インタビュー
「ペルソナ5」から「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」までの3年で取り組んだシリーズの挑戦とは。ペルソナチームの和田和久氏と伊東大輝氏,デザイナーの副島成記氏に話を聞いた
アトラスというゲームメーカー全体でも,「真・女神転生」シリーズ25周年や「世界樹の迷宮」シリーズ10周年,新プロジェクト「PROJECT Re FANTASY」発足,そして「ペルソナ」シリーズ20周年と大きな動きが多かったこの3年。そんな中で「ペルソナ」シリーズを制作するペルソナチーム(P-STUDIO)は,同発となった「ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト」(PS4 / PS Vita。以下P3D)と「ペルソナ5 ダンシング・スターナイト」(PS4 / PS Vita。以下P5D),「ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス」(3DS。以下,PQ2),そして「P5R」と多くのタイトルを輩出している。
さらに新たな挑戦の形となる,コーエーテクモゲームスのω-Forceとの共同制作によるシリーズ初のアクションRPG「ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ」(PS4 / Switch 以下,P5S)の発売が,2020年2月20日に控えている状況だ。
これまで以上にアクティブだったこの3年について,ペルソナチームの和田和久氏と伊東大輝氏,そして「ペルソナ」シリーズのアートワークやデザインでおなじみアートワークチームの副島成記氏にインタビューを行い,「P5」から「P5R」までのチームの取り組みやタイトル制作,そして「ペルソナ」シリーズへの思いについて語ってもらった。
「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」公式サイト
いい意味で期待を裏切らなければならない――
「P3D」「P5D」「PQ2」での取り組みを振り返る
4Gamer:
本日はありがとうございます。まず自己紹介を兼ねて,「ペルソナ」シリーズに関わる前と,ペルソナチームに入ってからの担当作品を聞かせてください。伊東さんは4Gamerのインタビューにご登場いただくのは初めてですね。
ペルソナチーム 伊東大輝氏(以下,伊東氏):
はい。私はペルソナチームに入る前は,プランナーとして「真・女神転生III-NOCTURNE」や,「DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー」の1と2といった制作に参加しました。
ペルソナチームに加わった作品は「ペルソナ3」で,以降は「ペルソナ3フェス」「ペルソナ3ポータブル」「ペルソナ4」といったナンバリングやメインタイトルにはほぼ関わり,「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」や今回の「P5R」ではディレクターを担当しています。
4Gamer:
年末のクリエイターアンケート企画や,昨年(2018年4月)開催された「P3D」「P5D」「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」合同体験会(関連記事)でのメッセージなどいろいろご協力いただいている和田さんですが,こういったインタビューに登場いただくのは2012年3月の「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」インタビュー(関連記事)以来となります。
ペルソナチーム 和田和久氏(以下,和田氏):
もう7年以上前ですか……だいぶ久しぶりですね。えー,僕は1998年11月にアトラスに入社しまして……。
アートワークチーム 副島成記氏(以下,副島氏):
細かいですね(笑)。
和田氏:
いや,自分でも忘れちゃってる部分があったりするので,あらためて調べましたよ(笑)。
最初に関わったタイトルは「魔剣X」で,以降は「ペルソナ2 罰」のムービー,「真3」のキャラクターモデルやイベント周り,あとは「アバタール・チューナー」2作品などですね。いまはプロデューサーやディレクターといった役割を担っていますが,もとはデザイナーとして入社したんですよ。
