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NVIDIA,ノートPC向け「GeForce RTX 2080 SUPER,2070 SUPER」を発表。薄型軽量ノートPC向け技術「Max-Q」の新版も登場
ノートPCにもSUPERシリーズのGPUを搭載可能に
まず1つめの新型GPUについてだが,GeForce RTXシリーズのハイエンドクラスである「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)と,ミドルハイクラスの「GeForce RTX 2070」(以下,RTX 2080)に,スタンダードモデルよりも高性能なSUPERシリーズを追加するというものだ。
デスクトップ版RTX 20シリーズにおけるSUPERモデルは,上位モデルのGPUコアを採用しつつ演算ユニットを削減していたり,逆にスタンダードモデルで削減していた演算ユニットを有効にしたりしていた(関連記事)。
今回発表されたノートPC向けRTX SUPERシリーズでも,同様のアプローチのスペックアップが行われた。具体的なスペックを下に示そう。
当然ながら,動作クロックはデスクトップPC向けRTX SUPERには及ばないものの,CUDA Core数やグラフィックスメモリ容量は同等である。それ以外で目に付く違いといえば,デスクトップPC向けRTX 2080 SUPERは,メモリクロックが15GHz相当で,メモリバス帯域幅が496GB/sだったのに対して,ノートPC向けRTX 2080 SUPERではそれぞれ,14GHz相当の448GB/sであり,ノートPC向けRTX 2080と同等となっていることくらいか。グラフィックスメモリ周りの消費電力と性能を考慮したうえでの選択であろう。
RTXシリーズを薄型軽量ノートPCに搭載するための「新Max-Q」とは?
実のところ,NVIDIAが今回の発表で最も力を入れていたのは,新GPUの紹介ではなく,「New Max-Q Technology」,すなわち新しいMax-Q Technology(以下,Max-Q)の説明であった。
簡単に解説すると,Max-Qとは,「薄型軽量ノートPCにおけるTDP(Thermal
なお,Max-QモデルのGPUは,とくに選別品というわけではなく,汎用品が用いられているそうだ。
今回の新Max-Qも,搭載対象のGPUが最新のGeForce RTX 2080/2070/2060シリーズ(※無論SUPERシリーズも含む)となっただけで,コンセプトそのものは従来のMax-Qと変わらない。
そんな新Max-Qでは,以下のスライドにある5つの要素が基盤になっていると,NVIDIAは説明する。
なかでも,今回の発表でNVIDIAが重点的に説明しているのが,「Dynamic Boost」と「Advanced Optimus」の2つなのだが,それ以外の3つについて,簡単に解説してしまおう。
まず「Low Voltage GDDR6」は,低電圧版GDDR6メモリの採用を示す。低電圧で動作するGDDR6メモリ採用することで,システム全体の消費電力と発熱を抑えるというわけだ。メモリチップに関する具体的な仕様は明らかになっていないが,標準的なGDDR6の駆動電圧の1.35Vよりも低い1.25V程度で駆動するものを採用していると考えられる。
「Next Gen Regulator Efficiency」は,CPUやGPUなどのプロセッサに対して,安定した直流電源を供給するためのレギュレータとして,発熱が少なく電力変換効率に優れた新しい世代のパーツを活用することで,これまた消費電力と発熱を抑えられることを意味する。
「DLSS」は,GeForce RTXシリーズの登場に合わせて発表となったグラフィックス技術「Deep Learning Super Sampling」(DLSS)を利用することで,バッテリー駆動時間を延ばせるという意味だ。
DLSSについては何度か説明しているが,GeForce RTXシリーズが内包する推論アクセラレータ「Tensor Core」を使い,グラフィックスに対して後処理を加えるポストプロセス技術である。今回の新Max-Qにおいては,低解像度のグラフィックスを描画したうえで,DLSSを活用して超解像処理とアップスケール処理を行うことでGPUの負荷を抑えることを主目的としているようだ。
新Max-Qを支える最重要技術その1
Dynamic Boostとは?
