プレイレポート
「世界樹の迷宮X」プレイレポート。過去のシステムや探索要素が“クロス”し,新たな作品として再構築された“世界樹”の集大成
「世界樹の迷宮」は,2007年1月に第1作「世界樹の迷宮」がニンテンドーDS向けに発売されて以降,ポップな外観からは想像もつかない硬派な作風から人気を集め続けるRPGシリーズだ。2012年7月発売の「世界樹の迷宮IV 伝承の巨神」からはニンテンドー3DSへ移行し,ナンバリングタイトルのほかにも多くの派生作品を生み出し続けている。
そんな「世界樹の迷宮」も,本作でついに“3DS最後の世界樹”になる。そしてタイトルにもあるとおり,これまで発売されたシリーズ作品のすべてが“クロス”することにも注目だ。
地下深くに雲の上,海底から空の果てといった多くの手強い迷宮が登場し,作品ごとにさまざまなキャラメイクや育成,スキルのシステムが生まれた「世界樹の迷宮」。その集大成となる本作は一体どのような作品となっているのか。発売に先立ってプレイできたので,シリーズ第1作からの熱心なプレイヤーである筆者が,過去作品との関連性や変化した面にも触れつつ紹介していこう。
「世界樹の迷宮X」公式サイト
冒険の舞台は謎深き島「レムリア」
19の職業からパーティを結成して迷宮に挑もう
冒険の舞台となるのは,中央に巨大な世界樹がそびえ立つ謎深き島「レムリア」だ。この孤島にはかつて文明が存在し,今でも“伝説の秘宝”が眠っているという。航路も存在しないレムリアに足を踏み入れるため,世界中の冒険者が「飛行都市マギニア」へと集った。
ある者は富と名誉のため,またある者は湧き上がる探究心を満たすため――それぞれの思いを持ち伝説の地に降り立った冒険者達は,迷宮へとその一歩を踏み出す。
この区分けは少々特殊で,PICNICからEXPERTまでは段階的に難しくなっていくが,EXPERTとHEROICはそのゲーム内容がほとんど変わらない。では,何が違うのかというと,ほかの難度はゲーム開始後も変更できるが,HEROICを選べるのはゲーム開始時のみで,一度選択するとほかの難度に変更できないのだ。
変更できない高難度で迷宮に挑み,その奥地に辿り着いてこそ“ヒーロー”である……ということだろうか。この,挑戦的なものすら感じるHEROICは,これまで歯ごたえある硬派なダンジョンRPGシリーズとして制作されてきた「世界樹の迷宮」らしい。なお筆者は,喜び勇んでHEROICを選択した。
「世界樹の迷宮」シリーズ作品でやるべき事といえば,キャラクターメイクとギルドメンバーの登録だ。パーティは最大5人編成となるので,最低でもフルメンバーとなる5人はゲーム開始時に制作しよう。
冒険者ギルドを束ねるのは,軍人のギュンター・ミュラー。冒険者達を統括する役人であると同時に,樹海での生き延び方を教える良きアドバイザーでもある |
立ち絵は職業ごとに男女2種類ずつの計4種類と,それぞれのアナザーカラーが用意されている。DLCとして配信されるキャライラストにも変更可能だ |
マギニアには,エトリア,ハイ・ラガード,アーモロード,タルシスの各都市から冒険者が集結し,過去シリーズのさまざまな職業が参戦している。つまり,過去シリーズのプレイヤーにとっては夢の組み合わせとなる,作品の枠を越えたキャラクター達でのパーティ編成を実現できるのだ。
夢のパーティ編成が可能とはいえ,バランスが悪くなっては元も子もない。“ロマンと実用性”のバランスをうまく調整しながら,自分好みのパーティを作り上げなければならないのだ。
ここからは全職業の特徴やオススメのポイント,筆者が実際使ってみて感じたオリジナル版との違いなどを紹介していくので,パーティ編成の参考にしてほしい。
●世界樹の迷宮
記念すべきシリーズ第1作からは,前衛と後衛の各役割における代表的な職業が登場。編成に悩んだら,まずはこの中から何人かを選んで得意とする役割を任せればまず間違いないだろう。なお,イラストはすべて「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」に使用されたバージョンとなっている。
レンジャー | ブシドー |
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弓を使った後列からの攻撃力と,探索に役立つスキルを併せ持つ後衛職。攻撃力は前衛に一歩劣るが,命中率を低下させるデバフを与えたり,味方の行動順を操作するスキルなどでパーティを支援する |
前衛での攻撃に特化した職業。構え状態からくり出される高い攻撃力や,さまざまな効果を発揮する物理攻撃スキルが特徴だ。ただし,HPやVITは低いので要注意。ほかの職業で守ってあげよう |
●世界樹の迷宮II 諸王の聖杯
