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ユーザーが自分だけの“遊戯王AI”を作れる取り組みも発表に。25周年イベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説 QUARTER CENTURY」レポート
遊戯王OCGで東京ドームといえば,1999年8月に開催されたイベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説」を思い出す人もいるかもしれない。そこから四半世紀(QUARTER CENTURY)が経過した現在,改めて同会場でイベントが行われることになったのだ。
広大な東京ドームの中では,25周年の厚みを感じさせるさまざまな展示が行われたほか,来場者たちと自由な対戦を楽しめる「バトルシティ in TOKYO DOME」,アニメ声優陣による再現デュエル「デュエルオペラ」など,多彩な催しが展開された。
本稿ではイベント全体の模様を紹介しつつ,デジタルTCG「遊戯王 マスターデュエル」(以下,遊戯王MD)とAI技術を融合したという新プロジェクトの情報をまとめてお届けしていく。
記事の後半には,遊戯王MDのシニアプロデューサーである片岡健一氏に向けた合同インタビューの模様を掲載している。新プロジェクトの詳細が気になる人は,ぜひ最後までチェックしてほしい。
「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説 QUARTER CENTURY」公式サイト
四半世紀ぶりにデュエリストが東京ドームを埋め尽くす。エリア分割の工夫で満員ながら快適なイベントに
会場となった東京ドームは,スタンドまでの通路に設置された「コンコースエリア」と,大規模なアトラクションやステージが並ぶ「アリーナエリア」の2つに分割されていた。アリーナは常に満杯で,そこにいるだけでデュエリストたちの熱気を感じられる。
一方で,アリーナエリアは一定時間ごとに入れ替えが行われ,全席指定のスタンドからはステージをガッツリ見ることができた。単純に広いこともあって移動は少々大変だったが,目的のアトラクションに到達するのが難しいほどではなく,混雑を最小限にとどめる工夫はしっかり機能していたようだ。
まずは,コンコースから見ていこう。こちらには,過去に「遊戯王 オフィシャルカードゲーム」と「遊戯王 ラッシュデュエル」で登場した全カード(OCG 1万2700枚,ラッシュデュエル 1800枚)を展示するコーナーや,原作「遊☆戯☆王」のアートを活用したフォトスポットなど,エリアの形状を活用したボリュームのある展示が用意されていた。
アリーナ内には,巨大なセットを必要とするリッチな体験を楽しめるコンテンツが用意された。デュエリストたちが会場で対戦を楽しめる「バトルシティ」といったお馴染みのものはもちろん,知識を競う「遊戯王クイズ選手権」や,お馴染みのキャラクターをプリントしたデジタルフォトを作成できるコーナーなど,手ぶらでも楽しめる体験型アトラクションも多数存在した。
チケットの時間に合わせてアリーナのコンテンツを楽しんだ後,ステージの時間に合わせてスタンドに戻り,空いた時間にはコンコースの展示を見てすごす……といった流れで,スムーズにイベント全体を楽しむことができた。
なお,会場で体験できた「遊戯王 デュエルリンクスVR」については,別途レポート記事を掲載している。ゲームの具体的な内容が気になる人は,そちらを参考にしてほしい。
[プレイレポ]VR空間に「青眼の白龍」降臨!「遊戯王デュエルリンクス Presents SOLID VISION EXPERIMENT」で大迫力のデュエルを体験してきた
2024年2月3日と4日,遊戯王カードゲーム25周年を記念したイベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説 QUATER CENTURY」が東京ドームで開催された。その会場で体験できたものの1つに「遊戯王デュエルリンクス Presents SOLID VISION EXPERIMENT」というVRコンテンツが存在した。本稿ではその体験レポートをお届けしよう。
目標は遊戯王AI公式大会。誰でも自分のAIを作れるという,遊戯王とAIの融合プロジェクトとは
さまざまな施策の中でも特に興味を惹かれたのは,遊戯王MDとAI技術を組み合わせた新要素を紹介するステージイベント「遊戯王マスターデュエル AI SYSTEM STAGE」だ。
ここで取り上げられたAIは,いわゆるゲーム内に組み込まれる対戦AIとは異なり,遊戯王MDを“外から操作”する形で対戦を行う外部プログラムを指しているとのこと。会場で行われた案内によると,遊戯王MD内で行われたデュエルを学習させることで,さまざまな実力帯のデュエリストを再現できるという。
ステージでは,AI対戦の概要が紹介されるとともに,来場者とAIが対戦するデモンストレーションが展開された。いずれも使用するのはストラクチャーデッキで,AIは「青眼の白龍」,来場者は「ブラック・マジシャン」のデッキを用いることに。
印象的だったのは,AIのターンで表示される思考の過程だ。AIデュエリストのターンではインタフェースが変化し,現在の盤面と手札を踏まえた勝率や,取りうる選択肢の一覧,それぞれを実行した際の勝率などが事細かに提示されるため,意思決定の流れがひと目で分かる仕組みになっているのだ。