今のペルソナチームとしては,「P3」の最初から,以降「P4」「キャサリン」とそれぞれデザインディレクターを務めました。そこからは「P5」に関わりつつ,単独でも「P4U」「ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド」や「ダンシング」シリーズといった作品を,ディレクターやプロデューサーとして制作しています。
4Gamer:
ペルソナチームと深いかかわりのあるアートワークチームの副島さんですが,意外にも4Gamerのインタビューに登場いただくのは初めてです。
副島氏:
僕は新卒入社だったので早くて,入社は1995年かな? 最初のころは「プリント倶楽部」なども関わっていましたし,この中では一番古い人間ですね(笑)。
4Gamer:
副島さんといえば,「P3」以降の「ペルソナ」シリーズのキャラクターデザインやアートワークを確立された方ですが,あらためてそれまでを聞かせてください。
金子一馬さんのもとで「真 女神転生デビルサマナー」や「女神異聞録ペルソナ」でグラフィックスに関する作業を担当してきました。
「ソウルハッカーズ」「ペルソナ2 罪 / 罰」でサブキャラクターのデザインを任されるようになり,「ステラデウス」で初めてキャラクターデザインとアートディレクションを任され,そこからは「P3」「P4」……と,シリーズ作品のデザインを担当するようになりました。
伊東氏:
僕は別の業種からの転職だったので入社は2001年と遅いのですが,実はこの3人,年が一緒なんですよ。
和田氏:
こういうとき,いつも副島は「僕はまだ,早生まれなんで…」って言うんですが(笑),同学年ですね。
4Gamer:
そうだったのですね。今回は「P5」発売から「P5R」発売までの3年についてお聞きしたいと思います。「P5」が発売されたのちにチーム編成にも動きがありましたが,実際はそれまでとは何が変わったのでしょう。
和田氏:
セクションの割合みたいなのは基本的に変わっていなくて,例えばグラフィックス関連を担当しているチームはほぼそのままなんです。比較的変わったのはプランナーとプログラマーでしょうか。人の出入りもありましたが,それよりはもともと少なかったのを増員したことも大きいです。
4Gamer:
「P3D」「P5D」が2018年5月24日,「PQ2」が同年11月29日,そして「PQ2」から約1年後の2019年10月31日に「P5R」発売と,ここ3年はハイペースでリリースされたという印象があります。作業時期もかなりかぶっていたんじゃないでしょうか。
和田氏:
開発のスタート自体はもちろんそれぞれバラバラではあったのですが,実質的にはほぼ並行して動いていたので,3タイトルの作業がかぶっている時期もありましたね。
「P3D」「P5D」は,企画自体「P5」発売前から内容を練っていたのですが,まずは「P5」をチーム全力で仕上げなければというところで一度止まっていたものでした。正式なGOサインが出てからはすぐ進められたので,発売日順どおり「P3D」「P5D」が一番早く動いていたかなと思います。
4Gamer:
複数タイトルの制作が重なっているなか,「P3D」「P5D」はどのようなチーム編成で動いていたんですか。
和田氏:
本当に少ないメンバーで動いていて,たしか最大時で10〜15人くらいだったはずです。グラフィックス周りなど外注にお願いした部分もありましたが,少人数ながらもけっこう内部で作っていましたね。
2015年に発売した「ダンシング」シリーズ第1作「ペルソナ4 ダンシング・オールナイト」の制作後半で外部メインから内部制作に移行していたため,そのときに培ったノウハウを活かせました。
4Gamer:
ある意味で「P3D」「P5D」のストーリーはライトよりというか,けっこう振り切っているなと感じました。システムだけではなくシナリオ部分の作業も多かったのではないでしょうか。
和田氏:
まず「P3D」「P5D」は,リズムゲームを楽しみながら登場人物たちのキャラクター性や魅力を知ってもらえる作品にしたいというのがあって,これまでと違ったスタイルのストーリーにしました。「P4D」はナンバリング作品に準じた重めの物語となっていましたが,コンセプト的にリズムゲームというジャンルを活かすならもう少し気軽に楽しめるお話にしてみようと。