後衛における物理攻撃特化職のガンナーや,あらゆるシーンで活躍できるドクトルマグスが登場。さらに,「新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女」の主人公として登場し,「新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士」のDLCとして配信されたハイランダーも「世界樹II」の枠で参戦している。ガンナーとパーティを組めば,ちょっとした「新・世界樹」のストーリー再現も可能だ。
●世界樹の迷宮III 星海の来訪者
全職業を一新した「III」からは,プリンス/プリンセス,シノビ,ゾディアック,ファーマー,ショーグンという,最多の5職業が参戦。他シリーズ作品との関わりがこれまで少なかった職業が多いため,それに合わせたスキルの調整点も多い印象だ。
なお,プリンス/プリンセスの職業名は立ち絵にかかわらず自由に選べる。ボイスのカスタマイズも活用すれば,“男装の麗人として戦うプリンセス”や“国の事情もしくは自身の嗜好(?)で女性の姿で冒険するプリンス”のような脳内設定も楽しめる。
プリンス/プリンセス | シノビ |
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味方全体に効果のある強化スキルを多数所持し,後衛からパーティメンバーを鼓舞するようにそのスキルを発動する。味方の武器に属性を付与するアームズ系スキルを使えば,味方全員で敵の弱点が狙える |
高いAGLと状態異常スキルを駆使して,敵を封殺するテクニカルな職業。前衛,後衛のどちらでも活躍できるが,HPやDEFが低いので前衛で使う場合は生存率を高める工夫が必要だ |
●世界樹の迷宮IV 伝承の巨神
空飛ぶ船と関係が深い作品で,本作の飛行都市マギニアとの関わりも気になる「世界樹IV」からは,ソードマンとナイトシーカー,そして隠し職業だったミスティックとインペリアルが参戦している。ソードマンは比較的シンプルな職業だが,そのほかの3種はそれぞれ個性的だ。
ソードマン | ナイトシーカー |
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STRとVITのバランスが良い前衛職。敵1体に3属性を伴う武器攻撃を行い,同じ敵に味方が攻撃した際に追撃が発生するリンク系スキルや,複数の敵を同時に攻撃する物理攻撃スキルが持ち味 |
状態異常攻撃を得意とし,シノビに比べると攻撃寄りの職業。サブウェポンが装備できるスキルを覚えれば2回攻撃が可能に。不安な防御面は,攻撃を1度だけ無効化する「ハイドクローク」などでカバーしよう |
ミスティック | インペリアル |
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「方陣」という,複数ターンにわたって効果を発揮するスキルを使う後衛支援職。状態異常を与えつつ回復も行える器用さを持つが,スキルの使用にはターンをまたぐものが多く,計画性が必要になる |
専用武器「砲剣」を用いる前衛職。凄まじい威力を誇るドライブ系スキルを習得できるが,使用後は砲剣がオーバーヒート状態となる。スキルの消費TPも多いので,短期決戦を心がけて使おう |
●世界樹の迷宮V 長き神話の果て
「世界樹V」からは,アースラン(「世界樹V」の世界で,一番人口が多くて繁栄している種族)の職業だったセスタスとリーパーが参戦。「世界樹V」にあった種族スキルがなくなったためか,ほかの職業に比べて原作からの変更点も多い印象だ。
セスタス | リーパー |
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鍛え上げた拳を武器に戦う前衛攻撃職。早い段階から命中率の高い近接壊属性攻撃と3種類の部位封じスキルを覚えられるので,序盤から1人いるとバトル時に重宝する |
状態異常攻撃を得意とする前衛職。「瘴気兵装」の態勢から,相手を弱体化する付加効果を持つ攻撃を繰り出す。敵の状態異常耐性を下げるスキルと併用すると効果的 |
●世界樹の迷宮X
本作から登場する新職業のヒーローは,攻撃と防御の両面で活躍できる前衛職だ。味方全体の残りHP割合を参照したり,HPが一定割合以下になった仲間をかばうなど,味方の状況によって発動するパッシブスキルを習得できる。
また,攻撃スキルの使用時に「残像」をパーティの空き枠に出現させる能力も習得できる。残像は発動時に使用したスキルを次ターンに使用するほか,残像の出現中のみ効果を発揮するスキルも存在する。
ヒーロー | |
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このとおり,シリーズ作品と比較しても職業はかなり多い。しかしながら,「片っ端から詰め込んだ」という感覚はなく,あくまで過去作品からそれぞれ必要な要素がバランスよく選出されている印象を受けた。
