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「ディアブロ イモータル」では,これまでどおり自力で装備を揃えていく。Pay-to-Winにならない形を目指した課金システムに
2018年11月に制作がアナウンスされた「ディアブロ イモータル」は,Blizzard Entertainmentにとっては初のモバイル専用ゲームであり,NetEase Gamesと共同開発を行うシリーズ作品でもある。すでに8月の時点で,「社内向けのテクニカルαテスト」は行われていたが(関連記事),今後はオーストラリアのプレイヤーを中心に,一般向けにもテストサーバーが開かれるという。
ディアブロのストーリーにおいて大きなカギを握る“ワールドストーン”は,永遠の戦いを繰り広げてきた天界と魔界の侵攻を防ぐ強大なパワーを持った,宇宙の創造時から存在するアーティファクトで,ゲームの舞台である人間の世界「サンクチュアリ」を長らく保護してきた。
しかし,「ディアブロII:ロード オブ デストラクション」では,破壊の魔王であるバールが,兄弟である恐怖の魔王ディアブロと共にワールドストーンを汚染するのに成功したため,強大な魔の影響を恐れた大天使ティラエルが,自らを犠牲にしてワールドストーンを葬ったという結末を迎える。
「ディアブロ イモータル」では,その後にニュー・トリストラムに隕石が落下して“魔の予言”が現実味を帯び始める「ディアブロ III」が始まるまでの,知られざる24年間が描かれている。
粉々に砕け散ったワールドストーンはサンクチュアリの大地を穢してしまう結果となり,ティラエルの死により影響力を失っていた天界を後目に,魔王ディアブロ直属の配下である新キャラクター,スカーンが,ディアブロの復活を目指して破片を集めて回っている状況。プレイヤーは,それを食い止めるサンクチュアリの守護者となって,魔界の軍勢と戦っていくことになるのだ。
ワイアット・チャン氏 |
ケイレブ・アーセノウ氏 |
壮大なディアブロの世界を手のひらの中で
アーセノウ氏によると,「ディアブロ イモータル」のテクニカルαテストでプレイアブルになるのは,「バーバリアン」「ウィザード」「モンク」と,本作においてはオリジンストーリー(誕生起源)に迫るという「デーモンハンター」の4つだ。
残りのクルセイダーとネクロマンサーについては,プレイ動画などの続報がなく,欧米のファンの中では,この2年ほどの間に設定が変わったとか,開発に時間がかかっているんじゃないかという声も出ていたが,正式ローンチまでにはしっかりと6つのキャラクタークラスを選択できるようになると,チャン氏は話していた。
「ディアブロ イモータル」で強調されているのは,「MMOARPG」(MMO型アクションRPG)というワードで,実際に1つのサーバーに数万人のプレイヤーが同時アクセスできるという。もっとも,どこに出掛けてもほかのプレイヤーでごった返しているという状況にはならないようで,そのハブとしての役割は,町や村などに限定されているようだ。
ゲームモードについては後述するが,ここでほかの冒険家と出会ってパーティを組み,ダンジョン攻略に出掛けることもできる。これらのハブでは,ギルドに参加したり,酒場で大騒ぎしたり,アイテムを売買したり,あるいは“バウンディ・ボード”でミッションを探したりもできるという。
ニュー・トリストラムはまだ建設中なので,プレイヤーのスタート地点は同じカンデュラス地方にある漁村「ワーザム」(Wortham)になる。ここは,「ディアブロ III」の第1章でニュー・トリストラムから船で移動できる場所であり,隕石の欠片が落ちて小さな教会とその周囲が燃え盛っていたことを覚えているファンも多いだろう。このワーザムにおいて,プレイヤーは賢者デッカー・ケインに見いだされて,スカーンの痕跡を追っていくことになる。
チャン氏の解説を聞く限りディアブロ イモータルでは,これまでの「ディアブロ」シリーズと同じく,ゾーンごとに拠点となる街が変わっていくシステムを採用しているようだ。ワーザムから,無慈悲に処刑されたレオリック王の王妃が埋葬されている「アッシュウォルド墓地」(Ashwold Cemetery)や,カルト教徒のねぐらになり果てている「常闇の森」(Dark Wood),そして古都「ウェストマーチ」(Westmarch)へと続くが,これでもサンクチュアリの大陸の南西部をカバーしているに過ぎない。もちろん,ウェストマーチが多くのプレイヤーが集う重要拠点になるのは間違いなさそうだ。
