インタビュー
「オバケイドロ!」インタビュー。非対称型追いかけっこは“プレイヤーを楽しませられなかった”体験から,もの作りの原点を見直して生まれた
「オバケイドロ!」は,オバケ1人にニンゲン3人の最大4人で楽しめる。オバケはニンゲンを全て捕まえると勝利となるが,ニンゲン側は牢屋を破って仲間を解放することができる。こうした牢屋にまつわる駆け引きが本作の特徴だ。オバケを題材としているものの,ゴアや恐怖といった要素が徹底的に排されており,年齢性別を問わず安心してプレイできるのもポイントとなっている。
12月12日のアップデートでは新マップ「ブットビ倉庫」が登場,さらに年末には期間限定イベント「オバケイドロ!フェス」がスタートし,カワイイ新オバケをはじめとしたさまざまな報酬が手に入る。
そんな盛り上がりを見せている「オバケイドロ!」を開発したのは,愛知県にある「フリースタイル」という,ITソリューションやサーバーの構築を本業としている会社だ。これまでスマートフォン用ゲームを開発・運営してきたが,「オバケイドロ!」は初めての家庭用ゲームとなる。とはいえ,シンプルで奥深いルールと,あらゆる年齢層にしっかりとターゲットしたゲーム作りはとても家庭用ゲーム初挑戦とは思えない。そこで4Gamerではフリースタイルの「オバケイドロ!」プロデューサー/ディレクターの田中克功氏,アートデザイナーの1023氏,プロジェクトマネージャーの寺山 惇氏に話を聞いた。
自分たちのもの作りを見直したことから「オバケイドロ!」ができあがった
4Gamer:
よろしくお願いします。まずは「オバケイドロ!」でのお仕事を教えてください。
田中克功氏(以下,田中氏):
プロデューサー兼ディレクターの田中です。チームのまとめ役のような立場です。
1023氏:
1023です。キャラクターデザインからUIの作成,3Dモデルの監修まで,デザイン周り全般を手がけました。
寺山 惇氏(以下,寺山氏):
プロジェクトマネージャー,寺山です。各セクションのスケジュールやリリースの調整,バグの優先度の選定などを行っています。
4Gamer:
「オバケイドロ!」の開発に至った経緯を教えてください。
田中氏:
元々は岐阜のイベント「第2回 全国エンタメまつり」(以下,ぜんため)に出展するイベント用ゲームとして開発がスタートしました。
4Gamer:
一般販売の予定がないものだったんですね。
田中氏:
はい。第1回の出展では,弊社で開発していたスマートフォン用シミュレーションRPGを用意したんですが,プレイされているユーザーさんが全然楽しそうじゃなかったんです。我々にとってユーザーさんのお顔を見る初めての機会だっただけに,これはかなりの衝撃でした。そこで「自分たちの作っているものは何だろう……」と,改めて考え直すことになりました。
4Gamer:
なるほど。スマートフォン用ゲームではユーザーの動きが数字として出ますが,実際の表情までは分からないですしね。ですが,そこで「売り上げやアクセス数が出ているからいいや」と割り切ることはしなかったんですね。
田中氏:
はい。ものを作っていくには「まずお金になるものを作り,ユーザーさんにも面白がっていただく」「面白いものを作り,これが広がっていって結果的にお金になる」という2つの方法があると思っています。我々のもの作りにおいて大事なのは後者だろうということで,ユーザーさんに喜んでもらえるゲームを作ろうと考えました。
4Gamer:
開発スタッフの姿勢が面白さ重視だったと。
寺山氏:
そうですね。「この仕様はお金がかかるから止めましょう」「これはお金になるから入れましょう」というより「ユーザーさんに喜んでもらえるから作りましょう」というほうがやる気が出るし,その上で調整の手間があったとしても大喜びで仕事をするような人たちですから。
また,「ぜんため」を主催する日本一ソフトウェアさんにイベントの理念を伺いに行った際「次回はウチで“ぜんため”を盛り上げられるゲームを出します!」と宣言してきました。
4Gamer:
