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真・女神転生III -NOCTURNEがついに復活――“初めてのメガテン”にもオススメな「真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER」を,シリーズ作品の魅力とともに紹介
真3HDの大元となるのが,2003年の発売から現在も多くのコアなファンを持つ「真・女神転生」シリーズのナンバリングタイトル第3弾である「真・女神転生III -NOCTURNE」だ。オリジナルとなるPlayStation 2版の発売以降,リマスターやリメイク,アーカイブ配信などもなかった真・女神転生IIIが“原作尊重”を前提としたグラフィックスやゲーム性の向上が施された作品として,ついに復活を遂げたのである。
初報となった7月20日以降(関連記事),昔からのゲームファンや“メガテン”ファン,アトラスのRPG好きで大きな話題となっている本作だが,近年の「ペルソナ」シリーズ作品など,この10年ほどでアトラスのゲームを知ったという人のなかには,真・女神転生IIIの復活がなぜそこまで話題になっているのか分からない人もいるかもしれない。しかし真・女神転生IIIは,まさにそういった人たちにぜひプレイしてほしい作品なのである。
というのも,真・女神転生IIIという作品は,現在の「ペルソナ」シリーズを形付けた「ペルソナ3」や以降のシリーズ作品を手掛けたメンバーが制作した,“現在のペルソナシリーズのベース”にもなっているタイトルなのだ。
本稿では,シリーズ第1作と第2作で真・女神転生の基本的な世界観やシステムを紹介し,アトラスのRPGの大きなターニングポイントとなった作品である真・女神転生IIIの魅力を,PS4版をプレイして確認した真3HDの特徴とともにお伝えしよう。
「真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER」公式サイト
真・女神転生ってどんなゲーム? シリーズを形付けた第1作と第2作でその特徴を紹介
原点となるのが,1987年9月11日にファミリーコンピュータ用RPGとして発売された「デジタル・デビル物語 女神転生」とその続編「デジタル・デビル物語 女神転生II」(FC。1990年4月6日発売)という2作品。それらで作り上げられたゲーム性や世界観を引き継ぎつつ新たに再構築し,真・女神転生シリーズ1作目となる真・女神転生が誕生した。
第1作は1992年10月30日にスーパーファミコン用ソフトとして発売。1994年3月18日に発売された「真・女神転生II」と合わせて,のちのシリーズ作品のベースとなる作品となった。
真・女神転生が長年愛される作品となった要素の一つが,現実の延長線上にあるかのような現代の東京が舞台であることと,その東京が大きな事件により崩壊し別世界かのように変化するところだろう。
この,現代の若者の平和な日常と見慣れた街並みが,大きな事件とともに悪魔が跋扈する非日常の世界へと変わるという,プレイヤー自身に「自分にも起きるかもしれない」と思わせるような設定が多くのゲームファンに衝撃を与え,そして魅了し続けている部分にもなっている。
東京の崩壊,もしくは何かが起きた後の東京は,作品イメージという部分はもちろん,ナンバリング作品にとって欠かせない要素となっているのだ。
「真・女神転生V」は2021年に世界同時発売。新規プロモーションムービーが公開
任天堂が本日(2020年7月20日)配信した「Nintendo Direct mini」において,Nintendo Switch向けソフト「真・女神転生V」の発売時期が2021年であることが明らかとなった。本作はアトラスの人気RPGシリーズの最新作。新たにプロモーションムービーが公開されている。
真・女神転生シリーズを形づける基本構造となっているのが,LAW(ロウ),CHAOS(カオス),NEUTRAL(ニュートラル)という考え方と,それによって生まれるマルチエンディングだ。
主人公(プレイヤー)は物語を進めていくことで,さまざまな考え方を持つ組織や人間,そして悪魔と出会う。それらの場面や会話で発生する選択肢でどのような行動や回答を選んだかによって物語は分岐し,秩序を持って世界を統べるLAW,自由と混沌の世界を求めるCHAOS,そのどちらにも偏らないNEUTRALのどれかの道を進むことになる。
この,プレイヤー自身の価値観を試されるような選択肢や単純な善悪では割り切れない結末,自分の進む道は自分が選ぶという点は,形を変えながら,さまざまなシリーズや派生作品に引き継がれている。
