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「Radeon RX 6900 XT」レビュー。フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦える製品なのか
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印刷2020/12/08 23:00

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フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦えるのか

AMD Radeon RX 6900 XT

Text by 宮崎真一


 荒削りながらも,競合製品と勝負できるハイエンド向けGPUであったAMDの新型GPU「Radeon RX 6800 XT」(以下,RX 6800 XT)。4K解像度時には,一部のタイトルで「GeForce RTX 3080」(以下,RTX 3080)を上回る性能を発揮するなど,注目のGPUであることは間違いない。
 そんなRX 6800 XTの上位モデルとなる「Radeon RX 6900 XT」(以下,RX 6900 XT)が,いよいよ登場する。

RX 6900 XTのリファレンスカード
画像集#002のサムネイル/「Radeon RX 6900 XT」レビュー。フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦える製品なのか

 長らく不在だったAMDのトップエンドに位置するGPUとして,RX 6900 XTに期待する人は多いのではないだろうか。実際にRX 6900 XTの性能はどの程度なのだろうか。RX 6800 XTとの性能差や,競合製品となる「GeForce RTX 3090」(以下,RTX 3090)との勝負できているのかどうかなど,気になる点は多い。今回はRX 6900 XTのリファレンスカードを用いて,その実力をテストにより明らかにしてみたい。

RX 6900 XTリファレンスカードのボックス(左)。カードは布系の特製マウスパッドで包まれていた(右)
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フルスペック版Navi 2Xコアを採用

動作クロックやメモリ周りはRX 6800 XTと同じ


 まずは,RX 6900 XTがどのようなGPUなのか説明していこう。
 RX 6900 XTは,RDNA 2アーキテクチャに基づくGPUで,GPUコアにはRX 6800 XTと同じ「Navi 2X」を採用している。7nmプロセスで製造されるGPUのダイサイズは約519mm2で,RTX 3090の「GA102」コアより約21%小さい。トランジスタ数は約268億個で,こちらもGA102比だと約4%少ない格好だ。

 RDNA 2アーキテクチャは,AMDが「Stream Processor」(以下,SP)と呼ぶシェーダプロセッサ16基を束ねて実行ユニットとしたうえで,それを4つ集めて,キャッシュメモリやレジスタファイル,スケジューラにテクスチャユニットなどを組み合わせた演算ユニット「Compute Unit」(以下,CU)を構成している。そのCUを2つセットにした「Dual Compute Unit」を10基束ねて,L1キャッシュやラスタライザ,それにレンダーバックエンドなどを組み合わせたものを,AMDは「Shader Engine」と呼んでいる。
 Navi 2Xのフルスペック版は,Shader Engineを4基で構成されるため,CUの総数は2×10×4で80基,SPの総数は16×4×80で5120基となる計算だ。そしてRX 6800 XTでは,CUのうち8基分を無効化しており,SP総数は4608基となっていた。一方のRX 6900 XTは,CUが80基でSPが5120基と,Navi 2Xのフルスペック版そのものであるわけだ。

Navi 2Xを採用するRadeon RX 6000シリーズの主なスペック
画像集#005のサムネイル/「Radeon RX 6900 XT」レビュー。フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦える製品なのか

 Navi 2Xの大きな特徴である「Infinity Cache」と呼ばれるキャッシュシステムは,RX 6900 XTにも当然ながら実装されている。Infinity Cacheの容量は,RX 6800 XTと同じ128MBで,AMDは「256bit幅のGDDR6を用いながら,最大で3.25倍の有効帯域幅を実現する」と主張している。消費電力を加味した場合でも,GDDR6比でのメモリバス帯域幅は最大で2.4倍に達するそうだ。
 また,Navi 2Xでは,リアルタイムレイトレーシング処理を担う「Ray Accelerator」が実装されたが,1基のCompute Unitにつき1基のRay Acceleratorを組み合わせているので,RX 6900 XTでは80基を有することになる。RX 6800 XTが72基なので,その約11%増という規模だ。

GPU-Zの実行結果
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 RX 6900 XTのベースクロックは非公開だが,ゲームクロックは2015MHz,ブースト最大クロックは2250MHzで,RX 6800 XTとまったく同じ。後述するテスト環境において,「GPU-Z」(Version 2.36.0)でテスト中の動作クロックを追ってみたところ,2514MHzまで上昇したのを確認した。RX 6800 XTは2374MHzだったので,RX 6900 XTのほうがクロックが伸びやすい印象だ。

