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印刷2020/08/29 12:00

プレイレポート

うみみゃぁ! 伝説のフリーゲームが,ついにスマホに。「Elona Mobile」プレイレポート

Windows用フリーゲーム最高峰の1つである“Elona”のエッセンスを最大限生かしたままスマホ版へと移植した「Elona Mobile」。この作品をスマホに持っていこうとする人がいるとは思わなかった……
画像集#061のサムネイル/うみみゃぁ! 伝説のフリーゲームが,ついにスマホに。「Elona Mobile」プレイレポート

 「Elona」というゲームをご存知だろうか。正式名称は「Eternal League of Nefia」,個人開発のフリーゲームであり,あえてジャンルを定義するならば「不思議のダンジョン」シリーズのような“ローグライク”に分類される作品だ。

Elona - Ylvania


 その特色は尋常ならざる自由度の高さで,「あまりにも自由すぎる」がゆえに,現実と「Elona」での生活優先度が入れ替わってしまうプレイヤーが続出。半面,「あまりにも自由すぎる」がゆえに,ゲームの遊び方すら理解できないうちにアンインストールしてしまうプレイヤーも数多い。
 なぜならElonaは,初見では理解不能で複雑怪奇としか言いようがないゲームシステムで塗り固められているからだ。白状するが筆者も,数年置きにインストールしてはキャラを作って数時間でプレイを断念する……という流れを2〜3回は繰り返し,そのうえでようやくまともに遊べるようになったという経緯がある。

再掲で申し訳ないが,これがオリジナルのElona。オリジナルが持つ面白さや雰囲気は,割と忠実に移植されているので,昔遊んだきりの人もぜひスマホ版はプレイしてみてほしい
画像集#062のサムネイル/うみみゃぁ! 伝説のフリーゲームが,ついにスマホに。「Elona Mobile」プレイレポート

 ……とそこだけ読むと難解なクソゲーにしか思えないが,ひとたび本作を“理解”することができれば,その先にあるのはゲーマーにとって見渡す限りのフロンティア。フリーゲームということで,レーティングや倫理的な部分でのしがらみなども一切なく,そこで自由度が阻害されることもない。ローグライクと言いつつも,その本質はオープンワールドゲームに近く,筆者はいまだに“自由度”で本作を超えるようなゲーム体験には出会えていない
 2007年にリリースされて以来,飽きることなく遊ばれ続けており,驚くべきことに10年以上が経過した現在でも,SNSなどで「なにか面白いフリーゲームある?」と問われれば,真っ先にその名が挙がるくらい高い評価を維持し続けているのだ。

 そんな「Elona」のモバイル版が,中国のゲーム会社であるライトニングゲームスによってパブリッシングされているのは,4Gamerでも昨年から煽っている(?)が,いよいよ日本国内でのサービスが近づいてきた。公式ツイッターや日本語版の画面の公開に始まり,8月13日〜8月27日の期間には,Android版のみではあるがクローズドβテストが実施されたのだ。
 それをプレイする機会を得たので,初心者が置いてけぼりにならない程度に,原作である「Elona」の記憶を振り返りつつも,リファインされて現代的なゲームとして生まれ変わった「Elona Mobile」(iOS / Android)の感触をお届けしていこう。

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 日本も中国も「スマホゲーム会社」というと,女の子がたくさん出てきてガチャで稼いで……というイメージ(?)だが,中国にコアなゲームばかりを出している謎な会社がある。CEOに会う機会を得て,話を聞かせてもらったのでお伝えしよう。

[2019/09/06 17:45]

Elona Mobile公式ツイッター


装備画面とか,こういうスキル一覧表示画面とか,見てるとそれだけで遊びたくなってきません?(筆者だけ?)
画像集#063のサムネイル/うみみゃぁ! 伝説のフリーゲームが,ついにスマホに。「Elona Mobile」プレイレポート

 ……ちなみに,念のためもう一度書いておくが,今回プレイしたのはあくまでテスト版だ。以前4Gamerに掲載されたインタビューにもあるように,日本国内版は大幅な調整が入る可能性もあるため,現時点でのレポートはノルンのアドバイスと同程度の信憑性しかない。ノークレーム・ノーリターンで受け取ってほしい。