習得スキルの内容が変化している職業も多く,見知った職業であっても新鮮な感覚でパーティ編成を楽しめる。ギルドメンバーの登録上限は60人と,全職業で複数キャラを作っても十分な余裕があるので,好きなだけ試行錯誤して,自分だけのギルドを作り上げよう。
スキルの習得方式は「世界樹IV」と同様のスキルツリー型が採用されており,ツリーは最初から自由に習得できる「NOVICE」,レベル20で開放となる「VETERAN」,レベル40で開放の「MASTER」の3段階に分かれている。前提となるスキルを一定レベル以上成長させなければ習得できないスキルも多いので,最終的にどのスキルを習得するかをスキルツリーを見ながらよく考えて,最初に覚えるスキルを選択しよう。
シリーズ初のワールドマップが登場
レムリアの島々を探索し,新たな迷宮を発見せよ
パーティを組んだら,いざ冒険開始。レムリアの世界樹へ向かいどんどん突き進もう! ……とはいかない。ペルセフォネ率いる捜索司令部に実力ある冒険者として認めてもらうためには,まず街の中にある「クワシルの酒場」へと赴き,いくつかのクエストをこなす必要がある。
そこで登場するのが,本作から導入されたワールドマップだ。マップ上には,その時点で探索可能な樹海だけでなく,採集ポイントや施設などが表示されており,選択することで調査を行える。
ワールドマップは複数の島によって構成されており,最初の段階では「はじまりの島」しか探索できない。自らの足でレムリアの各地を探索し,新たな島への足がかりを掴むのだ。
ワールドマップ上には採集ポイントが存在し,ハイライトされている時に調べれば素材が手に入る。樹海内とは異なり,日ごとに採集可能状態になるかはランダムだが,不意打ちを受けない貴重な採集場でもあるのでハイライトを見逃さないように注意 |
レムリアの島々の中には,「世界樹IV」における「小迷宮」に近い,1階層だけの小さな迷宮も存在する。この迷宮でしか出会えない敵なども存在するので,腕試し感覚で挑戦してみよう |
ワールドマップから目的地へと赴きクエストを達成すると,はじまりの島に新たな遺跡が出現。捜索司令部からのミッションが発令され,ついに本格的な探索が行えるようになる。
最初に発令されるミッションの内容は,シリーズ経験者にはお馴染み「新たに発見された遺跡の地図を作ること」というものだ。最初の地図を書き始めると,いよいよ冒険が始まった感が出てくる。
ちなみに,この時点でマギニアの街にある施設はほぼすべて利用可能となる。探索の前には,必ずアイテムの購入やセーブなどの準備をしておこう。この時点で買えるアイテムは多くないが,最低限の回復アイテムと防具を購入する事をオススメする。
宿屋「湖の貴婦人亭」の店主は,常に眠たげな表情をうかべるヴィヴィアンさん。パーティの休養やセーブ,アイテムの収納などを行ってくれる | |
本作では「世界樹III」のショップ「ネイピア商会」が再登場。こちらでは,アイテムの売買に加え,前作「世界樹V」で登場した鍛冶システムも利用可能となっている。強化は武器ごとに設定された素材のほか,強化後の武器をリサイクルすることで得られる「インゴット」でも可能だ |
“集大成”な世界樹らしい難度で楽しめる迷宮探索
新たなフォーススキルを駆使して道を切り開け
ここからは迷宮攻略について紹介したい。先ほども触れたとおり,初めて足を踏み入れる迷宮における最初の仕事は,下画面に表示される「マップ」を完成させる事。迷宮内には仕掛けや抜け道,そしてモンスターや野生動物の脅威があふれている。これらを正確に記録し,次に同じ迷宮へ訪れた際の指標とするのだ。
また本作では,マップ上に配置できるアイコンの種類が増加し,ほぼすべてのギミックをそれぞれ異なるアイコンで記すことが可能だ。地図のアイコンはギミックごとに使い分けられ,ギミックの作動によって変化が生じた場合は,アイコンも自動で置き替わる仕組みになっているので,配置し直す必要はない。「世界樹V」から引き続き,アイコンパレットが編集できるので,プレイヤーそれぞれが使いやすい並びに変えられる。
最初の時点ではまっさらな地図が,だんだんと埋まっていく感覚は世界樹シリーズの醍醐味だ |
パレット編集で「第1作に登場したアイコンのみを使って,旧作と同じ条件でマッピング」なんてことも可能だ |
もちろん,オートマッピング機能も健在だ。オプション画面から「オートマップ」の項目を「FULL」に変更すれば,歩いた道と隣接する壁までを描いてくれる |
オートマッピングを利用している場合も,アイコン設置は自身で行うという点には注意しよう。イベント発生時にはメモ機能を使って記録しておくと,のちのち役に立つ |
