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印刷2018/09/15 00:00

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「F1 2018」,「レーシングドライバーの大変さを知ってもらえて嬉しい」と語った現役レーシングドライバー“宮田莉朋選手”のインタビューをお届け

画像集 No.009のサムネイル画像 / 「F1 2018」,「レーシングドライバーの大変さを知ってもらえて嬉しい」と語った現役レーシングドライバー“宮田莉朋選手”のインタビューをお届け
 ユービーアイソフトが,2018年9月20日に発売を予定しているFIA フォーミュラワン ワールドチャンピオンシップ公式ビデオゲームシリーズ最新作「F1 2018」。2018年のF1世界選手権に参戦するチーム,ドライバー,そしてサーキットなどが公式データに基づいて収録され,ハンドリングやサスペンションなどの物理データは,これまでのシリーズを通してブラッシュアップされ,よりリアリティの追求がなされている。

 そして,今回のF1 2018の大きな特徴となるのが,キャリアモードでメディアへ対応する要素が追加されたことだ。これは,モーターホームやパドックなどで,メディアからレースパフォーマンスやチームメイト,チームとの契約などについて質疑され,その回答次第でチームの士気が下がったり,その後のチーム移籍などに影響が出るようになる。これにより,普段,我々があまり目にしないモータースポーツの裏側的な部分も体験できるのだ。

 今回,19歳という若さで,全日本F3選手権,SuperGT300クラス,インタープロトシリーズと,さまざまなレースカテゴリで活躍するレーシングドライバーの宮田莉朋(みやたりとも)選手(以下,宮田選手)に話を聞く機会が得られた。プライベートでもレースゲームをプレイしているという宮田選手に,F1 2018の新要素であるメディアへの対応などを含め,気になるところをじっくりと聞いてみた。

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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。ゲームはよく遊ばれているとのことですが,いつ頃からゲームを遊んでいるのでしょうか。

宮田選手:
 父親がゲーム好きだったので,その影響で小さい頃から遊んでいました。初代PlayStationからPlayStation 4まで全部持っていて,このF1シリーズはPlayStation 3のときから遊んでいます。F1シリーズのほかには,グランツーリスモも遊んでいますね。

4Gamer:
 自宅でレースゲームをプレイする際は,レーシングコクピットやステアリングコントローラは使われていますか。

宮田選手:
 レーシングコクピットは,今まで使っていた物が古くなってきたこともあり,実際のレースで使用しているものに近いバケットシートタイプのPlayseat F1に,ちょっと前に買い換えました。今年は,MSYさんのTeam GRAPHTからサポートしていただいていることもあり,ステアリングコントローラは,Thrustmaster T-GTを使っています。

4Gamer:
 なるほど。さすがにプレイ環境もこだわっていますね。宮田選手にとってレースゲームはどのような位置付けになりますか。

宮田選手:
 実際のレースでは,思うような結果が出なければストレスも溜ります。その気持ちを切り替えたり,リラックスするためにレースゲームをプレイしています。ゲームでも負けるとストレスが溜るので(笑),レースゲームは基本的に1人でプレイしてます。1つのことに集中するのが好きなので,タイムアタックをとことん突き詰めて走り込んでいます。

4Gamer:
 ストレス解消としてレースゲームをプレイされているんですね。

宮田選手:
 ストレス解消もそうですが,タイムを更新するには,とにかく長い時間,集中してやることが重要なので,自ずと実際のレースで集中力を高めるためのトレーニングになっているかもしれません。

4Gamer:
 遊びながら集中力を高めるトレーニングになれば一石二鳥ですね(笑)。

宮田選手:
 集中力を高められるものはほかにあるでしょうし,トレーニングといえるほどではないですが,基本的にレースゲームですね。自分の好きなもので,1つのことに集中した方がいいと思うので,それにレースゲームを活用しています。
 それと,このF1シリーズでは,練習走行,予選,決勝と現実のレースウィークと同じ流れになっているので,次のレースに向けて気持ちを保つためにレースゲームをプレイすることもありますね。

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4Gamer:
 なるほど。レースゲームを楽しむだけでなく,レーシングドライバーとして次のレースウィークに向けてシミュレーションというか,気持ち作りにも活用しているのですね。ちなみに,レースゲーム以外に何かゲームをプレイされていますか。

