インタビュー
「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」開発者&関係者にインタビュー。新規に追加されるCSモードや新曲「Freedom」誕生の経緯を聞く
ワイド2画面の特異な筐体で動いていたアーケード版をどのような形で移植したのか,新たに追加される“CSモード”にはどのようなルールが採用されているのかなど,色々と気になるポイントが多い本作について,開発者&関係者に詳細を伺った。
●インタビュー参加者(敬称略)
針谷 真(ディレクター/タイトー)
石川勝久(サウンドディレクター/タイトー)
土屋昇平(サウンドデザイナー/タイトー)
柏木准一(ディレクター/ピラミッド)
ジェームス・ラグ(マネージャー/ピラミッド)
小金澤 力(プロデューサー/キャラアニ)
針谷 真氏 |
石川勝久氏 |
土屋昇平氏 |
柏木准一氏 |
ジェームス・ラグ氏 |
小金澤 力氏 |
※以下,
ダライアスバースト アナザークロニクル(AC)……DBAC
ダライアスバースト アナザークロニクルEX(AC)……DBACEX
ダライアスバースト セカンドプロローグ(iOS/Android)……DBSP
ダライアスバースト クロニクルセイバーズ(PC/PS4/PS Vita)……DBCS
と表記。
「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」公式サイト
「勝手に作り始めた」ことから動き始めた移植プロジェクト
4Gamer:
DBCSの企画が動き始めたのは,いつごろなのでしょうか。
始まったのは,けっこう前なんですよ。PS VitaでPSPの「ダライアスバースト」やPlayStatoinアーカイブスの「Gダライアス」をやっていて,それにちょっと飽きてきたんです。「やっぱり新しいやつを遊びたい」という話がピラミッドの社内であって,それが「VitaでDBACを遊んでみたい」という話になり,勝手に作り始めました。
それがある程度まで動くようになって,本格的にプロジェクトが立ち上がりました。
もともとDBACを制作していたときから,柏木さんと「コンシューマ版をやりたい」という話はしていました。具体的な相談を受けたのは,去年のゴールデンウィークよりも前だったと思います。
柏木氏:
開発が少し進んだところで,販社さんを探すことになりました。今のタイトーさんはアーケード事業やモバイル事業に集中しているので……。
針谷氏:
柏木さんから「どうしてもやりたい」と相談を受けましたが,タイトーはコンシューマから撤退していましたので,販売を担当できませんでした。それで色々な会社とお話をしたところ,その中でキャラアニの小金澤さんに快いお返事をいただけて。
柏木氏:
Vitaだけではなく,やるならPS4版もやりましょうという話になって,その後にPC版の話も浮かび上がってきました。DBACはTaito Type X2用なので,もともとPC環境で動くようになっています。また,DBACを作ったしばらく後に,ジェームズたち開発チームから「Steam版をやりたい」という話を持ちかけられてもいたんです。
※Taito Type X2……タイトーが開発したアーケードゲーム用の基板。ハードウェアはPC/AT互換機で,OSにはWindows XP Embeddedが採用されている。
柏木氏:
すごく小さな開発チームだったのですが,それで3プラットフォームを同時並行で作ることになりました。深遠な計画があったわけではないのですが……マルチプラットフォームでの開発に走り出してしまいましたね。
4Gamer:
ジェームスさんは,なぜSteam版の制作を持ちかけたのでしょうか。
まず,僕自身がSteamのユーザーだからです。また「遊べる環境はもっと広くあった方がいいな」とも思っていましたし,DBACの移植なら本来のデュアルスクリーンで映像を出したいじゃないですか。家庭用ゲーム機だと仕様上の都合でそれができないので,PC版を開発し,Steamでリリースするのが現実的かなと思ったんです。
4Gamer:
キャラアニさんがパブリッシングに手を挙げた理由をお聞かせください。
キャラアニもゲームを作ってはいたのですが,DBCS以前は日本ファルコムさんの案件しか手掛けていませんでした。そこで,事業を広げるにあたって色々と探しているところに,ちょうどピラミッドさんからの相談があったんです。それで市場調査をしたところ,「これは結構いけるんじゃないかな」という手応えがつかめたので,お話を進めさせていただきました。
4Gamer:
Steamの販路はどのようになっているのでしょうか。
小金澤氏:
キャラアニは角川グループなので,角川ゲームスとは同族会社にあたります。その角川ゲームスがSteamでタイトルを出しているのですが,その関係で日本とアジアは角川ゲームス経由でしか販売できないというルールがありました。角川ゲームスが販路を持っていない欧米では逆に好きにやっていいとのことなので,デジカさんにお願いしています。
4Gamer:
ダライアスバーストシリーズはプラットフォームに合わせたサブタイトルが付けられていますが,「クロニクルセイバーズ」というサブタイトルはどのように決められたのでしょうか。また,ほかにはどのような案がありましたか?