マップに存在する採集ポイントには「採取」「採掘」「伐採」の3種類があり,それぞれ異なる素材が入手できる。採集関連のスキルを習得したパーティメンバーがいれば,より多くの素材が入手可能だ | |
迷宮内で発生するミニイベント「Adventure Episode」は「世界樹V」に引き続き登場。パーティ編成によって発生するイベントの内容が変化することもあるが,どんな場合でも最終的には経験値が得られる |
最初とはいえ,やはりそこは危険な迷宮。通常攻撃で前衛をたやすくピンチに追い詰めるコアラだの,毒をふりまくスカンクだのが襲いかかってくる。とあるシリーズ作品で「地図を書き終わるまで外に出してくれない」という恐ろしい衛兵がいたが,本作では存在しない。ピンチになったら街に戻り,少しずつ確実に地図作成を進めよう。
強敵とのバトルでは,職業固有の必殺技「フォーススキル」が勝利のカギを握る。冒険者達は個別の「フォースゲージ」を持ち,これを最大まで溜めるとフォーススキルが使用可能となる。
フォーススキルには,3ターンの間持続する強化スキル「フォースブースト」と,ブースト中に発動できる必殺技「フォースブレイク」が存在する。いずれも強大な力を秘めたスキルだが,フォースブレイクを発動するとゲージ自体が消滅し,フォースブーストの効果も切れてしまう。ゲージは街に戻るまで復活しないので,「ここぞ」というタイミングを見極めなければならない。
フォースは「世界樹II」で登場し,「新・世界樹2」で現在の形となったシステムだ。ほかのシリーズで登場した職業向けには,新規のフォースブーストおよびフォースブレイクが用意されている |
フォーススキルは最初から習得済みで,SPを割り振る必要はない。スキルツリーから効果を確認できるので,パーティ編成を考える際の助けとしよう |
フォースブーストはターンを消費せず即座に発動し,味方の強化欄も圧迫しない。ほかの強化スキルと併用して,各種ステータスを大幅に高めることも可能だ |
筆者のオススメは,セスタスのフォースブレイク「ファイナルブロー」。一撃で敵1体の頭,腕,足の3か所を一気に封じられるため,対ボス戦に有効だ |
また,時には迷宮の探索中に同行者が現れることもある。同行者はそれぞれ固有の能力を持ち,プレイヤーの探索をサポートしてくれるので,同行者の能力はしっかりと把握しておこう。
しかし,そうは甘くないのが「世界樹の迷宮」。最初のダンジョンから,巨大なボスが出現する。それもいわゆるチュートリアルボスかと思いきや,本気で冒険者達を土に還そうとツタを振るってくる凶悪な相手だ。
シリーズに慣れているというのもあり,筆者は「あれ,意外と易しいのでは?」などと思いながら序盤をプレイしていたのだが,パーティはボスに敗北して拠点に戻されてしまった。 「そうそう。世界樹ってそういうゲームだった……」そう思わされる強敵が早々に登場し,やり応えを感じさせる。
なんとか勝利して先へと進むと,新たな島や迷宮が出迎えてくれる。この先はネタバレになってしまうため明言は避けるが,シリーズファンにとってサプライズとなる仕掛けが用意されているので,熟練の冒険者はぜひ楽しみにしておいてほしい。
ちょっとしたヒントをお伝えすると,本作における戦闘BGMは迷宮によって変化する。これまでのシリーズ作品をプレイしてきた人なら,次の迷宮,次の迷宮と足を踏み入れるたび,これまでの冒険の日々を思い出さずにはいられないだろう。
新たな迷宮を見たタルシスの冒険者は,この迷宮を見たことがあるというが…… |
この画面を何度も見ることになるだろうが,しかし恐れずに迷宮に挑もう |
本作には過去シリーズに登場したシステムが多数組み込まれているが,独自の要素を取り込みつつ,複雑になりすぎない範囲で留められている。例えば,旧シリーズに登場した「料理」や「グリモア」,「種族」,「ユニオンスキル」といったシステムも,詰め込もうと思えば詰め込めたはずだ。しかし,複雑になりすぎて,シリーズファン以外は触れにくい作品になっていた可能性もある。
そういう意味で本作は単なるお祭り的な作品ではなく,あくまで“シリーズの中のいち作品”として成立させるために,慎重に要素の取捨選択とシェイプアップが施されている印象を受けた。
過去に培われた“世界樹のおいしさ”が抽出&整理され,まさにシリーズ11年間の総決算にふさわしい仕上がりとなっている。熟練の冒険者も,これから初めて樹海に潜る新人冒険者も,ぜひ新たなる迷宮の攻略に挑んでほしい。
「世界樹の迷宮X」公式サイト
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世界樹の迷宮X
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