連載
結のほえほえゲーム演説:第2回「中二病の詐病 ダメ。ゼッタイ。自分の誇り高き妄想をその身に刻め! ついに出るイグジストアーカイヴ!」
ごきげんよう。女優・タレントの結です。前回は連載第1回だったにも関わらず,現在入手困難である20年以上前のファミリーコンピュータ,スーパーファミコンのソフトを紹介する……という暴挙に出たわけですが,「ありとあらゆる手段でソフトを入手した」といった感想が多数寄せられ,大変嬉しく驚いております。さすが4Gamer読者さんですね! それでは,連載第2回目,行ってみましょう。
その中でも,「自分には隠された能力が存在する」と思い込む,いわゆる「邪気眼系中二病」の概念が,2013年のアニメ「中二病でも恋がしたい!」の放送以降,世間へ浸透したように個人的には感じられます。
また近年では,アニメや漫画,ゲームの作り手側が「まぁ中二病な作風です(笑)」など,ポジティブな表現として使っている場面も見受けられます。
自覚,自称している中二病など,詐病に過ぎないんですよ!! もっと心から,魂から,その世界に酔え!! そして酔わせてくれ!!
14歳の私は,「新世紀エヴァンゲリオン」や「無限のリヴァイアス」,「地球少女アルジュナ」といったアニメに強い影響を受けていました。そして,断片的で意味深な台詞,儚げで謎の多い女の子,退廃的で憂鬱な世界が大好物でした。
読者の皆さんも,教室の窓ガラスが割れ,巨大な敵がやってきて,隠された能力が目覚める……そんな妄想を退屈な授業中にしたことくらい,あるでしょう!?(魔法陣のひとつやふたつ,校庭に書いたことくらいはあるよね? ね?)
あの妄想の楽しさは,巷で使われる中二病という言葉に収まりきるものなのでしょうか。14歳の妄想は,お手軽パッケージ化されたファンタジーとは違う,もっと誇り高いものだったのではないでしょうか!?
人は誰しも,心の中に“14歳だった自分”を抱えて生きています。そんな“14歳だった自分”が,「くやしい……! でも……感じちゃう!」とビクンビクンするゲームこそが,JRPG屈指の名作「ヴァルキリープロファイル」でした。
ヴァルキリープロファイル(エニックス ※現スクウェア・エニックス)
「貴様に救いの道などない!」英雄たちのヒューマンドラマ
彼らは何のために生きていたのか,どうして彼らは死を迎えることになったのか,死の瞬間に何を想ったのか……ひとつひとつのエピソードで,悲しく切ないドラマが描かれます。プレイヤーは「何故こいつが死ななければいけないんだ……。何とかしてくれよレナス!!」と嘆きながらも,英雄たちの魂を集めていかなければならないのです。
「その身に刻め!」“決め技”と“大魔法”のカッコよさ
ヴァルキリープロファイルの特徴といえば,キャラクターによって異なる“決め技”の台詞や“大魔法”の詠唱です。
「その身に刻め,神技!! ニーベルン・ヴァレスティ!!」
「我焦がれ、誘うは焦熱への儀式、其に捧げるは炎帝の抱擁……イフリートキャレス!!」
嗚呼……授業中にこっそりノートに写経したい!! お風呂場で詠唱したい!!
その言葉の響きだけで,遺伝子レベルで抗えないほどにギュンギュン惹かれてしまいます。
キャラクターがたまらん
今となっては「RPGの登場人物がしゃべる」のは当たり前ですが,まだボイス付きのゲームが珍しかった1999年当時の私は,想像する楽しさを奪われてしまうようで,キャラクターボイスへの抵抗が少なからずありました。しかし,ヴァルキリープロファイルに出演されていた声優さんの演技には,大きな衝撃を受けたのです。
物語へ自然に寄り添う演技は,生死を越えてもなお続く登場人物たちの苦悩や葛藤を,より奥深いものにしています。冬間由美さんが演じるレナスの凛々しさと神々しさ,折笠 愛さんが演じるエイミの倦怠感と色気,諦め……何年経っても色褪せません。
リーゼロッテがたまらん
とある事件の犯人であるという容疑をかけられたリーゼロッテと,その同胞のローザ。2人とも“自分は犯人じゃない”ことは確かなので,互いを強く疑います。
しかし,聖女として人々から慕われるローザは毅然に振る舞い,リーゼロッテへの憎しみを露わにすることはありません。どんなにリーゼロッテが嫌悪感をぶつけても,ローザからは本音はおろか,偽善的な言葉しか返ってこないのです。その度にリーゼロッテは虚しさと憤りを感じ,それと同時に自分が醜い感情に支配されていることを思い知らされます。
リーゼロッテは,ローザへの憎しみを自身の存在理由にしてしまいます。リーゼロッテは自分の感情に嘘をつけないため,自分の感情に嘘をつけるローザを理解出来ず,孤独に叫ぶのです。
そんなリーゼロッテを,私は全力で肯定したい。リーゼロッテがとめどなく溢れる憎しみを包み隠さずローザにぶつけてしまうのは,ローザが本音で自分と対峙してくれることを待っているからでしょう?