※Elonaに登場する案内役。嘘をつくゴミ。

キャラメイクの仕様は未知数

だが,例の組み合わせは健在


 「Elona Mobile」でも,プレイヤーの分身である主人公を作成するところからゲームは始まる。下手したらキャラメイクだけで1日が潰れることもあった原作に比べると,極めてシンプルな選択肢に絞られており,クローズドβテストの時点では「種族」「職業」「名前」「性別」「異名」「外観」が変更できるのみだった。この画面では種族や職業を組み合わせたうえでの詳細な能力値を確認できず,フィートの選択もできない。

※普通のRPGで言うところの,スキルっぽいなにか(スキルはちゃんと別にある)。肉体的特徴とか種族固有の能力とかそういうもので,原作ではキャラメイク時に3つ取得できる

 原作だと,キャラメイクの多様性も含めた自由度がゲームの核とも言える要素なのだが,あくまでもそれは「システムを理解しているプレイヤー向け」の仕様であり,初心者にとってはゲームスタートから理解不能な情報の濁流を押し付けられるに等しいデメリットでもあった。
 新規のファン層を開拓するためにもスマホ版である程度シンプルにしたいという意図は理解できるし,そのうえで原作ファンも納得させたいのであれば,良い落としどころを見付けるよりほかはない。原作経験者としてはちょっと物足りないが,よりマスを目指すであろうスマホ版であることを考えるとこれくらいがよいのかもしれない。

セリフのなども含めてテキスト周りはまだまだ調整中。とはいえ,ひどい名前をランダムで提示しておきながらこの仕打ち
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 キャラの性能に関しては,現状の大雑把な能力グラフではなんとも判断が難しく,おそらくは原作に近いバランス調整が行われているのではないか……という予想はできるのだが,そこまででしかない。とはいえ,初心者向けの配慮として種族や職業にはそれぞれ「簡単」「ハード」というタグ付けがされており,選択したときの遊びやすさをある程度は示唆してくれている。
 例えば「種族:イェルス」で「職業:戦士」にしておけば,とりあえず「キャラクターが弱すぎて詰む」ということはないが,そもそもこれは,何度もキャラを作り直して繰り返し遊ぶことが前提のゲームである。原作プレイヤーとしては試行錯誤も楽しみの1つだと思うので,初回は難しいことを考えずにフィーリングでキャラメイクをするのが吉だ。アカウントにつき3キャラ分のスロットが用意されているので,様々な組み合わせを同時進行で試すこともできる。

※普通のRPGで言うところの,いわゆるHuman的種族。どんな職業でも比較的そつなくこなすが,フィートが地味だ

異名はリロールを繰り返すことでランダム生成される。ゲーム的には何の意味もないが,ロールプレイを重視するのであればこだわりたい要素だ。同様の理由で,クローズドβ段階ではイジれない身長や体重も,正式サービスでは設定できるようにしてほしいところ
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 あとまぁ,一応のお約束として触れておかねばなるまいが,若干カジュアルになった「Elona Mobile」であっても,「かたつむり」と「観光客」だけは要注意だ。これらは完全に縛りプレイ用の選択肢であり,初心者が無闇に手を出せば本作に対する記念すべきファーストインプレッションが「クソゲー」になること間違いなしである。まぁそれもまた“自由”ではあるのだが……。ほかのゲームにおける「ベリーハード」モードと同列程度に考えているならば,まったくもってオススメしない。
 もし筆者が,「かたつむり観光客」でプレイレポートを書くか,ライターを辞めるかどちらか選べと言われたら,迷いなく筆をへし折ってそれを相手の眉間に突き立てるとだけ言っておく。

大げさに吹いているわけでなく,「かたつむり観光客」は本当に弱い。この組み合わせでスタートしようとすると,カウントダウン付きの注意文が表示されるくらいには危険だ
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……本当に変わってしまったのか?

ロミアスのチュートリアルに注目


 主人公は旅の途中,乗っていた船が難破してしまい本作の舞台である「ノースティリス」の地に流れ着く。気を失っているところを「ロミアス」と「ラーネイレ」というふたりのエレア(エルフのような種族)に助けられて目覚めるという,冒険の始まりとして申し分のないシチュエーションだ。

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原作ファンにはお馴染みのプロローグだが,新たなイベントシーンの追加によってストーリーの流れが分かりやすくなっている
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 なお,ここで出会うロミアスは,本作のイロハを伝授してくれるチュートリアル担当。そして,彼は「Elona」を代表する名物キャラクターでもある。右も左も分からぬプレイヤーに最低限の知識を授けてくれる“恩人”とも言える存在なのだが,実は性格にちょっと……いや,だいぶ難がある。
 原作ではチュートリアルにかこつけて嫌がらせギリギリの行動を繰り返し,挙句の果てには,自然な流れで人肉を食わせようとしてくる。それを不審に思いつつ食べたら食べたで「……本当に食べてしまったのか?」などと言ってくるサイコパス極まりない行動で,多くのプレイヤーを人間不信に陥らせた。

