プレイレポート
東方Projectのキャラが入り乱れる“超人数ローグライク”「不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-」のプレイレポート&ミニインタビュー
本作は,同人サークルのAQUASTYLEが開発する東方Projectファンゲーム「不思議の幻想郷」シリーズの最新作。ローグライクゲームのシステムを採用しながらも,人数制限なしのパーティでダンジョンに挑めるのが特徴となっている。
本稿では,出展バージョンのプレイレポートに加えて,AQUASTYLEの代表であるJUNYA氏へのミニインタビューの模様をお届けしよう。
会場にはPS4版とNintendo Switch版の両方が出展されており,筆者はNintendo Switch版をプレイした。ただし携帯モードでのプレイとなったため,画面撮影が難しく,記事中の写真はほかの人がプレイしていたPS4版を撮影したものとなっている。
出展されていたのはイベントのために作られた特別バージョンで,5層のダンジョンを踏破し,最下層にいるボスを倒すとクリアという内容になっていた。
ゲーム開始後,まず表示されたのは,ダンジョンの通路にひしめくキャラクターたち。操作するのは画面中央にいる「比那名居天子」なのだが,その周りを15人ものキャラクターが取り囲んでいる。
同じローグライクゲームの「不思議のダンジョン」シリーズに登場する「モンスターハウス」を思い出し,たじろいでしまったが,すぐに周りのキャラはパーティメンバーだと気づいた(足下に緑色のリングが表示されているのがパーティメンバー)。
ローグライクなので,ゲームの進行はターン制。主人公がアクションを起こすと,それに続いてパーティメンバーが自動的に行動し,その後敵キャラクターが動く。
一般的なローグライクと若干違うのは,個々のキャラクターが順々に行動するのではなく,「プレイヤーキャラが行動→パーティメンバーが一斉に行動→敵キャラクターが一斉に行動」という流れになっている点だ。
これはプレイヤーキャラのターンが回ってくるまで時間がかかり,ゲームのテンポが悪くなることを防ぐためだろう(メーカーの担当者によると,正式には「スライスターンシステム」という名称で,フロアに何百キャラいても,3ターンで順番が回ってくるという)。
本作はローグライクゲームではあるのだが,何しろ仲間が多いので,プレイ感はまったく別物と言っていいものになっている。
一般的なローグライクゲームだと,「こちらがこう動いたら,敵はこう来るはず」といった2手3手先を読むプレイが必要になるのだが,本作では自動的に行動するパーティメンバーが入り乱れているので,先を考えたところであまり意味がない。敵を倒そうと近づいたら,攻撃する前にパーティメンバーが倒してしまうといったことが頻繁に起こるのだ。
最初は慎重にプレイしていた筆者も,これに気づいてからはダンジョン内を突進するようになった。イベント用のバージョンということで,難度が低めに設定されていたとは思うが,1〜2体の敵なら無視して移動を続けてもパーティメンバーが片付けてくれるので,まったく問題なかった。
こんな感じなので,大量の敵が出てくるフロアでも逃げる必要はなく,正面切って戦える。貫通や放射といったさまざまな種類が用意されている「弾幕」や,部屋にいるすべての敵にダメージを与えるアイテム「大気圏は我が手中にあり」を惜しげもなく使って敵を全滅させる爽快さは,ほかのローグライクゲームではなかなか味わえないだろう。
そういった豪快なバトルを,違った形で楽しめたのが最後のボス戦だ。ボスはほかのキャラクターより巨大で,攻撃できるポイントがいくつもあるため,パーティメンバーで包囲して戦うことになるのだが,その一斉攻撃は壮観。ボスもド派手で強力な攻撃を繰り出してくる。
ここに至ってはローグライク感がほとんどなくなってしまっていたが,その分高揚感のあるプレイが味わえたという印象だ。
本作の魅力は,慎重なプレイが不可欠になるローグライクゲームのシステムを採用しながら,「細かいことは考えずにとりあえず突っ込む」といったプレイができることにあると思う。ある程度ローグライクを遊んだことがある人なら「ものすごい勢いで敵を蹴散らしながらダンジョンを進んでいるけど,ローグライクなのにこんなプレイをしていいんだろうか」という,背徳感のようなものすら感じるかもしれない。
本作は「本格派のローグライクをじっくりプレイしたい」という人には一見相性が良くなさそうに思えて,実はそんな人こそハマる可能性があるゲームではないかと思う。もちろん,東方Projectのキャラクターが多数登場するので,ファンならそれだけでも楽しめるだろうし,手軽にプレイできるので,ローグライクのプレイ経験があまりない人にも一度触ってみてほしいタイトルだ。
