テストレポート
写真で見る「GPD WIN Max 2」。小型ノートPCとしての完成度は高いがニッチなポジションは変わらず
今回は,写真を中心にGPD WIN Max 2の見どころを紹介したい。
小型ノートPCとして着実に進化
まずは外観からチェックしよう。GPD WIN Max 2は,小型のクラムシェル型ノートPCで,一見するとゲーマー向けPCには見えない。同じGPDが開発する「GPD WIN 3」や「GPD WIN 4」が携帯ゲーム機風のデザインを採用して,既存のPCにない立ち位置を確立する一方で,GPD WIN Max 2は,一般的なノートPCの延長線上にある印象だ。
本体サイズは,実測で約226(W)×160(D)×23.5(H)mm。A5サイズの書籍よりもひと周り大きいサイズ感といえば想像しやすいだろうか。小型PCというにはちょっと大きすぎやしないかとも感じる。
いまどきのノートPCとしては少し厚みのある部類だが,これはフットプリントが小さい分,大型の冷却機構や内部パーツ,内蔵バッテリーを納めるスペースを設けるためであろう。
重量は実測で約1041gだった。携帯型ゲームPCはもちろん,一般的なノートPCでも1kg以下の製品が珍しくないことを踏まえると,GPD WIN Max 2は重いほうか。
実際に両手で持つと,見た目から想像する重さよりもずっしりとしている。デスクや膝のうえに肘を固定できる状況であっても,長時間持って使うのは厳しい。基本的には,ノートPCらしく机に置いて,キーボードで操作するのがメインになるのではないか。
ディスプレイは,約10.1インチサイズで,解像度2560×1600ドット,アスペクト比16:10の液晶パネルを採用する。なお,標準設定では,表示の見やすさを重視したのか,解像度が1920×1200ドットとなっていた。
GPD WIN Max 2の液晶パネルには,解像度やアスペクト比以外にも興味深いポイントがある。小型PCの中には,縦長の液晶パネルを用いたうえで,ソフトウェア側で表示を回転させて横長のディスプレイとして使っているものがある。この場合,解像度を調整できない古いゲームをプレイしたり,排他的フルスクリーンを利用したりすると表示が崩れることがあるのだ。ウィンドウモードや,仮想フルスクリーンを使えば問題は起きにくいが,対応していないゲームもある。その点,GPD WIN Max 2は横長のパネルを採用しているので,こうした心配は必要ないというわけだ。
ちなみにGPDは,GPD WIN 4においても横長パネルの採用を強調しており,競合製品に対する差別化要因としているようだ。もしかすると,ほかのメーカーでも,次世代製品で横長パネルの採用例が増えるかもしれない。
Tips:
— GPD Game Consoles (@softwincn) December 9, 2022
Win4 still use landscape screen. pic.twitter.com/1pmGIAW4Rf
GPD WIN Max 2のインタフェース類は,背面を中心にまとめられている。背面は,左から4極3.5mmミニピンヘッドセット端子,USB 3.2 Gen 1 Type-A,HDMI 2.1出力,USB4,USB 3.2 Gen 2 Type-Cが並ぶ。
左右の側面はシンプルで,左側面にmicroSDカードスロットとフルサイズのSDカードスロットを搭載する。いずれのスロットも逐次読み出し性能が比較的高速なのが特徴で,microSDカードスロットは最大160MB/s,SDカードスロットは最大312MB/sだ。
一方,右側面は,USB 3.2 Gen 1 Type-A×2を備える。最近は,USB Type-C対応の周辺機器が増えており,筆者が普段使うデバイスも,ほぼUSB Type-AからUSB Type-Cと切り替わった。とはいえ,まだまだUSB Type-A対応製品のほうが身の回りにありふれているもの。たとえば,数GBクラスのファイルを急いで移動させたい場合といった,いざというときにUSB Type-Aポートを利用できると安心できる。