種族にかけられた疑いを晴らすために旅をしているロミアスとラーネイレ。今後もメインストーリーに関わってくることになる
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 それが後に一部界隈で「ロミアス爆殺チュートリアル」だの「ロミアス爆殺RTA」などと呼ばれる物騒な文化を生むきっかけとなるのだが(必ず巻き込まれるラーネイレが気の毒)……これらの小技については記事の本題から逸れすぎてしまうのと,序盤のゲームバランスを崩しかねないので詳しい方法については言及しない。「Elona Mobileでも可能」だったということだけ,一応お伝えしておこう。

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βテスト版ではキャラメイク時にフィートを選択できないため,ロミアスの爆殺は特定の条件下でしか達成できなかった。なお,すべてのNPCに言えることだが,ここで殺してもメインストーリー上は何事もなくピンピンしている
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 爆殺はさておき,実際のところはゲームに慣れ,そして「Elona」ワールド全体の狂った倫理観に慣れてくるほどに「あいつのアドバイス,的確だったのでは?」と思えてくるのが面白い。つまりロミアスの場合,「緑髪のエレアは殺せ」だの「目にやさしいゴミ」だのとディスられつつも,本気で嫌われているというよりはネタとして愛されている側面が強いのだ。
 なお,嘘をつく方のゴミ(ノルン)は許されなかったのか,モバイル版で見事なリストラを食らっている。

「許されなかった方の緑」ことノルンは,エルという妖精に置き換わった。ただし,公式ツイッターの紹介文を見る限り,こいつも信用できない(魔法書は読書に失敗するとモンスターを呼び出す。つまり家の中で読むと……)
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 しかも「Elona Mobile」におけるロミアスの行動は原作と比べてだいぶマイルドになっており,ちゃんと序盤から有用なアイテムをくれるし,人肉を食わせようともしてこない。いちいち感じの悪い言動が目立つのは相変わらずだが,チュートリアル役としては文句のつけようもない有能っぷりを見せてくれる。……それはそれで,ちょっと寂しいが。
 好き勝手にできる個人制作タイトルとは違い,審査の関係で人肉食のシステム自体がカットされたのかと思いきや,ゲームを進めると当たり前のように人型の敵から人肉がドロップする。どういうことかと情報を探ってみたところ,公式Twitterに以下のような投稿があった。


 つまり,今後の要望や審査次第では「Elona Mobile」でもロミアスから人肉をもらえる可能性があるというわけだ。やったね(?)

人肉は普通に食べてしまうと狂気状態に陥るが,たまに「肉食性」のフィートを獲得できる。こうなると,いくら人肉を食べても狂わない(しかしプレイヤーの倫理観は狂う)
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タップ操作に最適化されたUI周り


 冒頭でも述べたように,原作の「Elona」はゲームシステム周りが極めて煩雑で,なかでも独特すぎる操作方法をまず最初に覚えないと,ゲームのスタートラインにすら立てなかった(しかもテンキー必須なので,ノートPCでは遊べないことも多い)。ゲームパッドでの操作も不可能ではないが,ショートカットキーさえ覚えてしまえばキーボード操作のほうが遥かに楽であり,本作をきっかけにキーボードでのゲームプレイに慣れたという人も多いだろう。

モバイル版の操作モードはいつでも変更できる。ヘルプを参照しながらキーボードを叩いていた時代からすると,信じられないほど遊びやすくなった
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 キー配置さえ覚えてしまえば,「Elona」の自由度を語るうえで外せない「食べる」「拾う」「掘る」などといった多彩なアクションをスラスラとこなしていけるのだが,逆にそれが初心者にとって高いハードルになっていたのもまた事実。モバイル版の開発が明らかになったとき,この操作系をどこまで単純化できるのか,また単純化することで「Elona」本来の面白さを損なうことになりはしないか……という,期待と不安の入り混じった関心が多く集まっていた部分でもある。
 結論から言えば,「Elona Mobile」はかなり高いレベルでタップ操作に最適化されている。完璧とは言えないが,そもそもスマホのサイズでは小さなターゲットがタップしづらいなど,ある程度やむを得ない点を除けばほとんどストレスを感じない仕上がりだ。
 原作の煩雑さはどこへやら,どのようなアクションでも直感的な操作が通用するあたりは完全に良い意味で別モノと言っていいだろう。かなりアバウトに画面をタップしても,キャラやオブジェクトにひっかかったりせず,最短ルートで移動してくれるのも素晴らしい。

