プレイレポート
想いの奇跡に感動する「君は雪間に希う」を紹介。他人の心を読める少女と心を持たず道具として生きる男性たちによる和風ファンタジー
アイディアファクトリーから2021年7月29日にNintendo Switch向けに発売された新作乙女ゲーム「君は雪間に希う」は,お笑い芸人のハライチ 岩井勇気さんが原作・プロデューサーを務める作品だ。和風伝奇というジャンル,美麗なイラストにたまらん……! と思っている方も多いことだろう。先行プレイをしてみた感想を一言で表すと「面白かった」に尽きる。
共通ルートはほどよい長さで,個別ルートのシナリオがしっかりしているうえ,後日談になる前から胸キュンポイントを押さえたイベントが続々と発生する点も申し分ない。そして豪華な声優陣のイケボに,思わず悶えながらプレイしたことをお知らせしよう。
というわけで,ここでは本作の魅力を少しでもお伝えできたらという思いを込めてレビューをお届けしていく。
舞台となるのは,八代将軍・徳川吉宗が江戸を治める時代。異形の化け物の出現により,人々は不安な日々を送っていた。そこで立ち上がったのが徳川幕府。町の治安維持のため,異形を取り締まる組織「御庭番」を秘密裏に動かしていた。この物語は,御庭番の男性たちと不思議な力を持つ1人の少女の出会いから始まり,彼らが雪解けのような温かい愛を知るお話である。
主人公・紗乃(※名前変更可能,声なし)は,他の人には見えない「感情の糸」を見ることができる。感情の糸とは人間の首元に巻き付くように存在しており,その人の心の変化に反応して色が変化するといったもの。これは主人公にしか見えない特殊なもので,そのせいで村人たちから「さとりの化け物」と恐れられてしまう。優しかった父も亡くなり,主人公は雪が降り続く山奥で1人ひっそりと暮らしていた。
攻略対象となるのは幕府直属の御庭番
心や過去を封印され道具として戦う6人の男性たち
そんな不遇の運命に逆らうことなく慎ましく生活していた主人公のもとに,ある日2人の男性がやってくる。迷い人かと思いきや,なんと彼らは不思議な力を持つ主人公を迎えに来た幕府の使いの御庭番だと言うではないか……! この出会いが主人公の人生だけではなく,彼らの未来まで大きく変えることになるとは誰も予測していなかったであろう。
さてここからは,運命共同体ともいえる主人公の周りに現れる登場人物たちを紹介する。
◆篁 智成(たかむら ともなり)
声:小林裕介
主人公を迎えに来た1人。御庭番のなかでは新米だが,そつなく任務をこなす。主人公には不思議と何かを感じるようで最初から優しく接してくれるが,他の人には素っ気なく塩対応。
◆東条國孝(とうじょうくにたか)
声:前野智昭
誰に対しても分け隔てなく優しく接する御庭番で,主人公を迎えに来た。先輩として智成の世話を焼くが邪険にされたり,飼っている雀にも嫌われるなど苦労性でもある。
◆与市(よいち)
声:山下誠一郎
城下町にある酒屋で番頭としても働く御庭番。面倒くさがりなうえ,気分屋なので接しづらいかと思いきや,食いしん坊というお茶目な一面も合わせ持っている。
◆久賀源十郎(くがげんじゅうろう)
声:佐藤拓也
与市とともに城下町が管轄の御庭番。表向きは番方として町を巡回しているため,町民たちから慕われている。つねに冷静沈着で,竹を割ったように真っ直ぐな性格。
◆錦次(きんじ)
声:浪川大輔
娯楽街の芝居小屋で,歌舞伎役者の女形としても働く御庭番の最年長者。暇つぶしがてら相手をからかって遊ぶことがあり,主人公はよくターゲットにされる。
◆桜太郎(おうたろう)
声:斉藤壮馬
娯楽外で呼び込みの仕事をしながら情報収集もこなす御庭番。人懐っこく,主人公とも最初から既知の友のように親しく接してくれる。お調子者だが世渡り上手。