なお,GPD WIN Max 2のUSB Type-Aポートは,一般的なノートPCとコネクタの向きが上下が逆になっているのが使いにくい。設計上の理由など事情があるのかもしれないが,次世代製品では修正してほしいところだ。
本体手前側にある側面にある電源ボタンは,指紋センサーを内蔵しているのが見どころで,Windows Helloによる生体認証が利用できる。
背面には別売りのLTE通信モジュールや,SSDの増設スペースを用意しており,ユーザー自身の手でアップグレードが可能であるのもポイントだ。今回の試用機は,あらかじめLTE通信モジュールを内蔵していた。ちなみに対応するLTEバンドは,1
ゲームパッドのカバー追加でよりノートPCらしく
GPD WIN Max 2のキーボード奥側左右には,ゲームパッドが組み込まれている。左側に左アナログスティックとD-Pad,右側に右アナログスティックと[A/B/X/Y]ボタンというレイアウトだ。GPDによると,アナログスティックのセンサーをホールセンサー式に変更することにより,スティックを操作していなくても入力された状態になるドリフト現象を軽減したそうだ。
中央にあるタッチパッドの左側にはアナログスティックでマウスカーソルを操作できるようにするマウス入力モードへの切り替えスイッチを,右側には[START][SELECT][MENU]ボタンという3つのボタンが並んでいる。
本体の背面には[L1/R1]のショルダーボタン,[L2/R2]のトリガーボタンを備えており,このうちトリガーボタンはアナログ入力に対応するという。
底面には,ボタンや機能の割り当てに対応した拡張ボタン 「バックキー」を備える。GPD独自の設定ソフトウェア「WinControls」を使えば,バックキーに限らず,ゲームパッドの各ボタンに対しての機能割当が可能だ。
実際にゲームパッドを使ってみた感触だが,D-Padと[A/B/X/Y]ボタンが小さく,ボタンのストロークも浅めである。筆者は手が大きめなので,利用頻度が少ないD-Padはともかく,[A/B/X/Y]ボタンのサイズはもう少し大きいほうがいいというのが正直な感想だ。ただ,ゲームがプレイしにくいわけではなく,ただ単純に慣れの問題かもしれない。
また,GPD WIN Max 2のゲームパッドにおける大きな変更点として,ゲームパッド部分に被せるカバーが追加されたことも見逃せない。ほこりなどの侵入を防ぐのに加えて,ゲームパッドを見えなくすることで,見た目は完全に小型クラムシェルノートPCとなる。ゲームだけでなく,仕事でも使いやすいというのがGPDの主張だ。
打ちやすく改善したキーボード
GPD WIN Max 2の改善点として,キーボードも挙げられよう。既存製品では,ファンクションキーと数字キーが一体化していたり,記号キーの位置が変則的だったりと,慣れるまで時間がかかるものだった。しかし,GPD WIN Max 2では,筐体が大型化したことで,キー配列が自然になっており,格段に打ちやすくなった。
なお,主要なキーのキーピッチは,実測で約16mmと窮屈な感じもない。ゲームパッドのボタン類と同じく,キーストロークは浅めだ。
Ryzen 7 6800U搭載で小型ゲームPCとしての性能が1段階上がった
さて,ここからはGPD WIN Max 2の性能をベンチマークで簡単に確かめてみよう。GPD WIN Max 2の搭載SoC(System-on-a-Chip)は,2022年登場の小型ゲームPCでおなじみのAMD製ノートPC向けAPU「Ryzen 7 6800U」だ。
Ryzen 7 6800Uは,「Zen 3+」世代の8コア16スレッド対応CPUと,RDNA 2ベースの統合型GPU「Radeon 680M」を組み合わせたもので,ゲームでも高い性能を発揮するという。試用機のスペックをまとめたのが以下の表となる。
CPU | Ryzen |
---|---|
メインメモリ | LPDDR5 32GB |
グラフィックス | Radeon 680M(統合GPU) |
ストレージ | 容量2TB(M.2/PCIe接続)×1 |
液晶パネル | 10.1インチ液晶, |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth | 5.2 |
