プレイレポート
「サガ フロンティア リマスター」プレイレポート。現代のプレイスタイルにマッチさせたリマスター化が好感触
本作は,1997年にPlayStationタイトルとしてリリースされた「サガ フロンティア」をリマスターしたもので,グラフィックスのHD化やシステム面の改良,そして新主人公やオリジナル版では未実装だったイベントが追加されるという,当時プレイしたファンにも嬉しい内容となっている。
本稿では本作のPlayStation 4版を使用したプレイレポートをお届けしていこう。
さまざまな領域が存在する多様な世界観と,そこに住む個性豊かな主人公達がプレイヤーを魅了
オリジナル版の「サガ フロンティア」は,1997年11月にリリースされた。プラットフォームがPlayStationとなった初の「サガ」シリーズで,当時としては最新のレンダリングCGを取り込んだ背景や,3Dで常に視点の変わるバトルなどを採用して話題となった。
本作の舞台は,混沌の中に「リージョン」と呼ばれる領域が点在する世界だ。種族や境遇の異なる7人の主人公の物語が描かれ,「ロマンシング サ・ガ」(以下,ロマサガ)シリーズから受け継ぐフリーシナリオにより,プレイヤーの選択次第でストーリーの展開が変わっていく。
経験値の概念がなく,「閃き」で技や術を習得していく成長システムもロマサガと同様だが,仲間と協力して特殊な攻撃を繰り出す「連携」など,本作から実装された新たなバトルシステムも存在する。
今回のリマスター版では,オリジナル版の面白さはそのままに,現在のプレイスタイルに合わせてさまざまなポイントが進化している。
リージョンは独自の「場の特性」を有した恒星に似た無数の領域で,その周囲は混沌が取り巻いている |
リージョン間は「リージョンシップ」と呼ばれる乗り物に乗って移動する |
主人公となるキャラクターは,「正体を隠した正義のヒーロー」や「故障で記憶を失ったメカ」,「殺人の濡れ衣を着せられた元モデル」「故郷を救うために旅に出るモンスター」など,掴みの部分から非常に興味深い境遇を持つ。それぞれのシナリオはまったく違う内容ではあるものの,展開次第でほかの主人公達が仲間になることもあり,それぞれをプレイすることで立体的な物語を体験できる。
双子の魔術師ブルーは,兄弟のルージュをその手で倒さないと本当の魔術の力を得られないという過酷な境遇の人物だ |
掘り出されたコアから再生されたメカT260G。課せられた任務を忘れていて,それを復旧させるために旅に出る |
田舎育ちの青年リュート。働かずにブラブラしていたが,自活することを決意し,楽器を片手に旅立つ |
元モデルのエミリアは,婚約者を仮面の男ジョーカーに殺害され,その罪を着せられて収監されるが脱獄。ジョーカーを追う |
事故で死にかけたところを妖魔の血によって生き延び,“半人半妖”の存在となった少女アセルス |
モンスターのクーンは,故郷のリージョンが崩壊の危機を迎え,それを食い止める力を持つ指輪を探して旅をする |
さらにリマスター版では,リージョン界の治安維持組織の隊員「ヒューズ」が8人目の新たな主人公として追加され,彼がほかの主人公のストーリーに介入していく7つの展開が用意されている。ゲームはオリジナル版と同様,7人の主人公を最初から選択可能で,ヒューズはこれらいずれかのシナリオをクリアすると選べる仕様だ。
「NEW GAME」を選ぶと,タイトル画面にいる主人公を選択できる |
初めて遊ぶときはヒューマンのレッド,エミリア,リュートあたりがオススメだが,もちろん誰を選んでもかまわない |
リージョンを舞台とした世界観や,主人公にメカが登場するシナリオ,銃器など近代兵器が装備できる点など,その設定にはSFや現代のテイストが多く含まれていて,ゲームボーイ時代の「サ・ガ」シリーズを思い出させてくれる内容でもある。主人公キャラクターにはメカやモンスターも登場していて,彼らの成長システムも同シリーズに近いものがあり,この世界観にロマサガシリーズのゲームシステムを組み込んだオリジナル版は,当時,新鮮な体験を味わえるタイトルだった。
リマスター版において,そんな世界を描写するグラフィックスは,当時のイメージそのままにHD化し,現代の映像環境に耐えうるものに置き換えられている。移動シーンはエリア切り替え式の2Dフィールドで,すべて高精細化。また,別のエリアへと移動できる場所にはマークが出るようになっていて,オリジナル版で分かりづらかった場所への移動がしやすくなった。
また倍速機能も見逃せない。マップ移動とバトルはそれぞれスピードを2〜3倍速まで設定が可能で,PS4版のデフォルト設定なら[R3]でそれを任意に切り替えられる。[×]で行う高速移動も併用すれば,移動におけるストレスを感じることはなくなるはずだ。
バトルはシンボルエンカウント制で,マップ上に現れる敵と接触すると開始される。本作は5名を1チームとして最大3組15人もの大所帯のパーティを編成できる。複数のチームがいる場合は,ボス戦を除いてバトル開始時に戦わせたいチームを選ぶ仕組みだ。
エンカウント時はまずバトルに出すチームを選択。前衛と後衛もここで決める |
バトルシーンの背景も新たに構築されたもので,オリジナルの粗さが目立たなくなった |
