イベント
[TGS 2015]「龍が如く 極」「龍が如く6」のプロデューサー,横山昌義氏にインタビュー。シリーズ10周年の締めくくりと,次への展望を聞いた
2016年1月21日のリリースが発表された「龍が如く 極」(PlayStation 4/PlayStation 3)は,シリーズ10周年を記念して,2005年に発売された第1作「龍が如く」をリメイクしたタイトルだ。東京ゲームショウ2015では,セガブースにシアターが設置されていた「龍が如く 極」だが,会場で同作のプロデューサーを務めるセガゲームスの横山昌義氏に話を聞く機会を得た。
「龍が如く 極」だけでなく,2016年秋の発売が明らかになったシリーズ最新作,「龍が如く6」についての話題など,さまざまな情報が得られたインタビューの模様をここでお伝えしたい。
「龍が如く 極」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,10周年記念作品となる「龍が如く 極」が発売されることになった経緯から聞かせてください。
横山昌義氏(以下,横山氏):
昨年の東京ゲームショウ2014で新たな映像を公開したのですが,そこに「10th Anniversary Project begins」というロゴを入れ,10周年記念プロジェクトの「begins=始まり」として「龍が如く0 誓いの場所」を発表しました。そのとき,第2弾も必ずやるという話もしたんです。
「龍が如く0」は過去の話ですから,そこからストーリーが続く第1作もぜひプレイしてほしいという気持ちがありましたが,今PlayStaion 2で遊んでもらうのも大変でしょう。「HD EDITION」もあるとはいえ,遊びとして高いレベルに昇華した「龍が如く0」に続くゲームとしてプレイするのは,ちょっと厳しいんですね。
4Gamer:
確かにそうかもしれません。
横山氏:
僕の中には,「ゲームは映画ではない」という考えがあります。つまり,ゲームの前提には技術や遊びの進化がありますので,昔の名作とはいえ,それをそのままの状態でプレイしてくださいと勧めるのは,クリエイターとしてやってはいけないことだと思っているんです。
そこで,今回新しい形での第1作を作ることにしました。
4Gamer:
「龍が如く0」から続く作品と考えると,「リメイク作品」とくくってしまうのも違う気がしますね。
横山氏:
はい,僕ら開発としてはリメイクという考えは持っておらず,「第1作をもう一度作る」というのが合い言葉になっています。
4Gamer:
そうなると,どんな内容になるのかが気になるところです。
横山氏:
PlayStation 2で当時,「龍が如く」や「龍が如く2」をプレイしてくれた人の多くが,思い出の中でそれらをすごく面白いものだと感じていて,作り手である我々も美化しているところがあるんです。それを踏まえて作り直す際,まず意識したのは「ストーリーを変えない」ということでした。
4Gamer:
10年前のままのストーリーなんですね。
横山氏:
ええ,「展開をこう変えれば,斜め上をいって面白くなるかもしれない」などという考えは持たないことにしたんです。カット割りやイベントシーンの構成なども当時のままで,今だからこそできるフェイシャルの技術や出演者による最高の演技などで,「龍が如く」の面白さを改めて感じてもらえるという内容を目指しています。
4Gamer:
本質の部分を変えない,というのは,ファンとしては嬉しいですね。
横山氏:
とはいえ,カット割りとか結構ひどいんですよ。「これはないだろう」って思う演出のオンパレードです。ですが,それらは僕らが未経験だったからこその荒々しい演出であり,今見るとそれがかえって斬新で,すごくパワーを感じるところでもあります。そういった部分はあえて残し,当時の自分達の気持ちを思い出しながら,それを上回るものを,今の技術と経験で作っていくというのが,現在の作業ですね。
4Gamer:
10年前当時,横山さんはどんな役職だったんですか?
