プレイレポート
マリオの戦略バトルは,シェイプされたルール&連携重視でテンポ良く楽しめる。「マリオ+ラビッツ キングダムバトル」プレイレポート
本作は,任天堂のマリオと,ユービーアイソフトのラビッツがコラボし,シミュレーションゲームのシステムで戦うという異色の作品だ。分かりやすいルールで遊びやすく,さらにマリオっぽいテンポの良さも併せ持つ本作の,「ワールド2」までのプレイレポートをお届けする。
「マリオ+ラビッツ キングダムバトル」公式サイト
誰も予想できなかった!?
“マリオ+ラビッツ+シミュレーション”
これまでにもさまざまなIPとコラボしてきたマリオだが,今回のお相手であるラビッツはユービーアイソフトのマスコットだ。ウサギのような見た目だが,とにかく元気でフリーダム。ギョロ目とすきっ歯という顔は日本的な“カワイイ”とはちょっと系統が異なるものの,慣れると不思議と癖になる。マリオとラビッツが,シミュレーションゲームで共演することになると予想できた人は少ないのではないだろうか。
さて,そんなラビッツだが,とある少年が発明した物質融合装置「スーパーマージ」をイタズラしたことで,部屋にあったマリオグッズと融合し,マリオ達のいるキノコ王国に入り込んでしまう。そして,スーパーマージの悪影響を受けたラビッツ達は,キノコ王国のあちこちで大暴れ。この混乱を収めんとするのが,我らがマリオだ。少年お手製のナビゲーターロボ「ビーポ」に導かれ,事態を収拾するための旅に出ることになる。
分かりやすいルールと奥深さが魅力的な
立ち回り重視のシミュレーション
本作は,いわゆるターン制シミュレーションゲームで,ステージごとに設定された,「相手を全滅させる」「特定の場所にたどり着く」「仲間を守る」といった目的のために戦う。ラビッツ達の数は多いうえ,こちらはマリオ+2人の計3人しか同時に使用できないため,しっかりと作戦を立てる必要がある。
キモカワなラビッツとコラボしたこと,そしてゲームのグラフィックスがCG映画っぽいところから,ぱっと見は低年齢向けのような雰囲気を持つ本作。しかしその実態は,分かりやすいルールによる,立ち回り重視のシミュレーションゲームだ。
「ブロックに隠れれば身を守れる。そうでなければダメージを受ける」という大原則のもと,お互いに動き回って守りを崩しあう,スリリングな戦いが展開するのである。
なお,マリオとラビッツは武器を装備して戦う。マップ上に点在するブロックに身を隠しつつ,相手と撃ち合うのだ。
ブロックを活用するうえでは,その大きさと向きが重要だ。ブロックには背の高いものと低いものの2種類があり,前者は相手からの攻撃を必ず防いでくれ,後者が攻撃を防ぐ確率は50%だ。しかし,ブロックの側面に回り込まれて攻撃されると無防備とみなされ,相手からの攻撃が100%当たってしまう。身を隠すものがない平地などにいる場合も当然,100%食らうことになる。この原則は,こちらから攻撃するときも同様だ。
戦いにおいては「自分はブロックで身を守りつつ,相手の遮蔽を無効にするため,側面に回り込んで攻撃する」ことがセオリーとなる。
要は“背の高いブロックは攻撃を必ず防ぐ。低いブロックなら50%の確率で当たる。側面に回り込んだり,無防備な相手を撃ったりすれば100%当たる。”というわけで,実にシンプルなルールである。
無理に攻撃しようとして平地に出たり,側面に回り込まれたりすると,相手の攻撃を“必ず”食らうことになる。こちらが攻撃するときも,相手が無防備なら“必ず”ヒットする。つまり,やられるというのは,立ち回りの悪さが主因であるわけだ。シミュレーションにありがちな「こちらの正確さと敵の敏捷性を比較した結果,73%の確率でヒットするはずが,乱数のマジックで外れてしまった」……というような複雑さはない。
味方の中では比較的耐久力に優れるマリオも,身を隠さずにいたのでは集中攻撃を受けてやられてしまう。これはありそうでなかったシンプルさだ(なお,攻撃が敵に与える追加効果の発動率については50%と100%以外の数字もある)。