直感的なUIのおかげで操作性は良好。ステータス周りもスッキリしたデザインで理解しやすくなっている
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 設定でいくつかのパターンに切り替えられるのだが,そこはプレイヤーの好み次第。個人的には画面のスッキリする「タップ操作」でボタンサイズを「大」にするのが遊びやすかったが,十字キーを表示しておけばターン制バトルにおいて確実に一歩ずつ動けるというメリットを得られる。また,慣れないうちはどうしてもタップミスが多くなるので,出来るだけ画面の大きなスマホ(またはタブレット端末など)でのプレイが快適そうだ。

序盤はそれほど気にならないが,難度の高いダンジョンに挑戦できるようになってくると,1歩の行動が文字どおり生死を分けるのがローグライク。状況に応じて操作モードを切り替えるのもアリだろう
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 さすがにショートカットキーは,PC版のように「あらゆること」をカバーできるわけではないが,近接攻撃と遠隔攻撃を筆頭に,必要最低限のアクションをうまく絞り込んでいるという印象。プレイスタイルにもよるだろうが,少なくとも序盤のプレイにおいて不便さを感じることはほとんどない。ただ,魔法などのスキルを多用する場合,確実に空きスロットが足りなくなってくるのは容易に想像がつく。もしかしたらスロットを増やせる機能などもあるのかもしれないが,今後の調整に期待したい。

カスタム可能なショートカットキーは,5枠ごとの切り替えでトータル10枠。デフォルトのままだと,ほとんど基本アクションで埋まってしまう。スキルを多用するビルドの場合,アイテム類の使用はバッグからアクセスすると割り切ってしまうのも手か
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ユーザーフレンドリーな「Elona」体験

スマホ向けに調整されたゲームバランス


 ちょっと昔話をしよう。

 チュートリアルを終えた瞬間から,「なにをしてもいい」自由な世界へと放り込まれるのが原作である「Elona」の美点であり,難点でもある。一応のメインストーリーが存在はするものの,単純に主人公視点で進む物語でもないので感情移入がちょっとしづらく,緻密な設定が入り混じったその全容を初回プレイで把握するのはとても困難だ。
 普段からオープンワールドゲームで自分なりの目的を見つけることに長けているプレイヤーならともかく,主人公が確固たる目的を持たぬ世界で「さあさあ,冒険をどうぞ」と言われても,何をすればいいのか分からない……という人も多いだろう。

これがノースティリスの全体マップ。ゲーム開始時からほぼ制限なしに移動できるため,ほとんどのプレイヤーはメインストーリーを忘れて寄り道しがち。というかそれが楽しい
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ダンジョンの攻略がゲーム進行上の主な目的となるが,とくに焦って進める必要はない。プレイヤーは世界を救う宿命を背負った勇者ではなく,自由気ままな冒険者なのだ
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 わけも分からずワールドマップをウロウロして餓死したり,「エーテルの風」にやられてさまざまなエーテル病を発症したうえに治し方も分からず遊ぶのをやめてしまったとしても,それは無理からぬこと。そういった洗礼を受けてもなお,諦めずに挑戦し続けた者だけに極上の体験を提供してくれたのが「Elona」というゲームなのである。

ノースティリスで暮らす者にとって逃れられない災厄が「エーテルの風」。エーテル病を進行させ,身体にさまざまな悪影響を及ぼす。自然に治癒することはなく,治療には貴重なエーテル抗体のポーションが必要
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エーテル病とは別に発生する「変異」には良性・悪性のものがある。高確率で良性の変異を引き起こすポーションもあるが,こちらも自然に治癒することはない。エーテル抗体と同じく変異を治療するポーションは貴重なうえに,良性の効果でも打ち消してしまう
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 「信者」と言われればそれまでだが,本作がカルト的な人気を獲得していくうちに「分かる人にだけ分かればいい」という気持ちが,ファンの間で強まっていったような気がする。今となってはそんなこともないと思うが,一昔前だと「スマホばっかりイジっている若いゲーマーにこの面白さは分からんだろう」という,どこか排他的な空気を感じることもあったし。
 余談だが,まさしく当時「若いゲーマー」だった筆者はそういった見解に反証したい気持ちもあり,かつて講師を務めていたゲームライターの専門学校で若い新入生に「Elona」を布教……もとい,課題にしてレビューを書かせていた時期がある。それを数年続けてみたが,課題そっちのけでゲームに熱中してしまう生徒が続出し,嬉しいやら困るやら,複雑な気持ちになったのを覚えている。