そこから翌年に向けてじっくりと開発を行ったということでしょうか。
田中氏:
そうではありません。スマートフォン用シミュレーションRPGのアップデートなどでバタバタしていて,「ぜんため」が開催される1か月半ほど前になって本格的に動き始めたのが「オバケイドロ!」の企画だったんですよ。
4Gamer:
1か月半で制作したとは,かなりハイペースですね。では,なぜ4人対戦ゲームになったのでしょうか。
田中氏:
前年の反省から分かりやすいものにしようと考えたことからですね。スマートフォン用シミュレーションRPGでリアルタイム4人対戦を開発したこともあり,対戦ゲームにしようと考えました。そこに分かりやすさを加えて,イベントが盛り上がるゲームを作ろうと思いついたんです。
4Gamer:
そして出展版「オバケイドロ!」が作られたわけですが,製品版と違っていたところはありますか。
田中氏:
ルールはほとんど同じです。マップも現在の「デル〜ゾ墓地」そのままのものでしたし。途中で一度形式を変えようとも考えましたが,結局現在の形に戻りました。時間がない中でみんなが一生懸命に考えただけに,密度の高いものができていたということですね。
4Gamer:
1人対3人という人数比率もそのままだったと。
田中氏:
はい。ただ,開発の初期段階では警察と泥棒の2対2で試合をしていて,どちらを選んでも勝率が50%に収束するよう調整を進めていました。しかし,どうしても試合展開が一方的になってしまい,負けた側にストレスが溜まってしまったんです。そこで,人数の構成を1対3に改めました。
4Gamer:
ゲームの調整よりもメカニクスを変えたわけですね。
田中氏:
特殊な能力を持つ警察1人と,平均的な泥棒3人というようにしました。1人側には3人を相手に勝った喜びがあり,3人側は力を合わせて優れた相手に立ち向かうPvE的な楽しさがあることになります。たとえ負けても,1人側は「こっちには特殊な能力があるから,次は勝てるかもしれない」,3人側は「人数が多いんだから,次の勝負は分からないぞ!」と希望を抱けるのもポイントですね。
4Gamer:
負けた側も気持ち良く次の対戦に移れるわけですね。変化はありましたか。
田中氏:
はい。負けても笑っていられるようになりましたね。テストの参加者から「もう1回!」の声が上がり,プレイが止まらなくなったんです。
4Gamer:
負けた側の気持ちにそこまでこだわった理由はなんでしょうか。
田中氏:
イベント出展のゲームだからです。楽しむためのイベントで遊ぶのだから,勝っても負けても楽しいというものでなければなりません。勝ち負けというのは想像以上に心に影響を及ぼすものですから。
4Gamer:
負けた側に気持ちのやり場を用意するあたりは,現在の対戦ゲームにおけるトレンドだと思います。他の対戦ゲームも意識した上での設定なのでしょうか。
田中氏:
正直に言うと,他の対戦ゲームを調べているような時間はありませんでした(笑)。
4Gamer:
開発する上で実現できなかったアイデアはありますか。
田中氏:
企画の初期段階ではオバケの頭と手を自由に付け替え,特殊能力を自由に組み合わせられるという要素がありました。ただ,ゲームが複雑になる上,マップごとに組み合わせの最適解が固定化してしまう恐れもありましたし,まずはケイドロの楽しさにフォーカスしようということでボツにしました。将来的にはオバケ側にチビオバケを選べるような感じでのカスタマイズを復活させたいです。
4Gamer:
ゲーム全体の雰囲気も,今と同じだったのでしょうか。
田中氏:
「ぜんため」に出展する前の段階では,もう少しホラー要素が濃いものだったんですが,イベントで幅広い年齢層に楽しんでいただくのであれば,ゴアやホラーの要素は無いほうがいいということで現在の形になっています。
4Gamer:
では,実際に出展してみての反応はどうでしたか。
田中氏:
あまりに好評なので驚きましたね。お客さんがずっと並び続けてくださいましたし,繰り返し遊んでくださる方もおられました。2日間のイベント中,スタッフ全員がぶっ通しで対応をしなければならなかったくらいの混雑で,これは全くの想定外でした。
