。

Studio MDHRのアーティスト件プロデューサー,マヤ・モールデンハウワー氏
画像集#002のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!
マヤ・モールデンハウワー(以下,モールデンハウワー)氏:
 そうですね。簡単に言って,みんなそれぞれの理由で少し時間が欲しかったといったところでしょうね。スケジュールに縛られない,小さなスタジオだからできることかもしれません。実は本編の「Cuphead」の開発もゲーム開発の経験がほとんどないまま手探り状態で5年近い時間をかけて作ってきました。それぞれのメンタルヘルスを保つためにも時間が必要だったのです。

4Gamer:
 新型コロナウイルス感染症は開発に影響はありましたか? 家族経営的なメーカーのように感じられますが。

モールデンハウワー氏:
 開発には影響はそれほどなかったですね。もともと,かなりの部分でリモートを活用していましたし,やはり家族ですから(笑)。Studio MDHRは,その社名からも分かるように,ゲームデザイナーのジャレッド(Jared Moldenhauer)と,アーティスト/アニメーターのチャッド(Chad)の2人で始めたのですが,チャッドと結婚していた私も参加して,インカ―(Inker/下書き担当)としての作業を私が100%こなしていました。DLCの開発では,人手が増えて25%ほどを別の人にもやってもらっていますが,20人ほどのメンバーのうち,別の2人もモールデンハウワーの名前を持っています。彼らは従弟の間柄で,5人がモールデンハウワー家となりますね(笑)。

4Gamer:
 では,「The Delicious Last Course」の概要について聞かせてください。

モールデンハウワー氏:
 ええ。このDLCでは,新しいキャラクターのシェフ・ソルトベイカーの手助けをするために,3人目のプレイヤーキャラクターとなるミス・チャリスとともに,カップヘッドとマグマンの2人がインクウェル諸島の新しいエリアに出かけ,本編に出てきたレジェンダリー・チャリスの居所をつきとめていくというものです。
 このエリアはほかのエリアと比べても非常に大きくて,5体のスーパーボスが登場するだけでなく,いくつもの秘密を用意しているので,多くのファンの皆さんに楽しんでいただけると思いますよ。

画像集#006のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

4Gamer:
 ゲームは非常に難度が高く,どれほどの人がゲームを完結させているのか分からないですが,DLCはどうすればプレイできるようになりますか?

モールデンハウワー氏:
 DLCをプレイするためにゲームを終わらせている必要はなく,最初の霊廟をクリアしていれば,謎のキャラクターが近くの船着き場に表れて,新しい場所に誘ってくれるのです。ですから,本編をプレイしていなかったという人でも挑戦できます。

4Gamer:
 今回のデモで公開されたステージについて説明をお願いします。

モールデンハウワー氏:
 今回公開したのは,「氷のカルト教」のリーダーであるモーティマー・フリーズ(Mortimer Freeze)というボスキャラクターと戦うステージです。彼は紫色のマントで飛び回りながら,氷の雫のようなミニオンや雪玉を投下させたり,自分の姿を雪だるまや冷蔵庫に変化させて,それぞれの特徴を使って攻撃したりします。このDLCのステージの特徴としては,アリーナそのものもバトル中に変化していき,モーティマー・フリーズの戦いもやがて空中でのバトルになるのは見ていただいたとおりです。

画像集#005のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

4Gamer:
 チャリスでプレイしてみた感じでは,スキルが多彩になった分,やはり同じスキルに固定されたカップヘッドやマグマンの違いが鮮明ですね。

モールデンハウワー氏:
 はい。チャリスにはダブルジャンプや,しゃがみ込みからのドッジアタック,ダッシュ時には自動的に相手の攻撃を受け流すといった新しい動きが加えられています。それから豆鉄砲(peashooters)は少し開き気味で攻撃する代わりにスローになっていますし,強力攻撃のSuper Art Iはカップヘッドたちのように横ではなく縦に放出されるんです。チャリスをアンロックすれば本編でも使用できますし,もちろんCo-opでも使えるので,カップヘッドもしくはマグマンと組み合わせて,異なる攻撃を楽しんでもらえるでしょう。彼女のすべてのアニメーションはオリジナル,つまりカップヘッドやマグマンから流用したものではないので,その分時間もかかりましたが,彼女の動きについての違いは注目していただけると思います。

画像集#007のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

4Gamer:
 異なるエリアやプレイヤーキャラクターの追加により,ゲームバランスはどのように調整されていますか?

