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「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第3回は,全員が社会人のヴィジュアル系バンド“Fantôme Iris”を語る

 ブシロードとDeNAの共同企画によるスマホ向けリズム&アドベンチャーゲームアプリ「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」iOS / Android。以下,「ダブエス」)のストーリーを紹介する連載の第3回は,メンバー全員が社会人のヴィジュアル系バンド,Fantôme Irisを取り上げる。

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Vo. フェリクス・ルイ=クロード・モンドール
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Gt. 黒川 燈
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Gt. 洲崎 遵
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Ba. 御劔虎春
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Dr. 楠 大門

 本稿ではバンドストーリーを中心に,メインストーリーでの活躍やイベントストーリー,各メンバーについても詳しく紹介していこう。なお,記事にはストーリーや設定のネタバレが含まれる場合があるので,気になる人は注意してほしい。

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[2021/04/24 12:00]


Fantôme Iris の結成〜現在までの歩み


2つの姿を纏い咲き誇る白銀の百合
Fantôme Iris(ファントムイリス)

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 今回もアプリ内のヒストリーなどをもとに,バンドの結成から現在までの歩みを簡単におさらいしていく。参考となるストーリーも併せて紹介するので,全体の流れの参考にしてほしい。

<上京前>

前身バンドの活動〜解散
 Fantôme Irisの前身は,名古屋で活動していたフェリクスと虎春メインのV系バンドである(大門はローディとしてバンドを支えていた)。だがLRフェスから約4年前,ライブ中にフェリクスが突然解散を発表。このライブには燈が観客として観に来ていた。
→参考:バンドストーリー第4章

Fantôme Iris結成
 フェリクスが「吸血鬼」という新たな世界観のV系バンドの結成を決める。メンバーはフェリクスと虎春に加え,バンドに勧誘された燈と,燈が話し合いの付き添いで連れて行った遵,ローディからメンバーに勧誘された大門の5人となる。
→参考:バンドストーリー第4章

ディスティニーロックフェスに参加
 知名度が高まり,LRフェスの前哨戦と言われる大型フェス「ディスティニーロックフェス」に参加するため,北海道に赴く。
→参考:TVアニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」<第11話〜>

LRフェスへの参加打診〜名古屋でのラストライブ
 LRフェスへの参加打診が来る。それぞれの仕事も含め,拠点を東京に移すことを決める。上京前,名古屋にてラストライブを行った。
→参考:バンドストーリー第1章<ラストライブはSOL(サウンドオンリーライブ。音声だけで構成されたキャラクターによるライブ)のボイスドラマにて>


<上京後>※一部順不同

池袋のシェアハウスで共同生活開始&転職
 1階がカフェになっている,池袋のシェアハウスで共同生活を始める。カフェは大門が店長となり,実家の楽器も取り扱うことに。なお,フェリクスは東京でフランス語講師の仕事を続け,虎春は東京にある系列の保育園に転籍,燈は名古屋で勤めていた会社の東京支社へ移った。

キックオフミーティング参加〜スターティングライブ出場
 キックオフミーティングにはフェリクスと燈が参加。その後,LRフェスの出場順を決めるスターティングライブに出場し,独特の世界観を披露する。
→参考:メインストーリー第1章〜第2章

ネットの炎上騒動〜2daysライブ開催
 Fantôme IrisがGYROAXIAを中傷したというデマが広がるなか,単独では上京後初となる2daysライブを開催。しかし襲撃予告を受けるなど,さまざまなトラブルに見舞われる。
→参考:バンドストーリー第2章〜第3章,メインストーリー第3章

曲作りを行う
 各メンバーをフィーチャーした楽曲が作られる。
→参考:楽曲ストーリー「我が美しきセラビィ」「胸に宿した炎」「バーチャル・リアリティー」

バレンタインライブを行う
 バレンタインライブを行い,HARUが「誘惑」をテーマとしたパフォーマンスで観客を魅了する。
→参考:イベントストーリー「誘惑のValentin」<2021年2月開催>

フェリクスと鞍馬唯臣の対談〜お花見
 フェリクスとεpsilonΦの鞍馬唯臣が対談(当初の予定では宇治川紫夕だった)。付き添った虎春とフェリクスが帰宅後,メンバー全員で公園へ花見に行く。
→参考:イベントストーリー「壊れた世界の花」<2021年2月開催>

