プレイレポート
「天穂のサクナヒメ」プレイレポート。米づくりへのこだわりや爽快アクション,サクナの可愛さが魅力の和風アクションRPG
本作は,同人ゲームサークル・えーでるわいすが手掛ける“稲を育てて強くなる和風アクションRPG”だ。2015年12月に開催されたコミックマーケット89にて体験版が頒布されたことが初出となり,2018年5月にマーベラスがPS4版の国内販売を行うことを発表。2019年6月にはSwitch版のリリースも発表され,初披露からおよそ5年で遂に発売の日を迎える。
「稲を育てて強くなる」というキャッチコピーや,公式サイトに「米は力だ!」という力強いメッセージがあるとおり,“米づくり”がゲームを進めるうえで重要なものとなっている,一風変わったシステムが魅力の作品だ。
「天穂のサクナヒメ」公式サイト
自由気ままに生きてきたサクナヒメの成長譚
個性的な登場人物たちとのやり取りも楽しい
本作の主人公は,武神と豊穣神の一人娘・サクナヒメ(以下,サクナ)。何不自由なく育った彼女は,ちょっぴり生意気で責任感に乏しく,ぐうたらな生活を欲しいままにしていた。
そんなある日,自分の不注意により,神の領域に迷い混んだ人間たちとのいざこざで大失態を犯してしまう。罰として鬼が支配するヒノエ島の調査を命じられたサクナは,泣きじゃくりながら旅路につくのだった。
供物をダメにした罰として,人間たちとヒノエ島で共同生活をすることになったサクナ。共に生活する仲間は,知識はあるもののそれを活かせない不器用な侍・田右衛門をはじめ,医療の心得がある聖職者のミルテ,物作りの才能がある戦災孤児のきんた,織物や手芸が得意な少女・ゆい,動物と心を通わす少年・かいまるなど,なかなかクセの強い人ばかりだ。
ほかにも,神の世界のカムヒツキやココロワヒメといった神々,ヒノエ島で出会う原住民のアシグモや山賊の石丸など,個性的な登場人物たちが多数登場する。物語を進めていくうちに見えてくる彼らとの関係性やその変化にも注目だ。
大人しい性格の上級神・ココロワヒメ。サクナの親友……ということにされている |
ヤナト神族を統べる主神・カムヒツキ。サクナにヒノエ島の調査と開拓を命じる |
田んぼを耕して本格稲作! 島での生活は“自給自足”
本作は,仲間たちとともに田んぼを耕して米づくりをする“稲作シミュレーション”と,さまざまなステージを攻略していく“2D探索アクション”という2つの要素がある。四季の変化や朝晩などの時間経過も存在し,一日やその季節をどう過ごすかが,島の探索やサクナの成長に関わってくる。
サクナの島生活の基本となるのが“米づくり”。自分たちの食事は自分たちで用意する――ということで,仲間たちと生活する家で田んぼを耕して稲を育て,それを料理するのだが,この米づくりが日本伝統の米づくりをベースとした,とてもこだわりあるシステムとなっている。
土を耕す田起こし,苗を植える田植え,稲を刈り取る収穫,刈り取った稲を乾燥させる稲架掛け,稲から籾を外す脱穀,稲の殻を外して米にする籾摺りといった作業を,移り変わる季節をとおして行っていくのが本作の大きな特徴だ。
ここでは,「田植期」「育成期」「収穫期」という3つに分かれている米づくりの行程を,いくつかピックアップして紹介したい。
■田起こし(田植期)
田植期の最初,冬に行う重要な作業だ。□ボタンを押せば土を耕せる。耕すごとに土の色が変わるので,色の変化を見ながら場所を移動して全体をしっかり耕そう。ときどき石材が落ちているので,しっかり取り除くことを忘れずに。
色の変わっていない地面を探してとにかく耕し続けるのはなかなか大変だが,しっかりと耕すほど稲が根を張り育ちがよくなるので手は抜けない。
■田植え(田植期)
