プレイレポート
ゆっくりと丁寧に語られるファン待望の物語。ノスタルジーに浸れるシリーズ最新作「ポポロクロイス物語 〜ナルシアの涙と妖精の笛」プレイレポート
ゲーム業界には,NINTENDO64という新しいハードウェアが登場した。さらに,ゲームボーイでは「ポケットモンスター 赤・緑」,PlayStationでは「バイオハザード」など,今なお続く強力なフランチャイズが次々と生まれた年でもある。
そして,あの頃の思い出話をしている際,話題に上ることの多い作品がもう1つある。列挙した作品と同じく1996年に発売されたPlayStation用ゲーム「ポポロクロイス物語」である。
今回取り上げるスマートフォン向けRPG「ポポロクロイス物語 〜ナルシアの涙と妖精の笛」(iOS / Android)は,その最新作にあたる作品だ。2018年5月8日に,セガゲームスよりリリースされたばかりの新作タイトルで,ポポロクロイスシリーズとしては8作目となる。
装いも新たにスマートフォンに登場したポポロクロイス物語は,一体どのような作品に仕上がっているのか。さっそくその内容を見ていこう。
丁寧に作られた物語と湧き上がるノスタルジー
本作の存在が明らかになったのは,2016年10月29日に行われたポポロクロイスのゲーム化を祝う非公式のファンイベントだった。その約1年後,東京ゲームショウ2017に合わせてセガゲームスから正式にアナウンスがあり,ゲームの全貌が明らかになっていった。
開発プロデューサーを務めるepicsの山元哲治氏は,東京ゲームショウ2017でのインタビューで,本作が従来シリーズと同様,物語に重きを置いたタイトルになることを示唆していた。
その言葉どおり,本作の大きな魅力となっているのは,久しぶりに語られるピエトロ王子とナルシアの新たなエピソードだ。舞台となるのは,“はじまりの物語から8年後”の世界で,時系列としては「ポポロクロイス物語II」と「ポポロクロイス はじまりの冒険」の間になる。
物語がスタートするのは,おなじみのポポロクロイス王国。この地から,大人へと成長するピエトロ王子たちの姿が描かれる。かつての作品群と比べると,キャラクター達の頭身が少しだけ上がり,見た目もほんのりと大人びた印象だ。
そして本作では,下記3種類のストーリーをそれぞれ楽しむことができる。
1.メインストーリー
メインストーリーは,ポポロクロイス王国のピエトロ王子とナルシアを中心とした物語だ。序盤では,ルーベンの森を守る妖精王メディアからある使命を受けた2人が,新たな旅を始めるきっかけとなるエピソードが描かれている。
このメインストーリーでは,旧作でおなじみの懐かしのキャラクターたちが,序盤から惜しげもなく登場する。「ガーン」という口癖で覚えている人も多そうなドン,その相方のような存在であるゴン,さらにはロマーナ王国の王女ジルバなど,序盤は新たなエピソードを解禁するたびに,“あの頃”に思いを馳せることができる。
序盤は導入とキャラクターの紹介がメインであり,ジェットコースターのように起伏が激しいお話はない。なんというか路面電車で街並みを眺めているような,ゆったりと,そしてたまにクスリと笑いながら楽しめるような構成になっている。
2.サイドストーリー
サイドストーリーでは,ポポロクロイスから遙か海を越えた先の,ネクロシア大陸のさらに辺境に位置するビルカ村を舞台としたエピソードが語られる。序盤では荒廃したビルカに,「神の使徒」を名乗る男が現れたことをきっかけに起こる事件が描かれていく。
お話の中心になるのは,祈り人と呼ばれるザマドとルチアの2人。貧困に喘ぐビルカの中で希望を捨てず,祈ることで未来へと想いを繋げようとする,どこか達観した若者たちである。
サイドストーリーという名称ではあるが,何やらただごとではない雰囲気であったり,新キャラクターの登場であったりと,序盤はメインストーリーよりも緊迫した物語を楽しめる。時系列的には,メインストーリーとほぼ同じ時期の話が平行に進むような形になるので,どちらかに偏らずに楽しむのがオススメだ。
3.ブレイブストーリー
ブレイブストーリーは,キャラクターごとに用意されたエピソードだ。本作では登場キャラクターたちをブレイブ(勇者)と位置づけているところから,この名称がついているものと思われる。この物語は,よりキャラクターたちを深く知るためのものなので,お気に入りのキャラクターのエピソードから進めて問題ない。
なお,どの物語も基本的にはステージ制で1エピソードごとにバトルが起こるような形になっている。バトルについては以下で詳解しよう。
バトルは戦略性ありの新システム
“3Dアクティブ・レーン・バトル”という名称で呼ばれている本作のバトルは,3×3マス内の任意の場所に,キャラクターを最大5人まで配置して行う形になっている。バトル中は,アクティブレーンと呼ばれる行動順を表すレーンに行動を登録した順番に,攻撃などが行われるシステムだ。