なお,今回メディア向けに公開されたデモ映像では,「ディアブロ II」の第1章で登場した「The Countess」(伯爵夫人)が登場していたが,彼女は若い女性ばかりを虐殺して作り上げた血の風呂で儀式を行うことで,魔の力を得たという設定だった。アーセノウ氏が公開したアートワークは,かつての緑色の風貌が,どこか吸血鬼を思わせる色白な容姿と,ディアブロのような悪魔の翼を持つゴシック感の強いイメージに変更されているが,先人が倒したはずの彼女はいかなる理由で復活したのだろうか。このように,前作をプレイしたファンの心をくすぐってくれそうな仕掛けが多そうなのは好印象だ。
もちろん「ディアブロ イモータル」では,「ディアブロ II」以前のモンスターばかりが登場するのではなく,「ディアブロ III」で描かれているものや,新種のクリーチャーたちも登場する見込みとなっている。そうした敵の情報は,「怪物に関する書」(Bestiary)という専用ページに書き留められていくそうだ。
妥協のないハック&スラッシュRPG
「ディアブロ イモータル」に用意される各ゾーンでは,メインクエストやサイドクエスト,そして時期限定の「ポップアップ・クエスト」などが楽しめる。また,それぞれのゾーンには,「ゾーンの試練」という特別なイベントが発生し,クリアできれば良い報酬がもらえるそうだ。ゾーンの試練は「サーバーに渡ってのプレイ」ということで,画面には表示されないほかのプレイヤーと協力する形で,強大な敵と戦うようなシステムになっているとのことだ。
αテストでアンロックされているダンジョンは7つで,最大4人のプレイヤーでパーティを組んで攻略できる。このほか,「ディアブロ III」にも登場した「リフト」は,本作では「エルダー・リフト」及び「チャレンジ・リフト」という名称になり,好きなだけ挑戦できる。
チャレンジ・リフトは,スピードランの要素も加えられており,そのスピードをほかのプレイヤーと競えるリーダーボードも用意されているのは面白い。リーダーボードの結果は毎週集計され,高いランクに入れば良いアイテムがプレゼントされるという。
ダンジョンの難度は,パーティを組んで入場した時点で,人数やプレイヤーレベルに合わせて自動で設定される。ここで気になるのは,メンバーの途中抜けで難度が緩和されるかどうかだが,チャン氏によると一度決まったダンジョンの難度は変更されないそうだ。そうなると,嫌がらせによる途中抜けなどの迷惑行為が懸念されるところだが,現状は報告システムに頼るしかなさそうだ。
ゲームプレイにおいては,新たに「アルティメット・アビリティ」が加わるのも特筆しておくべきだろう。これは,ゲーム画面の下に細い棒状で表示されているメーターがいっぱいになることで発動できる究極技のことで,それぞれのキャラクタークラスに複数のものが用意されているという。名称や特性などは発表されていないものの,発動すると数秒間は群がる敵に対して無双できるようになり,それぞれのビジュアル効果も画面いっぱいに広がる非常な派手なものになっているようだった。
作り込まれたアイテムシステム
「ディアブロ イモータル」では,「兜」「鎧」「肩当て」「下衣」「メインハンド武器」「オフハンド武器」という6つのメインスロットと,ジュエリー類7つの合計13種のスロットを使って,好みのビルドを組める。これらの装着型アイテムは,敵を倒してルートを得たり,ゲームプレイで獲得したゴールドを利用してショップで購入したりと,これまでどおり自分の力で入手していく必要がある。
レジェンダリーアイテムの1つとして紹介されたのが,ウィザードのジュエリーとなるフローズン・オーブ「凍て付いた道の探求」(Vision of the Frozen Path)だ。このアイテムを装備すると,自分の歩いた場所が凍り付き,そこに歩みこんだ敵を凍らせたり,移動速度を緩めたりできる。
必要のないアイテムは解体し,それを再生成(アイテム・リフォージング)してより良いアイテムを作り出すこともできる。また本作では,「アイテム・ランキング」というシステムが採用されており,5レベルごとに追加の特性を獲得し,最大で20レベル(レベル1を加えて合計5段階)までランクアップできる。序盤で手に入れたレジェンダリーアイテムもランクアップしていけば,長く使っていけるだろう。