遵がεpsilonΦのシェアハウスに招かれる
 ある雨の日,傘を持たずびしょ濡れになっていた遵を,εpsilonΦの烏丸玲司がシェアハウスに招く。
→参考:イベントストーリー「in the rain」<2021年4月開催>

 次の項からは,バンドストーリーと楽曲ストーリーの内容を紹介する。


Fantôme Irisのバンドストーリーを語る



――バンドストーリーあらすじ
<第1章〜第4章>――

 キックオフミーティング1か月前。名古屋で活躍するFantôme Irisのもとに,LRフェスの参加打診が来る。出場には東京で活動するという条件があり,メンバーは仕事と住まいを含め,拠点を東京に移すことに決める。2日間にわたるスターティングライブでは独特の世界観のステージで観客を圧倒するものの,ネットでGYROAXIAとの不仲説が浮上,炎上してしまう。一方,上京後初の単独2daysライブに向けて準備を進めるなか,仕事とバンド活動で激務の燈と,彼を心配する遵が大ゲンカになる。

画像集#002のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第3回は,全員が社会人のヴィジュアル系バンド“Fantôme Iris”を語る

 2daysライブは襲撃予告を受け,2日目の公演を中止することに。“いたずら”についてほのめかす紫夕に,「悲しい」と答えるフェリクス。すでにライブハウスに集まっていた眷属たちと,GYROAXIAのファンを名乗る者の間でいざこざが起きるが,フェリクスがその場をおさめる。その後,スターティングライブの結果発表の日,燈が倒れてしまう。燈は夢の中で,自分がバンドに加入した日を思い出していた。

画像集#003のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第3回は,全員が社会人のヴィジュアル系バンド“Fantôme Iris”を語る

 そしてついに,LRフェスの本戦がスタートする。だが,機材トラブルで開演が遅れ,Fantôme Irisにさらなるピンチが訪れる。



◆注目したいポイント

 Fantôme Irisのバンドストーリーは,第1章では上京前,第2章と第3章ではスターティングライブ終了後から単独2daysライブまで,第4章では冒頭で回想が入り,前身バンドからFantôme Iris結成に至るまでの物語が描かれる。以下では,バンドストーリーに登場する注目ポイントや,気になるセリフについて挙げていこう。

「……という設定で,僕たち頑張っております」
バンドストーリー第1章第1話より
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 これまでにも何度か紹介しているとおり,Fantôme Irisには世界観の“設定”がある。その内容はこうだ。
「人間である聖職者の『D』が,吸血鬼の王である『FELIX』を偶然呼び出してしまい,一緒に行動することになる。そして,FELIXに仕えるダンピールの『LIGHT』,世界を壊したいと彷徨っていた吸血鬼の『ZACK』,FELIXと対立していた吸血鬼の『HARU』の5人で,人間と吸血鬼が共存できる王国の建国を目指して旅をしている」
 眷属(ファンの愛称)ならば,暗記しておいてもいいかもしれない。また,「はい,我が君よ! 我々は貴方様の,忠実なる僕です!」というお決まりのフレーズも,いつでも言えるようになっておきたいところ。

大門のカフェ,行ってみたいですよね……
バンドストーリー第1章第4話より
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 大門は普段,5人が住むシェアハウスの1階のカフェで働いている。この店では,大門の希望で彼の実家である楽器店から取り寄せた楽器も置いており,形態としてはカフェ兼楽器のセレクトショップといったところだ。このカフェには,Argonavisの的場航海がとある理由で通い詰めていたことがあり,その話はArgonavisの楽曲ストーリー「ふたりのRoots of Love」にて語られている。また,イベントストーリー「夜更けのサヴァラン」では,GYROAXIAの界川深幸が働くバーを訪れた大門が,自分の店を「フェリクスのために(紅茶の飲める)カフェにしたが,バーでも良かったかもしれない」と語っていた。いっそ昼はカフェ,夜にはバーにするなんていかがだろうか,楠さん?