 RX 6900 XTでも,ドライバソフトウェアである「Radeon Software」の「チューニングコントロール」が利用可能で,「レイジ」プリセットを適用した場合には,ゲームクロックが2075MHz,ブースト最大クロックは2310MHzに引き上げられる。一方で「クワイエット」プリセットを使うと,ゲームクロックが1940MHz,ブースト最大クロックが2185MHzに制限された。どちらのプリセットも,ブースト最大クロックはRX 6800 XTと変わらないが,ゲームクロックはレイジではRX 6800 XTより10MHz上で,クワイエットではRX 6800 XTより10MHz下となる点は注目に値する。

Radeon SoftwareからRX 6900 XTの仕様を確認した様子
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 さて,RX 6900 XTは,グラフィックスメモリに容量16GBのGDDR6を組み合わている。メモリインタフェースは256bitで,メモリクロックは16GHz相当であるため,メモリバス帯域幅は512GB/sとなり,こうしたスペックはRX 6800 XTからまったく変わっていない。競合製品のRTX 3090が,グラフィックスメモリに容量24GBのGDDR6Xを採用し,メモリバス帯域幅936GB/sを誇っている点に比べると,スペックだけを見たときに,RX 6900 XTのメモリ周りは,正直少々物足りなさを感じる。そこをInfinity Cacheでカバーしようというのが,AMDの方針であるわけだ。
 そんなRX 6900 XTの主なスペックを,RX 6800 XTとRTX 3090,それにRTX 3080とともにまとめたものが表1となる。スペックの多くがRX 6800 XTと同じであることが,この表からも見てとれよう。

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外観はRX 6800 XTリファレンスカードと瓜二つ

カードサイズもほぼ同じ約266mm


 それでは,RX 6900 XTリファレンスカードについて見ていこう。
 カード長は実測約266mm(※突起部含まず)で,RX 6800 XTとほぼ同サイズだ。ちなみに,RTX 3090搭載カードとして用意したPalit Microsystems製「GeForce RTX 3090 GamingPro OC」は,実測で約295mmだ。リファレンスカードとカードメーカー独自デザインの製品を比べるのはナンセンスだが,それより30mmほど短いわけだ。マザーボードに装着した場合,垂直方向にブラケットから14mmほどはみ出すことも押さえておきたい。
 なお,重量は実測で約1527g。RX 6800 XTリファレンスカードが同1500gだったので,こちらもほぼ同じと言っていいだろう。

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カード長は実測で約266mm(左)。重量は約1527gで,RX 6800 XTリファレンスカードとほぼ同じである
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カードを横から見たところ。GPUクーラーが2.5スロット占有タイプだけあって,厚みはかなりある
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 GPUクーラーは2.5スロット占有タイプで,80mm径相当のファンを3基搭載する。ファンは,羽と外枠が一体成型されているタイプだ。GPUの負荷が低い,いわゆるアイドル状態時に,ファンの回転を停止する機能もある。クーラー仕様や,裏面全体を金属製のバックプレートで覆い,全体が箱のような形状を採用している点,そして全体のデザインなど,RX 6900 XTリファレンスカードは,RX 6800 XTリファレンスカードと瓜二つだ。
 実のところ,裏面に貼り付られたタグがなければ,どちらがRX 6900 XTなのか判別できないほどである。

カードを別の角度から。3基のファンを搭載する点やシルバーとブラックのツートンカラー,それに裏面のバックプレートなど,外観はRX 6800 XTリファレンスカードとそっくりだ
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AMD Radeon RX 6000 Series RGB LEDで,LEDの色や光り方などを制御可能だ
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 GPUクーラーの中央にある「RADEON」ロゴにはカラーLEDが埋め込まれており,専用ソフト「AMD Radeon RX 6000 Series RGB LED」(Version 1.25)により,発光パターンや発光色の変更が可能だ。カードメーカー製のオリジナルデザインカードではよく見る機能だが,リファレンスカードではめずらしい。

PCIe補助電源コネクタは,一般的な8ピン×2構成だ
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 PCI Express(以下,PCIe)補助電源コネクタは,8ピンを2基搭載する。ブラケットからはみ出るほど背が高いうえ,PCIe補助電源コネクタは垂直方向に実装されているため,カード上方にある程度の余裕がPCケースが必要になるだろう。