それもあってテキスト作業も比較的に進めやすいところもあり,とくに問題なくほかの作品と並行して作業できていたかと思います。
P3D |
P5D |
4Gamer:
いちアトラスゲームファンとしては,固い話というか考えさせられる話みたいなのを求めがちなのですが,そういったファンは少なくないと思っています。スタイルを変えるということに踏み込むのはなかなかの決心はあったのかなと思うのですが,どうだったのでしょう。
和田氏:
そうですね。「P3D」「P5D」の狙いとして「ペルソナ」シリーズの世界観やキャラクターの新たな魅力を深めたいという明確なテーマがありましたので,今までの正解とされるやり方を変えてみたかったんです。
正直,ジャンル的にも重い物語は食い合わせが悪い……という部分もありまして。賛否も覚悟していましたが,あの形式に挑戦してみたいという気持ちが強かったですね。主観視点でのイベントはペルソナでは初めてでしたし。
4Gamer:
「PQ2」はいかがでしょう。1作目の「PQ」がメインシリーズに負けず劣らず重たいストーリーでした。「PQ2」もそれに準じたものを目指していたと思うので,こちらと「P5R」が同時だったとするとこれは大変そうだな思えます。
伊東氏:
こちらはシナリオは大変でした。まさに「P5R」も進んでいたので,シナリオチームは優先度に応じて人をスライドさせながら,両方の作業を進めていましたね。
和田氏:
1作目が好評いただいていたのはもちろんですが,現場から「やりたい」「やるべき作品だろう」という声があがっていました。ただ,「やるならニンテンドー3DSだけど,ゆっくりはしていられないよね」と。
4Gamer:
ああ。たしかに次世代機でもあるNintendo Switch発売後でしたから,あまり後ろにはできませんね。3作品のデザインについて,副島さんはどのように関わっていたのでしょう。
副島氏:
私の役割は主に監修だったのですが,この3作品では本当にペルソナチームのP-STUDIO アートユニットが活躍していました。「PQ2」は織部(デザイナーの織部花子氏)がアートディレクションやキャラクターデザインで頑張っていましたし,「P3D」「P5D」はアートユニットの4人がひたすら膨大な衣装を作り続けていました。
「P3D」「P5D」「PQ2」がかぶっていた時期が,アートユニットにとって一番大変な時期だったかもしれません。
和田氏:
以前は衣装をたくさん作るという文化があまりなかったのですが,「ダンシング」シリーズではこれがだいぶ増えましたね。それがシリーズの魅力にもなっているので。
副島氏:
ただ数を用意するだけなら専任のデザイナーではなくていいのですが,登場人物それぞれに合ったものをとなるとそうはいかないですからね。
「P3D」「P5D」はストーリー性を抑えた分,衣装はキャラクターたちそれぞれのバックグラウンドが外見から透けて見えるようなデザインを目指しました。単純にカッコいいというデザインではなく,「彼はこういう考えを持っているからこの装飾を選んだのかな」「彼女はこういうギャップを狙ったのかな」みたいなことを考えて進めていったので,話し合いが多かった印象です。
和田氏:
多かったですね。「これ伝わるかな?」ってバリエーションをいくつも出してもらって。キャラクターに対する印象って人によって違うところもあるので,そのあたりを突っ込んで,また考えて……と。
4Gamer:
「彼はこの服にこんなアクセサリーはしない」みたいなのは,受け手となるプレイヤーにもあると思います。
副島氏:
そうですね。そういったファンの皆さんが持つイメージにも寄り添うことは大事なのですが,でもそれだけでは皆さんも面白くないじゃないですか。これはデザインだけではないのですが,いい意味で皆さんの期待を裏切らなければならない。「そうそう,それだよね」だけではなくて,「そうきたか!」というプラスαも重要になるんです。
「P5」をプレイした人たちもまた楽しめるものを――
新たな考えや思想が込められた「P5R」の新シナリオ
4Gamer:
では「P5R」について聞かせてください。企画立ち上げ自体はいつごろのことなのでしょう。
伊東氏:
説明が難しいところではありますが,“P5R”みたいなものをやろうというのは,「P5」完成後ほどなくしたあたりからぼんやりとあったかなと。
4Gamer:
「P4」からの「P4G」の流れがあったので,「『P5』もいずれ」みたいなものはファンの中にもあったかとは思います。ただ今回は,「P4G」のときのハード変更のような分かりやすい変化がなかったため,いざ出すとなったときのアプローチに不安はありませんでしたか。
和田氏:
「P5」では,プレイヤーの皆さんに一定以上満足いただけるクオリティのものを作り上げられたとは思いますが,一方で僕らもやり残したことがないわけではありませんでしたし,そういった点から改良点を考えていきました。
4Gamer:
バトルのやり込み要素や合体の新要素,追加ペルソナなどは,まさにコアなペルソナファン向けといった雰囲気がありました。
詳しく知りたいのがシナリオです。新キャラクターを中心としたイベントとコープで,自然と3学期に向かっていく展開を作るのは大変だったと思うのですが,どのように制作されたのでしょう。
和田氏:
まずは3学期の内容をおおよそ固めていて,そこに至るまでに必要な物語や,あったら盛り上がるだろうという展開を,もともとあるストーリーに“挟み込んでいく”という進め方でした。具体的なものだと,新キャラクターの芳澤かすみと丸喜拓人の役割設定や,3学期のキーとなる明智吾郎のコープを一新して主人公との関係を深掘りしたところでしょうか。
メインストーリーの進行中に挿入されるイベントで見せる部分とコープで見せる部分,この2つで内容を分けたり調整したりという感じだったのですが……これがカレンダーで進行するシリーズ独特のシステムが作業難度を高くしておりまして(笑)。
4Gamer:
ああ,たしかに。「P5」でもぎっちり詰まっている印象なのに,それに足していくと考えると……。実際にプレイして,後半になっていくごとに新キャラクターたちの存在感が大きくなっていくところが絶妙だったと感じたのですが,このあたりの調整はどうだったのでしょう。
伊東氏:
新キャラクターを追加する難しさの1つに,オリジナル版からの登場人物とどのように関わり始めるかがあります。極端な例ですが,登場してすぐにみんなが変にチヤホヤしだしたら,プレイヤーは「え,なんで?」ってなりますよね。
4Gamer:
「出しゃばるな」じゃないですけど,元からいるキャラクターたちに思い入れがある分,登場の仕方によっては受け入れられずにゲームの進みが悪くなるかもしれません。
伊東氏:
はい。それを避けるため,ゲームシステムとしてのコープの特徴を活かしつつ,自然に主人公との関係性が深くなり,それが徐々に広がっていくという部分を意識しました。このあたりは「P4G」のマリーのコミュがお手本になっていたかなと思います。
和田氏:
それらのイベントやコープですが,通しでプレイしても違和感がないよう仕上げるのは本当に大変で。ただ差し込んだイベントを単体で見たところで分からないものですから,何度もアタマからプレイ,全体のストーリーの流れを見て調整しています。「ペルソナ」シリーズは,とにかく調整作業に時間がかかるゲームなんです。
伊東氏:
そういった意味でも通しで確認する作業は重要なのですが,同じ人が何度も見ても,もう慣れてしまって気付けなくなるというか……。
和田氏:
感覚がマヒしてくるんですよね(笑)。アタマから何度もゲームをプレイするというのも作業時間的にも感覚的にも難しいため,別部署の初見のスタッフなどからも感想を集め,少しでも違和感を失くすよう調整していきました。
新キャラクターの性格もそうですね。言葉1つで印象が変わるので,このあたりも最後の最後までニュアンスには気を配りました。
4Gamer:
ちょっと話が戻ってしまいますが,新規ストーリーの全体的な部分はどのように固まったのでしょう。ネタバレになるため細かくは触れられないですが,3学期の物語には「P5」とは違った形で投げかけるものがあるというか,挑戦した部分は感じました。
伊東氏:
「P5」には「P5」で打ち出した考え方や思想みたいなものがありましたが,ある種それは「P5」単体で完結しています。それを継続する形で同じ考え方や思想を持ってくるのは違うのではないか。対抗する思想や別の考え方を描きたいというのは大枠にありました。
4Gamer:
ファンの反応を見てというよりは,自分たちで「P5」を見つめ直してという感じでしょうか。
伊東氏:
そうですね。「プレイヤーにこういうメッセージを伝えたい」みたいな着地点を決めていたのではなく,自分たち自身で方向性に議論を重ねていくうちにいまの形に落ち着きました。
副島氏:
制作するときの雰囲気ってありますよね。ファンの方々に寄り添いつつも,どの程度新しいものを見てもらいたいか。このあたりのバランスって,チーム内の阿吽の呼吸みたいなものもあると思います。
和田氏:
メインとなる「ペルソナ」シリーズ作品として,プレイされる方個々に考えていただいたり,どのように感じ受け止めてもらいたいか,ということは大事に考えています。でもメッセージの伝え方の加減を間違えると,とても説教臭くなってしまうので,自然にそういう形に落ち着くのが理想なのかと。
とはいえ大枠が決まってからのシナリオはなかなかの難産でした(笑)。割と最初から固まっていたのって,丸喜拓人くらいだったでしょうか。
伊東氏:
彼は非常勤のスクールカウンセラーとして登場し,怪盗団とコープ関係にもなりますが,この怪盗団に対する立ち位置みたいなところは最初からブレていないですね。
和田氏:
もう1人の新キャラクターの芳澤かすみは紆余曲折ありましたが,作品中に描かれる思想や考え方に対して“リトマス試験紙”的な役割を担う人物として描いています。今作の肝になる人物ですので,台詞ひとつひとつ細やかな部分まで気を遣っていますね。
4Gamer:
新キャラクターではありませんが,明智吾郎のコープも3学期の展開への説得力を生むものとなっていましたね。
「P5」からやることが増えた分,発売前は「これ全員とコープ関係を深められるのだろうか」と思いましたが,コープやパラメータが上がりやすくなっていました。
伊東氏:
そこは「P5R」から始める人も意識しつつ,「P5」プレイヤーにはどんどんゲームを進めて新しいシナリオを楽しんでほしいというのもあったので,システム面の規制緩和はテーマとしてありました。
4Gamer:
簡単になり過ぎると“日々をマネジメントする”カレンダー方式の醍醐味が失われるし,厳しいとコープのコンプリートが難しくなり,日常やせっかくの新要素であるダーツのようなミニゲームを楽しめない……。このあたりの調整もなかなか大変そうです。
伊東氏:
おっしゃるとおりで,このあたりのバランスを最後の最後まで調整していました。
さっきのシナリオの話もですが,ゲームの流れを通しで確認するとなると,慣れているスタッフでも1周40〜50時間かかるんです。日常パートのみに絞ってもそれくらいで。作業をしながらとなると1〜2週間になりますから。ここでも会社の人たちやスタッフの意見をたくさん集めてその声を参考にしました。
4Gamer:
副島さんは主にどのあたりを担当されていたのでしょう。
主に追加キャラクターやボスのデザインを担当しています。「P5R」全体のアートやデザイン部分でいうと,バストアップのイラストには注目してほしいですね。チームのみんなが,「P5」で使用していたカットもほぼ全てを描き直すという謎の労力をかけています(笑)。
和田氏:
追加は分かるんですけど,なかなかそこまでやらないよね(笑)。
副島氏:
描き直したくなる気持ちって凄く分かるんです。普通は許可が下りないだけで(笑)。デザイナーもそれぞれキャラクターへの思い入れが深くなっているし,ファンの皆さんの反応もあるし,新しいアングルのイラストを足したくなるし……と,もともとあるイラストも手を入れたくなるんです。
和田氏:
それでもあまり気付かれないだろうと思っていたら,最初のPVを公開した段階で「あれ,なんか変わってない?」みたいな反応があったんですよ。本当にファンの方は凄く見ているんだなと驚きましたし,嬉しかったですね。
副島氏:
グラフィックス面でプレイヤーが見る回数が多いのが,会話の場面で表示されるバストアップのキャラクターイラストなんですよね。メインのストーリーは同じでも,そこが変わっていると彼らの新しい演技を見ているというか,これまでにない表情が見られると印象も変わりますよね。
和田氏:
気付いていなくても無意識のうちにその変化を感じて,それが全体を通して感じる新鮮さにつながっているのかもしれないです。手間もコストもかかった部分ですが,本当に良かったと(笑)。
副島氏:
プレイヤーの皆さんにも,脳内補完というか脳内アップグレードされているところがあると思うんですよ。
テレビアニメも放映されましたし,「もっと動いていたはず。もっといろいろな表情をしていたのではないか」という印象もですね。そういう意味では,皆さんの思い描くイメージに追いつきたい部分もあったと思います。
4Gamer:
あらためて「P5R」という大きいタイトルが動いていたときのチームについて聞かせてください。これまでと何か違うところはありましたか。
和田氏:
チーム内の役割分担というのは大きく動かした部分だったと思います。
同じスタッフだけで動いていると,新しいアイデアってどうしても生まれにくくなるんですよね。そこを一段若返えらせるじゃないですけど,若いスタッフがモチベーションを保ちつつ,自身のアイデアを出しやすい環境を整えたいと考えました。
伊東氏:
若手をリーダーにして,ベテランがサポートに回ってそれを支えるといった形でしょうか。最初の方に和田が話したプランナーとプログラマーは,まさにそういった形で若手が自身の能力をアピールできる場所となっていたと思います。
和田氏:
「P5R」って,アトラスが制作してきた作品のなかで最大規模のゲームだったと思うんです。リソース的にもここまで詰め込まれたタイトルってこれまでないよねという。もともとこじんまりとした会社でチーム自体も最初は大きくなかったですから,「P5R」が作れたのは感慨深いものがあります。
この3年間をしっかりと見つめ直し
「ペルソナ」シリーズをより世界に広げていきたい
4Gamer:
「ペルソナ」シリーズの広がり方について教えてください。「P3」や「P4」に引き続きアニメやライブ,舞台といった展開が活発なのはもちろんですが,ここ最近はスマホゲームとのコラボもよく見るようになりました。
和田氏:
「ペルソナ」シリーズがよりメジャーになってほしいという願いは,チーム全員が強く持っています。とはいえ,むやみやたらにではなくその取り組みについて確認し,実際に動いた際もしっかりとチームで監修を行っています。
「ペルソナ」シリーズは複雑な設定が多いのですが,守るべき部分はしっかり守っていくというのが大前提にありますね。
4Gamer:
スマホだと「スターオーシャン:アナムネシス」(iOS / Android)や「アナザーエデン」(iOS / Android)といった,ストーリー性がしっかりある作品とのコラボが多い印象で,監修もなかなか大変そうです。
「Identity V」(第五人格。iOS / Android)とのコラボではビジュアル面が話題になっていたのですが,やはりそういったデザインも副島さんが監修されるんですよね。
「スターオーシャン:アナムネシス」×「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」コラボの熱さを,いろんな人に伝えたい!
SOAに心の怪盗団がやってきた! スクウェア・エニックスの「スターオーシャン:アナムネシス」では現在,アトラスの「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」とのコラボが開催中だ。今回はイベント後半戦に向けて,P5Rのコラボシナリオなどの熱さを紹介したい。それとコラボにつられてやってきた初心者にも,SOAならではの“いろは”を伝授しよう。
和田氏:
副島もですし,デザインのリーダークラスもですね。
監修は“見られる”人じゃないとできないことなので,ストーリーもデザインも,結果的に上のレイヤーにあるスタッフたちに動いてもらうことになります。ゲーム本編の話と一緒で,これがめちゃくちゃ大変なんですよ(笑)。
伊東氏:
どうしてもやりとりが増えてしまうので,先方の負担も大きくなってしまうんです。
和田氏:
それもあって,お声がけいただいたときはまず「監修作業がけっこう重たくて厳しいところがあります」みたいなことを必ず伝えます。そういった意味では,相手方にもそれに応えていただくだけの熱量が必要になってしまうんですよね……。
でも,こうしてコラボの機会が増える前から,お声掛けしてくれる社外の方たちって,「自分自身がペルソナファンです」っていう熱量の高い人が多いです。