以上6人が,主人公が江戸で行動をともにすることになる攻略対象たちだ。彼らは全員,「奇虚(きこ)」と呼ばれる存在。奇虚とは,異形と戦うために陰陽師の手によって生み出された者たちをさす呼称で,見た目は人間だがその魂は物に宿っている。また任務の妨げになるため,彼らは“大事なもの”を喪失している。
攻略対象について紹介したが,続いては主人公と密接な関係を築くことになるサブキャラクターたちに注目してみよう。こちらもかなり個性的なメンバーがそろっている。
個人的には,サブキャラクターたちも個性が強くナイスなキャラクターばかりなので,ぜひ彼らの攻略ルートも出していただきたい! これは声を大にして言いたい。
◆川村京士郎(かわむらきょうしろう)
声:羽多野 渉
御庭番全体を統括している奇虚。智成や國孝らからお頭と呼ばれる。口数が少なく感情が顔に出ないため,近寄り難い雰囲気を漂わせているが,不器用なだけかもしれない。
◆宮地三茂(みやじみつしげ)
声:日野 聡
京士郎とともに,裏の御庭番として奇虚を取り仕切っている長の1人で,情に厚く仲間思いな人。同僚である京士郎や清彦,そして直属の部下である与市がマイペースなため,苦労することが多い。
◆藪田清彦(やぶたきよひこ)
声:駒田 航
裏の御庭番で奇虚を取り仕切っている長の1人。ズバズバと物を言うため,手厳しいこともはっきり口にする。隙がないように見えて意外とチョロい部分もあったり……?
◆三春(みはる)
声:小林沙苗
江戸の水茶屋の看板娘。幼い頃主人公と一緒に住んでいたことがあり,妹のように可愛がっていた。久方ぶりの再会ということで,何かと世話を焼いてくれる。
◆徳川吉宗(とくがわよしむね)
声:三宅健太
江戸幕府を治める徳川家第八代将軍。懐が深く,ちょっとやそっとでは動じない剛胆の持ち主である。先見の才にも秀でている切れ者。
◆こまめ
声:森永千才
怪我をしていたところを國孝に助けられた雀。だがなぜか恩人である國孝のことを嫌っており,主人公に懐いてしまう。可愛いマスコットのような存在。
◆比弥那(ひびな)/比弥衛(ひびえ)
声:土岐隼一
山奥の社に祀られている神様たち。お互いのことを信頼し,大切に思っている。
御庭番の一員となって異形の存在を倒す日々
奇虚である彼と近くなる距離と心の中で大きくなる存在感
生まれ持っての特別な力が認められた主人公は,御庭番の一員として任務に就くことになる。まず最初に武家町,城下町,娯楽街の中からどこに所属するのかを選ぼう。それぞれ担当者が違うので,気になる彼がいる場所を選択。そこから各所属組の共通ルートが進む。
ちなみに物語は第一章〜第三章が共通ルート,第四章から個別ルートとなる。とくに難しいシステムはないので,目当ての彼の親密度が上がる選択肢を選びながら進んでいけば大丈夫! ただし,エンディングは各キャラに2種類あるようなので,個別ルートに入ったら油断はできない。幾多もの紆余曲折を経て,主人公と彼がたどり着いた先に待ち受けるものとははたして……?
山奥の村で迫害されてきた主人公が人々を救うために尽力する中で,ともに戦う仲間たちとの間に芽生えていく大切な気持ち。それは主人公だけではなく,彼らにとっても大きな意味を成すもので,物語を読み進めていけばいくほど主人公と攻略対象の双方を応援したくなる展開だった。
そして,共通ルートからドキッとさせられる展開が多く,結ばれたあとの後日談を待たずともキュンキュンしっぱなしだった点も注目ポイント。微笑ましい気持ちのまま最初から最後までプレイすることができたので,キュン成分が欲しいんじゃー!! という方は,ぜひぜひプレイしていただきたい。
「君は雪間に希う」公式サイト
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