フェリクス様の豊かな日本力
バンドストーリー第1章第3話より
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 フェリクスはフランス語だけでなく,日本語も実に堪能だ。作中でもときどき「そんな日本語よく知ってますね……」と言われているが,彼の口から出ることで余計に面白みの出る単語は多い。これまでにツッコミを受けたものは,「腐れ縁」や「事故物件」など。さらに彼は「スモウ(相撲)」にも詳しく,「YORIKIRI(寄り切り)」などの技名も完璧だ(キャラストーリー「フェリクスと憧れのアーティスト」より)。ちなみに筆者個人は,バンドストーリーでの「ノワール企業」の言い回し(ブラック企業の意味)が大変エレガントでお気に入りである。

遵の不幸ネタ
バンドストーリー第2章第1話より
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 “生まれながらの不幸体質”と自称する遵だが,作中で明かされるトラブルの数々はなかなかのものだ。ざっと挙げるだけでも,「子供にボールをぶつけられた(バンドストーリー第1章より)」「足を滑らせて転んで,洗濯機に頭をぶつけ,痛みでフラついた拍子に火災報知器に触り,天井から水が噴き出して部屋が水浸しに(楽曲ストーリー「我が美しきセラビィ」より)」「部屋に入ってきた虫を逃がそうと思って窓を開けたら,枠ごと外れた(楽曲ストーリー「バーチャル・リアリティー」より)」。さらに最新のイベント(イベントストーリー「in the rain」)でもさんざんな目に遭っている。とにかく怪我がないように祈るばかりである。

燈と遵の大げんか
バンドストーリー第2章第3話より
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 バンドストーリー第2章にて大ゲンカした燈と遵。2人は大学生のときからの友人で,人見知りだった遵に燈が声をかけ,その後今のバンドに誘った経緯がある。したがって遵にとっての燈は,友人であるとともに尊敬すべき恩人でもある。このとき遵が怒りを爆発させたのは,自分が大切に思う燈を,燈自身がないがしろにしている(ように見えた)ことからくるのだろう。ちなみに筆者は,フェリクスがこのときのケンカに対して燈に言った「早く仲直りできるといいね」の言葉が胸に響いた。命令でもアドバイスでもなく,ほどよい距離感で見守ってくれている感じがいいなと。

味噌漬けにしてやるよ!
バンドストーリー第2章第4話より
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 Fantôme Irisは名古屋出身。ということで,彼らのストーリーにはご当地フードの話題もよく登場する。名古屋人のソウルフードとも言われる「スガキヤ」のラーメンは,和風とんこつ味だ(公式サイトより)。そのほか,あんこの甘みとバターの塩加減が絶妙なハーモニーを醸し出す小倉トースト,おやつにぴったりなしるこサンドや,海老の香りがたまらない坂角総本舗のゆかりなど,名物は多い(筆者も大好きです)。なお,ストーリーには“味噌ネタ”もよく登場するが,味噌カツや味噌煮込みうどんなど,赤味噌を使った名古屋めしも大変有名である。

フェリクスと紫夕について
バンドストーリー第3章第2話より
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 バンドストーリー第3章で会話する,フェリクスとεpsilonΦの宇治川紫夕。「相変わらずいたずらが好き」「かつてのかわいい教え子」といったキーワードから,2人の関係性が推測できる。このシーンでフェリクスは,騒動で傷ついたファンを心配しながらも,紫夕に対して「以前よりずっと寂しそうに見える」と,悲しむ気持ちを打ち明けた。「結局何も教えられなかった」と言いかけた言葉から,フェリクスはある種の後悔や責任を,紫夕に感じているのかもしれない。

クイズ! GYROAXIA!
バンドストーリー第3章第4話より
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 騒動を起こした,自称“GYROAXIAファン”に向けてフェリクスが出した,GYROAXIAに関するクイズ。第一問はインディーズ時代のCDに関するもの,第二問は画像の問題だ。フェリクスはGYROAXIAの実力を高く買っており,公式ブログもチェックしているらしい。なお,第二問の答えはもちろん「にゃんこたろう」。アプリ内の「ヒストリー」によると,フェリクスがGYROAXIAのシェアハウスにネット炎上の件で話し合いに行った際,一緒に写真を撮らせてもらったらしい。その写真,どこかで見せてもらえないだろうか……!