背の高いブロックの裏に立てこもれば無敵になれるかというと,そうではない。ブロックにも耐久力があり,何度か攻撃を受けると壊れてしまうため,同じ場所に留まっての戦いは難しい。相手が隠れている場合はブロックを破壊してしまえばいいし,ルイージやラビッツピーチには側面から回り込む自走爆弾での攻撃もできる。また,マリオやラビッツマリオなら相手に近づき,サブウェポンのハンマーで攻撃するという手もある。
また,移動しつつの「スライディング」と,高い移動力を得られる「チームジャンプ」を使えば,さらに有利に戦うことができる。
移動中に相手に接触するとスライディングとなり,滑り込みキックでダメージを与えられる。本作にはZOC(Zone of Control。支配地域)の概念がなく,敵の近くに行っても移動力が落ちるといったことはない。また,移動後に攻撃することも,攻撃後に移動することも可能だし,移動可能範囲内なら自由に動き回れる。
物陰に隠れた状態から飛び出し,ブロックの側面に回り込んで隠れた敵にスライディングし,元の位置に戻ってから射撃するようなことも可能だ。もちろん,スライディングも100%の確率で命中するため,かなり有効な攻撃手段となる。
移動に役立つのがチームジャンプだ。移動中に仲間の位置に行くと,体操競技選手か双子のサッカー選手のようにこちらを跳ね上げてくれ,さらに遠くへ移動できる。つまりは味方を移動の中継点として使えるというわけだ。2人で交互にチームジャンプして一気に進撃できるだけでなく,丘のような高所に飛び乗ることも可能だ。
スライディングとチームジャンプは併用できるうえ,キャラクターによってはこれを強化できる。マリオならチームジャンプの着地点にいる相手を踏みつけてダメージを与えられるし,ラビッツピーチは複数の相手にスライディングを決められる。また,ルイージの場合は2人にチームジャンプさせてもらえるため,一気に移動できる。
例えばマリオの場合,「移動からスライディングを決め,さらにチームジャンプで飛び,敵の頭を踏みつけたあと,障害物の陰に着地し,シューターで射撃する」というような移動も可能だ。こうしてうまく守りを崩し,敵ラビッツを撃破できるとなかなか爽快だ。
マップ上をスライディングやチームジャンプで動き回る様はダイナミックでテンポが良く,まるでマリオ本編のジャンプアクションを観戦しているような気分になる。言い換えれば「シミュレーションだがマリオっぽさが表現されている」というわけだ。もちろん,ラビッツ達もこうした技を使ってくるため,バトルはスリリングなものとなるのである。
これらの要素についてはしっかりとしたチュートリアルがあり,段階的に学んでいくことができる。なお,マリオや仲間のHPが尽きても「気絶」した扱いになるだけで,ステージをクリアすれば復活するのでご安心を。
ただ,HPが完全回復する訳ではないため,連戦時には元気なメンバーと入れ換えるような工夫も必要となる。どうしてもクリアできない場合,HPを完全回復したうえで上限値もアップする「イージーモード」を使うのもいいだろう。
作戦と連携を駆使して,
強敵に立ち向かえ
戦いに変化を与えているのが,ワールドの最後に待ち構える巨大なボスの存在だ。ボスとの戦いでは,それぞれに独特の攻略が必要となる。
例えばワールド1ボスの「ラビッツコング」の場合,こちらの攻撃が当たっても,バナナを食べて瞬時に回復してしまう。また,ワールド2ボスの「アイシクルゴーレム」だと,巨大な盾を構えており,あらゆる攻撃を無効にしてしまう。
普通に戦っていたのでは絶対に倒すことができず,ちょっとした謎を解く必要がある。まだプレイしていない読者のために詳細を書くことは避けるが,どのボスもなかなかに手ごわく,メンバーの何人かが倒れるようなギリギリの戦いになるのだが,それだけにクリアできると喜びも大きい。
ボスではないが,とくに頭を使う必要があるのが,スマッシャーという敵との戦いだ。スマッシャーは高い耐久力を持ち,のしのしと歩いてきては,手にした石塊でマリオたちを殴りつけてくる。例えこちらのターン中であっても,攻撃を受けるたびに行動できる能力を持っているのが恐ろしい。
