インタビュー
サムスピコラボ開幕! “ニンジャ”を世界に向けて発信する「ブレイドスマッシュ」開発者インタビュー
本作の開発作業には,今から25年前に初代サムスピを手がけたスタッフも関わっており,彼らにとっては色々と思うところがあったようだ。今回は大阪にある開発会社のエンジンズを訪問し,ブレイドスマッシュの開発エピソードやサムスピの昔話,そして日本発祥の“ニンジャ”を世界に向けて発信するという意気込みを中心に,たっぷりと話を聞いてきた。
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ベテラン開発者が本格アクションをスマホで実現
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
皆さんはゲーム開発者として長いキャリアをお持ちですので,業界に入られてからの主な経歴と,今回のブレイドスマッシュでどういった作業を担当されているのかをお聞かせください。
ムゲンコンボ 手塚 武プロデューサー(以下,手塚氏):
現在は独立し,開発会社のムゲンコンボで活動しています。今回のブレイドスマッシュでは開発プロデューサーとして,gumiさんと一緒にメインコンセプトを考え,エンジンズさんと共同で開発作業を行っています。
エンジンズ 福井智章ディレクター(以下,福井氏):
4Gamer:
今回のインタビューのメインテーマにも関わってくるので,あとでじっくり聞かせてください。
福井氏:
分かりました。サムスピ関連を手がけたあとは,カプコングループのフラグシップで働き,そのあとにエンジンズに移り,今に至っています。
エンジンズ 足立 靖プロデューサー(以下,足立氏):
23歳くらいの頃,ディレクター職としてサムライスピリッツの原案を考え,サムスピシリーズを何作か手がけたあと,SNKを離れました。
その後,岡本吉起さんに声をかけていただいて,カプコングループのフラグシップで働き,ここで福井とも合流しました。そしてフラグシップから独立してエンジンズを立ち上げ,僕らのチームのルーツであるアクションゲームを作りたいと考えていたところ,ムゲンコンボの手塚さんから相談を受け,ブレイドスマッシュを開発することになりました。
4Gamer:
手塚さんは,どういった経緯でブレイドスマッシュを企画されたのですか。
手塚氏:
現在のスマートフォンのスペックは十分に高く,もはやこのデバイスで本格的なゲームを遊ぶことが当たり前になっています。ただ,アクションゲームに限っていえば,長らく対戦格闘ゲームなどを手がけてきた自分としては,あの醍醐味をスマホにそのまま持ってくるのは難しいと考えていました。
4Gamer:
スマホ向けのアクションゲームでライトからコアまでまんべんなくカバーするのは大変そうですが,実際に作業されてみていかがでしたか。
福井氏:
想像していた以上に難しく,また最初は戸惑いました。言うまでもないですが,スマホのタッチ操作では,レバーやボタンのアナログな感覚が得られません。決まったレイアウトのバーチャルパッドを廃止し,どの場所からでもタッチ・スワイプで操作できるようにするなど,開発中は試行錯誤の連続でしたね。
4Gamer:
皆さんは長年アクションゲーム作りに関わってきたので,そういったプレイフィールに対して人一倍シビアだったのではと思います。
福井氏:
プレイヤーが操作したいと思ったとき,その意思が画面内のキャラクターにダイレクトに反映されることは,アクションゲームにおける快感の源なんです。しかしタッチ操作だと,プレイヤーキャラを横に走らせようとしても,入力判定が斜めに行われてジャンプしてしまうこともあります。こういうのはストレスになってしまいますよね。