「IPの知名度はこうで,相乗効果がこうで」というビジネス的な話というより,「武見(妙)先生のフィギュアが作りたいんです!」「えっ,まだメインの怪盗団たちもあまり出ていないのに?」みたいな感じで(笑)。そういった方々に支えられていることも多いですよね。
和田氏:
そうなんだよね。ここ最近はお声がけいただくことも多くなって変わってきている面もありますが,基本的にそういう方が多くて,大変光栄に思っています。テレビアニメなどもそうですが,僕らとしても凄くやりやすいですし嬉しい限りです。
4Gamer:
それこそ年末に行われた舞台「PERSONA5 the Stage」では,アトラス サウンドチームの喜多條さん(喜多條敦志氏)が楽曲制作に関わっていますね。
和田氏:
それ以外にも「P5」のリードシナリオプランナーを担当している山本(山本眞司氏)が監修に入っていますし,衣装も副島が見ています。
副島氏:
「靴はこれでいいですか」って見せていただいて,「舞台から見えないんじゃないのかなあ」って(笑)。多少冗談まじりですが,実際にキャラクターの髪の色なんかは,こちらが単色で塗っているものを舞台で映えるよう考えていただいて。衣装も本当に凄く凝っていましたね。
和田氏:
「ペルソナ」シリーズをより知ってもらうためのブランディングの動きは,これまでと変わってきているところは大きいです。
最近はこういったメディアミックスも,ようやくタイトル発表や情報展開といったゲームの動きに結び付くタイミングでしっかり展開ができるようになってきました。ファンの皆さんが一緒に盛り上がれるように僕らもいろいろと考えています。
東京公演が開幕した「ペルソナ5」の舞台「PERSONA5 the Stage」の会見とゲネプロをレポート。見事な再現度にペルソナファンは注目
2019年12月19日,「ペルソナ5」を原作とした舞台「PERSONA5 the Stage」の東京公演が,天王洲銀河劇場にて開幕した。原作ゲームの世界観が見事に再現されたペルソナファン注目の舞台の魅力を,キャストのコメントともにゲネプロの模様を通してお伝えしよう。
4Gamer:
最後に「ペルソナ」シリーズへの思いやファンへのメッセージをお願いします。
伊東氏:
「P5R」はゲームとして今できることをやり切ったという感覚があるのですが,一方ですでにチームからは「まだまだ新しくやりたいことがある」という声はあがっています。
いまのところ具体的な何かがあるわけではありませんが,その思いを生かした新しいゲーム体験が生み出せたらと思います。若手中心に一丸となって頑張っているので,今後も楽しみにしてください。
副島氏:
個人的な考え方ではありますが,もっと新しいことをやっていくことが皆さんに喜んでいただけることだと思います。ファンの方たちとキャッチボールをして続けてきたシリーズなので,これからもさまざまな意見をいただけると嬉しいですね。それを糧にして頑張れるかなと。
あとはそうですね,私や織部,アートのスタッフが次に担当している「P5S」にもぜひ注目していただければと思います。どうぞよろしくお願いします!
和田氏:
まずは「P5S」をしっかりお届けすることが直近の課題ですが,今後に向けてより「ペルソナ」シリーズをたくさんの方に知っていただき,そして遊んでいただけるよう,丁寧にものづくりをするという思いをよりいっそう大事にしたいと考えています。
「P5R」発売までこの3年間は,自分の中での試行錯誤も多々あり,うまくいったことだけではなく考えるべきことも多かった3年でもありました。そのあたりはしっかりと見つめ直しつつ今後に生かしたいです。
あとは海外の皆さんへのアプローチですね。最近は国内向けのプロモーションに対してもリアルタイムで注目いただけていますし,こちらからもしっかり届けたいというのがあります。日本から発信する情報やコンテンツの時間差を極力短縮して,もっと世界中の人と一緒に盛り上がれるように頑張っていきたいと思っていますので,これからも応援よろしくお願いします!
4Gamer:
「ペルソナ」シリーズの今後の展開に期待しています。本日はありがとうございました。
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- 編集部:Junpoco
- カメラマン:増田雄介
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