連載
そうだ アニメ,見よう:第121回は魔女イレイナの旅路を描く「魔女の旅々」。衝撃の第9話など気になるエピソードを紹介
若くして魔法使いの最上位“魔女”となった少女イレイナの旅路を描く,白石定規氏の連作短編小説「魔女の旅々」(GAノベル刊/既刊15巻)。本作は,2014年に白石氏がAmazon Kindleで自費出版した同名小説が話題を呼び,その加筆修正版がGAノベルより出版されたという,少々変わった経歴を持つ作品だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第121回のタイトルは,ファンタジー旅行記「魔女の旅々」。制作はC2C,シリーズ構成・脚本は筆安一幸氏,監督は「THE IDOLM@STER」のキャラクター原案や映画「ベルセルク 黄金時代篇」三部作を手掛けたベテランの窪岡俊之氏が務めている。
魔女の旅々
広大な世界を自由に渡り歩き,訳のわからない可笑しな人や,誰かの美しい日常に触れながら,これといった目的もなく,いろいろな国や人との出逢いと別れを繰り返すイレイナ。
「構わないでください。私,旅人なものですから。先を急がなければならないのです」
これは,そんな魔女イレイナが紡ぐ,出逢いと別れの物語……。
魔法のホウキで世界中を気ままに旅して廻る。現代社会の不自由さに嘆く人が一度は憧れるであろう,そんなシチュエーションを描いた作品が本作「魔女の旅々」だ。
物語の舞台となるのは,魔法が日常に溶け込んでいる世界。15歳で“魔女”となり,長い銀髪に由来する“灰の魔女”という二つ名を持つイレイナが,「魔法使いの国」や「正直者の国」,「自由の国」などさまざまな国を巡り,新たな出逢いと別れを繰り返していく。
連作短編の原作同様に,シナリオは各話につき1〜2エピソードが語られ,イレイナが立ち寄った国での出来事が,時にはコミカルに,時にはアイロニーに満ちたテイストで描かれている。中には第4話「民なき国の王女」のような,ある王国の悲劇を綴ったエピソードもあり,各話で本作への印象がガラリと変わる,不思議な魅力を持った作品なのだ。
どのエピソードも見どころにあふれた物語が展開されるが,今回は筆者の印象に残った2篇を紹介したいと思う。
第1話「魔女見習いイレイナ」
魔女になるためには,魔女見習いの試験に合格し,ほかの魔女に弟子入りして一人前の証をもらう必要がある。最年少で試験に合格したイレイナは,嫉妬深い魔女達から反感を買い,どこからも門前払いを受けてしまう。仕方なしに怪しげな「星屑の魔女」フラン(CV:花澤香菜)に弟子入りを果たすイレイナだったが,フランはいつまでたっても修行を始めてくれない。不満が溜まる一方のイレイナだったが……。
ここでは,イレイナが旅に出る前の過去のエピソードが語られる。幼い頃のイレイナがどんな少女だったのか,彼女がなぜ魔女を目指すのかという,本作の根幹となる部分がコミカルに描かれ,本作の世界にすんなり入り込むための導入となっている。
実はこのエピソード,原作では第1巻の第4章に登場するもので,アニメ化にあたって,順序が入れ替えられているのだ。
このエピソードを第1話に持ってきたことで,グッと作品に入り込みやすくなったのではないだろうか。魔法でのアクションも丁寧に描写され,つかみとしては十分な回となっている。
第9話「遡る嘆き」
とある国で,イレイナは,「薫衣の魔女」エステルからサポートの仕事を頼まれる。彼女は親友の不幸な結末を変えるため,魔法で過去に戻ろうとしていたのだ。イレイナ達は,10年前の街で悲劇の始まりとなる事件を阻止しようと奔走する。
この第9話は,放送前に公式より「児童および青少年の視聴には十分ご注意ください」と注意喚起された,異例の回だ。イレイナ達は過去へさかのぼり,意外な事実に直面するのだが,ここでショッキングなシーンが登場する。
ネタバレになるのでは多くは語れないが,やはり世の中には「知らないほうがよかった」こともあるということ。
作者の白石氏は,ゲストキャラが徹頭徹尾不幸な目に遭って終わる,海外の刑事ドラマから物語の着想を得ているのだという。こうしたエピソードも違和感なく物語に組み込まれているのが,本作が話題を呼んだ理由なのかもしれない。
今回は2篇を取り上げたが,そのほかのエピソードも独創的でウィットに富んだ物語が綴られている。こうしたエピソードはもちろん,旅の途中で出会うサヤ(CV:黒沢ともよ)やシーラ(CV:日笠陽子)といったイレイナを取り巻く人間模様,中世のヨーロッパ風に仕上げられた街並みなど見どころの多い本作だが,やはり,イレイナの目線で旅を味わえるのが最大の魅力なのだろう。
別れと出逢いを繰り返しながらも,旅を楽しむイレイナに同行したくなる。そんな気分にさせてくれる作品だ。
TVアニメ「魔女の旅々」公式サイト
TVアニメ「魔女の旅々」公式Twitter
放映データ |
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2020年10月〜12月まで |
全12話 |
キャスト | |
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イレイナ:本渡 楓 | |
フラン:花澤香菜 | |
サヤ:黒沢ともよ | |
シーラ:日笠陽子 |
スタッフ |
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原作:白石定規(GAノベル/SBクリエイティブ刊) |
キャラクター原案:あずーる |
監督:窪岡俊之 |
シリーズ構成・脚本:筆安一幸 |
キャラクターデザイン・総作画監督:小田武士 |
コンセプトデザイン:内尾和正 |
総作画監督:矢向宏志、長森佳容、河野絵美、吉田巧介 |
魔法エフェクト監修:宝井俊介 |
色彩設計:高木雅人 |
色彩設計補佐:手倉森咲子 |
美術設定:滝口勝久(スタジオちゅーりっぷ) |
美術監督:合六弘(マカリア) |
プロップデザイン:水村良男 |
3Dディレクター:向純平 |
撮影監督:桑良人、板倉あゆみ |
特殊効果:イノイエシン |
編集:柳圭介 |
音響監督:藤田亜紀子 |
音楽:AstroNoteS |
音楽制作:ランティス |
アニメーション制作:C2C |
製作:魔女の旅々製作委員会 |
■Blu-ray&DVD情報
魔女の旅々 Blu-ray&DVD BOX 上巻
2021年1月27日(水)発売予定
[収録話数] 第1話〜第6話
[Blu-ray]
品番:ZMAZ-14361
税抜価格:18,000円/税込価格:19,800円
[DVD]
品番:ZMSZ-14371
税抜価格:16,000円/税込価格:17,600円
毎回特典
1.キャラクター原案・あずーる描き下ろしBOX
2.キャラクターデザイン・小田武士描き下ろしデジ仕様ジャケット
3.原作・白石定規書き下ろし小説(あずーる描き下ろしイラスト付き)
4.スペシャルブックレット「上巻」
5.ノンクレジットOP・ED
6.ウェブ予告
(C)白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
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