また,同じスマホでも画面サイズはデバイスによってまちまちなんです。「これくらいの距離を指でスワイプさせたらダッシュしてほしい」と考えていても,人によって実際にスワイプさせる距離は変わるわけです。
手塚氏:
格闘ゲームの必殺技コマンドも同じなんですが,ライト向けを意識して出しやすくすると,暴発しやすくなってしまうんです。ブレイドスマッシュの開発中は,そこの線引きが難しかったですね。自分たちも開発作業を続けていると,どうしてもコア寄りの目線になってしまうので,初めて遊ぶ人のことを常に忘れないように気をつけました。
4Gamer:
実際にブレイドスマッシュを遊ぶと,そういったライト向けの配慮が随所で感じられる一方,コアな要素も見受けられます。
福井氏:
やっぱり,アクションにはこだわりたかったですからね。
とくに,2か所を同時にタッチ・スワイプすることで行えるガードや瞬歩は,プレイヤーにとって大きな腕の見せどころになります。マニアックなところでは着地時などのモーションを忍術(アクティブスキル)でキャンセルすることもできるんですよ。ただし,これらの操作が必須のゲームバランスにはしていません。
4Gamer:
本作は最初,「ニンジャカスピリッツ」というタイトル名で発表されましたが,クローズドβテストの終了後,ブレイドスマッシュにリニューアルしています。この経緯について教えてください。
手塚氏:
ブレイドスマッシュでは,あらゆるキャラがニンジャになった世界を作りたいと考えています。そのため当初はタイトル名にも入れていたのですが,クローズドβテスト実施後のフィードバックを経て,gumiさんから「このキーワードでアプローチできる層は意外と狭いのでは?」という指摘を受けたんです。
海外の人が忍者と聞くと,「NARUTO」や「TMNT」など確固たるイメージを思い浮かべるでしょう。しかしながら我々日本人にとっては,「忍者ハットリくん」「カムイの剣」といった昔の作品も多く,それらは若い世代にはそれほど浸透していないわけです。
4Gamer:
忍者を扱う近年の作品も存在しますが,メジャーなものはごく一部ですもんね。
手塚氏:
分かりやすい例を挙げると,「ニンジャ映画」と「アクション映画」の2つを見比べると,後者のほうがより広い層にアピールできますよね。このゲームでは幅広い人たちにアピールする必要があったので,その点を踏まえてタイトル名などを変更した次第です。
足立氏:
自分たちはこのゲームに,「日本人の宝物である“ニンジャ”で思い切りチャレンジしたい」という想いを込めています。タイトル名の変更は苦渋の決断でしたが,ひとつの選択としてこれで良かったと思っています。
ライト層とコア層の両方が満足できるゲームバランスを
4Gamer:
ブレイドスマッシュは2018年9月末に正式サービスが始まっていますが,現在の手応えはいかがですか。
福井氏:
4Gamer:
ライト層だけじゃなくてコア層にも同時にアピールするのは大変そうですが,そのあたりはいかがですか。
手塚氏:
コアなファンからは,もっとアクション性を高くしてほしいという要望を受けており,両立する難しさを感じていますね。
ですが,そういったコアな人の意見を聞いて,たとえばキャラの移動スピードを上昇させてしまうと,ライト層がついて来られなくなるでしょう。ふわっとした動きのジャンプも同様で,これがスピーディーになると,すぐに場外に吹き飛ばされてしまうんです。
福井氏:
自分たちも,一人のプレイヤーとしてそういった声はよく理解できます。ただ,ライト層からコア層まで遊べるというコンセプトは今後も変わらないので,その点はご了承いただければと思います。もちろん,コアな人「にも」満足してもらうためのアプローチは今後も模索していきます。
自分は積極的にプレイヤーさんの配信を見に行ったり,Twitterを通じての交流を行ったりしているので,ぜひ皆さんからのご意見も聞かせてほしいですね。
大自然のおしおきです!