柏木氏:
案はいっぱいあったのですが,あまり覚えていないですね(笑)。20個くらいホワイトボードに書いてありました。
※候補としては,
DARIUSBURST UC(Unlimited Convert)……“無限なる移植”+Unlockのミーニング。
DARIUSBURST V4……VictoryのV+“4つ目のバースト”のミーニング。
DARIUSreBURST……Rebirth(再誕)と“バースト再び”のミーニング。
などがあったとのこと。
ラグ氏:
色々書いているうちに,CSモードのシナリオの外枠が上がってきたので,それに合わせたタイトルにしました。「CS」って当てられる英語が少なくて,これに落ち着いたのは半ば偶然ですね。DBSPがあるので「Second」も使えませんでしたし。
柏木氏:
「セカンドプロローグ」って,一体何が始まるんだろうみたいな感じもありましたよね(笑)。
針谷氏:
そこを突っ込まれると。
柏木氏:
「セカンドプロローグ」は,確か大島(司)さんからいただいたものですね。
※大島 司氏……元タイトーのゲームデザイナー。現在はフリーランスで,ゲームや映像の企画とプロデュースを手掛けている。
針谷氏:
大島さんからいただきました。「これでいきましょう!」と。
石川勝久氏(以下,石川氏):
まあ,「セカンドプロローグ」の意味はわかりませんけれども(笑)。
柏木氏:
彼はきっと,コンシューマで展開することを,その時に感じていたんですよ(笑)。
新要素のCSモードでは,3000星系が戦火に包まれた20年間の戦いを追体験
4Gamer:
DBCSで新たに追加されるCSモードは,どのような内容になっているのでしょうか。
柏木氏:
CSモードでは,ダライアスバーストよりも前のベルサー襲来から,その6年後にあたるDBACよりも後の戦争終結までが,全4ブロック構成で描かれます。もともと千葉(智宏)さんがダライアスバーストのときに全体の概要を作っていたので,そこの隙間を埋めていきました。
※千葉智宏氏……スタジオオルフェ代表取締役。アニメの脚本や小説などを執筆しており,ダライアスバーストではSF考証として参加している。
柏木氏:
ステージ選択画面は年表形式になっていて,それぞれの戦闘がマスとしてつながっています。時系列的に一番最初のマスは,ベルサーが攻めてきたときです。
最初の戦いでティアット宇宙軍基地に配備されていた以外のダライアス正規軍は全滅してしまったという設定になっていますが,プレイヤーは軍属ではなく,軍の要請を受けて環境テストをしていた人たちの1人となっています。それが,ベルサーと戦いながらダライアス宇宙軍と合流し,DBACにおけるクロニクルモードの“3000星系を取り戻す”という作戦に参加していくことになります。
柏木氏:
CSモードの話が始まる最初のマスはダライアス歴1906年なのですが,時系列で言うと途中なんですよ。これは,主人公が所属している“プラネットセイバース”という部隊に初めてバースト機が配属されたエピソードになっています。
柏木氏:
ここから少し時間を進めた1910年が,DBACのクロニクルモードが始まった年です。ここは光導ルートになっています。
※光導ルート……「組曲 光導」シリーズをBGMとしたステージがひと続きになるルート。
柏木氏:
また,別のルートへ行くと過去編になっています。過去編だと,プレイヤーはバースト機を持っていないので,オリジンやセカンドなどの機体で戦いに赴かなければなりません。リーガやTi2の戦いと同時期にあたるこの面は,「熾烈な戦いを潜り抜けてようやく生き残れた」というエピソードを描く,手応えのあるステージになっています。
そこから外伝機やジェネシス機を作っていくと,新機体も出てきます。新機体の“ムラクモ”は,他の星系で作られた,ネクストとジェネシスをニコイチ(ハイブリッド)にしたテスト機体なんです。バースト機がプレイヤーたちの部隊に配備されるのは,これから数年後です。
柏木氏:
時代を進めていくと,DBACEXのクロニクルモードで難度が一番高かった,ベクホイ星系のチハイというG.T.Bの出てくるエリアがあります。ここを抜けて奥のマスへ行くと,ラストエピソードにつながります。
DBACのクロニクルモードだと,全星系で一斉に作戦が行われているような描き方をしていましたが,今回はひとつの部隊がベルサーとの戦闘が生じた時点から20年くらい色々な戦場を渡り歩き,最後の戦いまで参加するという構成になっています。