 今回もカードは分解していないので,AMDが用意した写真で基板の様子を見ていこう。電源部は16フェーズ構成で,重さ2オンス(約57g)の銅を用いた4層を含む計14層の基板を採用するなど,かなり豪華な作りだ。なお,AMDはこの基板について,「オーバークロックに向けた壮健なデザイン」と自信を見せている。その電源部は,GPUを挟み込むような配置で左右に分かれて実装されているが,それ以外の部分は,かなりスッキリした印象だ。

AMDのレビュワーズガイドに掲載されていたRX 6900 XTの基板画像
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 映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4×2とHDMI 2.1×1,USB Type-C(DisplayPort)×1の4系統で,このあたりもRX 6800 XTリファレンスカードから変わりはない。

ブラケットには排気孔がない点も含めて,RX 6800 XTリファレンスカードの仕様を踏襲している
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RX 6800 XTやRTX 3090などと比較を実施

ドライバにはAMDが配布した20.45.01.14を利用


GeForce RTX 3090 GamingPro OC
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 テストへ進む前に,テスト環境の構成について説明しておこう。
 今回,比較対象にはRX 6800 XTとRTX 3090,それにRTX 3080を用意した。RX 6800 XTとの差を確認するとともに,競合製品との性能比較を行おうというわけである。なお,RTX 3090搭載モデルとして利用したGeForce RTX 3090 GamingPro OCは,メーカーレベルで動作クロックを引き上げたクロックアップモデルであるため,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.2)で,ブーストクロックをリファレンスにまで下げて使用している。

 RX 6900 XTのドライバソフトには,「Radeon Software Adrenalin 20.45.01.14」を利用。これは,AMDが全世界のRX 6900 XTのレビュワー向けに配布したもので,RX 6800 XTにも同じものを用いている。AMDが11月30日にリリースした「Radeon Software Adrenalin 2020 20.11.3」のバージョンは「20.45.01.24-201125a-361677E-RadeonSoftwareAdrenalin2020」だったので,今回はそれのRX 6900 XT対応版ということなのだろう。一方のRTX 3090とRTX 3080は「GeForce 457.51 Driver」を使用しており,これはテスト時の最新バージョンとなるものだ。

 今回テストする4製品は,すべてがPCIe 4.0に対応しているため,CPUに「Ryzen 9 5950X」を,マザーボードにMSIの「MEG X570 ACE」をそれぞれ使用した。それ以外のテスト環境は表2のとおり。

表2 テスト環境
CPU Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz,最大クロック4.9GHz,共有L3キャッシュ容量64MB)
マザーボード MSI MEG X570 ACE(AMD X570,BIOS 7C35v1D2)
メインメモリ G.Skill F4-3200C16D-16GIS PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2(DDR4-3200の16-16-16-36設定で利用)
グラフィックスカード Radeon RX 6900 XTリファレンスカード
(グラフィックスメモリ容量16GB)
Radeon RX 6800 XTリファレンスカード
(グラフィックスメモリ容量16GB)
Palit Microsystems GeForce RTX 3090 GamingPro OC
(GeForce RTX 3090,グラフィックスメモリ容量24GB)
GeForce RTX 3080 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量10GB)
ストレージ Samsung Electronics SSD 850 EVO(MZ-75E500,500GB)
電源ユニット SilverStone Technology SST-ST1200-G Evolution(定格1200W)
OS 64bit版Windows 10 Pro(Build 19042.630)
チップセットドライバ AMD Chipset Drivers 2.07.14.327
グラフィックスドライバ Radeon Software Adrenalin 20.45.01.14
GeForce 457.40 Driver

 テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠。それに加えて,今回はリアルタイムレイトレーシングやPCIe 4.0の効果を確認するため「3DMark」(Version 2.16.7113)に含まれる「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」,そして「PCI Express feature test」も実施した。
 さらに,「Fortnite」では,グラフィックスAPIをDirectX 12に変更したうえでレイトレーシングを有効にして,設定に関しては負荷が最大となるように変更している。なお,テスト方法自体はレギュレーションから変わりない。
 解像度は,AMDがRX 6900 XTにおいて,高画質設定で4K解像度でのゲームプレイを想定しているため,3840×2160ドットと2560×1440ドット,それにいまだユーザー数の多い1920×1080ドットの3つを選択している。
 なお,RX 6800 XTおよび6800のレビューでもそうだったが,今回も「Smart Access Memory」は無効として計測している。あくまでもGPU同士を同列の環境に置いての比較を重視したため,Smart Access Memoryを有効化して比較するのは,適当ではないと判断したためだ。