寺山氏:
アンケートも,並びながら1行分のスペースにビッチリと書き込んでくれる方や,キャラクターを描いてくれる方などさまざまでした。
4Gamer:
去年とは大違いの結果が出たわけですね。
ホラーやゴアの要素を排し,真の全年齢向けを目指す
4Gamer:
「ぜんため」の後に製品化されたきっかけはどういうものですか。
田中氏:
「ぜんため」の弊社ブースの近くに任天堂さんが出展されていて,「Switchで出そうよ。名前がいいよね,分かりやすいし」とお声がけいただいたのがきっかけです。任天堂さんとは別のゲームを出すためにコンタクトを取ってはいたんですが,製品化の予定がない「オバケイドロ!」に関心を持っていただいたのは驚きましたね。その後はノートPCを5台担いで任天堂さんへ行き,実際に対戦をしたりしつつ話を進めていきました。
4Gamer:
任天堂とのやりとりで記憶に残ったことはありますか。
田中氏:
1台のSwitchでみんなが楽しめるよう,画面4分割対戦を実装したほうがいいとアドバイスをいただいたことです。我々としては想定していなかった機能でしたし,エンジニアからも難色を示されました(笑)。
4Gamer:
なんといっても描画の負担が4倍になるわけですからね。
田中氏:
しかしエンジニアも頑張ってくれて,フレームレートを落とした上でなんとか実現することができました。また,対戦ゲームかつ,知名度がない初のゲームということで,AIキャラクターの実装を強く勧めていただいたのも印象的でした。100万人クラスのプレイヤーがいるならともかく,夜中や早朝など,どうしても人が少ない時間帯が生まれてしまうというのが理由でしたね。
4Gamer:
ゲームの表現にもかなり気を使っている印象を受けました。例えばオバケがニンゲンを捕まえる際も,殴ったり切ったりせずに転ばせているだけですし。こうした部分も任天堂からのアドバイスなのでしょうか。
田中氏:
任天堂さんからは,表現についてのお話よりは遊び方についてが主でした。
4Gamer:
そのほか,出展版と製品版で違う部分はあるのでしょうか。
田中氏:
出展版だと,ランタンの効果範囲を表示していませんでした。「ぜんため」のアンケートでも「分かりにくい」というお声をいただき,現在の形になりました。これに加えて,CERO A(全年齢対象のレーティング)とするために表現を調整しています。
例えば,出展版では尖っていた牢屋の上部も,製品版では丸くしてあります。また,ワルウルフに捕まったニンゲンが投げ飛ばされる速度も緩めました。当初の状態だとスピードが乗っていて危険そうに見えるという指摘があったんです。
4Gamer:
チェックの際には,実際に子供にも見てもらったのでしょうか。
田中氏:
はい。弊社代表の娘さんやお友達に試していただいたりもしています。ちょっとしたホラーの雰囲気がフックとして作用しているようで,アンケート用紙いっぱいにワルウルフの目やツギハギの顔が描いてあったりして驚きましたね(笑)。
4Gamer:
キャラクターについては,最初からオバケ対ニンゲンという設定だったのでしょうか。
1023氏:
初期段階は警察と泥棒でしたが,途中からオバケとニンゲンになったんです。
田中氏:
いつの間にか1023がオバケとニンゲンのラフを描いていたんですよ(笑)。夏のイベントでしたし,来場者の反応を考えるとやはりオバケ。オバケから逃げるんだからニンゲンだろうということですね。
4Gamer:
オバケたちはどこかコミカルな感じがあって可愛らしいですよね。
1023氏:
私はホラーやゴアが苦手なので,怖くて怪しいだけじゃなく,突っ込みどころがある感じというか,ちょっとポンコツな要素も取り入れました。
4Gamer:
デザインしていく上で大きく変わったオバケはいますか。
1023氏:
キリサキが結構変わってますね。もともとは両手が巨大なハサミに変化して,紙を切る感じでチョキチョキと交差させつつニンゲンを追いかけてました。
4Gamer:
