インタビュー
「戦国無双5」は熱血系うつけ信長と生真面目な光秀を中心に,新たな戦国時代を描く。久しぶりの新作についてプロデューサーにインタビュー
キャラクターデザインを一新し,新たな戦国時代を描く
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。前作「戦国無双4」からは7年経ち,久々のナンバリング新作となりますが,時間が空いたのはなぜでしょうか。
鯉沼久史氏(以下,鯉沼氏):
これまではほかの無双シリーズと同様に,キャラクターやシステムを積み上げる方式で作ってきましたが,「戦国無双4」までで戦国時代をひと通りやり切ったことで,その制作手法にも限界が来ていました。そのため,次回作をどうするかの議論において,今まで通りの手法で作れない現状の中,良い解答を見出すことができず,このままシリーズは終了となる道を選ばざる得ない状況でした。
しかし,もう一度シリーズとしてチャレンジしてみようという決意をし,今回「戦国無双」シリーズを新生する方針で作らせていただきました。
4Gamer:
新生という位置づけなのですね。それでは,本作はどういったコンセプトで作られているのでしょう。
初代「戦国無双」から17年の歳月が経っていることもあり,戦国時代初期からもう一度作り直していこうというテーマを掲げています。
信長が大名になる前の,“うつけ”と呼ばれていた時代からスタートし,信長と光秀の視点にフォーカスした形で,これまでの「戦国無双」とは別軸での,新解釈の戦国時代を描いていきます。登場武将の選定にしても,これまでは史実とファンタジーの間を行き来していましたが,「戦国無双5」では史実として押さえるところはしっかり押さえていこうという考えです。もちろん,アクションとしての手ざわりも「戦国無双4」を超えたものになります。
4Gamer:
言われてみれば,これまで戦国時代を描いてきながら,信長と光秀の視点がなかったのが意外ですね。最初の「戦国無双」は,時代が合わない信長と真田幸村が競演していましたが,あれはなぜだったんですか?
鯉沼氏:
「真・三國無双」のヒットを受け,戦国時代も同様の手法で描くことになった時,一騎当千のイメージで活躍できる武将が必要になったのが理由です。信長は大名なので一騎当千のイメージとは少し違うということで,半ば無理矢理に幸村をひねり出しました。当時の「真・三國無双」では槍を持った趙雲が主人公格でしたから,そのイメージに影響されたところもあります。
4Gamer:
ああ,趙雲に対しての幸村だったんですね。
うつけ時代の信長が主人公になるのであれば,これまでの第六天魔王を自称する信長とはイメージが合わなくなってしまいますが,キャラクターデザインはどうなるのでしょう?
鯉沼氏:
一新しています。これまでは「真・三國無双」シリーズとの差別化をという思いもあって,富んだキャラクター性を重視したところがありましたが,「戦国無双5」では「王道的な物語として,キャラクターデザインを描き直す」ことを優先しています。
現在公開しているキャラクターをご覧いただくとお分かりになるかと思いますが,今作では時代設定に合わせた年齢となっています。信長はうつけとしての未完成な荒々しさが強調されていますし,徳川家康はまだ少年の姿です。これまではコミカルなイメージがあった今川義元も,武人的な装いになっています。
織田信長 |
明智光秀 |
柴田勝家 |
濃姫 |
豊臣秀吉 |
徳川家康 |
4Gamer:
義元,変わりすぎでしょう(笑)。「戦国無双」はキャラクター人気も高いシリーズですから,デザイン変更は思い切った決断だったのでは?
鯉沼氏:
思い切りましたが,実は単にデザインを変更したというわけではありません。基本的には「これまでと同じ役者さんが化粧と衣装を変えて,若い武将を演じ直す」という考え方で,信長はもちろん,家康も顔のベース自体はこれまでの「戦国無双」と同じなんですよ。
4Gamer:
大河ドラマで,1人の役者さんが若い頃と老年期を演じるような?
鯉沼氏:
そうです。これまでよりも少し前の時代を描くことになりますから,若い頃にふさわしい顔立ちにする“化粧”,そして甲冑を変えるという手法を採りました。これまでのシリーズから大きく年齢設定の変わった武将はベースとなる顔を用意し,さまざまな変化を検証して,本作ではこのデザイン,という形になっています。
4Gamer:
おっしゃることは分かるんですけども,家康は,この少年がああなるとは……(笑)。
鯉沼氏:
最終的には今までの「戦国無双」の姿に近くなるように,年齢を重ねていく段階の裏設定も存在していますよ。こうすればシリーズを重ねてもイメージがブレませんし,新たにキャラクターデザインを起こす必要もありませんから。
それと,信長については,当社の絶対的ルールとして,基本的に「信長の野望」の顔がベースとなります。ここからズレることは,シブサワ・コウの理念に反します。当社でもいろいろな作品に信長を登場させていますが,どれを見てもコーエーテクモゲームスの作品であるとお分かりいただけると思います。
4Gamer:
確かに,信長と言えばあの顔のイメージです。さまざまなメディアにおける信長観に影響を及ぼしている感もありますし。
本作においては,新たな信長はどういった人物なのでしょう?
鯉沼氏:
プレイヤーの皆さんが感情移入しやすい人物を目指しています。特に序盤はうつけと呼ばれていた時代ですから,主人公らしい熱血系の性格です。
4Gamer:
これまでのシリーズの信長とは,ずいぶん違いますね。
鯉沼氏:
そこが同じだと,新作として遊んでいただく意味もありませんから。大河ドラマでも信長が何度も描かれていますが,その度に異なる解釈が出てきますよね。あれと同じで「戦国無双5」ならではの信長像を描いていきます。
4Gamer:
キャラクターデザインが一新されているということは,声も変わるんですか?
