紹介記事
「Elin」が面白すぎて夏休みをミンチにした。βの時点で,あの「Elona」より深い沼にたたき込まれる
Elonaは,20年近く前の2006年に無料で公開されたゲームであり,長い時間さまざまな人に遊ばれてきただけに,その後継が気になるお兄ちゃんもお姉ちゃんも妹も多いと思う。ただ,現在は触れるのがバッカーだけなので,「あの名作の続編が出るらしいけどどんなゲームなんだろう」といった状態ではないだろうか。
筆者は割と上位のバッカーなので,昨年末から行われているαテストから本作を追っているのだが,結論から言ってしまおう。むちゃくちゃ面白い。
αテストの時点であまりに時間泥棒だし,βテストに移行した段階でセーブデータの引き継ぎがなかったのに,また最初から始めて時間が溶けたし,直近では夏休みもプチの如くミンチにした。*ぷちゅっ*
アーリーアクセスまでは,バッカー以外がプレイする方法はなく,現在も絶賛開発中の本作。仕様変更も激しいので,現時点で「こういうゲーム」と断言すべきではないかもしれない。とはいえ,せっかくすでに良いものが仕上がっているのに,大勢存在するであろうElonaプレイヤーに何もお伝えしないのももったいない……。
というわけで,今回は「ElinはElonaからどう変わったのか」に焦点をあてて紹介したいと思う。Elinから初めて入る人に向けては,アーリーアクセスのタイミングで改めて紹介したいので,今回は前作経験者でないと分からない表現を多用するが,ご容赦を。
基本的にはElona同様の自由すぎ,カオスすぎな世界
現状のElinを一言で表すとすれば,Elonaの超パワーアップ版だ。Elonaで散々やりたい放題やった,あまりに自由でカオスな世界はそのまま。あの面白さをベースに,新要素でできることが増えたゲームという理解でいい。
同時に,今の時代のゲームとしてかなり遊びやすくもなっている。その最たるものが操作性の改善だ。Elonaは割と文字通りに“ローグライク”というか,今のゲームに比べると独特の操作性をしている。ものを食べたければeatの[E]キー,落としたければdropの[D]キーを押すわけだが,覚えるべきショートカットがとにかく多い。そのとっつきにくさは,Elona経験者なら分かってもらえるだろう。筆者も最初はショートカットを覚えるのが辛くて,挫折しかけた覚えがある。
その点,Elinの操作は簡単だ。対象にカーソルを合わせて,左右クリックかマウスホイールのセンタークリック。それだけで多くの操作が完結する。慣れないと逆に「[R]キーで本が読みたいのに反応しないが?」みたいなことになるが,Elinのほうが遊びやすく,人におすすめもしやすくなったのは間違いない。
また,Elonaが真上からの見下ろし型の視点だったのに対して,Elinは斜めからの視点になり,平面的だった前作よりも表現力が向上している。
この操作と見ための変化は,一番分かりやすい変更点だろう。
舞台となるのは,Elonaと同じイルヴァと呼ばれる世界だ。場所もノースティリスなのは変わらないが,517年からスタートしていたElonaと違い,Elinでは485年から始まる。つまり,30年近く過去のお話だ。
この頃のノースティリスはエーテルの風が吹いておらず,シェルターの中でじっと待つ期間もなく,ちょっぴり安全(それでもじわじわとエーテル病は発症する)。
また,Elonaで散々お世話になったり吹き飛ばしたりしたおなじみのパルミアは,この頃は首都ではなく,別の場所にミシリアという首都がある。過去とは言っても,後継作だけあって行ける場所はいろいろと増えているので,ノースティリスを歩き回るだけでも楽しめるだろう。街によっては,斜めからの視点になってもほとんどそのままの配置,かつBGMもそのまま(あるいはアレンジ版)なので,とても懐かしい。
逆に,Elonaの頃には発展しているが,Elinではまだ開拓前の場所もあったりして,こうした違いに気付くのは前作経験者の特権だ。
ゲームの主な進行としては,メインストーリーを進めてもいいし,各街で依頼を受けて日銭を稼いでもいいし,ネフィアに潜ってレアアイテムを狙ってもいい。前作同様の好きにしろよスタイルだ。
ただし,本作では新たにハウジングが追加され,これがかなり重要な要素になっている。自分だけの拠点を持つことはElonaでもできたが,本作ではより自由度が高い。
Elona同様に,食事を取らないと餓死する要素があることも含めて,クラフト系サバイバルっぽい作りだ。最初は石や木を集めて壁や床,道具などを作るところから始まり,木の実を取ったり焚火で肉を焼いたりして食料を確保し,余裕ができたら設備や装飾を充実させていく。