春になったら,いよいよ田植えの季節だ。それまでに選別した種籾(たねもみ)から育てた苗を,1つ1つ田んぼに植えていく。植える間隔が重要で,苗の感覚が近すぎても離れすぎても育ちに影響が出る場合がある。
こちらも大変な作業の1つで,なるべく密集しないよう等間隔を意識したが,植えては数歩動くというボタン操作の繰り返しはなかなか苦労した。物語が進むと農技「田植えの勘」という,田んぼにマス目が現れるスキルが手に入るので,このあたりの苦労はだいぶ解消されるだろう。
■肥料と草むしり(育成期)
よりよい米にするためには工夫も必要だ。肥溜めから堆肥を作るときは,どんな素材をどれだけ投入するかによって土の養分が変わってくる。稲の成長だけではなく,病気や害虫の発生を抑えることにもつながるので,あげすぎには注意しながら堆肥を撒こう。
まんべんなく栄養をいきわたらせるためにも,草むしりは欠かせない。雑草は目を離した隙に生えてくる。朝チェックしても夜にまた生えていることもあるので,こまめに取り除こう。
■水やり(育成期)
田んぼの水の調整も大事な仕事だ。水路を使って田んぼの水量と温度を管理しよう。何日も雨が降ることもあるので,水が多くなりすぎたと感じたら放水を忘れずに。実際にはなかなか水を張った田んぼを走り回るということはできないが,サクナをとおしてそれが体験できるのが個人的なオススメポイント。なかなか気持ちのいい作業だということはお伝えしておきたい。
■稲刈り(収穫期)
秋になったらカマを使って実った稲を刈り取ろう。サクナを中心にサークルが出現。稲がそのサークル内に入ると光り輝くので,□ボタンを押して刈り取ろう。ボタンは1回押すだけで広範囲の稲を刈り取れるため,サクサクと進んでなかなか快適だ。
■稲架掛け(収穫期)
刈り取った稲は,適度に乾燥させることで美味しいお米となる。この,稲を干す作業が稲架掛けだ。刈り取った稲の前で○ボタンを押して稲を抱え,田んぼの両端に設置されている木材の前で○ボタンを押せば稲架掛け完了と,操作自体はシンプル。どれくらい乾いたかは,稲架掛けの前で調べればサクナが教えてくれるので安心だ。
■脱穀(収穫期)
画面表示に従って方向キーと□ボタンを押して進めることができる作業。ひたすら籾を外して外して外しまくろう。慣れてくればリズムよく指が動くので,ものの数十秒で終わる。単純作業のため面倒に感じる人もいるかもしれないが,筆者は調子よくリズミカルに進むこの作業がとても楽しかった。
■籾摺り(収穫期)
木臼などを使いもみ殻を取り除いて精米する作業。方向キーの上と下ボタンを交互に押すと,ゴスゴスと稲の殻が取り除かれていく。こちらもまたリズムよく動かすことができれば,数十秒で終わる。
玄米に近いほど食事効果が高く,白米近づくほどサクナの成長効果が上がるといったように,どの程度まで精米するかで料理にしたときの効果が変わる。筆者はつい作業が楽しくて白米になるまで精米してしまったのだが,状況に合わせて加減を調整しよう。
完成した新米はサクナと仲間たちの食事となり,そしてサクナ自身のステータス上昇にもつながっている重要なもの。肉や野菜などの食材は家の周りや島の探索で手に入るので,それらを集め,料理が得意なミルテに夕餉の献立を考えてもらおう。
食事には主食,汁,菜,菓子,飲み物といった種類があり,一度の食事に並ぶ料理が増えると,その分サクナの能力も上がりやすくなる。たくさん上昇するので,なるべく複数の料理を並べられるようにしたい。なお,おすすめの料理を選んでくれるオート機能があり,筆者はこれに頼っていたがとくに困ることはなかった。ゲームに慣れるまではオートを使い,どの料理にどんな効果があるか覚えたら自分で選択するというのもいいかもしれない。
羽衣や農具を使った爽快バトル!!