Fantôme Irisの楽曲ストーリーを語る


「我が美しきセラビィ」/フェリクス・ルイ=クロード・モンドール
楽曲:棺の中のセラヴィ


―あらすじ―
 トラブルでシェアハウスの部屋が水浸しになってしまい,改修の間,ある洋館に住むことになったメンバー。しかし,そこは幽霊や怪物が出るとウワサされるいわくつきの家だった。訪れた5人を待ち受けていたのは……。


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 思わず「かわいい大人たちだな……」と言いたくなってしまう楽曲ストーリー。いわくつき物件に住むことになった5人だが,一番嫌がっていたのが,いつもゆったりと構えているイメージの大門だったのが面白……意外だ。彼はお化けが大の苦手なようで,いちいち返答が「声ちっさ!」となっていて思わず笑ってしまった(本当に申し訳ない)。一方のフェリクスは,取り乱すどころか「もてなす気持ちが大事」と,目に見えない幽霊相手にお茶会まで開いてしまう。非常に彼らしいエピソードだ。ちなみに,曲のタイトルにもある「セラヴィ(C’est la vie)」とは,フランス語で「それが人生さ」といった意味である。
 なお,この話ではフェリクスの手作りマカロンが登場するが,それを見かけた燈が「危険」を察知したところも笑いを誘った。「味が良くない」とか,そういうのではないのだなと……(劇物か何か?)。

「胸に宿した炎」/黒川 燈
楽曲:Into the Flame


―あらすじ―
 Fantôme Irisのファンである,燈の職場の後輩。しかし課長のパワハラや激務のせいで,これまでに何度もライブを諦めていたのだという。その話を聞いたフェリクスは,課長をライブに招待してはどうかと提案する。


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 いやもうこの「LIGHT――ッッッ!!!」のセリフは,すべてのLIGHT/燈ファンによる絶叫と捉えても差し支えないのではないだろうか。彼の素であるサラリーマン姿,後輩を気遣う様子,LIGHTとして立つステージでの美しさ,さらには少々サディステックな足ドンまでと,もはや「全部入りよくばりセット」である。パワハラで社員たちを振り回す課長を,フェリクスが突飛なアイデアで振り回し,フェリクスの提案を粛々と実行するメンバーたち。メンバーもいつもこんな感じに振り回されているのかな……と思いきや,意外とノリノリになっているところが面白い。この曲は歌詞やMVに登場する“炎”が印象的だが,彼がFantôme Irisに入るきっかけとなった出来事のモノローグ(バンドストーリー第4章)を読み返すと,また味わい深いものがある。

「バーチャル・リアリティー」/洲崎 遵
楽曲:ザクロ


―あらすじ―
 演奏のミスを指摘され,早起きして自主練しようとする遵。すると遵のもとに突然,風神RIZING!の五島 岬が訪ねてくる。岬は遵に,「弟子にしてくれ」と頼み込むのだが……。


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 以前の記事で,“中二病”を発症した過去のある人物として燈の名を挙げていたが,実は遵も重めの症状だったことが発覚するのが本作だ。「踊れよ。101回目のKILL(ダンス)を――」など,なかなか切れ味のあるフレーズである。現実でも有名ゲーマーによる“語録”は存在するが,今では元ネタを知らなくても使っている人も多いので,ZACKもそのような伝説になっているのは確定的に明らか……かもしれない。ストーリーでは終始,岬に押され気味の遵だが,一緒に楽器の練習をするのはキッパリと断るところが印象的だ。馴れ合いはせず,音楽だけは中途半端に終わらせたくない想いの表れのように感じた。それにしても,遵は自己を否定する傾向が極めて強いので,これくらいグイグイ持ち上げてくれる人がいれば,逆にショック療法になるのではないだろうか……。


Fantôme Iris 各メンバーを語る


 ここでは,すでに紹介したストーリーに加え,それぞれのキャラストーリーやイベントストーリーなどを交えながら,各メンバーについて語っていこう。合わせて,筆者の好きなセリフもピックアップしていきたい。