例えば,スマッシャーを取り囲んだ状態から3人で攻撃したとする。普通なら一方的にダメージを与えることができるのだが,スマッシャーは1発攻撃を受けるたびに行動してくるため,全員が次々と殴られることになる。
ここで面白いのが,“スマッシャーの反撃は攻撃してきた者のみがターゲットで,それ以外の仲間を無視する”という性質だ。MMORPGのヘイトに似た概念といえば分かりやすいだろうか。1人が遠くからスマッシャーに攻撃し,充分に引き離したところで残りのメンバーが攻撃するような連携も可能だし,移動範囲を把握していれば3人の間で右往左往させることもできる(スマッシャーの攻撃は敵ラビッツも巻き込むため,どうしても逃げ切れない場合は,あえて敵ラビッツの近くに寄って同士討ちを狙うのも手だ)。
また,スライディングやマリオの踏みつけは反撃の対象にならない。例え近付かれても,3人で次々とスライディングを決めつつ,チームジャンプでスマッシャーの移動範囲外に離れてから攻撃すれば反撃も怖くない。
つまり,作戦次第では手ごわい相手を手玉に取れるわけで,このあたりはシミュレーションっぽい面白さと言えるだろう。
マリオシリーズをリスペクトしつつ,
楽しく遊べる世界を作り出す
遮蔽に関するルールや,「攻撃エリア内に入った相手を自動攻撃する(監視射撃)」アビリティなど,「XCOM」シリーズの系譜にあると感じさせられる本作。とはいえ単なる模倣ではなく,命中率に関するシェイプ,スライディングやチームジャンプといったシステム,趣向を凝らしたボス戦など,オリジナリティの高い作品に仕上がっている。
本作を遊んでいて感じられるのが,マリオシリーズへの強いリスペクトだ。ちなみに,ディレクターのDavide Soliani氏は,マリオシリーズに深く思い入れを抱いているようで,2017年のE3で行われたユービーアイソフトのカンファレンスでは,宮本 茂氏が自作を褒めているのを見て涙ぐんでいたのが印象的だ。
マリオシリーズのキャラクターは世界的に著名であるだけに,ターン制シミュレーションに登場させるにあたって大きな苦労があったことは想像に難くないが,「タフな身体を持ち,踏みつけやハンマーで先陣切って戦うマリオ」「耐久力は低いが,長射程の掃除機型武器で狙撃するルイージ」「チームジャンプの着地点にいる仲間を回復させるなど,連携型のスキルを持ったピーチ姫」というように,原作のイメージがうまく表現されている点は好印象である。
また,バトルの合間には探索ステージもあり,ここではフィールド上を移動しつつ謎を解くという,マリオシリーズ本編のテイストが取り入れられているのもポイントだ(ただし,ジャンプやダッシュと言ったアクション性はない)。
ラビッツ達も単なる脇役に留まるのではなく,元気一杯に自己主張している。中でも,ピーチ姫にライバル心を燃やすラビッツピーチが可愛らしく,このあたりはコラボの面白さが強く感じられた。
“マリオの世界”と“ラビッツの世界”,そして“武器によるバトル”という,一見接点がなさそうな三つの世界がうまく組み合わされており,新たな可能性を感じさせてくれた本作。しっかりとしたチュートリアルや前述したイージーモード,そしてスキルの自動取得など,初心者への配慮もなされているので,シミュレーションを遊んだことのないマリオシリーズファンにもオススメできる作品だ。
「マリオ+ラビッツ キングダムバトル」公式サイト
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MARIO + RABBIDS KINGDOM BATTLE(C)2017-2018 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Rabbids, Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Nintendo properties are licensed to Ubisoft Entertainment by Nintendo. SUPER MARIO characters (C)Nintendo. Trademarks are property of their respective owners.