それでは,新Max-Qにおける2つの重要要素について説明していこう。
まずはDynamic Boostだが,結論から言ってしまうと,AMDが2020年1月のCES 2020で発表した「SmartShift」と,ほぼ同じ発想の技術である。
NVIDIAの説明によると,既存の単体GPUを搭載したノートPCでは,設計においてTDPを「CPUに何W分,GPUには何W分」と言った具合に,固定で割り当てていたという。
ただ,実際のノートPC活用シーンにおいては,CPU負荷が高いアプリもあれば,GPU負荷が高いアプリもある――ゲームはその典型だ――と言った具合で,固定値でTDPを割り振る方法が,逆に性能発揮を阻害する要因になりかねなくなってきた。
そこでNVIDIAは,PCで動作しているアプリがCPUとGPUのどちらに負荷をかけるものなのかを監視して,より高い負荷がかかるプロセッサのほうに電力予算(≒発熱予算)を割り当てる制御を取り入れたという。この仕組みがDynamic Boostである。
たとえばゲームの場合,GPU負荷は100%近くにまでなるが,CPU負荷は50%未満で推移するケースが少なくない。そんなときはCPUに対する電力予算を削り,GPU側にそれを回すのだ。こうすることで,GPUはより高い周波数と電圧で動作できることになり,描画性能を向上させられる。まさに,これはAMDのSmartShiftと同じアプローチの技術である。
このDynamic Boostによる制御のおかげで,同じ筐体設計とTDPのノートPCであっても,新Max-Q世代のほうがより高いグラフィックス性能を発揮できることを見込めるわけである。
なお,Dynamic Boostは,新Max-Q対応PCでのみ機能するものとのこと。つまり,従来のMax-Qに対応するノートPCでは利用できないそうだ。
新Max-Qを支える最重要技術その2
Advanced Optimusとは?
もう1つの重要技術であるAdvanced Optimusは,従来から存在した「NVIDIA Optimus Technology」(以下,Optimus)の改良版に相当する。
Optimusは,NVIDIA製単体GPU(dGPU)とCPU内蔵GPU(iGPU)を適宜使い分ける制御システムのこと。新版OptimusともいえるAdvanced Optimusは,従来のOptimusは対応していなかったディスプレイ同期技術「G-SYNC」や,最大で4K解像度かつ120Hzの高リフレッシュレート表示にも対応可能となった。
実のところ,OptimusとAdvanced Optimusのユーザー体験に差はあまりないとも言えるのだが,技術観点から見ると,実装はだいぶ変わっている。
これまでのOptimusは,システムに存在する2つのGPU,すなわちiGPUとdGPUのどちらを動作させるのかを切り換えるものでしかなかった。これに対してAdvanced Optimusでは,「2つあるGPUのどちらをディスプレイに接続するか」を切り替えるスイッチング制御を行えるようになったのだという。
また,従来のOptimusでは,切り換え時に一度画面が消えてしばらく何も表示されなくなったり,場合によっては再起動を促されることもあったが,Advanced Optimusではそうしたことがなく,ほぼ瞬間的にiGPUとdGPUが切り替わるのが特徴だとのこと。
なお,Advanced OptimusにおけるiGPUとdGPUの切換トリガーは,DirectXやOpenGLなどのグラフィックスAPIを使用することである。そのため一部のペイントソフトのようにCPUしか活用しないタイプのアプリケーションでは,Advanced Optimusが作動しない場合もあるそうだ。
なお,これら新Max-Q対応ノートPCは,RTX SUPER搭載のハイエンド製品だけではなく,ミドルクラスへの展開も計画しているとのこと。具体的には,「GeForce GTX 1660」シリーズを搭載したモデルの登場もあり得るとのことであった。また,AMD製CPUやAPUとの組み合わせでも動作できると,NVIDIAは説明していたので,Ryzen+GeForce搭載のノートPCでも,新Max-Qに対応する製品が出てくるかもしれない。
Max-Qはクリエイター向け「RTX Studio」シリーズにも
NVIDIAの発表によると,NVIDIAが推進しているクリエイター向けのGeForce RTXシリーズ搭載ノートPC向けロゴプログラム「RTX Studio」に準拠した製品にも,新しいMax-Qは展開されるそうだ。
NVIDIAのノートPC向けGeForce製品情報ページ
NVIDIAのGeForce公式Webページ
- 関連タイトル:
GeForce RTX 20,GeForce GTX 16
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