ラグ氏:
全体的にはダライアスバーストシリーズの集大成となっています
4Gamer:
ルートの分岐もありますが,設定としては1人の人物の視点なのでしょうか。
柏木氏:
いちパイロットの視点となっています。ただ,その人が物語的に何かをすると言うよりは,客観視されたその人のエピソードを少しずつ体験していくという形を取っています。
4Gamer:
特定の主人公はいても,DBACと同様に“名もなき戦士たち”の1人なのですね。
柏木氏:
そうです。
Ti2やリーガは出てくるのでしょうか。
柏木氏:
ストーリー的に名前はちらちらと出てきますが,物語に直接絡むようなキャラクターとしては出てきません。
4Gamer:
新機体はどのくらいあるのでしょうか。
柏木氏:
通常のプレイで出てくる新機体は1つだけです。
4Gamer:
CSモードには「ディフェンダー」や「スクランブル」といったルールの適用されるステージがあるそうですが,これはどのようなものなのでしょうか。
ディフェンダーは,「ハレーズコメット」に似たルールを採用しています。画面右側から襲ってくる敵が左端に到達してしまうと護衛対象のダメージが溜まっていき,ダメージ値が100%になると負けてしまいます。
※ハレーズコメット……タイトーが1986年にリリースしたアーケード用STG。太陽系の各惑星を守るため,ハレー大彗星から襲ってくる敵を撃破していく。
柏木氏:
スクランブルは,制限時間の中で急いで敵を倒していきます。昔のキャラバンシューティングと同じように,敵編隊を早く倒せば倒すほど次の編隊が早く出てくるという仕組みを採用しています。
4Gamer:
いわゆる“早回し”ですね。
柏木氏:
制限時間が設けられていますが,この制限時間を超過すると被弾時のダメージが大幅に増加してしまいます。基本的にはDBACのイベントモードでやっていたタイムアタックとほぼ同じです。自機がダメージを受けると,プラス1秒のペナルティが発生します。最初の方は割と簡単なのですが,後半になるとものすごく難しいステージも出てきます。
針谷氏:
DBACでは「タイムアタック」と言っていたのですが,こだわりの強い方から「それはタイムアタックではない!」という声をいただきまして,名称を改めました。
柏木氏:
PSPのときはボス戦が連続する場面で,何もないところから青アイテムが出現する仕組みがあったのですが,DBACでは実装していませんでした。DBACのイベントを運営していた小暮さんという方から「次は絶対にその仕組みを入れてくれ」と言われていたので,追加しています(笑)。
4Gamer:
リベンジ版という側面もあるのですね。
柏木氏:
細かいところでは,DBACの外伝機はバーストルールのときにボムのパワーが溜まらなかったのですが,今回は何もしなくてもボムパワーが溜まっていくように修正しましたので,大活躍できます。
4Gamer:
新ボスとしてカニとウミウシが追加されるとのことですが,これらもCSモード限定で登場するのでしょうか。
柏木氏:
はい,そうです。
4Gamer:
亜種を含め,バリエーションは何種類が用意されているのでしょうか。
ラグ氏:
カニは3種類,ウミウシは2種類です。
ネットワーク上のバーチャルな筐体で楽しむACモード
4Gamer:
ACモードはベタ移植という認識でよろしいのでしょうか。
柏木氏:
基本的にはベタ移植です。ただ,高速化のためにコリジョン(当たり判定)の取り方などは微妙に変えています。PS4にDBACをそのまま移植するなら問題なかったのですが,PS Vitaも同じ環境で動かさなければならないので,高速化を施しました。内部的には微妙な違いがありますが,僕らが確認してもほぼわからないくらいですし,普通の人は完全に移植されているように見えると思います。
そのほか,PS4/PC版はパーティクル(爆発や煙などのグラフィックス)が若干リッチになっています。
4Gamer:
ベタ移植となると,クロニクルモードの仕様が気になるところですが……。
柏木氏:
ネットワーク上に“キャビネット”と呼ばれる仮想の筐体があり,プレイヤーはACモードへアクセスするときに,どのキャビネットで遊ぶかを選択します。各筐体におけるクロニクルモードの進行度合いは,プレイヤー間で共有されます。
