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[CEDEC 2019]VR世界にあえて制約をかけてプレイヤーを誘導する手法。ナビゲーターが人型であることの有効性。講演「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導,こうやってみました」をレポート
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印刷2019/09/06 14:47

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[CEDEC 2019]VR世界にあえて制約をかけてプレイヤーを誘導する手法。ナビゲーターが人型であることの有効性。講演「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導,こうやってみました」をレポート

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2019」の2日めとなる2019年9月5日,「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導,こうやってみました」と題された講演が行われた。VR専用ゲーム「VoxEl」では,あえて制約をかけることでプレイヤーを誘導する仕掛けが施されており,その詳細をクリエイター達が語った。

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写真左から,ディー・エヌ・エーの永田峰弘氏と,あまたの高橋宏典氏。ちなみに高橋氏は,かつてソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)で「どこでもいっしょ」を手がけた経験を持つ
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 VRゲームを作るうえで,「プレイヤーをいかに誘導するか」は大きなテーマになる。普通のゲームならメッセージを出して説明すればいいところでも,VR空間に文字を浮かべるとゲームであることを意識させてしまい,興が削がれるといった事例もあり,細心の注意が必要だ。
 こうした点について,ディー・エヌ・エーの永田峰弘氏と,あまたの高橋宏典氏が,VRゲーム「VoxEl」を作った際の取り組みを語るというのが本講演の主旨になる。

 永田氏は,VRゲームで必要になるのは「実在感」「納得感」だと語る。実在感は没入感とも表現でき,「自分が確かにVR世界に存在している」という感覚だ。これを表現できるのが,VRゲームの最大の利点だという。
 実在感を覚えるには,「なぜ自分がこの世界にいるのか」「なぜ世界はこうしたビジュアルであるのか」「なぜこうした音が鳴っているのか」などにプレイヤーが納得できること,すなわち「納得感」が必須となるのだ。VR空間の実在感を出すと聞けば,フォトリアルなグラフィックスが頭に浮かぶかもしれないが,永田氏は,必ずしもリアルである必要はないと語る。

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 こうした実在感と納得感を大切にしたうえで作られたのが,今回のテーマとなるVRゲーム「VoxEl」だ。実体を持たない状態で召喚された主人公が,少女エルと共に謎を解きながら冒険していくという内容で,フィールド内であれば自由に移動できる。その場合,移動に伴う3D酔い(VR酔い)プレイヤーの誘導といった問題が出てくるが,当然ながら本作には対策が施されている。


 VRゲームで主人公の移動をどのように扱うかは,非常にデリケートな問題だ。自由に移動させるとプレイヤーが3D酔いを起こすことがあり,かといって動けないとプレイアビリティが下がる。
 「VoxEl」では,主人公がまったく動かないシステムを含めてさまざまな「移動」が検討されたが,最終的には特徴的なワープ移動に落ち着いた。「ワンド」(杖)に見立てたコントローラで移動したい場所を指し示し,所定のボタンを押すとそこへ瞬間移動するというもので,この方式なら3D酔いも起こりにくいという。3D酔いは,「現実では身体が静止しているのに,VR空間で移動している」という認識のギャップから起こることはよく知られているが,瞬間移動式なら景色が動かないため,3D酔いの対策になるのだ。

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 しかし,ゲーム開始直後にこうした自由を与えてしまうのもあまり良くないという。プレイヤーがゲーム世界のルールや設定を知らない状態で放り出してしまうため,混乱したり,作り手側が予想も付かない行動を取る可能性があるのだ。
 そこで「VoxEl」では,扉が1つあるだけの真っ暗な通路にプレイヤーを閉じ込める。世界に入り込んだ実在感を与えるVRゲームとしては珍しいオープニングだが,プレイヤーに与える情報をあえて制限することで,扉の外にいるエルを操作するチュートリアルに集中できるわけだ。

