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[COMPUTEX]西川善司の3DGE:AMDが第7世代APU「Bristol Ridge」を発表。事実上のCarrizo新リビジョン
第7世代APUは,DDR4&DDR3両対応のメモリコントローラ,そして単体グラフィックスカード用に12レーンのPCI Express(以下,PCIe)3.0を統合する製品だ。
Bristol Ridgeは細かなチューニングの積み重ねで性能向上を実現
衝撃のアナウンスを行ったMacri氏によると,先々代となる「Kaveri」比でCPUコア性能は最大50%,GPU性能はCarrizo比で最大37%向上し,消費電力はCarrizo比で最大12%低減しているとのことである。
論理設計どころか物理レイアウトまで同じなのに,どうして性能向上を実現できたのか,不思議に思う読者も多いだろう。「これにはいくつかの理由があり,それらが複合的かつ相乗効果的にもたらしたものだ」とMacri氏は説明している。
実のところ,話は意外にシンプルだったりするのだが,順を追って解説しよう。
理由のひとつは,製造プロセスの進化によって,最大動作クロックが引き上げられたことだ。
Bristol Ridgeの製造にあたって採用しているプロセス技術自体はCarrizoと同じ28nmだが,製造品質の改善によって,より高い周波数での動作が可能になったというわけである。
2つめは,駆動電圧と駆動周波数の動的な制御(AVFS:Adaptive Voltage and Frequency Scaling)のチューニングを推し進め,全電圧域において,理論設計駆動周波数の最大に近づけられたことだと,Macri氏は述べている。
たとえば,駆動電圧が一瞬上がり過ぎたり,駆動周波数が上がり過ぎたりした場合でも,その「プロセッサに対する攻撃性」を時間方向の累積値として分析して低減制御を行う。この制御は1ms単位で行えるそうだ。
使い勝手の向上をもたらすチューニングも
Bristol Ridgeでは,このほかにも細かい機能がいくつか追加されている。いずれも,性能を引き上げるというよりは,利便性や,ユーザー側の操作感向上を目指すものだ。
ひとつは「STAPM」。「Skin Temperature Aware Power Management」の略ということで,たいそうな名前だと思うかもしれないが,簡単に言うと,これは複数の外部温度センサーの入力に対応する機能であり,具体的には消費電力を細かく制御するためのものとなる。
「Skin Temperature」とは,要するにノートPCのボディ表面温度であって,つまり,「Bristol Ridge搭載ノートPCでは,ユーザーが低温火傷をしないように表面温度管理をしつつ,よりきめ細かな電源管理を行って最大性能を持続できるようにした」ということだ。従来は,ノートPCメーカー側が独自に温度センシングと管理を行ってプロセッサの駆動制御を行う必要があったのに対し,Bristol RidgeではこれをAPU側のファームウェアから自動制御できるようになったのである。
もうひとつは「BTC」で,こちらは「Boot Time Power Supply Calibration」の略。やはり電源管理に関わる機能だ。
システムの起動時にキャリブレーションを行って,省電力モードごとの電源供給量を決定する機構であり,プロセッサの経年劣化が起こらないよう,適切な電源供給量を決定するようになっている。
Carrizoにおいてハードウェアレベルでは実装済みだった要素を有効化したものがBristol Ridgeか
「Bristol Ridgeにおける主だった機能拡張は,DDR4とPCIe 3.0 x12に対応しているところくらい」と述べたMacri氏だが,実のところ,氏は最初「対応」(support)ではなく,「有効化」(enabling)と述べていた。おそらく,DDR4やGPU用となる12レーンのPCIe 3.0は,ハードウェアレベルではCarrizoの時点で実装されていた可能性が高い。
ということで,Bristol Ridgeは実のところ,ほぼCarrizoのリフレッシュ(≒リブランド,リネーム)と紹介しても過言ではないが,Macri氏は,そう指摘されるのを避けるために,「Bristol Ridgeは,内部的な改善によってCarrizoから進化したAPUである」というメッセージを強調したのだと思われる。
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