それは痛そうですね。捕まるとバッサリやられてしまいそうです。
1023氏:
ニンゲンを捕まえた時の演出も「両手のハサミに挟まれたと思ったら,ハサミが手に変形して牢屋へ放り込まれる」というものでした。ただ,これだと切られてしまいそうで怖いので,ハサミはやめて大きな手にしました。
4Gamer:
では,デザインに一番苦労したキャラクターはどれでしょうか。
1023氏:
ケロキングです。沼のマップに出すオバケということで,ゾンビやオオサンショウウオが候補に挙がった中,私がカエルを提案しました。ただ,当初“オバケには足をつけない”というデザイン上の縛りがあり,その上でカエルっぽさを表現するのに苦労したんです。
4Gamer:
ケロキングというのは意外ですね。てっきりデザインがスタイリッシュなキリサキやメェーモンが挙がるかと思ったんですが。
1023氏:
試行錯誤する中で足つきのバージョンを描いたりもしたんですが,結局は最初に描いたものに戻ることになりました。それが現在皆さんの見ているケロキングですね。
4Gamer:
2019年8月に製品版が配信されたわけですが,反響はいかがでしたか。
田中氏:
ビックリするくらいにポジティブでしたね。発売前の時点でゲーム実況者の方から先行プレイのオファーがあったのには驚きました。PCゲームならβ版のクライアントをお渡しできるんですが,Switchだとそうもいきません。先行実況プレイをしていただくためには愛知の弊社まで来ていただく必要があったんですが,「それでも行きます!」とご快諾いただいたんです。
寺山氏:
特に予想外だったのが,プレイヤーの方がSwitchからSNSにプレイ動画を上げてくださったことです。Switch側のハッシュタグを設定していなかったので,「“#オバケイドロ”と手打ちするのは大変です」というお声をいただいてから対応したくらいですから。
田中氏:
我々はSwitchを持ち寄ってのローカル対戦をメインに考えていたので,オンラインがここまで盛り上がるとは思っていませんでした。オンラインはあくまで補助的なものと考えていたため,リリース当初はフレンド合流をはじめ,ユーザーさんのご希望にしっかりと添えるものになっていなかったのは申し訳ないと思っています。
4Gamer:
ユーザーの年齢層などは把握されていますか。
田中氏:
年齢層までは分かりませんが,我々独自の調査により,対戦が行われている時間帯などは把握しています。小学生が帰宅する時間と21時ごろにそれぞれピークがあるので,10歳以下のお子さんから20〜30代の社会人の方が多いようです。
4Gamer:
ニンゲンのランタンやオバケの使用率についてはいかがでしょうか。
はい。現時点(※)ですとランタンは「ステンドライト」の使用率が20%ほどで一番人気です。意外だったのは初期装備の「クラシックランタン」が約15%も使われていたことですね。続いてはテクニカルな「ワルウルフヘッド」が13%といったところです。
オバケに関してはツギハギが13.98%,ケロキングが13.43%,キリサキが12.77%と,トップ3がほぼ横並びです。
※インタビュー収録は12月5日
4Gamer:
ランタンもオバケもベーシックなものが好まれているわけですね。
寺山氏:
我々としては,プレイ時間の長さに応じて性能が強化されていくよりは,ユーザーさんご自身のスキルで競う内容にしたかったので,こうした傾向は嬉しいところです。
4Gamer:
ユーザーの動向で想定通りだったところとそうでないところはありますか。
寺山氏:
想定通りだったのはマップごとの勝敗率です。マップにはオバケ有利のものとニンゲン有利のものがありますが,ほぼ予想通りの数値になりました。
一方,ユーザーさんの継続率については,我々が想定した以上の結果が出ています。もともとがイベント出展用のゲームでしたから,そこまで長く遊んでいただけるとは思っていなかったんですが,100時間以上のプレイや,対戦数が500回を超えるようなケースも見られました。
4Gamer:
それは嬉しい想定外ですね。
寺山氏:
ニンゲン側の上達も非常に速いですね。目立った例では,リリース翌日にランタンやオバケといった諸要素を全てアンロックされている方もおられましたし。
田中氏:
リリースから3日ほど経つと,こちらが考えてもいないような遊び方が始まりました。ニンゲンが牢屋に囚われたときの「アピール」というエモートでリズムを刻んで動画を撮影したり,しゃがむとランタンが消える仕様を煽りに使ったりという方もいてビックリしました。
寺山氏:
みんなで集まって記念撮影をした動画を上げてくださった方もいましたね。
1023氏:
オバケとニンゲンで仲良く撮影されているものも見かけました(笑)。また,ニンゲンの足跡で落書きをする方もいましたね。
田中氏:
囚われたニンゲンがオバケのいる方向を見つつ「アピール」のエモートを使うことで,警告を発しているようなこともありました。
4Gamer:
なるほど。特定の方向を向いて笛を吹いているわけですから,まさに警告ですね。ユーザーがみんなで仕様を工夫して,新しい遊びを生み出しているという感じがあります。
ゲーム開発経験がないメンバーが集まり,「オバケイドロ!」を作り出す
4Gamer:
ここからはフリースタイルについてお話を聞かせてください。フリースタイルがゲーム事業を始めたのはどういう経緯によるものなのでしょうか。公式サイトを拝見したところ,サーバーやインフラ構築といった事業がメインのようですが。
田中氏:
当初はエンジニアを派遣する仕事を行っていましたが,その中で東京のゲーム会社に出向する案件があり,その担当者が戻ってきてゲーム事業部を立ち上げました。そこから人員が増えて現体制になったんですが,僕を含めてほとんどの人員にゲーム開発の経験がないんですよ。
4Gamer:
それはまた珍しいパターンですね。
田中氏:
僕は建築業界から広告業界へ転身し,Webデザインなんかを作った後,学校へ入り直してゲーム作りを学びました。
寺山氏:
僕は自動車メーカーでヘルプデスクをしていました。仕事の際に着るのもスーツではなく作業服でした(笑)。
1023氏:
私はフリースタイルが初めての職場で,デザイナー経験がゼロでした。
田中氏:
現メインプログラマーも元々はトラック運転手でしたしね(笑)。
4Gamer:
では,前職での経験が役に立ったことはありますか。
僕の場合だと,マップ作りに建築の経験が役立ちました。道を歩いて行った先に何が見えてくるのかといった楽しさや,並んでいるオブジェクトがいかに自然に見えるかといった部分,そして導線の設計などは建築の考え方を元にしています。現実の世界では,信号機や花壇の位置をひとつとっても,危険の周知や見た人を楽しませるなど,しっかりとした意味があってそこに置かれているわけですから。
僕にとってマップ作りはレベルデザインというよりランドスケープデザイン,要は建築なんです。「オバケイドロ!」のマップでは「デル〜ゾ墓地」が印象に残っていますね。キャラクターの背後に置かれたカメラでマップを歩いていて,次に何が見えると面白いだろうかといったところも気を使っていますから。
4Gamer:
寺山さんはいかがですか。
寺山氏:
コールセンターで仕事をしていた時の“お客さんと自分の認識をすり合わせる”経験が各セクションの調整にとても役立ちました。我々はいろいろなお客様のところへ派遣される仕事でしたから,みんなが自分の体験してきた現場を基準にするところがあります。つまり,スタッフ1人ひとりの常識が違う上,お互いの常識がズレていることを認識できていないんです。
4Gamer:
それは調整が難しそう。
寺山氏:
バグについての考え方ひとつとっても,それぞれに全く違っています。家庭用ゲームの仕事をしてきた人は「バグなんてもってのほか!」だし,スマートフォン用ゲーム出身の人は「パッチで直そう」,業務用システムを手がけてきた人は「テストのチェックリスト自体がちゃんとなってないんだよ!もっと細かくしろ!」……ともうバラバラなんです。みんなが自分の常識,普通,当たり前をぶつけ合うような状態でしたから,これらをすりあわせて基準を作っていくのが仕事になりました。