4Gamer:
そういった仕様ですと,オフラインではプレイできないのでしょうか。
柏木氏:
オフラインでも遊べますが,基本はオンライン推奨ですね。オフラインでの進行度合いはローカルで保持され,どこかのキャビネットへ入ったときに,そこの進行データにマージ(統合)されます。「みんなで協力しながら攻略していく」という意味では,完全にDBACと同様の仕様です。
DBACはもっと乱暴な仕様で,ネットワークに接続していないとクロニクルモード自体が遊べなくなっていたんですよ。さすがに家庭用でそれはないので,ネットワークに接続していなくても遊べる仕様にしました。
小金澤氏:
PS Vita版は1人プレイ専用になっているので,複数人プレイ用のミッションがどうやってもクリアできません。PS4版があればクロスセーブ機能を利用できますが,PS Vita版だけをプレイしている人がクロニクルモードを全制覇する場合は,オンラインにつなぐ必要があります。
4Gamer:
先ほど,当たり判定やパーティクルについて調整のお話がありましたが,音響面の調整もされたと伺っています。どのような調整を行われたのでしょうか。
石川氏:
ダライアスバーストシリーズはPSPから始まって,アーケードやスマホがあって,家庭用に戻ってきましたが,全部プラットフォームが違うので,曲とか効果音とかのバランスが同じじゃダメなんですよ。なので,毎回調整し直しています。
最初のダライアスバーストの音をグレードアップさせたのがDBACで,それを容量などの関係で少し圧縮したのがDBSPです。そしてDBCSのサウンドは,基本的にDBACからの調整となっています。
今回は容量も割と多めに取れましたので,DBAC+αくらいの調整です。ただ,DBACでは筐体にあわせて音量や音質に極端な調整を掛けているので,それを元に戻して,自宅のTVやインナーイヤフォンなどで聞きやすいようにしています。
プラットフォームが変わると音量感も変わるので,「この曲はACでは大きく聞こえるけど,Vitaでは小さく聞こえるな……」みたいなことが色々あって,結局イチから録り直さざるを得ないんですよね。僕,実はそういう調整を毎回やっているので,「何回やればいいんだ!」と(笑)。何気に,そこが一番時間がかかりますね。
柏木氏:
ボディソニック信号も抜いてもらいましたね。
石川氏:
DBACの売りとしてボディソニックがありました。実はサラウンドのとあるチャンネルに,ボディソニック専用の信号が混ざっているんですよ。その信号を移植にあたって抜いています。DBCSではボディソニックがない分,低音が全体的に弱くなっているので,そこを補強する調整もしました。
気になる画面仕様。DBAC同等のドットバイドット表示は可能?
4Gamer:
画面の仕様についてお聞かせください。まず,解像度や画面比率はどのようになっているのでしょうか。
柏木氏:
解像度はフルHDでやっています。
小金澤氏:
ACモードでは上下に帯が付きまして,表示部分の画面比率はDBACとまったく同じとなります。
4Gamer:
上下の帯に,壁紙などは設定できないのでしょうか。
柏木氏:
それについては,話し合った結果「ゲームセンターのイメージがあるので黒にしましょう」ということになりました。
4Gamer:
“あえて”黒ベタなのですね。画面サイズ的に,ドットバイドット(DBAC同等のピクセル等倍)ではないですよね?
柏木氏:
PS4/PS Vitaでは,ドットバイドットにはなっていません。でも,PC版にはドットバイドットにするモードがありますよ。
ラグ氏:
モードと言うか,ユーザーの環境次第ですね。デュアルモニタにつないでいただくと,DBACに近い縮小なしの状態でプレイできます。インゲームでプレイヤーが設定を行う仕様だと複雑になってしまうので,簡単に設定できるようなランチャーを用意しています。
柏木氏:
ランチャーは選択式になっています。ACモードはデュアルディスプレイ環境ならばフルスクリーンでやればいいのですが,そうするとCSモードを開始したときに中央が画面の切れ目にあたってしまいます。ランチャーでは,CSモードをプレイする際は右画面を使うか左画面を使うか,そういった選択を行えます。
ラグ氏:
画面比率と言えば,CSモードでけっこう大変な目に遭いましたね。
柏木氏:
あれは大変でした。
4Gamer:
それは,どのようなことが?