ギミックを解き明かしながら探索しよう
島の探索は,横スクロールのアクションステージで進んでいく。獣の姿をした鬼・獣鬼や炎上する溶岩の滝といった敵や仕掛けが待ち受ける,気の抜けないバトルが楽しめる。その特徴となっているのが,農具や技を駆使して連続攻撃を繰り出す爽快さのあるアクションだ。
とくに本作ならではと言えるのが,羽衣を使った移動と戦い方。羽衣を遠くまで伸ばして壁や天井につかまり,ワイヤーアクションの感覚で離れたところに移動する。敵を掴んで背後に回り込む。引き寄せて投げ飛ばすなど,使いこなすことでより爽快にバトルやアクションが楽しめるようになる。
最初に探索できる場所は少ないが,ストーリー進行度や,各地に設定された「採掘ポイントを発見する」「敵を30体討伐する」といった探索目標をクリアすることで探索度が上がると,新しいスポットが出現する。敵を倒し,素材を集めながら島の探索を進めよう。
基本的に体力は自動的に回復するため,初見のステージでもガンガン進んでいけるが,しっかり食事をとっていないと空腹状態になり回復しなくなるので注意が必要だ。また,鬼たちは夜になるとより強敵となる。最初のうちはかなわないので,遅い時間になったら早々に引き上げ,翌朝出直そう。
食っちゃ寝だけでは許されない?
“仕事”をこなすことで物語は進んでいく
物語を進めていくと,さまざまな“仕事”が発生する。鍛冶小屋の建設,加工品作りといったクエストのようなもので,探索が進んだり仲間と会話をしたりすることで増えていく。クリアすることで島は開拓され,サクナたちも暮らしやすくなるため,農作業だけではなくこれらも進めることを忘れないようにしよう。
例えば鍛冶小屋が完成すると,きんたが武器を作ってくれるようになる。武器には攻撃力のほかに真価という付加効果もあり,特定の武技の攻撃力上昇,採集時に素材を追加入手するといった嬉しい効果があるので,強敵との戦いが有利になるだけではなく,素材集めも楽になる。
ゆいの依頼を受けて機織り小屋ができれば,防具となる新しい衣服が入手できる。季節で異なる効果がある装備もあるので,季節ごとに装備を用意すると効率的に探索が行えるだろう。武器や防具は,装備によってサクナの外見が変わる。サクナの可愛い七変化を楽しむのもまた一興だ。
四季折々の情景も楽しい! 目と耳で豊かな自然を満喫
プレイしてみると,米づくりと探索のどちらもまんべんなく進行させるのはなかなか難しかったが,「朝イチで田んぼ仕事をして仲間と話す」「日中は探索を進める」「帰宅したら田んぼの様子を見る」「夕餉を食べて休む」といったように,規則正しい生活を意識することで安定して進められるようになった。このあたりも,米づくりをしている人の生活を体験できる部分かもしれない。
本作の魅力の一つとなっているのが,季節や時間でガラッと変化する風景の美しさ。なかなかのんびりとはいかないが,家の周りを歩き回ったり,少し足を止めたりしてその風景を楽しんでほしい。そのときどきによってできることや周りの環境も変化し,米づくりの作業に適した時間や周囲で入手できる素材なども変わるため,季節ごとに異なる生活が体験できるのもオススメしたいポイントだ。
昔話のような世界観と日本の原風景を感じさせるヒノエ島の景観など,ノスタルジックな雰囲気も印象的な本作。なかなかうまく米づくりが進まなかったり,希望の素材が手に入らなかったりすると,「また同じことを繰り返すのか……」という気持ちにも襲われたが,効率よく作業ができるようになったときの達成感や,「次はどのように物語は進んでいくのだろう」というワクワクがたまらない作品となっていた。
そして,筆者がぜひ知ってもらいたいと思った本作の魅力が,“文句を言いながらもなんだかんだと頑張って,神様ながら人間たちとともに一生懸命働くサクナの可愛さ”だ。ちょっぴり生意気だけど憎めないサクナの成長譚をぜひ見守ってほしい。
「天穂のサクナヒメ」公式サイト
キーワード
(C)2020 Edelweiss. / Marvelous Inc. / XSEED Games
(C)2020 Edelweiss. / Marvelous Inc. / XSEED Games
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