ローザが憎しみを表に出さず,本音で対峙することがないのは,リーゼロッテにとって,もっとも残酷な仕打ちです。リーゼロッテは,伝えようとすればするほど孤独になる。
私自身も,本音を見せず時々によって自分の感情を偽れる人には「対峙してくれよ!」と思って虚しくなるばかりです。そんなとき,彼女の存在を思い出すのです。
イグジスト アーカイヴ -The Other Side of the Sky-(スパイク・チュンソフト)
本作を知ったとき,「14歳の自分が欲するようなJRPGであってほしい」という期待が膨らみました。ですが,この時点では本当に期待通りのものを見られるかどうか,確信を持てずにいたのです。
そんな私が強く「まさにこれだ!」と確信したのは,9月15日のSCEJA Press Conference 2015で公開されたPVです。物語の始まりを強く堂々と切り拓いていく桜庭さんの楽曲,そこへ登場人物たちの「悲壮な告白」ともいえる意味ありげな台詞が重なっていく……。この唯一無二の演出,紛れもなくトライエース・スタッフによる新作です。JRPGの本質であるドラマ性を大切にしながらも,ただの「繰り返し」には留まらない,新しい物語を,新しいゲームを切り開く強い意志を感じました。
どんなドラマが隠されているのか,無意識に想像を膨らませているこの感覚。そう,他でもないこの感覚を,ずっとずっと求めていたのです。
イグジストアーカイヴは,育った環境や戦う理由が異なる登場人物たちの群像劇です。それぞれの思惑や信念が交錯する物語や,人々の生死,神々の戦いといった重々しいテーマが作品を覆っています。
そんな世界の切なさや儚さを繊細に表現してくれるであろう桜庭さんの楽曲。それが流れる公式サイトを眺めているだけで,開かれるときを待つ感情の扉が次々と現れるようで,いても立ってもいられないのです。
TVCMの演出も本当に憎いですね。水中に漂うまゆらと蘭世のコスチュームを身に纏った美女。個人的に,1990年代に作られたRPGのTVCMは印象的なものが多かったと思っているのですが,近年はそういったTVCMと出会う機会がなかなかありませんでした。「運命に抗うRPG」という台詞以外に何の説明もなく,ゲーム画面もない。非常に挑戦的であり,JRPGファンの心を駆り立ててくれます。
個性的なキャラクターがたくさん登場する本作ですが,とにかく私好みなのは神河蘭世です。主人公の許嫁ですが,死ぬ間際に「貴方と一緒に死ぬなんて,嫌」と主人公を拒絶するのです。彼女は,どうして死に至るまで本音を隠し続けたのでしょうか。そして,どうしてそのことを隠し通さず,死の間際になって吐露したのでしょうか。
この記事を書いているのは発売日(12月17日)前日なのですが,この記事がアップされる頃には,きっと私はむしゃぶりついてゲームをプレイしていることでしょう。
お風呂場で必殺技を叫ぶ準備は出来た,さあかかってこい!!
最近プレイしているゲーム(2015/12/18)
PC「星界神話 -ASTRAL TALE-」
PS4「Bloodborne」/DLC「The Old Hunters」
PS4「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」
PS4「コール オブ デューティ ブラックオプスIII」
PS Vita「グランキングダム」
PSP「サガフロンティア」(PlayStationアーカイブス)
3DS「モンスターハンタークロス」
AC「ディシディアファイナルファンタジー」
iOS「白猫プロジェクト」
■結プロフィール
女優・タレントとしてフリーランスで活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCをつとめる。イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。特技は人狼。近頃は人狼プレイヤーとして番組に出演する機会が増え,来年2016年1月17日「アルティメット人狼」,1月24日「人狼最大トーナメント」の出演が決定している。結のTwitter IDの由来はブラウザ人狼で10年前から使用していたハンドルネームらしい。自身が主催するトークイベント「糸吉祭 Vol.3」も,2016年2月21日に開催する予定である。
結 オフィシャルサイト
結 公式Twitter
- 関連タイトル:
イグジストアーカイヴ -The Other Side of the Sky-
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