プレイレポート
「NBA 2K21」プレイレポート。海外ドラマのような物語と成長を描く「マイキャリア」をはじめ,今年もバスケットボールの魅力を存分に楽しめる
実写のようなグラフィックスで,自分だけのNBAを楽しむ
2Kの「NBA 2K」シリーズは,20年を越える歴史を持つバスケットボールゲームの定番で,世界最高のバスケットボールリーグともいわれるNBAの公認ゲームだ。現役選手が最新データで再現されているのはもちろんのこと,マジック・ジョンソンやシャキール・オニールといったレジェンド選手たちも自分で操作できる。NBAファンにはたまらないゲームとなっている。
今年は新型コロナウイルスによって試合のスケジュールが遅れ,無観客試合も行われるなど異例尽くしのNBA。本作もプレーオフ期間中に発売されることとなり,影響の大きさがうかがえる。しかし,ゲームの中ではたくさんの観客が盛り上がっているので心配はご無用だ。
実在の選手たちをモーションキャプチャとレーザースキャニングで再現したグラフィックスはリアルの一語に尽きる。チアリーダーたちが踊ったり,マスコットキャラクターがTシャツバズーカでファンサービスをするといった光景も再現されており,まるでTV中継を見ているかのような臨場感がある。
実際に行われた試合を再現したり,現代のチームとオールタイムベストのチームを対決させるなど,24時間いつでも夢のカードを楽しめる。まさに自分だけのNBAといえるだろう。
今年1月に飛行機事故で死去した,元ロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアント氏もゲーム内では選手として活躍 |
NBA最高のプレイヤーの1人とされるマジック・ジョンソン氏も,現役時代の姿で登場 |
今作はシュート関連に大きな変更が加えられており,「NBA 2K17」のシステムを発展させた新たな「プロコントロール」が実装されている。まずはこの操作感に慣れることが課題となるのだ。
このプロコントロールは,簡単に説明すると,シュートする際に表示される特殊なメーターを見て,右スティックでシュートの方向を調整するというもの。メーターの中には,“この方向へ打てばゴールできる”というゾーンが示されている。右スティックを使い,シュート方向を示すマーカーをゾーンの中に入れることができれば,ゴールリングを通る,正確なシュートを打てる。文章にすると簡単なのだが,慣れない内はなかなかシュートが入らない。フリースローなどの落ち着いた状態ならともかく,相手チームと激しく競り合っている中に,繊細な操作でマーカーを合わせるのは,慣れるまでなかなか難しいものがある。
ゲームプレイ・ディレクターのマイク・ワン氏はTwitterで「カメラをズームさせて,メーターを見やすくする」「右スティックを傾けてマーカーを合わせた際,[L1][L2]もしくは[R1][R2]を押してマーカーをロックしてシュートを打つ」といったアドバイスをしている。アップデートでいろいろと調整が入っているようなので,仕様が落ち着くまではひとまずプロコントロールをOFFにし,従来式でプレイするのも手だろう。
Shooting Tip: For jumpers, hold RS down to start a shot. While still holding, adjust the aim by moving RS slightly left or right till the tick is centered in the meter. You can also tap LT/L2 or RT/R2 to lock the aim and time the shot for an additional boost.
— Mike Wang (@Beluba) August 24, 2020
Try zooming your camera in if you’re having trouble with the shot meter. It might reduce your court visibility but makes shooting easier imo, especially RS aiming. Could be a good trade off
— Mike Wang (@Beluba) September 5, 2020
高校,大学,そしてNBAへ。父の影を追い,バスケットボール人生を体感する
自分で作ったキャラクターを使い,NBA選手としての人生を体感する「マイキャリア」モードももちろん健在だ。今年のタイトルは「The Long Shadow“その道の先に待つもの”」。父の後を追うようにバスケットボールに打ち込む主人公・Juniorの姿が描かれる。
ゲームスタート時のJuniorは高校生の少年。彼にバスケットボールを仕込んだ父・Dukeは人々から愛される選手だったが,残念ながらNBA入りは叶わなかった。Juniorもまた,父と同じようにバスケットボールを始める。そして,大学に入ってキャリアを積み,ついにはNBAからのスカウトを受けるのだ。
主人公はJuniorという愛称こそ決まっているものの,その他の部分は自分で好きに決められる。顔や肌の色はもちろんのこと,身長・体重といった体格,スキルやポジションは,思うままにエディットできるのだ。
能力値の中でも,「スピード」(移動速度),「加速」(ダッシュ時の加速),「体の強さ」(相手選手との当たり強さ),「ジャンプ力」(ジャンプできる高さ)といったフィジカル関連は,上げることと下げることに一長一短があるため,頭を悩ませることになる。
身長を高くしたり,体重を重くすれば,体の強さが上昇,ブロックやリバウンドといったディフェンス系スキルも高まるが,スピードと加速力は落ちてしまう。機敏に動き回れる選手が好みなら身長と体重はそこそこ,ディフェンス能力を求めるならどちらも増やしていく……という具合に,目指すプレイスタイルや好みに応じて調整していく必要がある。なお,今回はポイントガードの身長を203cmまで高くすることができるので,思いっきり大柄な選手を作ってみるのも楽しいだろう。