宮田選手:
 今,ハマっているのは「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」「レインボーシックス シージ」です。レインボーシックス シージは,ランクマッチなどにも参加して楽しんでいます。
 サポートしていただいているユニットコムさんのゲーミングノートPCを常に持ち歩いていて,トレーラー(モーターホーム:レースウィーク中にドライバーやスタッフが過ごすところ)や滞在先のホテルなどで楽しんでいます。

4Gamer:
 レースウィーク中はレースゲームで遊ばないのですか。

宮田選手:
 レーシングコクピットとステアリングコントローラを使って遊びたいので。さすがにそれを持ち運ぶのは難しいですから(笑)。
 プレイ環境が整っている自宅ではレースゲームがメインですが,今年は複数のレースカテゴリに参戦していて,忙しくて家に帰れることが少なくて……。なので,ゲーミングノートPCでプレイできるFPSをプレイすることが増えてます。レースゲームとFPSのどちらをプレイするかは,そのときの環境によるところが大きいですね。

4Gamer:
 F1 2018には,鈴鹿サーキットなど宮田選手が実際にレースで走ったことのあるサーキットが収録されていますが,レーシングドライバーからみたサーキットの再現度はどのような印象ですか。

宮田選手:
 鈴鹿については,コーナーのバンク角,縁石の高さの違いなど,すごく細かいところの違いはありますが,サーキットのレイアウトや雰囲気などのリアリティは非常に高いです。
 それと,ステアリングコントローラのフォースフィードバックで路面から伝わる振動,タイヤから伝わるグリップ感などは現実に近いものが感じ取れて驚きました。レースゲームでここまで近づいてきたんだなと思います。

4Gamer:
 挙動変化の再現についてはいかがでしょうか。

宮田選手:
 実際にF1マシンに乗ったことがないので比較はできないですが,F3マシンと比べるとフォーミュラーカーのセッティングや挙動変化はうまく再現されていると思います。とくに走行中に前後のブレーキバランスや燃料マッピングを変えたり,挙動変化に応じて細かく設定を切り替えられるのは実車と同じで良いです。

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4Gamer:
 なるほど。では,レインコンディションの挙動変化の再現などはいかがですか。

宮田選手:
 レインコンディションは,タイヤのグリップ感などはリアルはリアルですが,雨量によってサーキットのさまざまなところに水たまりや川ができますが,そこに乗ったときの挙動変化が少ないので……そのへんはまだまだという印象です。

4Gamer:
 なるほど。レインコンディションは,まだまだリアリティを追求していかなければならない部分があるのですね。

宮田選手:
 でも,全体的にうまく再現されていると思います。

4Gamer:
 F1 2018のキャリアモードでは,パドックなどで話しかけてくるレポーターとの質疑応答により,チームやスポンサーの評価が下がったり,その後のレースキャリアに影響が出るようになりますが,そのあたりは現実と比べてといいますか,レーシングドライバーの視点からみて,どのような印象ですか。

宮田選手:
 レーシングドライバーとメディアとの質疑応答は,実際のパドックなどでもありますし,この結果でキャリアが左右されることも本当にあります。これは,レースゲームでも必要なことだと思っています。
 現実では,そのコメントがチームやメーカーに失礼なことなら,自分の評価が下がる原因にもなりますし,チームの士気に影響することもあります。車の速い遅いをすべてチームやメーカーのせいにしてはいけないですし,結果が残せなければレーシングドライバーが悪いという見られ方にもなります。そういったことをメディアを通して応援してくれる人たちに,どうやって伝えるかもレーシングドライバーとして重要です。
 そういった質疑応答が影響して,次のシーズンに向けてトップチームに移籍できたり,移籍したいのに同じチームで走ることになったり,レーシングドライバー(プレイヤー)の対応により,そういうことが決まったり,大きく影響が出るというのは,現実のレーシングドライバーとして見ても現実味がありますね。

4Gamer:
 現実に近いことが再現されていて,車を速く走らせるだけではないレーシングドライバーの別の仕事も体験できるのですね。メディアとのやり取りは,我々が記事として目にすることはあっても,その質疑応答に関わることは当然なくて,しかもその影響を体験できるのはとても面白そうです。

宮田選手:
 ゲームを通じて,レーシングドライバーの大変さを知ってもらえる,味わってもらえるのは本当に嬉しいです(笑)

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4Gamer:
 話は変わりますが,昔からF1を知る人にとって,懐かしのクラシックマシンを扱えるところも,このF1シリーズの魅力の一つだと思います。今回のF1 2018では,1970年&1980年代のクラシックマシンが収録されていますが,走ってみた感想を聞かせていただけますか。

