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「A列車で行こう はじまる観光計画」プレイレポート。新要素の「観光」は,プレイに新しいモチベーションをもたらす
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印刷2021/03/12 00:00

プレイレポート

「A列車で行こう はじまる観光計画」プレイレポート。新要素の「観光」は,プレイに新しいモチベーションをもたらす

 2021年3月12日に発売される「A列車で行こう はじまる観光計画」は,今年で35周年を迎える都市開発シミュレーション「A列車で行こう」シリーズの最新作で,鉄道を敷いて都市を開発していくというこれまでの遊びに,「観光」という新しい概念が加わっている。

 ちなみにA列車シリーズは,鉄道要素のディテールを重視したナンバリング作と,親しみやすさを重視した携帯機用シリーズの2系列が存在しており,今回の「A列車で行こう はじまる観光計画」は,携帯機用シリーズの流れを組む作品となる。
 ゲーム内では,「世界樹の迷宮」で知られる日向悠二氏がデザインした華やかなキャラクターが,プレイをナビゲートしてくれ,シリーズを初めて遊ぶ人にも親しみやすい雰囲気が作られているのだ。

画像集#001のサムネイル/「A列車で行こう はじまる観光計画」プレイレポート。新要素の「観光」は,プレイに新しいモチベーションをもたらす

 そんな本作でプレイヤーは,鉄道会社の社長となり,自分の任された都市を発展させていくことになる。都市の発展に必要なのが鉄道の整備であり,駅を作ってその周辺を開発していくことで利用者が増え,それに伴い会社の収入も増えていく。そこで得た資金を元手に事業を拡大することで,さらなる発展を目指せるわけだ。
 本稿では,本作から加わった新しい要素「観光」にスポットを当てて,ゲームのインプレッションをお届けしよう。

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 ところで,観光と聞いて思い浮かぶのはなんだろうか。筆者なら寺や城といった歴史的建造物だが,温泉や遊園地といった娯楽施設という人もいるだろう。本作では,そういった観光名所となり得る場所がマップに点在しており,これを活用して観光客を呼び込めれば,街の発展を狙えるというわけだ。
 ただし,観光名所はクセのある場所に建てられていることが多いので,そこにいかにして“観光ルート”を開くかは,プレイヤーの腕の見せどころとなる。

お寺や遊園地といった「観光名所」は,隣町から観光客を集めてくれる
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鉄道の駅やバスの停留所を観光名所の近くに作れば「観光ルート」が開通。観光客たちが訪れる
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 例えば,お寺の周囲に発展が見込めそうな街があるならば,思い切って駅を建てる。駅から遠い場所にレジャーランドがあるなら,駅からバスを出して観光客を輸送する。名城が山に囲まれていたら,山を迂回するルートを考えるか,トンネルを掘る技術を研究する。周囲に鉄道がまったくない秘湯を見つけたら,とりあえずバスを通して様子を見るのもいいだろう。

 バスは鉄道よりも安く通せるが,輸送能力が限られている。増便を繰り返してピストン輸送してもいいが限界はあるし,状況次第では渋滞を起こしてしまう。観光地によくある,最寄り駅からの長くて辛いバス旅を自分が強いてしまうことを考えると,観光客に申し訳ない気持ちにもなる。
 一方で鉄道はバスの逆で,多くの観光客を運べるものの,駅や線路の設置に多額の資金を要する。とくに山が絡むと厄介で,経費が大きく跳ね上がってしまう。また,周囲が発展すると増改築が難しくなってくる。発展させたことによって高くなった土地代を払ったうえで,せっかく建った建物を壊さなければならないのだ。街の発展を加速するための「資材」を隣町から買い付けてくるにしても,貨物列車用のホームを増やすのが難しい……。

 といったように,これまでのA列車は街の発展を駅に任せっぱなしだったが,本作では観光名所とバスの停留所が登場したことで,プレイヤーがさまざまな選択を取れるようになった。観光名所の立地条件もさまざまなので,良い意味で悩みどころが多くなった印象だ。

バスは鉄道より安いが,輸送量は大きくない。運びきれなかった観光客たちはバス停に溜まってしまう。観光地でよく見るボトルネックだ
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観光客が多く,輸送量が少ないという苦情が来てしまう。とくにペナルティはないようだが,発展の機会をふいにしているわけで,なんとか解決したい
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 具体的には,「街を発展させていく」という大きな目標のほかに,「さまざまな条件を持つ観光名所に,いかにして観光ルートを開くか」という目的が加わったわけで,プレイに新しいモチベーションが生まれている。「まずはこの観光名所をどうにかしよう」といった感じで,プレイに集中しやすくなっていると感じられた。