AQUASTYLE代表 JUNYA氏ミニインタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。東京ゲームショウや,今回の例大祭で試遊した方の反応はいかがでしょうか。
JUNYA氏:
「面白いです」という反応はいただいています。ですが,直接「どうですか」と聞かれたら,とりあえず「面白いです」と答える方が多いと思うので(笑),これからアンケートなどを通して“本当のところ”を聞き,本格的にフィードバックを行う予定です。幸い,東方のファンには熱心な方が多いので,そういうことがやりやすいと思っています。
4Gamer:
本作の特徴となる大人数のパーティプレイは,以前PC向けにリリースされたミニゲーム「みらくる超パーティー 早苗と天子の幻想迷宮」(以下,早苗と天子の幻想迷宮)で初めて採用されたそうですが,このアイデアはどのように生まれたのでしょうか。
JUNYA氏:
東方Projectのキャラクターをダンジョンへたくさん連れていきたい,と思ったのが最初のきっかけです。本来のシリーズは,じっくり考えて遊ぶ一般的なローグライクなので,外伝作品では振り切ったバカっぽいものを作ってみたいとも思っていたので。
4Gamer:
もともとミニゲームだったものが,今回コンシューマゲーム機に展開するフルゲームに「出世」した経緯が気になります。
JUNYA氏:
「早苗と天子の幻想迷宮」を出すときに,多数のキャラが出ても快適に遊んでもらうため,UIやゲームテンポといったところで,それまででは考えられないくらい最適化や改善を行いました。
その甲斐あって新規ユーザーからも既存ユーザーからも好評で,その後不思議の幻想郷シリーズ作品をコンシューマゲーム機に移植するときにアンケートを取ってみたら,最も移植希望が多かったのが「早苗と天子の幻想迷宮」だったんです。
4Gamer:
では,ファン待望の作品ということですね。
JUNYA氏:
はい。最初のコンシューマ移植作にすることも考えたのですが,当時の携帯ゲーム機では大人数を動かすのが難しくて,このタイミングになりました。
余談ですが,“なんでもアリ”なゲームっぽく,ギャグとしてゲーム速度の100倍化も可能にしたら,コアプレイヤーは超爆速でも快適に遊んでいたんです。嘘だろって思うと同時に,人や状況によって快適なテンポは違うんだと参考になりました。その後はメインシリーズにも,ゲーム速度がいつでも変更できる機能を取り入れています。
4Gamer:
AQUASTYLEさんは,PlayStation 4やNintendo Switch向けに作品をリリースして,東京ゲームショウにも出展し,今回も大きなブースを構えています。
こういった活動はもはや同人サークルというより開発企業に近いのではないかという印象を受けるのですが,JUNYAさんはそういった意見に対して,自分たちは同人だと返していますよね。そう思う理由は何でしょうか。
JUNYA氏:
「やろう」と思ったことをすぐにやれるからです。普通の企業だと,何かアイデアが生まれても,それを実現するにはいろいろな調整や承認が必要になりますよね。
でもAQUASTYLEでは,個人の意思がすぐに実現できるんです。実は今日会場で配布しているものには,昨日思いついて印刷を間に合わせたものもあるんです。ゲームの発売日なども,もちろんほかの人と相談はしますが,基本的には僕が決められます。
4Gamer:
なるほど,そのフットワークの軽さは,ある程度の規模を持つ企業だとなかなか難しいでしょうね。
JUNYA氏:
そして同人サークルは,“企業ごっこ”もできるんです。今回のブースは僕がデザインして,テレビ画面のサイズといった細かいところまで決めているんですが,それはパブリッシャのUNTIESさんが自由にやらせてくれるからですね。
4Gamer:
プロモーションビデオもJUNYAさんが製作されていると聞きました。
JUNYA氏:
はい。このゲームの面白さを一番知っているのは僕ですから,僕が作るのが一番いいですよね。実はゲーム映像の取り込み以上に,エフェクトがバリバリかかった文字を格好よく出すことに命がけです(笑)。
編集の途中で,「ここにキャッチコピーが欲しいな」と思ったらその場で考えて入れます。リーダーである自分がゲームを撮影してキャッチコピーを考え,各所にエフェクト効かせてまるっと映像化する。地味にここが一番ゲーム制作でやり甲斐があるんじゃないかなあと,個人的に思ってます。
4Gamer:
そうすると,ゲームに関わることのほぼすべてを把握している,という感じでしょうか。
JUNYA氏:
僕はグラフィッカーなので,プログラムの細かい部分といったところまではさすがに分かりませんが,自分が目指すゲームに必要だと思う部分はほぼすべて把握していますし,出来上がってくるものはすべて目を通しています。
もちろん,これができるのは支えてくれる仲間がいてくれるからですけどね。みんな学生のときからついてきてくれているので,感謝しています。
4Gamer:
JUNYAさんのように,自分ができることはすべて自分でやるというのは,ある意味で開発者の理想だと思うのですが,実際にはそう簡単にいかないと思います。JUNYAさんがそれをできるのはなぜなんでしょうか。
JUNYA氏:
それは単純に,生活のすべてを創作につぎ込んでいるからだと思います。会社に勤めていると,出社から退社までがゲーム作りになると思いますが,僕の場合はその2倍,3倍の時間を使えますから。
4Gamer:
やはりそういうことになるんですね。でもJUNYAさんをそこまで打ち込ませるのは何なんでしょうか。
JUNYA氏:
それは承認欲求ですね。「面白かった」「また作って」って言ってもらいたいし,ちやほやされて,褒められたい。
たまに「寝たい」「ゲーム作るんじゃなくて遊びたい」「旅行したい」って膝が折れそうになるときも,遊んでくれる人のことを考えると頑張れます。
「こんな生活でいいのか」と思うこともなくはないですけど(笑),それでも自分の人生が一番いいと思っています。毎日楽しいです。
4Gamer:
かつてのJUNYAさんと同じように,ゲームを作ってみたいと思っている人に向けてアドバイスするとしたら,どんなことを伝えたいですか。
JUNYA氏:
やりたいことがあるなら,今すぐやろう,と言いたいです。僕は今までずっとそうしてきたので。ゲームを作ろうと思ってすぐに作り始められる人は,その後もずっと作っていけるでしょうし,始められない人はずっとそのままだと思います。腹が減ったらご飯を食べる,眠くなったら寝ると同じように,創作したくなる欲求というのは,止められるものじゃないですしね。
4Gamer:
悩んでいるなら始めろと。
JUNYA氏:
高いと思っているハードルも,細かく分割して低く並べたら意外と簡単に飛び超えられることがありますし,いくらでもやり方の参考にできるものがありますから。僕もブース作りは今回が初めてでしたけど,PAX WESTのDevolver Digitalブースからアイデアを得たんです。実際に現地で体験してみて,自分の家でゲームやってるみたいにとても居心地がよかったので,うちのブースも快適さ重視にしようとか。だいたい,長時間立って並んで待って,プレイ中でも立ったままだと,ゲーム楽しむ以前に疲れちゃいますよ(笑)。
僕は「アイデアのコンバート」という表現をよく使うんですが,すでにあるものからアイデアをもらって,それをふさわしい形にアレンジすれば,何だってできるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
では,4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
JUNYA氏:
「不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-」は,お祭りゲー寄りの大人数パーティーローグライクです。シリーズを遊んでいただいている人には,いつも通りのやりがいがありつつ,新しい楽しさを感じてもらえると思います。いつもながら外伝作品と言ってもソロパーティー未識別99Fダンジョンはあります。
正統派のローグライクではないですが,キャラクターが沢山でてくる賑やかなゲームになっているので, シリーズ未体験の人も,これを機に不思議の幻想郷や東方Projectに触れてもらえるとうれしいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-」公式サイト
- 関連タイトル:
不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-
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(C)上海アリス幻樂団 / (C) AQUA STYLE
Published by Sony Music Entertainment (Japan) Inc.
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