鯉沼氏:
はい,信長を演じるのは島﨑信長さんです。
4Gamer:
信長の声が信長さんというだけで面白い(笑)。
鯉沼氏:
もちろん,お名前だけで決めたわけではないですよ(笑)。「戦国無双5」の新たな信長にマッチしているということでお願いしています。
これまで信長さんは,意外にもキャラクターとしてしっかり確立された織田信長を演じられたことがなかったそうなんです。「下天の華」でも森 蘭丸役でしたし。
4Gamer:
どんな信長が表現されるのか注目ですね。
新たな光秀はどういったキャラクターになるんですか?
鯉沼氏:
動の信長と静の光秀で対称となっているところはこれまで同様です。「戦国無双5」でも生真面目なところは同じなんですが,これまでの物腰柔らかいイメージとは違います。必要とあらば武力で物事を解決することも辞さない,果断な側面を持つ人物として描かれます。
4Gamer:
「戦国無双5」で新たな武将は登場するのでしょうか。
はい。「戦国無双」では時代を越えた有名武将をキャラクターとしてピックアップしていましたが,「戦国無双5」では時代に合った武将が多く登場します。。つまり,史実では信長と同時代に活躍していたけれど,これまでのシリーズにいなかった武将が活躍します。
特に本作は,信長と光秀の視点でゲームが進むため,彼らの周辺にいた武将が多くなります。例えば,光秀の家臣である斎藤利三がいい例です。
4Gamer:
利三はどういった人となりなのでしょう。
鯉沼氏:
光秀の身を案じるあまりに小言を言ってしまうという,執事的なキャラクターです。光秀も真面目なんですが,それ以上に生真面目な人で,眉間にしわを寄せたような表情をすることが多いですね。史実でも光秀にずっと付き従い,彼が最期を遂げた山崎の戦いでも共に戦ったような人ですから。
4Gamer:
本作は,そうしたそれぞれの陣営内での人間関係に注目するのも面白そうですね。
4Gamer:
信長や光秀がこれだけ大きく変わっているとなると,今後の「無双OROCHI」シリーズはどうするんですか?
鯉沼氏:
どうなんでしょうね(笑)。もともと「無双OROCHI」シリーズを意識して開発を進めているというようなところはないです。
時代の流れとともに,味方と敵が強くなる
4Gamer:
ここからはアクションゲームとしてのシステムについて伺えればと思います。「真・三國無双8」ではオープンワールド型のマップが導入されましたが,「戦国無双5」ではどうなるのでしょう?
鯉沼氏:
オープンワールド型ではなく,これまでの「戦国無双」シリーズの形式を踏襲しています。本作はストーリーを充分に楽しんでいただきたいので,従来のほうが適していると考えました。
4Gamer:
アクション面では新たなシステムが追加されたりはするのでしょうか。
鯉沼氏:
シリーズ最高の爽快感を目指し,かなり手を加えています。具体的な内容については,続報をお待ちください。
今の時点でお話しできるのは「時代に合った兵種が登場する」ことですね。実際の歴史でも,時代が下るにつれて兵士の見た目が変わり,戦術も強化されていきますよね。本作でもこうした時間の流れを意識していて,新たな兵種が登場します。
また,同じ兵種であっても攻撃方法が変化しますので,そうした新たな敵をどのように倒していくかにご注目いただければと思います。
4Gamer:
鉄砲による戦術の変化が著しい時代ですから,楽しみです。ただ,無双らしい爽快感を追及することと,敵が強くなっていくことは相反するところもあるのではないかと思うのですが。
鯉沼氏:
目指しているのは,「プレイヤー武将と敵がお互いに成長していく」ことです。時代の流れで敵は強くなりますが,プレイヤー武将は新たな技を覚え,それを使って気持ち良く敵を吹っ飛ばせます。
我々が作っているのは,あくまで一騎当千の活躍を楽しめる“無双”ですから,敵のAIやマップ上に配置するタイミングなど,いろいろと試行錯誤して気持ちの良い体験ができるよう調整しています。
4Gamer:
本作でシリーズが再始動した「戦国無双」ですが,今後の「戦国無双6」や「戦国無双7」では信長以降の時代も再解釈されるのでしょうか。
鯉沼氏:
「戦国無双5」が受け入れられればシリーズとして今回の歴史が続いていくと思いますし,そうなれば嬉しいですね。
4Gamer:
新たな「戦国無双」に期待しています。最後に,新作に期待しているファンへ向けてメッセージをお願いします。
鯉沼氏:
戦国時代初期をもう一度描き直すということで,新しい開発スタッフたちが新たなチャレンジをしています。久しぶりの新作ですので,シリーズを遊んだことがない方も入りやすいようにしていますし,さまざまなIPとコラボした無双シリーズがある中で,「日本の歴史を描く唯一の無双」ということで,歴史好きの方にもお勧めです。
アクションゲームとしての気持ち良さは「戦国無双」からずっと進化とブラッシュアップを続けています。初代「戦国無双」をご存じの方や,過去シリーズをずっとプレイいただいた方であっても,「こんなに変わったのか!」と楽しんでいただけると思います。ぜひ遊んでみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「戦国無双5」公式サイト
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