 また,シナリオに出てくるお寺や名城,温泉といった観光名所は,春には桜が咲き,冬には雪が舞い散るといった演出もあり,見ているだけでも楽しい。自分が旅行したときの記憶とも重ねやすく,なかなかにエモーショナルだ。
 電車やバスの車窓から街を眺められるモードもあるので,ちょっとした旅行気分に浸るのもいいだろう。街が発展しても,自分が取り壊さない限り観光名所はそのままというのも,景色を楽しみたい人にとっては嬉しいポイントだ。

海辺の球場やスキー場など,観光名所の種類はさまざま
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自分が発展させた街を,車や電車の車窓から眺めるモードもある
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 もちろん「A列車」シリーズとしての面白さもそのままだ。自分が作った街を眺めるジオラマ的な楽しさは,観光名所の登場で増しているし,そういった観光名所に似合う蒸気機関車も存在している。電車のカスタマイズも幅広く,カラーリングや外装も自分で決められるので,いろいろな車両を走らせてみるのも1つの醍醐味だ。
 ダイヤグラムを調整してバスのピストン輸送を渋滞なく回せたりすると,それだけで大きな達成感が得られる。街では人々が歩き回り,電車に乗って出かけたり,観光名所を行き来したりする。苦労して開通させた観光ルートに観光客が殺到しているところを見ると,何か込み上げてくるものがある。

電車のカラーリングや外装は自分で変えられる。プリセットも用意されているので安心
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車両の中には蒸気機関車も存在
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昔の時代が舞台になるシナリオでは,開発できる電車も古い
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鉄道の駅を作って観光ルートを開けば,街も発展していく。田んぼばかりだった城の周り(左)も,今やビルが立ち並ぶ(右)
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 また本作は観光や鉄道だけでなく,株式や土地売買,子会社経営など,鉄道会社がするようなビジネスにも携われる。土地を発展させて値上がりした時に売却したり,株の売買で利益を出したり,木材や農産物といった「資源」を隣町に売ったりなど,資金を調達する手段はたくさん用意されている。街の発展にはとにかくお金が必要なので,余裕が出てきたらこういった細かいところに手を出してみるのも面白いだろう。

子会社は工業・住宅・娯楽などさまざまなジャンルが存在。周囲の施設と相性が存在し,例えばマンションなら公共施設が多いと価値が高まる
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株の売買でも利益を出せる。会社によっては,建設の値引きなど株主優待を受けられるところもあるので,株を保有しておくのも一つの手
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木材や農産物といった資源は,マップ外にある隣町に売買できるが,対象となる隣町に鉄道や道路をつなげたうえで,貨物列車やトラックを派遣しなければならない。基本的には納入・販売すべき数量と期限が決められており,守れないと結構な違約金を取られる
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 都市開発系のシミュレーションというと,なんだか難しそうなイメージが付きまとうが,本作には丁寧なチュートリアルのほか,プレイスタイルに合わせた難度選択や,社員達による行動指針のアドバイスが用意されていて,この手のゲームが初めての人でも遊びやすい。

チュートリアルや,行動指針のアドバイスも用意されている。難度を上げれば,こうしたメッセージは出てこなくなる
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ゲーム内からはいつでもヘルプを確認できる
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 また,ダイヤグラムのコピーや駅の発着メロディの設定といったディープめな機能は「拡張機能」としてON・OFFが可能になっており(デフォルトはOFF),メニュー画面が整理されているのも取っつきやすさの向上に一役買っている。
 社員たちのトークも健在で,アドバイスはもちろん,シナリオの年代に合わせた時事ネタや選択肢付きの会話などで,これまで以上の存在感を発揮してくれている。日向氏のキャラクターデザインと合わせ,雰囲気がぐっと華やかになった感がある。

ディープな機能は「拡張機能」としてON・OFFが可能。駅の発車音「拡張機能」(左)をONにすれば,駅のメニューに「発車音」の項目が出現(右)。ほかにも,「線路に防護柵を付ける」「電車の名前を変える」といったマニアックな機能が満載だ
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時事ネタの会話(左)や,選択肢付き会話(右)など,今回も社員たちは存在感を発揮してくれる
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 また,本作はタッチパネルを使って操作でき,コントローラと併用できる辺りはNintendo Switchならではの良さといえる。地形を自動生成して自分だけのシナリオを作れるモードも健在なので,慣れた人であればこちらでいろいろなマップを作るのも楽しいだろう。「フリーモード」を使えば自由に街を開発できるため,ゆっくり都市開発を楽しみたい人はこのモードを使うのもオススメ。

名物「コンストラクション」機能では,地形の自動生成(左)や会話シーンのエディット(右)が可能
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売上高や観光客の数など,なにかにつけてお祝いしてくれるのもモチベーションが上がる
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 自分の手で鉄道を敷き,発展していく街をジオラマのように眺める。その傍らで会社経営をしたり株取引をしたりと,本作には都市経営シム好きが反応しそうなワードがたくさん散りばめられている。シリーズ初心者でも社員のアドバイスを参考にプレイすれば,途中で引っかかることはないので,この機会にA列車シリーズに飛び込んでみてはいかがだろうか。

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