バトルもまたロマサガシリーズのシステムに則っていて,主人公と仲間達の技や術を選んで繰り出す,ターン制の攻防が展開し,バトル中の「閃き」によって新たな技や術を習得していく。
ロマサガシリーズ以降,伝統となった閃き。閃いた技で攻撃し,以降は任意に使えるようになる |
チームメンバーの技の組み合わせなどの条件が揃うと「連携」が発動し,より高い効果を得られる |
バトルが終わったところで戦闘不能になっていなければパラメータが上昇する |
ボスとの戦いでは退却ができない。強敵なので事前のセーブを忘れずに |
経験値の概念はなく,バトルの内容によって終了後にパラメータが増えてキャラクターが成長するが,本作はキャラクターの種族によって成長システムが異なっているのも面白いところだ。
例えばメカのT260Gは,技を閃くことはなく,同じメカを倒したときに入手できる「プログラム」で技を覚えていく。また,装備品で攻撃手段やパラメータが増えたり,ボディを交換することで特徴が変化したりする独自の性質を持っている。
モンスターのクーンは,敵モンスターを倒したときにその能力を吸収するとパラメータが変化し,新たな技を身に付けられる。見た目が吸収したモンスターに変わることもあり,きっと驚くはず。この2人(?)の成長システムは,前述の通り旧サ・ガシリーズを思わせる。
装備や敵から入手するプログラムによって強さが変わることがあるT260G。技は武器に設定された回数だけ使える |
敵モンスターから吸収する能力によって,さまざまなロールを担わせることができるクーン |
またヒューマンではあるものの,ヒーローの「アルカイザー」に変身すると強力な「ヒーロー技」を閃くレッドや,着ているコスチュームで閃く技が変わるエミリア,武具にモンスターを憑依させる「妖魔の力」を持つアセルスなど,成長システムが特徴的な主人公もいて,別のシナリオを選んで進めるときのプレイフィールも異なるのも本作の大きな特徴だ。
アルカイザーに変身すると,通常時とは異なる力を閃くレッド |
着用中のコスチュームによって閃く技が変わるエミリア。コスチュームはストーリー進行で順次入手できる |
本作にはバトルの回数が増えることで敵が強くなっていく独自のシステムが備わっているのだが,オリジナル版はバトルから逃げることができないルールだったため,戦いたくないのに敵シンボルと接触してバトルが発生してしまい,意図せずに敵を強くしてしまうことがあった。その点,リマスター版ではバトルから退却することが可能となり,しかも退却したときは敵の強さに変化がないので安心だ。
かゆいところに手が届く親切設計ながら,当時のままのバランスでのプレイも可能
リマスターにあたって,ここまで紹介したような便利な機能が多数実装され,とにかく遊びやすくなっている印象を受ける。もともとテンポのよかったゲームを,倍速機能によってさらに快適に進められ,ストーリーの進行状況と目的を確認できる「シナリオチャート」のおかげで,どこへ行ったらいいのか分からずに迷うことも少なくなった。
オリジナル版と同様,セーブは移動中のどこでも可能で,ファイルは全部で60個用意されている。そのうち1つは,メニューを開かずに[△]+[R2]で任意にセーブする「クイックセーブ」に使用可能だ。またセーブファイルとは別に,イベント直前などにオートセーブも行われている。
遊びやすくなっている一方で,「オリジナルのバランスこそが至高」というファンもいると思うが,こうした機能はオプションでオン/オフが切り替えられる。しかも「追加要素なし」のモードも用意され,ゲーム開始時に選択可能だ。ただし後者は一度決定してしまうと,以降そのゲームでは変更できないので,よく考えて選ぼう。
各キャラクターの会話によって描かれるシナリオも,ディレクターの河津秋敏氏の個性全開で,あの“河津節”も当時のままだ。そしてサウンドは,もちろん全編,伊藤賢治氏の手によるもの。リマスター版では,タイトル画面から入れる「LIBRARY」にて,最初から全曲を聴けるので,オリジナル版をプレイ済みの人は,ゲームを始める前にしばらくここから出られなくなるかもしれない。
LIBRARYには「サウンド」「ギャラリー」「スタッフロール」があり,後者2つはサウンドを再生した状態で楽しめる |
ギャラリーには本作のキャラクターデザイナー小林智美氏によるイラストが65点収録されている |
オリジナル版のファンであっても,リマスター版で初めて遊ぶという人であっても,自信を持ってオススメできる感触で,さまざまなプラットフォームに対応しているのも嬉しいポイントだ。移植とはまた違う,現代の技術で構築され,より遊びやすくなったサガ フロンティアの世界を,この機会にぜひ堪能してみてほしい。
「サガ フロンティア リマスター」公式サイト
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(C) 1997,2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI
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