宮田選手:
 電子制御やパドルシフトなどレーシングドライバーをサポートしてくれる現代のマシンと比べると,当時は電子制御もないですし,クラッチ付きのHパターンシフトだったり,現代のマシンと比べるとあり得ないマシンです(笑)。
 当時の実車に乗っていないので再現度については分からないですが,2000年代のマシンならば現代のマシンと比べて大きく変わらない感じですが,それ以前の年代のマシンでは,ドライビングの難しさが感じられました。

4Gamer:
 その頃は純粋にレーシングドライバーの腕だけが試された時代で,応援している我々もそれが分かっていたので,ギリギリの走りで最速ラップを叩き出すレーシングドライバーを熱い気持ちで応援してました(笑)。

宮田選手:
 昨日(9月9日)まで岡山でレース(全日本F3選手権第14戦)でしたが,岡山国際サーキットのコースレコードが現在もアイルトン・セナ選手のタイム(※)で。それは1990年代のタイムなのですが,進化しているはずの現代のマシンでも更新されていなくて,当時のレーシングドライバーがどれだけ凄いマシンを操っていたのか,それをレースゲームで体験できるのは素晴らしいと思います。

※1994年4月14日から17日まで,F1世界選手権第2戦パシフィックグランプリが岡山国際サーキット(当時はTIサーキット英田)で開催された。アイルトン・セナ選手が乗るウィリアムズFW16は,アクティブサスなどの電子制御が前提の設計だったが,レギュレーションにより電子制御が使えなくなり,その影響で挙動が過敏で危険なマシンのまま参戦を余儀なくされた。そのF1マシンで叩きだした予選タイム“1分10秒218”が,今もなお,岡山国際サーキットのコースレコードになっている。その2週間後に行われた第3戦サンマリノグランプリ決勝(1994年5月1日)で,アイルトン・セナ選手は事故死した。

4Gamer:
 クラシックマシンは,暴力的な挙動なのに繊細なコントロールが必要で,本気でプレイすると汗びっしょりになります。でもその難しさがたまらないのですが。

宮田選手:
 F1全盛期の頃のF1ゲームは今ほどリアルではなかったと思います。それが何年かたって進化したゲームソフトで,昔のF1マシンに乗れるのは嬉しいです。レーシングドライバーだからこそ,やってみたいという興味もあるし,さまざまな年代のクラシックマシンを乗り比べできるのが良いですね。

4Gamer:
 なるほど。レーシングドライバーたちが腕だけで競い合っていた年代のマシンを試せるのは,現在のレーシングドライバーとしても魅力なのですね。さらに,我々があまり目にすることのない,車に乗っていないときのレーシングドライバーの大変さも早く味わってみたいです(笑)。今後の活躍に期待しています。今日はありがとうございました。

宮田選手:
 ぜひ味わってください(笑)。ありがとうございました。

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 インタビューのあと,設置してあったレーシングコクピット+ステアリングコントローラを使って,宮田選手にF1 2018をプレイしていただいた。「これ以外だと走れない」というコクピット視点でプレイされていたのは,さすがレーシングドライバーと感じたところだ。
 ちなみに,2018年F1世界選手権で導入されたコクピット保護システム“ハロ”もF1 2018のコクピット視点で再現されている。筆者は非常に邪魔に感じたが,宮田選手はまったく気にならないとのことだった。

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 それにしても,宮田選手は雑談をしながらも安定した走りで,バーレーン・インターナショナル・サーキットを周回していた。挙動は常に安定していて,スムーズな走りを見ているとずいぶん簡単になったのかと感じてしまう。
 実は筆者もインタビュー前にプレイしているのだが,攻めすぎてコースアウトしたり,ブレーキングが不安定でコーナーの走行ラインが乱れまくるという,とても人には見せられない走りを晒していたのが恥ずかしくなった。
 ラップタイムがまったく安定しない筆者と比べると,宮田選手はラップタイムが毎周ほぼ変わらない走りで周回されていて,さりげなくこういう走りができるプロドライバーの凄さをまざまざと見せつけられた気がした。いろいろなゲームをプレイされているというので,一段と親近感が強くなった宮田選手の今後の活躍も期待したいところだ。

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 さて,メディアへの質疑応答がキャリアに影響が出るなど,レース以外の部分でより現実味を帯びたモータースポーツの世界を体験できるようになったF1 2018。今後もさまざまなな情報が公開されるそうなので,こちらも楽しみにしつつ発売を待とう。

「F1 2018」公式サイト

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