有線LAN | 非搭載 |
外部 |
USB4×1 |
キーボード | 英語配列 |
スピーカー | 内蔵2chステレオ |
インカメラ | 約200万画素 |
バッテリー容量 | 67Wh |
ACアダプター | 定格出力100W(20V 5A) |
公称本体サイズ | 約227(W)×160(D) |
公称本体重量 | 約1005kg |
OS | 64bit版Windows 11 Home |
MotionAssistantやPower Control Panelは,GPD公式Webサイト(関連リンク)からダウンロードできる公式ツールだ。最近の小型ゲームPCでは,メーカー独自の設定用ソフトウェアを搭載するケースが多いのだが,GPDの場合は,外部のソフトウェア開発者と協力しつつ,さまざまな機能を提供する方針のようだ。
今回は,MotionAssistantを用いて,標準設定のTDP 18Wと最大設定であるTDP 28Wを切り替えて検証を行った。
まずは,グラフィックスベンチマークの定番である「3DMark」から,DirectX 11テスト「Fire Strike」と,統合GPU向けのDirectX 12テスト「Night Raid」,Vulkanベースのクロスプラットフォームテスト「Wild Life」で測定を行った。グラフ1は,総合スコアの結果をまとめたものだ。
Fire Strikeにおける,TDP 18WとTDP 28Wの差は約17%,Night Raidでは約19%,Wild Lifeでは約18%と大きく開いており,TDPの変更による性能への影響がはっきりと現れた。
続いては,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズベンチ)の結果だ。グラフィックス設定のプリセットで「最高品質」および「標準品質(ノートPC)」を選択し,フルスクリーンモードで実行している。結果をまとめたのがグラフ2だ。
TDP 18WとTDP 28Wの両方で,スクウェア・エニックスが「快適」の基準とする「8000」を超えた。4Gamerベンチマークレギュレーションでも,8000以上をひとまずの合格点と位置付けており,画質設定を落とせば,1920×1200ドットという解像度でも問題なくゲームをプレイできることが分かる。
また,ここでも,3DMarkほどではないが,標準品質(ノートPC)で約7%,最高品質で約12%と,TDP 28WのスコアがTDP 18Wを上回った。ゲーム用途では,TDPの調整は必須と言えよう。
ただ,設定ソフトウェアのMotionAssistantの言語設定が中国語だったり,英語への変更もひと手間かかったりと,使いにくい面がある。本稿執筆時点では,日本語化の予定もないそうで,試すまでのハードルが高いのがネックだ。
小型ノートPCとして高い完成度を実現
おそらく,GPDもそれは織り込み済みのはずだ。GPD WIN Max 2は,ゲーマー向けというより,「仕事にも活用できる高性能なノートPC」という立ち位置にシフトチェンジして,よりゲームを手軽に楽しみたい人に対しては,GPD WIN 4で対応する形になるのではないか。ゲームパッドに被せるカバーを見ながらそう感じた。
筆者としては,GPD WIN Max 2に対して,2つの懸念を持っている。1つは重量だ。持ち運びやすいノートPCのファンは多いが,どちらかというと「薄く軽く」を求める傾向にある。小さいPCを使いたい人が,1kgを超える重量を許容できるかどうかは分からない。
もう1つは価格だ。GPD WIN Max 2の価格は,最も安価なモデルで税込16万3400円となっている。仕事でも使えそうとはいえ,メインPCとして利用するのは難しいPCにその価値を見いだせるかと言えば,こちらも難しいところがある。
GPD WIN Max 2そのものは,よくできた製品ではあるものの,ゲーマーにフィットする製品とは言いがたいというのが筆者の結論だ。
天空のGPD WIN Max2製品情報ページ
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