RX 6800 XTからの上積みは7%前後

高解像度でRTX 3090に届かない場面が多い


 それでは3DMarkから順にテスト結果を見ていこう。グラフ1は,Fire Strikeの総合スコアをまとめたものだ。

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 CPUのボトルネックが近いためか,Fire Strike“無印”では,3万7000前後でスコアが丸まりつつある。そこで,Fire Strike ExtremeとFire Strike Ultraのスコアに注目すると,RX 6900 XTは,RX 6800 XTに5〜6%程度の差を付けていた。さらに,RTX 3090に対しては,5〜8%程度の差を付けており,RX 6900 XTが上回っている点は素直に評価できよう。

 続いてグラフ2は,Fire Strikeから「Graphics score」を抜き出したものとなる。

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 CPU性能の影響を排除できるテストだが,それでもRX 6900 XTとRX 6800 XTとの開きは3〜6%程度といったところ。ただ,RTX 3090との差は6〜12%程度に広がっており,RX 6900 XTが優位に立っている点は特筆すべきポイントだ。

 次のグラフ3は,Fire Strikeにおけるソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだ。今回のテストでは,すべてのGPUでCPUを統一しているのだが,若干だがRTX 3090とRTX 3080のほうが高いスコアとなっている。これは,RX 6800 XTでも見られた傾向なので,ドライバソフトが何かしらCPUに負荷を与えているのかもしれない。

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 グラフ4は,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果だ。

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 RX 6900 XTは,RX 6800 XTに4〜8%程度の差を付けており,おおむねGraphics scoreと似た傾向だ。ただ,RTX 3090に対しては,Fire Strike“無印”では約28%もの大差を付けられており,RX 6900 XTでは,CPU scoreと同様になんらかの負荷がCPUにかかっているのかもしれない。

 DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見ていこう。グラフ5は総合スコアをまとめたものだ。

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 RX 6900 XTとRX 6800 XTとの差は2〜3%程度といったところで,Fire Strikeよりも差が縮まっている。また,Time SpyではGeForce RTX 30シリーズのスコアが良好で,RX 6900 XTはRTX 3090に9〜12%程度ものビハインドを負っており,RTX 3080にも若干だが差を付けられている。Turing世代からGeForceシリーズは,Time Spyで良好な結果を出す傾向にあるが,RX 6900 XTは今ひとつスコアが伸びていない印象だ。

 続くグラフ6は,Time SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。

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 まず,GPUテストのほうだが,RX 6900 XTとRX 6800 XTとの差は約3%前後で,おおむね総合スコアを踏襲した形だ。だが,RTX 3090との差は11〜15%程度にまで広がってしまい,RTX 3080を上回るのがやっとといったところだ。

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 一方のCPUテストのほうは,CPUが同一なのでスコアが揃うはずなのだが,Fire Strikeとは異なり,Time Spy ExtremeでRX 6900 XTとRX 6800 XTが高い傾向が出ている。

 続いて,リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。

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 RX 6900 XTはRX 6800 XTから約6%スコアを伸ばしており,Ray Accelerator数の差ほどではないものの,上位モデルらしくきちんと性能を伸ばしている。しかしRX 6900 XTは,RTX 3090に約37%,RTX 3080にも約22%の差を付けられており,RX 6800 XTがそうであったように,RX 6900 XTのリアルタイムレイトレーシング性能はかんばしくない。

 それは,グラフ9のDirectX Raytracing Feature testでも同じ傾向だ。

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 ここでは,DirectX Raytracingを使ったレイトレーシング性能を知ることができるが,RX 6900 XTはRTX 3090と比べて,半分程度のフレームレートしか発揮できておらず,RTX 3080に対してもまったく届いていない。RX 6800 XTからは約8%ほど伸びているものの,やはりレイトレーシング性能に関しては,物足りない結果となってしまっている。

 グラフ10は,PCI Express feature testの結果だ,今回のテストでは,すべてのGPUがPCIe 4.0に対応しているため,おおむね23GB/s前後で揃う結果となった。

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 では,実際のゲームではどうなのだろうか。まずは「Far Cry New Dawn」の結果(グラフ11〜13)から見ていこう。