4Gamer:
スマートフォン用ゲームを作っていた頃と現在では社内の士気に違いはありますか。
田中氏:
如実に違っていますね。自分たちが考えた企画ですし,「ぜんため」やBitSummitなどさまざまなイベントで直接ユーザーさんの反応を見てもいますから,チームの皆が“自分のゲーム”であるというモチベーションで開発を進めています。例えば,プログラマーが自主的に新たな仕様を取り入れてくれたり,メンバーがそれぞれに遊び心を発揮してくれているんです。
4Gamer:
苦労の甲斐あって現場の士気がより高まったわけですね。
「オバケイドロ!フェス」でさらなる盛り上がりを見せる
4Gamer:
今後はどんなアップデートを予定していますか。
田中氏:
12月12日に実装される,新マップ「ブットビ倉庫」は,特定の場所に行くとニンゲンもオバケも大ジャンプできるというもので,高低差を活かしたプレイを楽しめます。
また。年末には「オバケイドロ!フェス」という期間限定のイベントをスタートする予定です。フェス用のスタンプカードにスタンプを集めていくと,新オバケや新しいニンゲン,新ランタンを手に入れることができます。
4Gamer:
新しいオバケはどんなキャラクターですか。
田中氏:
吸血鬼のオバケです。これまでのオバケたちとは違い,ニンゲンに近いプロポーションとなっています。また,壁抜けの仕様も“ボタンを押した後の一定時間だけ壁抜けが可能になる”という少し特殊なものです。
4Gamer:
可愛らしいデザインと少し変わったプレイ感を合わせ持つオバケになりそうですね。12月19日にはパッケージ版が発売されますが,これからオンラインに参加しても大丈夫でしょうか。
田中氏:
全く問題ないです。やりこむことでキャラクターの足が速くなるのは確かですが,影響はごくごくわずかです。ダウンロード版で先に遊んでいる方に追いつけないといったことはありません。ゲームを進めてランタンを買ったり,使えるオバケを増やすといった要素も存在しますが,後から増えるオバケも単に能力の高い上位互換ではなく,特定の用途に特化しているメリットもあれば,デメリットも持っているので,初期キャラクターでも対戦を楽しむことができます。
4Gamer:
でしたら,安心してパッケージ版を買えますね。では,最後にメッセージをお願いします。
1023氏:
「オバケイドロ!」のオバケやニンゲンたちを可愛がってくださってありがとうございます。これからアップデートで増える子たちもいますので,引き続きたくさん遊んでもらえると嬉しいです。
寺山氏:
レベルを上げてキャラクターを強くしたり,勝ち負けを競い合ったりというものではなく,いかに楽しくケイドロをするかというゲームです。遊ぶほどに楽しみ方の幅が広がっていきますので,今からでも問題なく楽しめます。画面分割で遊ぶこともできますから,気になる人はゲームを持っているお友達に試させてもらうなどして,一度遊んで見てください。
田中氏:
フレンド合流などの修正に時間がかかってしまって申し訳ありませんでした。新たなマップやオバケなどのアップデートにも注力していきますので,これからもよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
自分たちの作ったゲームで楽しんでもらえない。衝撃の経験から立ち直り,もの作りの原点を見直した「オバケイドロ!」。ルールを可能な限りシンプルにし,ゴアやホラーといった要素を排するというイベント出展ゲームならではの工夫が,製品版では幅広い層に受け入れられる利点となったのも興味深いところだろう。
また,初めての家庭用ゲームの開発に挑んだ本作がヒットしているのは,インディーズゲーム制作者にとって希望の持てる話だろう。8月に発売され,12月に新たな盛り上がりを見せる「オバケイドロ!」。今後の展開にも要注目だ。
「オバケイドロ!」公式サイト
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