モールデンハウワー氏:
 もちろん,(地獄界を抜いた)3つのエリアからのゲームプレイの自然な進展を予測していますので,最初のエリアからDLCに行くと各段に難度が上がっているように感じるかも知れません。とくに,今説明したステージの新しい要素だけでも,ちょっとびっくりするんじゃないでしょうか。異なるスキルを持っているチャリスが登場することで,これまで挫折していたゲーマーでも,意外とフィットして上手くプレイできるようになったという人が出てくることに期待しています。ただ,このゲームそのものが非常にチャレンジングであるので,これまで同様に何度もプレイし続ける中で,打開策を見出していってほしいですね。

4Gamer:
 アニメドラマシリーズの「The Cuphead Show!」が先にリリースされたことで,どこか姉御肌でいたずら好きっぽいパーソナリティが多くのファンの中で出来上がっていますが,ゲームではどのようになっているのでしょう?

モールデンハウワー氏:
 声優さんたちの演技を含めて,我々Studio MDHRはアニメシリーズには非常に満足しています。より多くのファンがゲームに流れてくることに期待しているのですが,チャリスを含めてゲーム上のキャラクターたちとアニメのキャラクターは違うものだと理解してください。
 実は,チャリスは本編をリリースする以前から構想していたものを,ゲームの規模が大きくなり過ぎることから,泣く泣く削っていたキャラクターなのです。その頃から我々の持つチャリスのイメージに大きな変化はなく,アニメシリーズからの影響もあまりないでしょう。

画像集#004のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

4Gamer:
 アニメ版では,「ホーリー・ミルク!」だとか,「お前のミルクをぶちまけてやるよ!」なんてセリフがありますが,カップヘッドたちの頭の中にあるのは,牛乳ってことでよろしいですか?

モールデンハウワー氏:
 さあ,どうでしょう(笑)。なんか白っぽい液体なので,私自身もミルクだろうなと思っていましたが,企画書にも書かれていないし,社内でも深く議論されたことはないんです。横になっても倒れても,こぼれたりしないですしね。
 (ここで広報担当から,僕はカップヘッドたちを活動させるための魔法のエッセンスだと思うとコメントしたのについて)それ,良いですね。ストローが付いているからミルクシェイクって考える人もいるようですし,とりあえずは皆さんの想像にお任せしておきます。

4Gamer:
 ジャズ系BGMもやはり前作同様のスタイルを受け継いでいるのですか?

モールデンハウワー氏:
 コンポーザーのクリス・マディガン(Kris Maddigan)は,本職はクラシック音楽のパーカッショニストなのですが,ジャズへの造詣と,このゲームに対する理解が本当に素晴らしい人です。今回の「The Delicious Last Course」については,オリジナル楽曲の収録時よりも2倍,110人ほどのオーケストラのサイズになっていて,同じビッグバンド・ジャズながらもロココ調のスタイルを取り込んでいるので,耳でもしっかりチェックしてください。

画像集#008のサムネイル/「Cuphead」,DLC“The Delicious Last Course”開発者マヤ・モールデンハウワー氏にインタビュー。新キャラ“チャリス”を使って新たな冒険へ!

4Gamer:
 最後になりますが,今後もDLCがリリースされることはありますか?

モールデンハウワー氏:
 それについては話せませんが(笑),とりあえず時間をかけた分だけ完成度の高いゲームに仕上がっていると思うので,とにかく皆さんにはチャリスと新しいストーリーをしっかり堪能してもらいたいですね。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

 「The Delicious Last Course」は,各プラットフォーム向けに6月30日にリリースされる予定だ。まだ各販売ページではプレオーダーは始まっていないものの,会場では「アメリカにおいては7.99ドル」と話していた。本編を所有していない人であれば20ドルを上乗せする必要があるが,モールデンハウワー家らのメンバーが入念に作り上げてきた大型DLCとしては,かなりお得な価格設定になっている。キュートな絵柄とは裏腹に超ハードコアなゲームだが,「The Delicious Last Course」で新たなる冒険に参加してみるのもいいいだろう。

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