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 ここでも,RX 6900 XTの結果は今ひとつだ。ただ,RX 6900 XTとRTX 3090やRTX 3080との平均フレームレートにおける差は,最大でも約3fpsなので,それほど大きな開きには至っていない。最小フレームレートを見ても,RX 6900 XTはRTX 3090はおろかRTX 3080にも届いていないのは事実なのだが,その差はやはり1〜3fps程度なので,RX 6900 XTはなんとか食らいついているという表現もできる。

 続いて,「バイオハザード RE:3」の結果がグラフ14〜16となる。

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 ここでは,RX 6900 XTの平均フレームレートは,RX 6800 XTから4〜7%程度の伸びを見せてはいるものの,RTX 3090には届いていない。しかも,解像度が高くなるにつれてその差が広がっている点を見ると,ここではRTX 3090がメモリバス帯域幅の優位性を如何なく発揮したということなのだろう。
 それは,最小フレームレートに当たる99パーセンタイル値にも大きな影響を与えているようで,RX 6900 XTとRTX 3090との差は,2560×1440ドット以上の解像度で10〜15%程度にも広がった。この差は看過できない。なお,1920×1080ドットで値が揃っているのは,CPUがボトルネックになっているのだろう。

 RX 6900 XTにとって,ベストケースとも言えるのがグラフ17〜19の「Call of Duty: Warzone」(以下,CoD Warzone)だ。

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 RX 6900 XTは,RX 6800 XTから平均フレームレートを8〜9%程度も伸ばしているうえ,すべての解像度においてRTX 3090を上回る性能を発揮した。99パーセンタイルのフレームレートを見ると,3840×2160ドットこそメモリバス帯域幅で上回るRTX 3090が意地を見せているが,それ以外の解像度ではRX 6900 XTが優位な結果を残している。

 レイトレーシングを有効にしてテストを行ったFortniteの結果がグラフ20〜22だ。

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 3DMarkから予想できるように,FortniteでもRX 6900 XTの結果は振るわない。RX 6900 XTはRX 6800 XTから,平均フレームレートで約7%向上してはいるものの,RTX 3090には大差を付けられ,RTX 3080にもまったく届いていない。このあたりは,レイトレーシング機能の最適化がまったく足りていない印象だ。

 グラフ23〜25は「Borderlands 3」の結果だ。

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 ここでも,RX 6900 XTの結果は今ひとつ。1920×1080ドットの平均フレームレートにおいて,RX 6900 XTはRX 6800 XTから最大で約9%ほど伸びている。3840×2160ドットで,平均フレームレートが60fpsを上回っている点は注目に値する。しかし,RTX 3090はおろかRTX 3080にも届いていない状況であり,RX 6900 XTは,やはりドライバの最適化が足りていないのではないだろうか。

 グラフ26は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

画像集#046のサムネイル/「Radeon RX 6900 XT」レビュー。フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦える製品なのか

 同ベンチマークは,GeForceシリーズへの最適化が進んでおり,Radeonシリーズは毎回苦しい戦いを強いられている。それは,RX 6900 XTでも同じで,すべての解像度においてRTX 3080にすら届いていない。とはいえ,RX 6800 XTから,3840×2160ドットで約6%ほどしっかりとスコアを伸ばしている点は評価できる。

 そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ27〜29となる。

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 平均フレームレートは,総合スコアを踏襲しており,RX 6900 XTはRX 6800 XTから性能を伸ばしてはいるものの,RTX 3080にすら届いていない。一方の最小フレームレートは,CPU性能が色濃く反映されるためにGPUごとの差が付きにくい。それでも3840×2160ドットの結果を見ると,やはりRX 6900 XTはRTX 3080に差を付けられている。

 グラフ30〜32には,「PROJECT CARS 2」の結果をまとめている。

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 PROJECT CARS 2では,これまでと若干異なる傾向が見られた。まず平均フレームレートにおいて,RX 6900 XTは,2560×1440ドットまでの解像度ではRTX 3080に届いていないが,3840×2160ドットではRTX 3090にあと約2%のところまで差を詰めている。そして,最小フレームレートを見ると,RX 6900 XTは1920×1080ドットこそRTX 3080に差を付けられているものの,2560×1440ドットで逆転を果たし,3840×2160ドットでRTX 3090に約9%もの差を付けた。4K解像度に絞れば,最小フレームレートが高いRX 6900 XTのほうが快適さは良好なのではないだろうか。