画面下部のキャラクターアイコンが光ると,アクティブレーンに行動を登録できるようになるが,このアイコンの光る早さはキャラクターによって異なる。基本的には早く溜まった順番に行動を登録することになるのだが,アクティブレーンには攻撃力UPなどの特殊効果のあるパネルが存在しており,少しだけ行動順を工夫することで敵の殲滅速度があがるといった戦略性もある。
また,必殺技ゲージが溜まるとあらゆる行動順を無視して,キャラクター固有の必殺技を割り込ませることができる。これをどこで発動させるかも,本作のバトルの戦略的な要素の1つだ。
バトルに絡む要素としては戦闘システムのほかに,キャラクターの属性や陣形といった概念がある。キャラクターの属性は,現状では武器によって斬(赤),突(青),打(紫),遠(緑)の4種類。それぞれ3×3マスのどこに攻撃するのかと,若干のパラメータ傾向によって分けられているようだ。ちなみに斬は前列の横一列,突は任意の縦一列,打は二列目までの2×2マス,そして遠は後列の横一列を攻撃対象にできる。
陣形は,3×3マスをどういった配置で使うのかを選び,それに合わせてキャラクターを配置することで特殊な効果などを得られるシステムだ。
各要素を細かく見ていくとやや複雑な印象はあるが,バトルもキャラクターの選出も陣形も,ある程度適当にやってしまって問題ない。もしストーリーを進める中で詰まってしまったら,その時に見直すようなイメージで捉えておこう。
成長要素はレベルアップとアクセサリー
キャラクターの成長要素は複雑というほどではないが,少しだけ覚えることがある。キャラクターのパラメータに関わるのは,そのキャラクターのレベルとレアリティ,さらに覚醒度,最後に装備するアクセサリーである。
キャラクターのレベルは,ストーリーなどで手に入れた素材や余ってしまったキャラクターを合成することで上昇していく。また限界突破をすることで,レベルの上限を開放することもできる。ただし,ストーリーをクリアするだけではキャラクターは成長しないので,この点は注意をしておこう。
覚醒度は一定のエピソードレベルに達したキャラクターを,特定のアイテムで強化する方法だ。レベルとはちょっと異なる概念で,覚醒に成功するとパラメータが上昇しレアリティの横に+が増えていく。覚醒度は++まであり,SR以上のキャラクターをここまで育てると,後述する船団戦で役立つ“戦術”を獲得できる。
そして最後のアクセサリーは,曜日限定クエストで手に入れたアイテムを使って作成し,キャラクターに装備させるというもの。攻略に際しては,覚醒度の上昇によってアクセサリーの装備枠が増えることも覚えておきたい。
マルチプレイ要素はGvGにあたる船団戦
さて,最後にマルチプレイの要素に少しだけ触れておきたい。
本作には船団戦という,いわゆるGvGにあたるマルチプレイ要素がある。任意のプレイヤーと船団を組んでほかの船団と戦うというもので,1日の決められた時間のみ開催されるイベントのようなイメージである。
相手の船団員と順番に戦う方式で,船団戦専用の編成とシステムで行われる。基本的にバトルの進行はオートで,編成のみ吟味しながら戦うことになる。ゲーム内の位置づけとしてはエンドコンテンツであり,それなりにゲームを続けているプレイヤーを想定して作られているのだが,ゲームをある程度進めて船団にさえ入ってしまえば誰でも参加は可能だ。
約20年の時を経て描かれるピエトロ王子たちの新たな物語
さて,シリーズの8作目としてスマートフォンに舞台を移し,そのベールを脱いだ「ポポロクロイス物語 〜ナルシアの涙と妖精の笛」。約20年の時を経て描かれるピエトロ王子たちの新たな物語は,当時を知るプレイヤーにとっては待望の内容といえる。
当時のテイストを保持しながら優しく,丁寧に語られていく物語は雰囲気満点で,ゆったりとプレイしながらノスタルジーに浸る時間は極上と言ってもいい。オリジナル版を知らない世代にも,本作の独特な世界観やテンポに,心惹かれるという人は多いのではないだろうか。
新しくなった戦闘システムやマルチプレイ要素,成長要素はすべてを一度に見せられると複雑な印象は否めないので,無理せずに少しずつ,紐解くように遊んでいくのがオススメかもしれない。ポポロクロイスシリーズに特別な思い入れのあるプレイヤーならば,ぜひ触ってみてほしいタイトルだ。
「ポポロクロイス物語 〜ナルシアの涙と妖精の笛」公式サイト
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ポポロクロイス物語 〜ナルシアの涙と妖精の笛
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