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信仰することで千差万別なメリットが得られる神々。自身のプレイスタイルに合わせて選びたいが,なかには信仰の深さを上昇させる「捧げ物」が入手しづらい神もいる。迷ったら「地のオパートス」あたりはド安定(原作と同様)
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 人にやらせておきながら,当の筆者も「じゃあ,具体的にこのゲームではどんなことができるのよ?」と聞かれると長いローディングに入ってしまうのだが……それはつまり,ゲームライターであっても「本作でやれること」を挙げるのは困難極まりないということだ。
 ペットの少女に騎乗しながら銃を乱射したり,下手糞なピアノを演奏して石打ち刑に遭ってみたり。人間牧場で好きなキャラを増殖させてみたり,町から町への交易だけで一財産築いてみたり。著名なNPCの殺害を企ててみたり,なにもかも嫌になったら町ごと爆弾でふっ飛ばしてみたり。
 ……文字だけ見ると意味が分からないだろうし,知らない人からすればタチの悪い冗談としか思えない行動を,当たり前にできてしまう世界を作り上げたのが「Elona」というゲームであり,プレイヤーの想像力さえあれば遊びの幅には限りがない

「騎乗」スキルがあればペットに乗って移動できる。快適な移動手段が欲しいなら馬を買うも良し,少女を乗り回すのも良しである
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ノースティリスでは「演奏」スキルが低い状態で楽器を使うと,怒り狂った聴衆に殺される。音楽で食っていくのも命がけだ
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交易は町から町へと移動するだけで稼げる貴重な金策の手段。安く仕入れて高く売る。うまくやれば,序盤から大金を稼ぐことも可能
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奴隷商人から奴隷を購入したり,自分の仲間を奴隷として売り払うこともできてしまう。人間だろうが動物だろうが,すべて所有物として扱えるのがこの世界のルールだ
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 しかし,それはシステムを完全に理解できていればの話。ほとんどノーヒントでその境地に到るには相当なプレイの積み重ねが必要で,仕方ないから何時間も攻略Wikiとにらめっこして,ようやく自分なりの遊び方を開拓できたという原作プレイヤーも多いだろう。恥ずかしいのであまり言いたくはないのだが,筆者もプレイ早々にノーヒント攻略を諦めて,攻略Wikiのお世話になったクチだ。

 ……とまぁ,原作はこのようにかなりスパルタな仕様だったのだが,そういった苦労も“冒険”の一部であり,「Elona」が人気を博した理由の1つだったことは間違いない。モバイル版を開発するにあたって,どこまでユーザーフレンドリーにすべきなのかは,開発スタッフにとって特段に悩ましいポイントだったであろうことは想像に難くない。

囚われた火の巨人「エボン」を解放して町を火の海にするのも「Elona」ではお約束の行動。とにかく最初のうちは善悪を気にせず,好奇心タップリに色々と試してみるべきだ
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 さてこれは賛否が分かれる部分だと思うが,筆者の意見を述べさせてもらうと,バキバキにガチな「Elona」が遊びたければ,PC版をプレイすればいいというだけのことだ。モバイル版には,いつでもどこでも「Elona」特有の雰囲気を味わえる“気楽さ”が求められているんじゃないだろうか(カジュアルにはなったが全然気楽じゃないのだが)。

 そういった面で「Elona Mobile」は,うまい具合に序盤向けのクエストへと誘導する流れが追加されている。昨今の至れり尽くせりのスマホゲームほどではないが,ある程度のレールを敷くことで,初心者が早々に離脱してしまわないよう配慮している。原作ではアイテムでしか対策できなかったバッドステータスをNPCが治してくれるようになっているなどの救済要素も多く,にわかには信じ難いのだが,よっぽどのことがなければ「詰まないゲーム」へと生まれ変わった。
 また,暗闇を照らす松明や遠隔武器の矢弾が不要になるなど,ゲームをやや面倒に感じさせるさまざまな要素もカット。PC版ではあっという間に餓死していた空腹システムがカジュアル化されていたり,ペットが町の井戸にハマって突然死することもなくなった。「細かいけれどプレイの快適性に直結する部分」については,大胆な改修が行われているようだ。