フェリクス・ルイ=クロード・モンドール
キャラストーリー第2話「フェリクスと蓮」より
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 フェリクスには何か,周りの人を無意識に引きつけて従わせられる力があるように思う。炎上騒ぎを一瞬で落ち着かせたり,襲撃予告を受けたライブに迷わず中止の判断を下したりなど,「王」たる貫禄と手腕を感じる。一方で彼にはどこか気まぐれな部分もあって,そこがいい意味でも悪い意味でも目が離せないところだ。だからこそ,彼がストレートに「今この瞬間,共にいる仲間を愛している」と気持ちを表現する言葉に,深く安心してしまう。
 このとき,フェリクスは蓮に「『好きなもの』は大事にするんだ。そして『好きであること』をちゃんと伝えること」と教えていた。だがそれだけでなく,「伝えられるうちに」ともつけくわえる。それは,ものごとや人間同士の関係には,必ず終わりがくると知っている人の言葉だとしみじみ思う。

黒川 燈
バンドストーリー第1章より
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 この項では全員「バンドストーリー」以外からセリフを選ぶつもりだったが,どうしても外したくなかった燈の言葉をピックアップしてみた。Fantôme Irisは全員が社会人だが,最も「仕事」と「音楽」の板挟みになっているのがこの人だと言えるだろう。子供から大人になり,生きていくなかで現れる選択肢は,その後の人生に及ぼす影響が年々大きくなっていく。「夢を叶えるのに『遅い』ことはない」とは言うけれど,残りの時間はどうしたって減っていくからだ。彼は今,それまでの人生で最も大きな転機,正念場を迎えている。そしてそれを,「試練」ではなく「チャンス」だと捉えているからこそ,こうした言葉が出てくるのかもしれない。彼は優しげな外見をしているけれど,中身はとても強く,底力があるように感じる。その強さが胸の中の炎を絶やすことなく,暗闇を照らし続けられるのだと思う。“燈る”,という名のとおりに。

洲崎 遵
イベントストーリー「in the rain」より
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 遵とほかの人とのやりとりで興味深いのは,接する人たちの多くが彼を認め,褒めることが多い点だ。フェリクスには「君の作る音楽の美しさをもっと自覚するべきだ」と言われているし(キャラストーリー「遵とフェス」より),先ほど紹介したフウライの岬だけでなく,椿 大和も遵に憧れているようだ(キャラストーリー「2人の関係性」より)。そして印象深いのが,最新のイベント(「in the rain」)での,εpsilonΦの烏丸玲司との会話だ。玲司は,恵まれた環境にいながら自分を卑下する遵に怒りをにじませる。だが,たしかにそうなのだ。自分が尊敬する人や,好きだと感じる人に自分自身を否定されると,こちらの気持ちまで萎んでしまう。遵が自らを認め,覚醒するときを期待したい。というか,ひょっとしたらそれが「ZACK」なのだろうか……。

御剣虎春
イベントストーリー「誘惑のValentin」より
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 Fantôme Irisの中心はフェリクスだ。そのフェリクスと最も長い間,同じバンドメンバーとして活動をしていたのが虎春である(出会いとしてはフェリクスと大門のほうが古いが)。イベントストーリー「誘惑のValentin」では,フェリクスが虎春に一つの課題を与えた。そこであらためて虎春は,「自分とは性別の異なる吸血鬼のHARU」の存在について考える。そしてその答えは,燈や大門によって導き出せたものだ。自分一人ではできなくても,誰かがいれば乗り越えられる。どちらかというと人に頼られたり,誰かを導いてやれたりする(虎春の生徒になれる子供は本当に幸せだと思う)虎春が,逆の立場になれていたことに,なんだかホッとさせられた。なお,そんな彼の頼もしさが見られるのはキャラストーリー第2話「虎春と蓮」,前身バンドについて語るエモいエピソードはキャラストーリー第3話「虎春と憧れのアーティスト」にて読めるのでぜひ。