柏木氏:
7月くらいに,レベルデザインをダライアスバーストに準じた16:9の画面比率でやっていたのですが,自機やボスデザインが大きくなったDBACがベースなので,短くなった画面に対してシルバーホークが大きく映ってしまいました。「それはカッコ悪い!」という話になって,色々と検討した結果,「全部作りなおそう」という話になってしまいました。
自機の目の前にボスが来るので,攻撃を回避しづらいという攻略上の問題もあったのです。
柏木氏:
そこで,開発に「申し訳ないけれど,20:9で作りなおしてくれ」……と,お願いしました。
PS Vita版は一部ショップで限定版を販売。その特典とは
次に,PS Vita用の限定版についてお聞かせください。特典が用意されていますが,どのような内容になっているのでしょうか。
小金澤氏:
基本的には,エンターブレインさんから出ている「ダライアス オデッセイ」という本に,追加でカラー8ページ,モノクロ8ページを追加したものとなっています。
柏木氏:
ちなみにPS4版はダウンロード販売のみですが,中に設定資料集の画像データが入っています。
小金澤氏:
PS4版はPS Vita版に対して若干お値段が張りますが,ゲーム内で設定資料集を読めます。
ショップ限定版のもう1つの特典は,オリジナルアレンジCDです。他社のメジャーなコンポーザーの方たちがアレンジしたタイトーの楽曲と,ZUNTATAのコンポーザーがアレンジした他社タイトルの楽曲を収録しています。
4Gamer:
他社コンポーザーへの発注というのは,どういった経緯で行われたのでしょうか。
ダライアスシリーズはサウンドのファンがすごく多い作品なので,CDなど音モノを特典として付けたいと提案しました。そこから色々あって,「じゃあアレンジCDはどうでしょう」という話になり,著名なコンポーザの方々にBGMをアレンジしてもらおうと考えたんです。
アレンジャーの選定については,色々なアーティストと話ができる土屋に相談しました。山根ミチルさんは,土屋からの紹介です。
4Gamer:
土屋さん御自身もアレンジャーとして参加されていると伺っています。
2曲を担当しています。
石川氏:
セガさんの「ギャラクシーフォース」から,「Defeat」と「Alone Fighter」ですね。
ZUNTATA 土屋昇平氏が自身の作編曲スタイルを語る
4Gamer:
これらの楽曲は,どういった形でのアレンジを行われたのでしょうか。
土屋氏:
元曲は80年代を彷彿させる難しいフュージョンだったので,どうにか分解して“僕らしくやる”しかなかったという感じですね。
ラグ氏:
いつも気になっているのですが,ほかの方の曲をアレンジするのって,やりづらくないですか? 先輩や師匠にあたる人の楽曲をアレンジして出したら,どう思われるだろうって気になりません?
土屋氏:
僕,他人の曲をアレンジしたりリミックスしたりすること自体が基本的に好きじゃないんですよ。できることなら,やりたくない(笑)。やらざるを得ない状態になったら,それが誰の曲だとか,どういう曲だとかは一回忘れて,「自分の作りかけの曲が今ここにある」と思って,進めます。
あまり考えすぎると結果的にいいものができないので,できるだけ考えないようにしています。まあ,できるだけやりたくはないんですけど(笑)。
石川氏:
作曲する能力とアレンジする能力って,たぶん別なんですよね。音楽的知識で言えば,作曲できる人はアレンジもできるし,アレンジできる人は作曲もできるのでしょうが,スキル的には別なものが必要になると思います。土屋は両方とも持っているので,何だかんだ言ってやってしまうのですけれど(笑)。
土屋氏:
まあ,やれと言われればやります(笑)。心情的にやりたくないということで,スキル的にどうということではないです。
石川氏:
結構そういう人は多いですよ。特に,自分の曲をアレンジしたくないという方はすごく多いです。
土屋氏:
自分の曲をいじるのは絶対に無理ですね。
石川氏:
ほとんどの人が,実際にはやりつつも自分の曲のアレンジはしたくないと思っているはずです。
土屋氏:
僕はhip-hopが好きなので,パーツに分解して組み立て直すリミックスも好きなのですが,「その曲の良さを残したうえで……」となってくると途端にやる気がなくなるんですよ。「作曲」とは何かという定義は様々ですが,それをメロディに置いた場合,そのメロディを壊してしまうのはアレンジではないので。個人的には,「すべて壊して構わない」という自由なルールのもとで作れるリミックスの方が性分にあっています。
柏木氏:
ゲームデザインやレベルデザインは前のハードのものが残っていると気持ち悪いので,毎回やり直しているのですが,サウンドは前の楽曲があるうえに新しいものを入れてもらっているじゃないですか。これは,どういった意図や思想でやっているのでしょうか……毎回,すごく辛そうだなと思っているのですが(笑)。