また,ドローの結果が良ければ勝率が上昇し,伏せカードに対する有効な手立てがなければ勝率が低下するのだが,その様子がまるでプレイヤーが一喜一憂しているかのようで,どこか人間らしさのようなものを感じられた。
ただ,現状ではシンプルな判断基準では対応できないカードの扱いは苦手なようだ。たとえば,まだ展開が始まらないタイミングで「増殖するG」を発動してしまったり,自陣のモンスターを「激流葬」で破壊することで利益を得られる場面を見送ってしまったりと,人間から見れば初歩的なミスも多く見られた。
ステージの開始前に行われた解説によると,まだ学習の状況は完全ではないようで,これから洗練されていくとのことだ。原作「遊戯王」シリーズでは“やられ役”になりがちなAIデュエリストだが,原作ではどこまで実力をつけることになるかは,今後に期待といったところだろうか。
ステージでの紹介を見た後には,遊戯王関連のデジタル展開を統括するシニアプロデューサーの片岡健一氏への合同インタビューに参加する機会を得られた。AIの具体的な活用法,作り方などについても触れているので,詳細が気になる人は要チェックだ。
――今回のAIは,どんな目的で作られたのでしょうか。
片岡健一氏(以下,片岡氏):
ステージではAIそれ自体が目立っていたと思いますが,あれはサンプルとして遊戯王MDのチームが作ったもので,本質はプロジェクトそれ自体にあります。
本プロジェクトの真の目的は「誰でも自分のAIを作れる」という部分にあるんです。お披露目したAIは,そのサンプルのような存在だと思ってください。これからは,世界中のAIプログラマが遊戯王MDのAIを作れる環境を目指しています。
――学習させるデータをユーザーが選ぶだけでなく,学習のクセや方向性といった部分から調整できるということですか?
片岡氏:
はい,それぞれのAIプログラマが好きなように調整できます。
――ステージで披露されたAIは,どういった学習をしたものだったのでしょうか。
片岡氏:
今回はやや特殊で,実は人間のプレイデータは用いていません。AI同士で10万回のデュエルを展開させて,勝利につながった意思決定を学習させて作りました。やや踏み込んだ話をすると,Pythonで遊戯王MDを動かせるようにして,その環境を用いて深層学習を行っています。
――2つのデッキが登場しましたが,それぞれ別々のAIを構築しているのですか?
片岡氏:
ベースとなったAIは同じです。互いに異なるデッキを持たせて,それぞれ10万回のデュエルを経験させたのが今回のAIになります。
――基本的には技術者向けの要素ということですね。制作にあたっては,どんな形でツールなどが提供されるのでしょうか。
片岡氏:
今後は公式サイトで参加者を募る予定です。審査に通った人向けにAPIを利用できる専用アカウントを提供し,そこでAIを作ってもらうという形ですね。実際に動作させるAIは,Pythonを使用するものであれば制限はありません。
現在は規約を整備しているのですが,なにぶん例のない試みなので,どうしようかと思っているところです。折角なら世界中で同時に展開したいと考えていますので,そのあたりも含めて準備を進めております。
――開発の中で面白かったエピソードなどはありましたか?
片岡氏:
今回は「青眼の白龍」と「ブラック・マジシャン」のデッキが戦ったのですが,戦いの中でいくつか面白い判断が見れました。「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」が出たとき,パッと見では突破手段がないように見えたのですが,AIは盤面の魔法・罠カードを増やしつつ「超魔導騎士−ブラック・キャバルリー」を出して逆転したんです。そのほか,確率が関わらない部分であれば,人間でもすぐには気付けない手を見つけてくれるので,そういった対戦を見るのは開発の中で楽しかった部分です。
これはあくまで,今回作ったAIの話です。もしかしたら,ユーザーさんが新しく作ったAIは,もっと面白い判断を見せてくれるかもしれません。我々としては,そういうAIが登場することを期待しています。
――AIに学習させるのが難しい挙動には,どういったものがありますか?
片岡氏:
そもそも,一万種類以上あるカードの挙動をAIに理解させるのは,なかなか難しいんです。その上で,未来を見通す必要がある意思決定を行わせるのは,かなり難しい領域だと思っています。そういった判断を柔軟に行えるのがAI技術の強みですから,そこを乗り越えられる可能性も感じています。
――ユーザーが作ったAI同士の対戦は見てみたいですね。
片岡氏:
AI世界一を決める大会はやってみたいですね。ロボット同士を戦わせる「ロボコン」のAI版をやる,というのがAIプロジェクトの最初の目標でもありました。
――今後の活用方法や,ユーザー側のメリットについて教えてください。
片岡氏:
力量に合わせたAIとの対戦を通じたトレーニングや,テーマに合わせたAIを用いた“回し方”の確認,といった活用方法は最初に思いつきますよね。AIが勝率を算出する機能を活用すれば,優勢劣勢を分かりやすく表示したり,次の手のアドバイスなどを提示することも可能になります。
現時点で優勢や劣勢を表示する機能がないのは,盤面の状況で優勢劣勢を判断するのが難しいからですね。デュエルに詳しくない人でも,パッと見で優勢劣勢の判断ができる機能を提供すれば,より観戦が楽しくなるのではないかと思っています。
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