横山氏:
この「龍が如く 極」を作っていると,当時のことをいろいろ思い出します。1シーンのために30テイク撮って,役者の筋肉がプルプルして「もう撮れない!」となったりとか。
当時のモーションキャプチャの技術だと,体に付けたセンサーがカメラから隠れないよう,役者同士があまり接触せずに演技しなくてはなりませんでした。でも,重要なシーンなのにそういう状態で感情を込めた演技ができるわけがなく,「センサーが取れてもいいから接触して演技しろ」って指示を出したら,モーションキャプチャの技術者に「それは困る」と言われたり。
当時は綺麗なモーションデータが優先される時代でしたが,僕らはもっとアナログな演技を重視していたんです。そのとき,「データなんかあとで調整すれば,どうにでもなる」と演技優先で収録を引き受けてくれた技術者がいて,その彼が今はこの「龍が如く 極」のイベント制作チームのチーフをやっています。
4Gamer:
そんな熱いエピソードがあったんですか。
横山氏:
「龍が如く」チームの制作は早いですが,技術的にすごいことをしているわけではありません。「迷わない,すぐ決める,手を動かす,ダメならすぐやり直す」という,どちらかというとアナログな作り方を徹底して行っていて,それでできる限界値が,この発売ペースというわけなんです。
そんな10年間を積み重ねてきた僕らが,「龍が如く」をもう一度新たに作るとこうなる,ということを,皆さんに提示して,「龍が如く0」に続く10周年記念プロジェクトを締めくくるわけです。
4Gamer:
販売価格も安いのですが,それもプロジェクトの一環ということなんですか。
横山氏:
はい,利益を考えれば正直なところ厳しいのですが,本当に感謝の気持ちです。1人でも多くの人に手に取ってほしいですから。
4Gamer:
「極」(きわみ)というタイトルには,どんな意味が込められているんしょうか。
横山氏:
候補はたくさんあったんですが,その中でも,クオリティを一言で表せるものを選びました。「究極」の極であり,「極道」の極であり,ゲーム中の「ヒートアクション」でも「極」というマークを出しています。タイトルに長いこと連れ添ってきた漢字なんです。すべてにおいて,クオリティを「極限」まで追求してきたことを表現する言葉でもあります。
4Gamer:
なるほど。キャストはどの程度新しくなっているんでしょう。
横山氏:
結構変わります。現在発表しているのは,杉田智和さん,田中敦子さん,日野 聡さん,白石涼子さんです。「龍が如く」を作り直すと考えたときに,あてられる最高の声優陣,俳優陣を選びました。例えばシンジ役の杉田さんの場合,桐生の舎弟だったシンジが桐生が出所するときに幹部に出世していますが,舎弟時代と幹部時代の両方を演じられる人として選びました。やっぱり,うまいですよね。
ちなみに,10年前は声優さんや俳優さんのテープを聞いて選んだのですが,そのやり方は今も変わっていません。
4Gamer:
もう一つ気になるのは,ゲームは発売当時の2005年が舞台となるわけですが,その設定は変わらないんですか。
横山氏:
もちろん。変える意味もありませんしね。
桐生が出所後,伊達に協力を求められるシーンで渡されるのが,折り畳まないタイプの携帯電話で,アンテナを伸ばして使うんです。また,プレイスポットで当時何がはやっていたのか調べてみたら,「ムシキング」でした。まあ,あれをそのまま入れても大人には面白くないので,ウチらしく「メスキング」にしました。
時代的には10年しか経っていないのですが,結構ノスタルジーがあるもんですね。
4Gamer:
そこもまた,魅力の一つかもしれませんね。ちなみメスキングのシステムは,ムシキングと同じなんですか。
横山氏:
同じです。「龍が如く0」のとき,似たシステムで「キャットファイト」がありましたが,あれよりもっと「ムシキング」のままです。街に「メスキングカード」っていう,カブトムシやクワガタのような格好をした女の子のカードが落ちていて,それを使って遊びます。
4Gamer:
プロモーションムービーに出ているのは,そのゲームをやっている画面なんですか。
横山氏:
そうです。詳しい遊び方については今後公開していくので,楽しみにしてください。
4Gamer:
ところで今回,追加シナリオがあるそうですが,どんなものになる予定でしょうか。
横山氏:
ただ,そこをもう少し掘り下げて,錦山がなぜああなってしまったのか,その非日常を描くことで,ドラマとしての完成度が上がると思ったんです。もっとも,追加シナリオの内容は錦山だけに限りませんが。
4Gamer:
錦山に限らないというと,例えば秋山や冴島など,その後のシリーズに登場したキャラクターのシナリオみたいなものは,あったりするんですか。
横山氏:
いろいろ考えたんですが,それはやっていません。それをやってしまうと,世界が崩れてしまう恐れがあります。無理に作っても,あまりファンサービスになるとは思わなかったんです。
4Gamer:
主題歌がB'zの稲葉浩志さん(関連記事)ということにも驚きました。
横山氏:
以前から稲葉さんの楽曲は,「龍が如く」シリーズに合うだろうと考えていて,それが今回やっと実現しました。当時の主題歌の「Receive You」という曲を稲葉さんに歌ってもらったんですが,あがってきた曲を聴いてビックリしまいた。最初の段階から,今回のシアターで流したものと変わらない迫力があったんです。しかも日本語の歌詞を作詞してもらって,それにもまったく違和感がないんですよ(関連記事)。これこそが,僕らがこの「龍が如く 極」で考えているリメイクなんだと思いました。
4Gamer:
タイトルに[Reborn]と付いているのも,その意味合いがあるんですね。
横山氏:
まさに「再生」ですよね。リメイクよりも,そちらのほうが正しいかもしれません。実際この「龍が如く 極」の開発初期には,リボーンと呼んでいたこともあったぐらいですから。
4Gamer:
「龍が如く6」についても少しお聞きしたいのですが,ビートたけしさんが出ているということ以外は,まだ謎なんですね(関連記事)。
横山氏:
そうですね。それ以外にお話しできることはありません。たけしさんが主人公ではなく,ちゃんと桐生が主人公ですが。
4Gamer:
会場のシアターで映像を見て,たけしさんの顔のクオリティがすごかったんですが,あのクオリティでゲームがプレイができるんでしょうか。
横山氏:
ええ,「龍が如く6」はPlayStation 4のみですから,あのグラフィックスで全編楽しめるようになります。
4Gamer:
当然,「龍が如く 極」と,同時開発しているんですよね。
横山氏:
現在,絶賛大苦境に陥っています(笑)。
4Gamer:
「龍が如く 極」には「龍が如く6」の体験版が付くそうですが,どんなものになりますか。
横山氏:
まだ体験版の内容をお話しする段階ではないんですが,「龍が如く6」は基本設計の部分にいろいろと挑戦しているところがあって,ゲーム構成における垣根がなくなるとでも言いますか,これまでとはプレイフィールが変わってくるところがあります。そうしたところを少しでも感じ取ってもらえるような内容にしたいと考えています。
4Gamer:
もう一つだけお聞きしたいのは,「龍が如く2」を,この「龍が如く 極」のような形でリメイクする予定はありますか。
横山氏:
「龍が如く 極2」ですか? さすがにまだそれは考えてないですね。
4Gamer:
まずはこの「龍が如く 極」ということですね。それではこの10周年の締めくくりに向けて,今後の展望をお聞かせください。
横山氏:
今回初めて2タイトルを同時発表させてもらうので,情報が混乱しないよう,正しく伝えていこうと思っています。まずは「龍が如く 極」で,「龍が如く」という作品の原点の輝きを思い切り味わってください。
そこで感じられるものから「龍が如く6」への期待が膨らんだタイミングで,いろいろな情報があふれ出てくると思います。楽しみにしていてください。
4Gamer:
分かりました。本日はどうも,ありがとうございました。
4Gamer「TGS 2015」特設サイト
- 関連タイトル:
龍が如く 極
- 関連タイトル:
龍が如く 極
- 関連タイトル:
龍が如く6 命の詩。
- この記事のURL:
キーワード
(C)SEGA
(C)SEGA
(C)SEGA