土屋氏:
辛いですね(笑)。やれるならゼロから作り直したいです。
石川氏:
それだけの期間と予算があれば(笑)。正直言うと,できるのなら一回ごとに別のものを作りたいです。
土屋氏:
「ダライアスバースト2」とか「ダライアスバースト3」とかになって,フルスクラッチできるのが一番望ましいのですが。まあ,色々なことがあるので追加としてやらなければならない(笑)。
「毎月1曲ずつ追加です」のように短いスパンでオーダーがポンポン来て制作が続くのであれば,僕の中にもその世界が残っているんですけれど,1年くらい間が空いてしまうため各回,それぞれそこで終わってしまっています。僕の中で勝手にリセットしているので,たぶん,毎回新しいサウンドになっちゃっていると思います。
主観的にはDBACは「ダライアスバースト2」だし,DBSPは「ダライアスバースト3」だし,DBCSは「ダライアスバースト4」です,と。勝手に自分の中でそうしています。前の曲は,オマケで残っているという程度のイメージです。
針谷氏:
ダライアスの話を持って行くと,石川は結構喜ぶのですが,土屋は……(笑)。
石川氏:
曲はね(笑)。
土屋氏:
本当に「ダライアスバースト2」と聞いたら喜びますけどね。「ついに来たか!」って。
針谷氏:
だから今回は土屋から1個お願いを受けて,「何も言ってくれるな」と(笑)。
土屋氏:
毎回お願いはしているのですが,今回は特に強くお願いしました。
石川氏:
その甲斐もあってかは分からないですけど,CSモードの最初に入っている新曲の「Freedom」は,面白いと言うかチャレンジャブルな曲で,かつ“1面らしさ”があって,非常によかったですね。ダライアスシリーズとしては初の,“ちゃんとした歌詞があるボーカル曲”となっています。
土屋氏:
作曲の苦労やボツになる曲はありますが,最終的にゲームに乗っている曲自体はどれも好きにやっている曲なので,ダライアスバーストシリーズは大変満足のいくゲームです(笑)。
石川氏:
あと,ピラミッドさんにはある程度ステージの構成を合わせていただいています。「Freedom」でも,サビに行くタイミングで上からレーザーがバーンと来て画面がガラリと変わるという演出を入れていただきました。
土屋氏:
あれ,すごくカッコいいですよね。
柏木氏:
ダライアスバーストの開発当初は合わせていなかったんですよ。タイトーの青木さんに「ZUNTATAが可哀想だ!!」と怒られて,作り直しました(笑)。
※青木 洋氏……「サイキックフォース」シリーズのディレクションや「カイザーナックル」のメインプログラミングなどを担当した人物。
石川氏:
その下支えがあったからこそ,今は何も言わなくてもピラミッドさんは合わせてくれています。
柏木氏:
逆に,曲に合わせてステージを作ったらすごく長くなってしまって,「いやいやそこまでは合わせなくてもいいでしょう」ということで,ステージを短く作り直したこともありました。
土屋氏:
色々な流れがありますよね。でも,音と絵と操作のインプレッション,その3つが揃ってこそ面白いゲームになるんだと思います。Shoot 'Em Up(1対多形式のSTG)のルールはそれを一番シンプルに表現してくれますね。
柏木氏:
曲が一番盛り上がるところでWARNINGを持ってきたりとか,処理落ちによるタイミングのズレが,これくらいまでは許容できる,これから先は許容できないとか……。それが毎回大変です。
4Gamer:
旧作で言うと,とくに「ダライアス外伝」はプレイしていて音と演出の相乗が気持ちいいですよね。
柏木氏:
そういった歴史があるので,新しく作るものも音楽とゲーム自体の演出を合わせないと,お客さんに「ダライアスじゃない」と言われてしまいますから。
ダライアス外伝の最終面で「SELF」が鳴る前,無音ゾーンがあるじゃないですか。DBCSは1ステージが比較的長いのですが,その中でのダライアス外伝をモチーフにしたステージは2分くらい無音が続くので,「これバグっているんじゃないですか?」と言われたほどです。今回はそこまでやっています。
石川氏:
DBACでも旧作の曲を入れていましたが,DBCSではさらに多くの曲を入れています。「CAPTAIN NEO」や「VISIONNERZ」も聞けるステージがあります。
針谷氏:
各タイトルごと,何曲かはないですが……。
石川氏:
それでもダライアスシリーズの曲は,ほぼ9割がた入っています。100曲近いですね。RPGかっていう(笑)。
針谷氏:
曲を聴くだけでも本当に楽しいですよ。
石川氏:
気に入った曲は,iTunes Storeで1曲から買えるのでよろしくお願いします!