また,拠点には住人を受け入れられる。各住人は,仕事と趣味を持っていて,プレイヤーが冒険しているときでも,肉や魚を採ってくれたり,農業をしてくれたりと,さまざまな恩恵をもたらす。
まぁイルヴァなので,気持ちいいことをしまくる娼婦とか,やっかいな汁を生産する自傷趣味の住人とか,なんかヤバイのもいるし,呼んだ住人を家畜にするとか,ヤバイこともできるが。
とにかく,自分だけの拠点を作って発展させていくことが,大きな目的となるのは間違いない。
拠点は,めんどくさければ戦利品を保管する倉庫的に使ってもいいが,自分好みの外観を突き詰めたり,農業に手を出してクラフトの品質にこだわったりすると,みるみるうちに時間が溶けていく。
本作のクラフトで楽しいのが料理だ。前作では,死体を焼けば肉料理になり,調理器具によって上位の料理が作れるといった仕組みだったが,本作では料理ごとにレシピや対応する調理器具が決まっている。例えばシチューを作るなら死体と調味料,魚のフライを作るなら魚と天ぷら粉を材料に使うという感じ。
料理を食べたときの能力値の上昇効果も変わった。前作では肉料理を食べれば筋力や耐久が上がるなど,効果が料理ごとに決まっていたが,本作では料理に含まれる特性で決まる。「脂たっぷり」なら筋力が,「甘い」なら魔力が上がるといったように,料理にはさまざまな特性があり,材料によってこれも変わってくるので,冒険が進むと良い料理を食べたくなってくる。
もちろん,拠点ではカオスなこともできる。飲食物関連でいくと,例えば醸造。樽の中に材料を入れて放置するとワインができるのだが,ここに果実を入れるようでは,この世界に毒されていない。なにせ,ここに突っ込めば肉や魚もワインになるし,なんならゲロゲロだろうとクソだろうとワインになってしまうという,恐怖の設備なのである。当然,作ったワインは飲めるし売れる。
ほかにも,特性に「幻覚作用」が含まれるヤベー粉を使ってパンを作って大量出荷するとか,牧場で人系のNPCに産ませた乳と卵でプリンを作るとか,とにかくなんでもアリだ。前作でも人肉料理は作れたが,本作ではそれ以上にやりたい放題。
分かりやすいので飲食物を例に挙げているが,これに限らず,倫理観の欠片もないいろんなことができてしまう(無論,品行方正な冒険者として生きても良い)。
パワーアップしたのはクラフト関連だけではない。新種族や新クラス,信仰できる新たな神,新魔法など,各種データも増えた。とくに魔法は,近接攻撃の「手」や,物理攻撃に属性を付与するエンチャント系の「唄」などが登場し,前作では対応していなかった距離感で戦えるようになり,ロールプレイの幅も広がっている。自動で敵を攻撃するファンネルを召喚する魔法なんてものもある(本当に名称がファンネル)。
Elinは,基本的には「クラフトと拠点運営の追加要素でさらにやり込めるようになったElona」と考えていい。
Elonaで経験したさまざまな知識は,そのまま使えることも多い。良いベッドを使うために,勝手に城に入って王族のベッドで眠るといった小技は本作でも使えるし,ゲームが少し進むと,ブランケットなしでは外出したくないのも一緒だ。各地にあるギルドも変わらないので,スキル取得のためにどこに向かうといったこともすぐに分かる。
お店に置いてあるパンを勝手に食べると犯罪になるなど,微妙に治安がよくなっている部分もあってちょっと驚くが,だいたいは散々やりたい放題やったノースティリスの地,そのままだ。あのカオスな世界に特大の新要素が加わったのだから,その時間の溶け具合は推して知るべしといったところだろう。
しかも,Elinは現在,アーリーアクセスすら始まっていないβ版。クエストなどは序盤部分しか実装されていないし,今後もコンテンツは増えていく。うっかり足を踏み入れた妹たちを,深い深い沼へと沈めてくれるはずだ。まぁ,クエストもないのに嬉々として沼にダイブしていくエーテルに頭をやられた妹たちが,筆者含む一部のバッカーということでもあるが。
ElinがElona経験者の期待を裏切ることはまずない。現時点でもそう言い切れるほど面白いので,11月1日のアーリーアクセス開始を楽しみに待とう。
Elinから新しく足を踏み入れる予定の人は,今のうちにElonaを遊んでおくのもオススメ……なのだが,とっつきにくさに挫折する気はする。無料だし,とりあえず触ってみて,あとはがんばれ! と応援しつつ,素直にElinまで待機もアリかもしれない。
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