悪魔たちと会話交渉して“仲魔”(仲間)にして戦い,仲魔を組み合わせて悪魔合体を行うことでさらに強い仲魔を生み出すというのも,“メガテンらしさ”の一つ。ペルソナシリーズでも定番の合体はもちろん,会話についても「ペルソナ5」の敵(シャドウ)との会話でおなじみだと思うが,こちらは原点となる女神転生の1作目から存在する,由緒ある(?)ゲームシステムなのだ。
わがまま。頑固。妙に理性的……と,悪魔たちの性格は種類によって異なり,悪魔会話では話の運び方によっては予想外の返事や行動を取ってくる。このあたりも昔から変わらない要素で,ペルソナ5の会話を体験していればその楽しさを知っているはず。
そのほかにも,悪魔という非現実的な存在を「悪魔召喚プログラムをインストールしたハンドヘルドコンピュータ」という科学の力で呼び出す点や,悪魔たちの気分に関係する月の満ち欠け(月齢)の要素,見た目も性格も個性的な唯一無二の悪魔たち,ゲームでは珍しいジャンルの音楽を大胆に使っている点など,語り切れない魅力がたくさん。それらはさらなる進化を果たしたり,異なる形となったりしながらのちのシリーズ作品や派生タイトル引き継がれている。
真・女神転生シリーズは真・女神転生II発売以降,外伝的作品の「真・女神転生if...」や派生シリーズ作品となる「女神異聞録ペルソナ」「真・女神転生 デビルサマナー」,そのほか多くの作品展開を見せる。そうして9年という長い時を経て登場した3つ目のナンバリングタイトルが「真・女神転生III-NOCTURNE」だ。
“原作尊重”でパワーアップを果たした「真・女神転生III」の魅力
真3HDの“大元”となるのが,2003年2月20日発売にPlayStation 2用ソフトして発売された「真・女神転生III-NOCTURNE」。これまで紹介した“メガテンらしさ”をベースにまったく新しい世界観を構築し,物語やゲームシステム,ビジュアルなども一新したシリーズの大きな転換点となった作品だ。
今回のリマスターのベースとなっているのが,「真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション」。「真・女神転生III-NOCTURNE」の新要素追加版となる2005年2月10日発売のPS2ソフト「真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス」の再構成版として,2008年10月23日に「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王」に付属される形で再販売されたタイトルだ。
物語の舞台は,200X年の東京。都内の学校に通う高校生の主人公は,入院中の担任教師・高尾祐子を見舞うため,クラスメイトの新田 勇と橘 千晶が待つ,とある病院に向かっていた。
たどり着いた病院は不気味なほどに静まりかえっており,主人公たち3人以外に人がいる気配がない。静寂に包まれた病院内で高尾祐子を探すことになった主人公は,地下施設のある部屋の前で異様な音を耳にする。
新田 勇(名前変更可能)はお調子者だが,他人に頼りがちで周囲に流されやすい一面も |
名家の生まれのお嬢様である橘 千晶(名前変更可能)。プライドが高く勝気な性格 |
その部屋の中には,面妖な機械の前に座す1人の男がいた。「古い世界は黄昏に沈み,新たな世界が生まれる」と,一方的に意味の分からない話をする謎の男に命を奪われそうになった主人公は,その場に駆け付けた高尾祐子によって命を救われる。
とある計画について話す高尾祐子と,謎の男・氷川。彼らの短い会話ののち「その目で確かめにいらっしゃい。これから世界に起こる出来事を……」と高尾祐子に言われ屋上に向かった主人公は,その場でとある言葉を告げられる。「間もなく,この世界は混沌に沈むの。それが『受胎』……人がかつて経験したことのない世界の転生よ」と。
そののち起きるのが,目の前に想像を絶する出来事――世界に終末をもたらす大異変「東京受胎」。このように,真・女神転生IIIの東京は悪魔の住まう混沌とした異界・ボルテクス界へと変貌し,普通の学生だった主人公の平和な日常が突如として崩れ去る。そして,主人公自身もとある姿へと変化するのだ。
悪魔召喚プログラムという科学の力で悪魔を使役するというのもたまらないものがあるが,禍いなる魂を授かるという設定,全身に浮かび上がった黒地にライトブルーのラインが入った禍々しいタトゥー,そして人修羅という呼び名……と,こちらも“くすぐられる”要素が盛りだくさんのキャラクターだ。
メガテンらしさの一つである“自分の進む道は自分が選ぶ”という点も,真・女神転生IIIならではの形となっている。そのキーとなるのが「コトワリ」だ。
コトワリとは,崩壊後の東京に存在する思想や理念のようなもの。信じる者は自分のみという“究極の個人主義”であるムスビ。弱者は無価値な存在と断じ,強者のみの世界を創ることこそが正義と考えるヨスガ。確固たる秩序を打ち立てることで混沌を鎮め,静寂の世界を創らんとするシジマといったものがあり,それらを掲げる者たちはそれぞれ自身のコトワリによる新たな世界を創造しようとしている。