iTunes Store ZUNTATA公式ページ
DBCSのサウンドトラックは,どのような仕様になっているのでしょうか。
石川氏:
DBCS用の新曲が12曲あります。また,これまで特典CDなどに入れていたDBACEXやDBSP用の8曲をこの機会に固めて出そうということで,それも合わせて全部で20曲となっています。1月13日,ゲームの前日発売です!
4Gamer:
こちらに関してもiTunesでの配信はあるのでしょうか。
石川氏:
あります。
4Gamer:
今回,なぜ今までになかったボーカル曲を作られたのでしょうか。
土屋氏:
いくつかの理由があります。ダライアスバーストシリーズは,自分で世界を作って,それを自分の音で表現させてもらえるゲームです。なので,「ゲームに対してどういう音楽が似合うか」,「もっと面白いアプローチはできないか」というのを,色々と考えていて,「音楽か音楽じゃないか」みたいな際どいのもやってみようかなと構想を練っていました。最初は,「Freedom」とはまったく違う曲を作ろうと考えていたんですよ。
そのとき,ダライアスバーストで書いた「The world of spirit」という曲を好んでくださっている方がいるという話を,いろいろあって耳にしました。
土屋氏:
それで,「The world of spirit」そのままの曲ではないのですが,みんなが歌えるような曲を冒頭に持ってきてもいいかなと思いました。
もうひとつの理由が,DBCSはSteamでもリリースされるので,今までよりも一層……今までもあまり考えていなかったのですが,より一層,人種などを考えずに音楽を作れるんじゃないかと思いました。世界中の人に通じる看板みたいな曲があってもいいと考え,その結果としてボーカルを採用しました。
インスト曲もカッコいいのですが,力強さを出すときに曲の中心となるメロディを声にしたくなる癖があるんですよ。光導のときはヴォカリーズだったので,今回は歌ってもらおうと思いました。
4Gamer:
ボーカルは英詞なのですね。
土屋氏:
基本的に,僕の作る曲はほとんどが英詞です。僕は日本語をまだ研究しきれていなくて,音楽のリズムにうまく取り入れられないので,英語の方がしっくりくる場面が多いんですよ。
4Gamer:
サウンドトラックの聞きどころも,やはり「Freedom」でしょうか。
土屋氏:
「Freedom」は,あくまで看板です。「ゲームにこういう音楽が乗るんだ」とか言う驚きを全般的に表現できたかなと思っています。今回のアルバムは,今まで僕が関わらせてもらった各バージョンの中でも一番気に入ってます。
色々なゲームを遊んでいるのですが,最近はどの国の作家さんも面白いチャレンジをしているんですよ。それに対して「負けられない」という気持ちがあるので,「日本でも面白い音楽を作っている奴がいる」というのを何とか示したかったというのが,全部にギュッと詰まっています。
実際,「ダライアスバースト2」はあり得るのか?
4Gamer:
先ほど「ダライアスバースト2」の話がありましたが,実際にナンバリングの新作が出る可能性はいかがでしょうか。
針谷氏:
作品の売れ行きによっては,もしかしたら出せるかもしれません。
タイトーさん的には,「ダライアスバースト2」よりも「ダライアスIII」なんじゃないですか?
石川氏:
「そろそろダライアスIIIをやらないとね」って(笑)
針谷氏:
「ダライアスII」のEDに約束のメッセージがありましたが,「いつ来年になるんだろう」っていう(笑)。ただ,プレイヤーさんが望んでくれるなら,いい形で実現するのではないでしょうか。
ラグ氏:
国内も海外も,まだ横スクロールSTGを好むプレイヤーは根強く残っています。横スクロールSTGの歴史には代表的なシリーズが3本ありますが,唯一残っているのがダライアスなので,そういう意味でも続いてほしいと,いちプレイヤーとして思います。
針谷氏:
そうですね。やっぱり国内ではSTGというジャンル自体が厳しいですが,今回Steamで全世界的に販売するので,海外でどれだけ受けるかというのは我々としても興味深いところです。
4Gamer:
余談ながら,ハムスターさんからPS4用のアーケードアーカイブスとして初代「ダライアス」のリリースが予定されていますが,何か関連させての企画などは考えていますか?
