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「真・女神転生」誕生の経緯について「女神転生」原作者の西谷 史氏が語る。1980年代の徳間書店,任天堂,ナムコ,アトラスを巡った合縁奇縁
それによると,大まかな経緯は「徳間書店が『女神転生』のIP活用に否定的だったため,アトラス(旧法人)が商標を獲得して『真・女神転生』を開発した」というものだ。
ATLUSのexecutiveに会う前に、僕の法的な代理人がこう言った。
— Aya Nishitani 西谷史 (@ayanakajima3) April 29, 2023
「徳間書店は、いつになっても女神転生2を作ろうとしない。だからATLUSは、直接あなたの原作小説からゲームを作りたいと言っていますよ。どうしますか?」 pic.twitter.com/GEACnUqBcj
1980年代の後半,徳間書店はアニメを中心としたメディアミックスに関して大きな力を持っていた。スタジオジブリ発足のきっかけになった(「アニメージュとジブリ展」キャッチコピーより)と言われるアニメ雑誌「アニメージュ」の影響力は言わずもがな。押井 守監督作品のOVA「天使のたまご」や、安彦良和監督(および原作・脚本)作品の劇場用アニメ「アリオン」といった大型アニメ作品も精力的に展開していた。ゲーム業界では,子会社の徳間書店インターメディアから「ファミリーコンピュータMagazine」「テクノポリス」「MSX・FAN」といった雑誌の刊行や,ファミリーコンピュータ用ソフト「エグゼドエグゼス」「ぷよぷよ」「夢幻戦士ヴァリス」などの販売を行っていた。
そういった出版・アニメ・ゲームのメディアミックスを担うコンテンツとして産まれたのが,「デジタル・デビル物語(ストーリー) 女神転生」だ。同作は,1986年に徳間書店のアニメージュ文庫から刊行された小説版を皮切りに,徳間書店のアニメージュビデオレーベルから発売されたOVA(VHS),日本テレネットから発売されたPC(MSX / PC-8801mkIISR / X1 / FM77AV)向けアクションゲーム,ナムコ(当時)から発売されたファミリーコンピュータ向けRPGなどが展開されている。
なお,ファミリーコンピュータ版はNintendo Switch用ソフト「ナムコットコレクション」向けのDLCとしてリリースされている。OVA版はバンダイチャンネルやDMM TVなどで視聴可能だ。
西谷氏いわく,ファミリーコンピュータ版は任天堂が自社ブランドでの発売に難色を示したため,発足間もないアトラスへの仲介を受けたとのこと。販売元がナムコとなった経緯は,鈴木一也(ダミアン鈴木)氏による「当時ナムコ以外の会社からこの作品を発表しようとしたら、間違いなく任天堂のチェックで弾かれていたことだろう。全裸の女悪魔や、宗教的なテーマやシンボル、暴力的な描写など、任天堂規定では認められないものだらけだ。しかし、ナムコは独立したファミコン生産ラインを持つ数少ない企業だったのだ」という言及(「第49回SF大会TOKON10」実行委員会のblogより)や,元・任天堂取締役広報室長の今西紘史氏による「任天堂がカセットを製造して、その品質を保証するというファミコンのライセンシー制度をつくることにしたんです」「完全にできたのは1986年の1月頃だったと思います」(任天堂公式サイト“社長が訊く「スーパーマリオ25周年」”より)という発言を踏まえると,おおよそ必然的な帰結だったのだろう。
日本の読者の方に。
— Aya Nishitani 西谷史 (@ayanakajima3) April 24, 2023
今回、英語バージョンで初めて書いたのは、こんなことです。
「女神転生」の長編を書き上げたとき、大学の先輩に、任天堂のファミコンを開発された方を紹介していただき、ゲーム化を検討していただいたこと。 pic.twitter.com/SjhwM2UL3N
「デジタル・デビル物語 女神転生」は一定の成功を収めたと思われるが,西谷氏のTweetにもあるように,徳間書店はそれ以上のIP活用を行わなかった。そこで自社販売も可能なほど力を蓄えたアトラスは,「デジタル・デビル物語 女神転生」を継承する新作として,独自に「真・女神転生」を開発しようと考えたわけだ。ちなみに,最初期のアトラスはアーケードゲームの販売や,家庭用ゲームの受託開発(ジャレコから1987年に発売の「バイオ戦士DAN」など)を主要事業としていた。
1980年代終盤に一大ブームとなったRPGが,スーパーファミコン(1990年発売)という新時代のハードで大きく発展することは,多くの人が確信していたはずだ。スーパーファミコン用ソフト「真・女神転生」が発売されたのは1992年だが,同年のスーパーファミコン用RPGは「ロマンシング サ・ガ」「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」「ファイナルファンタジーV」「ウルティマVI 〜偽りの予言者〜」など,アイコニックなタイトルが名を連ねている。同年の特撮作品「恐竜戦隊ジュウレンジャー」がRPGをモチーフの1つにしていることからも,当時におけるRPGの影響力が感じられる。
かくして「真・女神転生」として女神転生を転生させたアトラスは,その後セガサターンで「デビルサマナー」シリーズ,PlayStationで「ペルソナ」シリーズを展開するなど,シリーズの幅を広げていく。
今日(こんにち)の「真・女神転生」シリーズおよび派生作品に最初期の面影はほとんど残っていないが,過去作品を振り返ってみると,その分だけ新鮮な気持ちで楽しめるのではないだろうか。なお,現在のアトラスはセガ傘下であり,セガから「D×2 真・女神転生 リベレーション」(iOS / Android)がリリースされていたりするわけだが,任天堂やナムコが影響して生まれた“RPGの女神転生”の系譜が今ではセガから出ているというのも,歴史の妙味が感じられて少し面白い。
アトラスは「真・女神転生」の30周年を記念した大型イベント「真・女神転生 30周年感謝祭 in KT Zepp Yokohama」を,2023年5月5,6日に開催する。コンゴトモ,シリーズが末永く続いていくことに期待したい。
また,西谷氏は初期のアトラスにおける制作の様子について,明日から語っていくという。
今日は、ゲーム界の昔話をさせてもらう。
— Aya Nishitani 西谷史 (@ayanakajima3) May 1, 2023
MT、SMTのゲームは、上田さんが原型を作り、鈴木一也さんと岡田さんが発展させた。
それは事実だが、三人の感性はかなり異なる。もし、それを束ねる人がいなかったら、ゲームの世界観があのように統一されたものになったかどうかは、わからない。 pic.twitter.com/gHu3UQmLm8
- 関連タイトル:
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