楠 大門
イベントストーリー「夜更けのサヴァラン」より
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 ドラムのバンドでの立ち位置はどっしりと後ろに構えていて,基本的にはあまり前に出ないパートだ。大門を見ていると,これ以上にしっくりくる楽器はないんじゃないか? と思う(が,実は5歳のときからヴァイオリンを習っているという意外性もあったりする)。周りの人をよく見ていて,本当に必要なときに必要なだけの言葉をかけてやれる大門は,まさに“聖職者”のような存在だ。彼はどんな運命を前にしても,それを受け入れる懐の深さがあるのだと思う。けれど,そんな彼のなかにも情熱はあるはずだ。彼はLRフェスについてフェリクスに訪ねられたとき,「東京に来ることを決めたのは俺自身だ」と語っていた(キャラストーリー「大門とフェス」より)。その決意には,穏やかなだけでない,彼の“熱さ”を感じる。オーケストラで言えば“華”であるヴァイオリンのように,彼が秘めた熱をあらわにするのを,いつか見てみたいと思う。


Fantôme Irisまとめ


 LRフェスに出場する主要5バンドのうち,「ひょっとして最も平和なのでは?」と言いたくなるFantôme Iris。実際,メンバー同士ではほとんどケンカもしないし,いがみ合いや嫉妬もないし,常に穏やかな空気が流れているように感じられる。さすが大人。

 ただ思うのは,ぶつかり合いやケンカもコミュニケーションの一つと言えることだ。自分のなかにたまっているものをさらけ出して,相手をより深く理解できる場合も多いから。すでに「大人」な彼らを見ていると,一人一人の後天的な性格は,もうほとんどでき上がってきているのだと思う。さらに,自分以外の仲間もそうであるはずと,仲間の人格を否定しないというか,一定の距離以上には接触しない“礼儀”が感じられる。だからこそこの5人には,本気の衝突が生まれていないと思うのだ。

画像集#019のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第3回は,全員が社会人のヴィジュアル系バンド“Fantôme Iris”を語る

 筆者の勝手な推測だが,このフェリクスのセリフは,それぞれのメンバーも仲間に対して思っているのではないだろうか。「理解できない部分もあるが,許容しないわけではない」ことだ。バンドストーリーでは遵と燈が大喧嘩していたけれど,それ以外のFantôme Irisのメンバーで,あれくらいの言い合いになる組み合わせがあるかというと,ちょっと想像しにくい。

 上京前,LRフェスへの参加打診が来たとフェリクスに告げられた4人は,驚きつつも出場の強い意思を明らかにした。ではここで,Fantôme Irisの各メンバーがLRフェスにどんな想いを抱いているのかを振り返ってみたい。

キャラストーリー「燈とフェス」より
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キャラストーリー「遵とフェス」より
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キャラストーリー「虎春とフェス」より
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キャラストーリー「大門とフェス」より
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 こうして見てみると,同じ「出場したい」という強い意思はあっても,深いところでは意外と異なる言葉が出てくるのが興味深い。そして「王」であるフェリクスは,フェスに出る理由を「面白いから」だと言う。それは,彼がなぜそう行動するのかや,何かを好む理由と同じものだ。そして思い出されるのは,フェリクスが「面白くなくなったから」と解散を決めた前のバンドだ。虎春もフェリクスに問いただしていたが(イベントストーリー「壊れた世界の花」より),バンドを解散させたのが本当にそれだけの理由だったかを,フェリクスは語ろうとしない。

イベントストーリー「壊れた世界の花」より
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 彼の言う「面白い」には,いろいろな意味が込められているのだろう。そのうちの一つは,もしかしたら「見たことのない景色が見たい」というものではないかと思う。そして今,共に旅をすると決めた仲間――燈,遵,虎春,大門となら,そこにたどり着けると信じているのだと。フェリクスは「一度壊れてしまった世界は,もう元には戻らない」とも言っていた。だからこそいつか,お互いの本音を打ち明け合い,より深くつながりあうことが必要になる日がくるように思う。

イベントストーリー「壊れた世界の花」より
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 何かを諦めるのが「大人」だとは思いたくないし,彼らもきっとそうだろう。5人の絆が今よりもっと強いものになったなら,何も捨てる必要はなくなるはずだ。そのとき,美しく咲く銀の百合は,刹那に散る花でなく永遠に枯れない花になるのだ。そしてその日はきっと,いつか必ず訪れると信じている。

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 第4回記事もお楽しみに!

■たまお(ライター)■

 エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」など。

Twitter(@tamao_writer)


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