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 ここでは,ゲームシステムと世界観を融合させた説明も同時に行われている。VRは触感が表現できないのが弱点だが,これを逆手にとって,プレイヤーが触れられるのはワンド(コントローラ)だけとし,「主人公は実体を持たない状態で召喚された」という説明を付けた。
 さらに,そばにいるエルが主人公の身体に触れようとしてできないという,プレゼンス(実在感)に訴える演出を加えることにより,上記の納得度を高めている。さらに,この世界では,どういうもの(オブジェクト)に注目すれば謎解きがうまくいくかも説明しているが,これはプレイヤーを謎解きに集中させることにおいてかなり重要だという。

 ゲーム開始直後にこれだけの説明をするのは,もともと本作がイベント会場で短時間遊ぶというスタイルを想定しているためで,自宅でじっくり遊ぶゲームなら,これほど急に説明する必要はない。タイトルにあわせたやり方がある,と永田氏は語った。

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 「VoxEl」ではプレイ中,エルはずっとプレイヤーに寄り添っている。VRタイトルでプレイヤーと行動を共にする人型キャラクターを作るのはコストも手間もかかることだが,チャレンジしただけの価値はあったと両氏は口を揃える。
 人間は人型の存在や,コミュニケーションを取ってこようとするものに強く反応するため,プレイヤーを誘導するという目的に対し,エルが大きな効果をあげたからだ。

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 その一方で,強い誘導力が裏目に出たこともあったという。ゲームの後半,エルがプレイヤーに「物をどけてほしい」と頼みつつ上を見るというシーンがある。ここで多くの人はエルの視線の先にある柱を動かそうとしたが,実は画面の手前にある物体を動かすのが正解だったのだ。ではなぜエルが上を向いたのかといえば,これは設定ミスによるものだった。
 開発時のどたばたでエルが無関係の方向を向いているのが見逃されてしまったのだという。本作はイベントでのプレイが想定された研究作品だったため,会場で永田氏がプレイヤーに直接ヒントを出すことで対応できた。これは筆者の心配しすぎかも知れないが,もしかすると,単なるにぎやかしに入れておいたモブキャラの動きにプレイヤーがミスリードされるようなことも起ってしまうかもしれない。VRゲームでは人型キャラクターを扱う際に留意する必要があると感じられた。

 また,こうしたナビゲーション役をさせるのであれば,必ずしも完全な人型である必要はなく,マスコットロボットのような存在でも有効とのことだ。

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 VR空間では360°すべてを見回せる。作り手もこの特性を活かして,いろいろなところにキーアイテムを置くなど,複雑な構成を作りがちだ。
 しかし,ゲームに対するリテラシーが低い人は,周囲を見回すどころか正面しか見ないことも多いという。プレイヤーの視線を誘導するにしても,うまくやらないと効果がないそうだ。

 そこで「VoxEl」では,ヒントは主人公の正面に置き,ステージも前(奥)へ進む形式にした(高橋氏によれば,「縦スクロールシューティングのような構成」)。ステージはいくつかのエリアに区切られており,謎を解くごとに奥のエリアへ進めるのだが,その際には主人公が向いている方向をリセットし,混乱を防ぐ。つまり,プレイヤーとしては基本的に前さえ意識していればよく,ステージも区切られているので,迷うこともない。誘導と制限が組み合わされることでVRに慣れていない人にも遊びやすくなっているわけだ。

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 VRゲームというと,視点の操作や主人公の移動など,自由度を上げることがすなわち実在感を上げることにつながると考えてしまいがちだ。
 しかし,本作では,状況に応じてあえて制約を加えたり,強い誘導を行うことで,遊びやすいゲームとなった。高橋氏は,VRゲーム内のキャラクターとプレイヤーのコミュニケーションに,「どこでもいっしょ」を制作したときと同じような手応えを感じたと述べている。
 PocketStationとVR対応のHMDという,用途も性能も異なるデバイスが「コミュニケーション」というキーワードでつながったわけだが,「VoxEl」で得られた知見を活かした,永田氏と高橋氏の次回作を楽しみにしたい。

「CEDEC 2019」公式サイト

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