針谷氏:
今は残念ながら……。
柏木氏:
あれはダライアス“シリーズ”と発表されていますが,何が出るんですか?
石川氏:
僕は色々聞いているのですが,この場で僕が言うものでもないので(笑)。言えるのは,サウンドチームから色々と注文しているくらいです。
前の「影の伝説」のときもFM(YM2203)版とMSM5232版を入れてほしいと言って入れてもらいましたが,ダライアスは初代はYM2203,IIはYM2610,外伝がOTIS,GがZOOM ZSG-2と音源がバラバラなので,そこら辺の再現性は非常に気になりますね。重要なところなので,ガンガン言っていこうかなと思っています。ハムスターさんなら,そこまで応えてもらえるので。
柏木氏:
バージョン違いも全部入るんですかね?
石川氏:
初代のバージョンを完全に網羅するのは無理じゃないですかね……。初代はびっくりするほどバージョンありますよ。話に聞いたところでは,3つどころじゃないですね。
柏木氏:
そのまま入っていたらうれしいですよね。
4Gamer:
最後に,期待しているプレイヤーへのメッセージをお願いします。
土屋氏:
今日,柏木さんとジェームズさんの話を聞いて,初めてCSモードの内容を理解してすごく感動しました(笑)。すごく熱くてカッコいいですよ! もっと早く知りたかったです。
石川氏:
DBCSは決定版や最終作のつもりでサウンドを作っています! ……と,僕はDBACのときもDBACEXのときもDBSPのときも思っていたんですけれども(笑)。今回もまたそのつもりで作っています。プレイされる際には大音量で遊んでいただくと,迫力を楽しめると思います。
あと,サウンドトラックをよろしくお願いします! 1月13日発売です。
針谷氏:
今回,キャラアニさんやピラミッドさんなどの協力があってプレイヤーの皆さんにお届けできるのですが,我々の一番のモチベーションとなっているのは,プレイヤーの皆さんに期待していただけたことです。ぜひとも楽しんでいただけたらと思います。
ラグ氏:
色々な苦労はありましたが,その分だけ中身が面白くなっているのは確実なので,シリーズを通して遊んできたプレイヤーでも楽しめる内容になっています。あと,今回はしっかりと海外版があるので,海外のプレイヤーにも手に届くような形にできたことが大変嬉しいです。
柏木氏:
ダライアスバーストシリーズは,実はメインのプログラマーやデザイナー,レベルデザイナーなど,PSPからDBCSまでほとんど同じスタッフが手掛けています。ゲーム業界で,シリーズ作品を同じスタッフが連続して作るということはあまりありません。
ダライアスバーストシリーズはプラットフォームが全然違うのに同じスタッフがずっと関わっていて,すごく楽しいですね。周りの方たちもほとんど同じで,サウンドの土屋さんもずっと担当していただいています。
今までに色々なSTGがありましたが,たぶん,その中でも一番遊び込めるくらい作り込んでいます。難度も今風のSTGにしては低いので,昔のSTGが好きだった人に遊んでもらいたいです。ボリュームにしても,難度に関しても,普通の人がずっと遊び込めるものになっています。皆で成熟させて練り込んだ集大成をお届けできればと思っています。
小金澤氏:
当初,このプロジェクトをやらせていただくにあたって,パッケージ版の予定はありませんでした。ダウンロード版だけで作りたいとタイトーさんともお話させていただいたのですが,いざ「こういうゲームを出します」というのをソニー・コンピュータエンタテインメントさんや,各問屋さんにお話させていただいたときに,「ぜひパッケージ版を売りたい」,「形が欲しいんだ」という声を非常に多くいただきました。なので,PS Vita版にはパッケージ版も用意させていただきました。
現時点でPS4版のパッケージ版を発売する予定はないのですが,同じように声が大きいようであれば,プレイヤーのために発売したいと思いますので,皆さんの声を届けていただけたらと思います。
4Gamer:
海外ではダウンロード専売のソフトを少数生産のパッケージ仕様で販売するストアもありますが,そういう形もあり得るのでしょうか。
小金澤氏:
そういった方法も込みで,考えています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。日本語版の発売日,そしてダライアスバーストが新たな展開を迎える日を楽しみにしています!
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ダライアスバースト クロニクルセイバーズ
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