RX 6900 XTの消費電力はかなり低め

カードメーカー独自クーラーの製品を待ちたい


 消費電力についても確認していこう。
 RX 6900 XTの公称Board Power(カード全体の消費電力)は300Wで,RX 6800 XTから変わっていない。GeForceシリーズのTGP(Total Graphics Power)との単純比較は少々乱暴だが,RTX 3090のTGPは350Wなので,RX 6900 XTはそれより50Wも低いということになる。はたして,RX 6900 XTの消費電力は,実際にどの程度なのだろうか。

 そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中の結果を示している。その結果はグラフ33のとおりだ。

※グラフ画像をクリックすると,横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 RX 6900 XTは,ほぼ300W前後で推移しており,たしかにRX 6800 XTとの差はほとんどないように見える。一方のRTX 3090は,350Wあたりを推移しているので,RX 6900 XTとの差は一目瞭然だ。
 そこで,グラフ33の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ34となる。RX 6900 XTは約305Wと,RX 6800 XTから約7Wほど増加しているが,RTX 3090比では約43Wも低く,RTX 3080よりも消費電力が低い点は評価できよう。

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 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力のみを計測した結果も見てみよう。
 テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
 その結果がグラフ35だ。RX 6900 XTとRX 6800 XTの差は3〜6W程度と,消費電力が増えたことは事実だが,微々たるものと理解してよさそうだ。なお,RX 6900 XTとRTX 3090との差は36〜70W程度にも達しており,RX 6900 XTの消費電力はかなり抑えられている。

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 最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ36のとおりだ。

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 RX 6900 XTは,高負荷時で約76℃となり,RX 6800 XTとあまり変わらない結果となった。少なくとも,RX 6900 XTのリファレンスクーラーは,RX 6800 XTがそうであったように,冷却性能に優れているとは言い難い。なお,アイドル時にRX 6900 XTとRX 6800 XTの温度が高めなのは,ファンの回転が停止するためだが,それでも50℃以下に抑えてほしかったというのが正直なところだ。

 最後に筆者の主観であることを踏まえたうえで,RX 6900 XTの動作音について述べておくと,RX 6800 XTとほぼ同じで,静かとは言えない程度だ。カードメーカー独自クーラーを搭載したRTX 3090はともかく,RTX 3080のほうが静かであるという印象を受けた。RX 6800 XTと同様に,RX 6900 XTもオリジナルクーラーを搭載したモデルを待ったほうがよさそうだ。


Radeon最上位モデルとして心に刺さる存在

RX 6800 XTに対して999ドルの価格がネック


 RX 6800 XTについて筆者は,「素性はいいが最適化が足りていない」と指摘した。それは,RX 6900 XTでも変わっていなかった。3DMarkやCoD Warzoneでは非常に優れた性能を見せる一方で,Borderlands 3のようにRTX 3080にも置いて行かれることもあるのは正直いただけない。また,レイトレーシング性能もRX 6800 XTと同様で,性能面で競合に置いていかれている点は残念。
 その一方で,消費電力がかなり抑えられている点はかなり魅力的だ。RTX 3090より50Wも低いというのは,かなりインパクトが大きい。

画像集#057のサムネイル/「Radeon RX 6900 XT」レビュー。フルスペック版Navi 2X搭載のRadeon最上位モデルは,GeForce RTX 3090と戦える製品なのか
 問題は,国内における想定売価が税込14万円台と,RX 6800 XTの税込9万円台半ば〜10万円弱に比べて,4万円も上がっている点だ。RTX 3090が20万を優に超える実勢価格であるのに比べればマシと言えなくもないが,価格差のわりに,動作クロックやメモリ周りがRX 6800 XTから変わらないのも非常に残念だ。少なくとも,RTX 3090が24GBも搭載しているのを見れば,メモリ容量は増やして欲しかったところ。フルスペックのNavi 2Xにおける限界なのかもしれないが,ことゲーム用途で考えると,RX 6900 XTよりもRX 6800 XTのクロックアップモデルを選択するほうが価格対性能比は高いだろう。
 とはいえ,Radeonのトップエンドとして,RX 6900 XTの存在意義はかなり大きい。Radeonの最上位モデルを待ち望んでいたユーザーも一定数おり,そういった人たちにとって,RX 6900 XTはかなり心に刺さるGPUであることは間違いない。

AMDのRadeon RX 6900 XT製品情報ページ

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