シリーズではおなじみのジェム(宝石)もあり,これをソケットにはめることでアイテムの性能を向上させることも可能だ。また本作にも「レジェンダリージェム」が登場し,ステータスを劇的に変化させられる。ほかにも,プレイヤーキャラクターとつながる「ソウル・ジェム」というものもあるようだが,このあたりの詳しい解説はなかった。
ちなみに「ディアブロII:ロード オブ デストラクション」に登場した「チャーム」も復活している。同作ではかばんに入れておくだけで効果を発揮していたが,本作では専用のスロットが用意されており,そこに装備することで効果を得られる仕組みになっている。
基本プレイ料金は無料 〜 Pay-to-Winにならない形での課金システム
「ディアブロ イモータル」は,「Free-to-Play」(基本プレイ料金無料)になることが正式にアナウンスされている。まだ具体的なシステムについては未知数であるが,本作では課金要素の1つとして「バトルパス」というアイテムが存在しており,プレイヤーの進捗を加速させるという。
さらに,特殊なアフィックス(装備に付くオプション効果)を,より高い確率で引き出す「スペシャライズ・ジェム」というアイテムも存在する。もちろんこのアイテムを買わなくても,すべてのアフィックスは確率で発生するが,課金したプレイヤーに「自分がそれだけの対価を払ったことに満足してもらえる」ような配慮にしていると語っていた。
この「ディアブロ イモータル」には,プレイヤーがアイテムを購入できる「マーケット」も存在し,プレイヤーはそこで必要のないものを売り買いできるという。ただ,これは「ディアブロ III」で批判の末に削除された「オークション」システムとは異なり,アイテムの値段は事前に設定されているという。しかも,売買できるのはジェムやチャームなど少量のアイテムだけに留められており,武器やアーマーなどの装着型アイテムのトレードは考慮されていないとのことだ。
なお,「ディアブロ イモータル」にはゲームプレイを通して得ることのできる「ゴールド」と,マーケットなどで利用する「プラチナ」,そしてプラチナに換算できる「永遠のオーブ」(Eternal Orb)という3つの“通貨”が存在するとのことだ。
ご存知のように,古参の「ディアブロ」ファンにとっては,モバイルゲーム的な「Pay-to-Win」やガチャ要素を懸念している人も少なくなかったはずだが,今回の説明を受けた限りでは,そうした心配はなさそうだ(そもそも本作にPvPはないので,厳密に言えば「Pay-to-Win」にはなり得ないが)。
筆者は数多くのモバイルゲームをプレイしているわけでないので,最適な例えではないかもしれないが,「Pokémon Go」のように,無料でプレイする人も課金する人も,それぞれが満足できる形で熱中していけるような設計になっているという印象を持った。
現時点では,日本でのテクニカルαテスト,もしくはβテストの運用についてのスケジュールやロードマップについては公表されていないが,本作を開発するにあたって,アジアのモバイル市場を良く知るNetEase Gamesに,初めて自社IPの共同開発を委託するという決断を行ったのも,日本を含むアジア市場での,さらなる「ディアブロ」人気のテコ入れを重視しているからにほかならない。
実際,アーセノウ氏は「本作は,ライブコンテンツもすべて日本語化される」と話しており,日本にも相当のディアブロファンがいることをしっかり認識している様子だった。
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,Blizzard Entertainmentの開発メンバーも機材を自宅に運び込んでの作業を強いられているそうだが,そもそもNetEase Gamesとのやり取りはオンラインが基本であるため,作業自体は変わらず円滑に進められているという。
テクニカルαがはじまったばかりなので,ファンによるゲームプレイ映像が公開されるようなことはしばらくなさそうだが,2月中旬の開催が予定されている「BlizzConline 2021」では,本作への注目がさらに高まるような情報に期待しておきたいところだ。
「ディアブロ イモータル」公式サイト
「ディアブロ イモータル」事前登録ページ(App Store)
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