サムスピコラボで元開発者によるナコルルが登場
4Gamer:
すでに予告されているとおり,ブレイドスマッシュではサムスピとのコラボイベントが10月31日に開幕します(※インタビューはコラボ前に実施)。サムスピは足立さんや福井さんにとって深い縁のあるIPですが,今回のコラボはどういった経緯で実現されたのでしょうか。
手塚氏:
自分はgumiさんにエンジンズさんを紹介するとき,「サムスピを手がけた人の開発会社ですので!」と太鼓判を押していました。そういったこともあり,gumiさんのほうから「サムスピとコラボしてみませんか?」と持ちかけられたのが最初のきっかけですね。
4Gamer:
では,今回のコラボの具体的な内容を教えてください。
福井氏:
目玉となるのは,サムスピ関連のキャラクターが2体登場することです。1体目はナコルルです。
4Gamer:
言わずと知れた人気キャラですが,ブレイドスマッシュではどのように仕上がっていますか。
福井氏:
ナコルルの可愛いらしさを残しつつ,ブレイドスマッシュ風に等身を小さくアレンジしています。もちろん,「カムイ サンテク」「イルスカ ヤトロ リムセ」などにちなんだ忍法も使えますよ。
ナコルルの登場ステージにもこだわっており,初代サムスピの背景デザイン画をもとに,新たに作りました。自分は初代サムスピで背景グラフィックスのチーフを務めていて,ナコルルステージも直接デザインしていたんです。また,エンジンズには当時にナコルルステージを担当したデザイナーも所属しており,今回も同様に作業してもらっています。
4Gamer:
当時の開発者によって,このナコルルが生み出されたわけですね。
足立氏:
ナコルルの開発現場は同窓会のような雰囲気でした。細かい部分を打ち合わせるまでもなく,今回新録しているアレンジ版のBGMを聞いたときなども,「やっぱこれだよね!」って懐かしく作業できましたよ。
4Gamer:
ブレイドスマッシュの登場キャラクターは全員がニンジャという設定ですが,今回のコラボで登場するのは,いつもと変わらないナコルルなんですね。
福井氏:
そこは悩んだ部分です。
実は最初は,「もしナコルルがニンジャだったら」という設定で鎖帷子を着せたり,くノ一の姿になったりしたデザインを考えていました。しかし,皆さんにとってのイメージが崩れかねないので,コラボ先のSNKさんにも配慮して,オーソドックスな姿で仕上げました。
4Gamer:
“紫ナコ”とは違った趣がありそうで気になりますが,確かにそうかもしません。
そういえば,ナコルルと一緒にママハハ(ペットの鷹)も登場していますが,これにつかまることはできるんですか?
手塚氏:
空を飛べるとKOできなくなるので,それは諦めました(笑)
コラボ企画でありながらオリジナルのキャラを実現
4Gamer:
それでは,もう1体のコラボキャラのご紹介をお願いします。
福井氏:
もう1体なんですが,実はコラボと言いつつオリジナルのキャラです。
名前は御剣こさや。彼女は覇王丸と牙神幻十郎の死闘を目の当たりにし,自分もサムライになりたいという憧れを持って成長しました。そして諸国を放浪して,“タイ捨流”という剣術を身につけ,彼らと刃を交わせるだけの強さを得ようとしています。
彼女の技は2人の必殺技がモチーフになっており,「弧月斬」「桜華斬」「天覇封神斬」「五光斬」などのモーションを取り入れています。
4Gamer:
衣装も白黒のダンダラ模様で,覇王丸っぽさがありますね。
福井氏:
ええ。あと,彼女が差している2本の刀は“名刀・河豚毒”と“名刀・梅鶯毒”(覇王丸と牙神幻十郎の愛刀)をそれぞれ模したものとなっています。彼女の祖父は高名な刀匠で,孫のためにこれらの刀を打ったという設定があるんです。
4Gamer:
サムスピに縁があるキャラというのはよく分かりましたが,オリジナルという部分が意外ですね。
足立氏:
もちろん,今回のコラボでサムスピから登場させたいキャラはたくさんいました。ですが,かつて心血を注いで作り上げたサムライスピリッツとのコラボを実施するにあたり,自分たちだからこそ実現できる内容にしたかったんです。
4Gamer:
なるほど。
足立氏:
僕らの勝手な想いですが,今回のコラボで誕生した御剣こさやを,SNKさんと一緒に育てていけたらいいな! という夢を持っています。
4Gamer:
コラボの形態としては珍しいですが,実現できたらとてもすてきだと思います。
足立氏:
普通は社外の人間がオリジナルキャラを作ることに対し,OKをいただけないと思います。gumiさんにとっても,覇王丸などの知名度のあるキャラを持ってきたほうが,SNKさんのファンにアピールできると考えるのが自然でしょうし。
SNKさんとgumiさんの温かい理解のもと,企画が通ったことは本当に嬉しかったです。自分たちとしても,力を込めて開発できました。
4Gamer:
実際に御剣こさやを手がけられた感想はいかがでしたか。
足立氏:
自分も含めみんなノリノリでしたね。当時と同じスタッフたちがわいわい言いながら開発しているのを見て,思わず初代サムスピの開発当時を思い出しました。
4Gamer:
当時と今とで,キャラ作りにおけるアプローチの違いなどは実感されましたか。
足立氏:
当時と比べると視野が広くなり,また各方面への配慮も行えるようになりました。25年前にサムライスピリッツを開発した当時の自分たちであれば,もっと過激なキャラ設定になっていたでしょうね(笑)。
コラボに採用したいキャラは他にもたくさん
4Gamer:
サムスピシリーズには魅力的なキャラがたくさんいますが,今回のコラボで選ぶとき,ほかにはどういった候補が挙がりましたか。
福井氏:
4Gamer:
強烈なキャラでしたよね。とくにあのボイスは死ぬまで忘れられそうにないです。
足立氏:
当時のゲーム開発では,声優さんを起用することがほとんどなかったんです。真サムの頃のSNKは,舞台役者さんを起用することが多くて,牙神幻十郎のボイスはコング桑田さんにお願いしました。「とにかく思い切り演技してください」とオーダーしたところ,スタジオの床を転がって,服をかきむしりながら演じていただいて,あのような迫力とリアリティのある声になりました(笑)。
福井氏:
そういえば,僕が入社した頃のSNKは,社員がボイスを担当するのも珍しくありませんでしたよ(笑)。
4Gamer:
サムスピのボイスは本当に良い味が出てましたよね。ズィーガーの「ヴァー!」とか。そのほかに,今回のコラボで実装したかったキャラはいますか。
手塚氏:
僕はガルフォードが良かったですね。もともと忍者ということでブレイドスマッシュのコンセプトにピッタリなのと,もう1人のニンジャである服部半蔵は,あまりにも有名なので(笑)。
そういえばカプコンにいた頃,サムスピを見て一番びっくりしたのが,ガルフォードの犬(パピィ)とナコルルの鷹(ママハハ)でした。「動物をこうやって使うのか!」と衝撃を受けましたよ。
足立氏:
パピィやママハハのシステムは,某シューティングゲームの“オプション”からインスパイアを受けて作ったんですよ。
福井氏:
正直言って,思い入れのあるキャラが多すぎて……。僕らだけで決められることではないのですが,サムスピのコラボは,できれば今後も第2弾,第3弾と続けたいですね。
4Gamer:
少し話が変わるのですが,ブレイドスマッシュではサービス開始時から我王丸と斬奇郎が登場しています。彼らは見るからに覇王丸や千両狂死郎の影響を受けていますが。
福井氏:
それはご想像にお任せしますが,我王丸や斬奇郎のキャラデザインを担当したのは,当時のサムスピと同じく北 千里さんにお願いしています。
日本発祥の“ニンジャ”を世界に向けて発信
4Gamer:
手塚氏:
自分にとってサムスピは,自社(カプコン)以外のゲームで初めて衝撃を受けたゲームでした。
当時は「X-MEN」を作っていたのですが,開発主任の西谷さん(※西谷 亮氏)と一緒に「サムスピの凄さを研究するぞ!」とビデオに録画して,スロー再生しながらモーションを研究していたのをよく覚えています。なんで“大斬り”があんなに気持ち良いのか,徹底的に分析しましたね。
4Gamer:
サムスピだけじゃなく,手塚さんがカプコン在籍時に手がけられた作品とのコラボ展開も見てみたいです。
手塚氏:
全然ありえる話だと思いますよ。たとえば自分がX-MENを手がけていた頃の,版権管理の担当者とのつながりもあるので,機会があればぜひ実現したいですね。
4Gamer:
手塚氏:
安田さんとは「X-MEN」「パワーストーン」で一緒にゲームを作っていて,自分にとっては大先輩なんですけど仲良くさせていただいてます。自分からお願いしたところ快諾していただき,素敵なニンジャを手がけてくれました。
4Gamer:
今後,このブレイドスマッシュをどういったゲームに育てていきたいとお考えですか。
手塚氏:
これは開発チームにとっての裏テーマなのですが,ブレイドスマッシュを広めて,世間のニンジャに対するイメージを変えたいという野望があるんですよ。たとえばアメリカだと,漫画や映画だけでなく,凄腕プログラマーとかスケボーが上手い人とか,いわゆる“超人”の総称としてニンジャという単語が定着しています。しかしながら近年の日本においては,先のタイトル名のリニューアルでも触れたとおり,ニンジャがいまひとつ定着していません。
ですので,ゆくゆくはアニメとか漫画とかのカルチャーで活躍するたくさんの人にブレイドスマッシュに参加してもらって,日本におけるニンジャを代表するコンテンツとして海外に打って出たいですね。
4Gamer:
本日はお忙しいなかのご対応,ありがとうございました。
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