マップ上のマーカーをタップするだけで,目的地まで自動的に移動してくれる。数多くのNPCが存在する本作においてはとてもありがたい機能だ
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 おかげで,ルーキー卒業の目安となるレベル15に到達するくらいまでなら,誘導されるがままに引き受けたクエストをクリアしていくだけで十分。報酬もガッポリと得られるので,特殊なプレイをしない限りは金策に奔走する必要もなく,冒険の資金をやりくりできる。
 原作では序盤に雑魚モンスターだと思って挑みかかった相手に瞬殺されることも珍しくなかったが,「Elona Mobile」だとそういった“初見殺し”の罠もあまりない。というか,適正レベルで挑む限りなら,戦闘においてピンチに陥る場面がほとんどなかった。
 キャラメイクの種族と職業の選択次第ではあるが,敵の強さからくる難度もPC版に比べればだいぶマイルドになっているのではないだろうか。

「Elona」なのに,序盤からクエストの難度をあまり気にせずサクサク進められるのは,原作プレイヤーからすると新鮮。スマホではこのくらいがちょうどいい
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 また,スマホ版ならではの要素としてログインボーナスや実績報酬が大量に用意されているのも見逃せないポイントだ。筆者も最初は「Elonaにログインボーナス!?」と違和感を覚えずにはいられなかったが,これがなかなか,冒険中には入手しづらいレアアイテムも含まれていて思った以上にありがたいのである。
 それに,モバイル版と言えども「Elona」は「Elona」であるからして,ゲームの構成はほとんど買い切り型のタイトルに近い。それを運営していくとなると,長くプレイを続けてもらうための“モチベーション”を作る必要がある。こういった要素は必然として受け入れるべきだろう。

貴重なエーテル抗体や,変異治療のポーションまでもらえるログインボーナス。あればあるだけ助かるアイテムなのだ
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 そして,フリーゲームと違ってスマホ向けタイトルとして運営を継続していくのであれば,切っても切れないのがマネタイズの要素。本作の課金周りは日本国内サービスにあたって調整がかかりそうなので,現状において確信を持って語れる段階にはないのだが……いわゆる「ダイヤ」は,通常のゲーム進行そのものに影響しない要素である特殊なペット,主人公のスキン,そして一部の「やり込み」にあたる機能の開放に使用される可能性が高そうだ。
 とはいえ,ダイヤも課金だけでなくゲーム内の報酬やログインボーナスとして得られる機会がたびたびあったので,いわゆる「無課金プレイ」がほかのスマホ向けタイトルに比べて厳しいものになるかというと……クローズドβ版で遊んだ感触では,まったく平気の平左。逆に,こんな調子でサービスが成り立つものなのかと心配になってしまう。

外観のスキンはいつでも切り替え可能で,種類も豊富に用意されている。アップデートでの追加や,版権作品とのコラボも期待できそうな要素だ
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ファーストインプレッションは上々

あとは審査をクリアできれば……?


 総評として,まだローカライズが完璧ではない現段階でも「Elona Mobile」の出来栄えは上々だ。PC版そのままの「Elona」しか認めないという原理主義者は別として,このまま順当に開発が進めば「待った甲斐のある」ゲームに仕上がりそうだ。心配していたスマホ向けのアレンジもいい塩梅に仕上がっており,国内ファンに負けず劣らず「Elona」を愛している人間の手によって,熱心に調整されているのが容易に見て取れる。

うみみゃぁ!
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 そうなると,当面の問題として気になるのはどれだけ「Elona」の“ヤバい”エッセンスを保ったままで審査をクリアできるか。そして,iOSで遊べるのがいつになるのかという部分だろう。正式サービスまでに,さらなるβテストを挟む可能性もあるが……やたらに濃いキャラの公式Twitterが熱心に更新されているあたり,今後の情報提供にも期待ができそうである。いま再びノースティリスへの旅立ちを夢見つつ,さらなる続報を待とう。

ある意味では「Elona」で最もサイコな要素と言えなくもない「妹」関係の施設。初見は意味不明だろうし,実は筆者もいまだに理解できていない。こういったクセの強さもまた,本作を構築するうえで大事な要素なのである
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