本作で描かれるバスケットボールの世界は,徹底した実力主義。試合でよい成績を出せば,より多くの大学やNBAチームが興味を持ってくれるようになる。バスケットボールファンの人であれば,ひいきのチームに入れる可能性も高まるわけで,力も入ろうというものだろう。
試合においては,これまでのシリーズ同様,正しいプレイをして評価を高めるのが重要となる。では,正しいプレイとは何かというと,バスケットボールのセオリー通りに動き,仲間にしっかりと協力することである。
例え味方チームが点を入れられても,自分がセオリー通りに動けていれば責任は問われず,評価は下がらない。逆に,自由奔放に暴れ回って得点したとしても,点を入れた分の評価は上がるものの,セオリーを破った分は黙認されずにしっかりと評価が下がるのだ。
マークを担当している相手には食らいついて離れない。相手が自陣に攻め込んで来たら,身体を張ってゴール下のエリアに入れないようにし,得点される可能性を減らす。ボールを受け取ったときは,正しいレーンを通ってゴールへと向かう。味方がボールを持っている時は,適度に離れる……というように,試合中に評価される項目は多岐にわたっている。ボールが欲しいからといって,無闇にパス要求を出すことも減点対象なのだから,なかなかに厳しい。
そして,現実世界と同様,評価を上げるのは難しいが,下がるのは一瞬だ。フリースローを外したり,マーク相手から離れてしまったり,敵陣の制限区域に3秒以上留まってしまうといったミスで評価がガッツリ下がる。
評価を上げるには,コツコツと正しいプレイを積み上げていくしかないのである。物語中でも,少ない出番の中で目立とうとしてスタンドプレイをすることの愚かさや,正しいプレイの大切さが描かれる。優れた選手の超絶プレイが取り上げられることも多いNBAだが,バスケットボールとはチームワークのスポーツであるというわけだ。
評価システム自体は他のモードにも登場するのだが,マイキャリアでは成績を上げるほど多くの大学やNBAチームが声を掛けてくれるといった効果がある。「この試合だけは負けたくない!」と願いながらプレイするのだから,ある意味で全ての試合がドラマチックである。なんとか試合を切り抜ける度に,自分に関心を持ってくれる大学やNBAチームが増えていくのは感慨深いものがあるのだ。
これは過去作のレビューでも述べたことだが,ざっくりと操作方法が掴めてからは「マイキャリア」モードでセオリーを学ぶのも一つの手だろう。他のモードのようにメンバーを切り替える機能がないため,自分のキャラクターや果たすべき役割に集中することができる。そして,細かく評価されながらチームのために尽くすというスタイルは,日本人に向いているのではないかと感じられた。
Juniorが活躍する舞台は,高校から大学,そしてNBAへと移り変わっていくが,Juniorは様々な出会いと別れを経験する。
大学に入ったJuniorは,女子サッカー選手のEllieと出会い,意識し合うようになる。とはいえ,JuniorはNBA入り,Ellieには代表チームの選手として選ばれるという目標がある。
プレッシャーの中で苦しむ2人の行方はどうなるのか? そして父・Dukeの教え子で,今はNBA入り間違いなしの逸材として注目されるCobbとの再会を果たす。ライバルとなった2人はどのような関係を築いていくのだろうか?
かつて父のチームメイトだったArchieは,Juniorに力を貸してくれるが,過去に何らかの出来事があったようで,他のチームメイトからは警戒されているという複雑な人物だ。
JuniorはArchieとともに大学でキャリアを積み上げ,NBA入りが決まったが,そこに大物エージェントであるHarperが声を掛けてくる。苦楽をともにしたArchieと,大きな権力を持つHarper。果たして,どちらを選ぶべきだろうか?
このように,マイキャリアには,海外ドラマを見ているかのようなドキドキと人間ドラマがあり,ついつい中断するタイミングを逃してしまう。バスケットボールを続けることの楽しさ。周囲から期待を寄せられる苦しみ。憧れのNBA選手になる恍惚と不安。少年から青年へと移り変わっていくJuniorの運命は,自分のプレイで移り変わっていくのだから,感情移入も深まるのだ。
こうしてマイキャリアモードで育成した選手は,恒例のオンラインモード「ネイバーフッド」で使うことができる。今年のネイバーフッドは「2Kビーチ」と題され,開発元があるカリフォルニア南部を再現した場所となっている。
海辺の街には,服やユニフォームを買えるショップや,様々な趣向で対戦を楽しめるコートが揃っており,まさにバスケットボールタウン。世界中から集ったプレイヤーたちがあちらこちらで試合をしている様はオンラインならではで,見ているだけで楽しくなってくる。
ネイバーフッドで試合をすれば,ゲーム内通貨「VC」が手に入る。VCはネイバーフッドでコスメティックを買うだけでなく,「マイチーム」モードでカードパックを買ったりするのに必要となるため,ガッチリと稼いでおきたい。
もちろん,ここでも重要になるのはチームワークだ。マイキャリアで学んだプレイヤー魂を発揮し,チームとしての勝利に貢献していこう。
マイチームでは,NBAの様々な選手たちがカード化されており,コレクションも楽しい。「マイチーム・リミテッド」では,週末ごとにレギュレーションが変わるので,常に新鮮な気持ちでプレイできるのも嬉しいところだ。
本作はリアルなバスケットボールを表現しており,それだけに覚えるべきことも多い。しかし,自作のキャラクターとともに成長するマイキャリアや,選手カードのコレクションを楽しめるマイチームなど,様々な楽しみ方が可能。バスケットボール好きにはぜひ遊んでほしいゲームだ。