そんな世界の中で,主人公はコトワリを持たない特殊な存在だ。主人公は物語の途中でさまざまなコトワリに触れ,自分自身で“どんな世界を求めるか”を選択していく。それによって物語が分岐するのはLAW / CHAOS / NEUTRALのシステムに近いが,本作で語られる思想はそれとはまた違った形でプレイヤーの価値観が問われるものとなっている。
ムスビを選ぶか,ヨスガにつくか,シジマを信じるか,そのどれとも違う道を歩むか。その結末いくつも枝分かれする。人の心を保ち続けるも,身も心も悪魔となるかもプレイヤー次第。自身が選んだ世界の行く末を見届けよう。
東京受胎後の東京はその多くが砂漠と化し,街や建物も崩壊しているが,街のところどころが面影を残しており,人のいなくなったその街で悪魔たちが生活し,組織の拠点を築いている。
これまでの俯瞰視点のマップ移動とクラシックなスタイルの一人称視点の3Dダンジョンというのが定番だった真・女神転生のシステムが,フィールドの移動は俯瞰視点のマップそのままにダンジョンが3Dモデルのキャラクターを操作しての三人称視点となったのも,ナンバリング作品としての大きな変更点の一つだった。
シブヤ,ギンザ,イケブクロ……そんな“かつて東京だった”なじみのある街の崩壊後の姿が,まるで現実の風景のように描かれているのだ。
仲魔が経験値を得てレベルアップし新たなスキルを覚える悪魔の成長,1体の悪魔を生贄にささげることレベルアップした悪魔を生み出せる「イケニエ合体」,特殊な組み合わせで強大な力を持つ仲魔を生み出す「魔人合体」など,悪魔の育成や悪魔合体の要素ものちの作品のベースとなる要素が作り上げられている。ペルソナシリーズの近作でアトラスのRPGを知った人なら,少しプレイすればその感覚はつかめるはず。
3Dモデルの悪魔も,1作目と2作目の間の時代をテーマとした外伝的な作品である「真・女神転生 NINE」で出てはいるが,ナンバリングとしては初めてだった。それらの3Dモデルは当時からクオリティが高く,昨今のゲームと見比べても大きく見劣りすることはないだろう。3Dモデルはもちろん動きや仕草も細かいので,こちらもよくチェックしてみてほしい。
真・女神転生IIIが,真・女神転生シリーズだけではなく,現在のアトラスのRPG全体にとって重要な作品となっている一つの要素がある。
その名は「プレスターンバトル」。これは攻撃時に相手の弱点属性を突いたりクリティカルを出したりすると,行動回数を表す「プレスターンアイコン」が光って行動回数が増えるというもので,ペルソナシリーズの「1More」を含む,以降のさまざまなアトラス作品のバトルの原点となったシステムだ。
うまく弱点を突いていけば,敵にターンを回すことなく一方的に倒せるのだが,それはプレイヤー側だけではなく敵も同じ。ちょっとの間違いや判断ミスが敵の一方的な攻撃を招くことがあり,ミスによって予想外の展開を生み,意外な敵を相手にパーティが全滅(もしくは主人公死亡)してゲームオーバー。長らくセーブをしていなかったため,だいぶ前の段階まで戻らされる……なんてことも発生するので気が抜けないという,シビアな戦いが味わえるのだ。
シンプルで分かりやすく,遊びやすく,そしてほどよくプレイヤーを絶望させてくれる――そんな絶妙なバランスとなっているプレスターンバトルをぜひ体験してほしい。
真3HDは操作性やUIといった部分は基本的に当時のままのため,現在のゲームに比べて遊びにくく感じる面があるかもしれない。また,東京崩壊というドラマチックな始まり方ではあれど,全体的な物語の雰囲気は淡々としており,このあたりは好き嫌いがあるはず。
しかし,新たなバトルの形を生んだプレスターンバトルの緊張感と,静寂に包まれた独特の雰囲気と孤独感が与えてくれる不思議な感覚は時代を超えた魅力となっている。ぜひ文明の残骸が残る砂漠化した東京を歩いてさまざまな価値観に触れ,手強い悪魔たちと戦いながら,自らの道を思案する旅を体験してほしい。
真・女神転生III以降も真・女神転生シリーズは,ニンテンドー3DSで発売された「真・女神転生IV」と「真・女神転生IV FINAL」,Switch向けに開発中の「真・女神転生V」と,その歩みはゆっくりだがナンバリング作品が制作され,多くの派生作品も展開している。現行のゲーム機で遊べるものが限られるが,真3HDで“ニヤリ”とするものを感じた人は,真3HDを遊び倒しつつほかのシリーズ作品やスピンオフをプレイし,最新作「真・女神転生V」が発売されるその日を迎えてほしい。
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