プレイレポート
[プレイレポ]「超探偵事件簿 レインコード」は,間口の広さと超濃厚なゲーム体験を共有した新時代の推理ゲーム。“最狂のバディ”にも注目だ
そんな本作を,5月に開催されたメディア向けハンズオンにて先行体験してきた。その模様をとおして,実際にプレイした感触や作品の魅力をお伝えしよう。試遊できたのは第1章で,一部のゲームの要素についてプロデューサーの榊原昌平氏に話をうかがえた。
「超探偵事件簿 レインコード」公式サイト
謎多き街・カナイ区で怪事件の解決に挑む,探偵見習いとオバケ(?)のバディの物語
本作の主人公は,タイトル名にある超探偵……ではなく,探偵の“見習い”であるユーマ=ココヘッド。雨が降り続く奇妙な街のカナイ区にある世界探偵機構の探偵事務所で,未解決事件の調査メンバーとして活動している。
そんなユーマは,気弱な一面があるものの,目の前で困っている人を見たら見過ごせないという,強い正義感の持ち主である。その性格のため,損得勘定を考えずに事件に突っ込むこともあり,実に探偵モノの主人公っぽい。
ユーマはどうやら記憶を失っているようで,どういった経緯で探偵の見習いになったのか分からない。記憶喪失というのもまたお約束な設定に見えるかもしれないが,これがストーリーはもちろんゲームとしても実に効いている。
詳しくは後述するが,本作の舞台設定はかなり突飛で,プレイヤーは多くの「何コレ!?」に晒されることになる(というか筆者は実際に晒された)。それに対し,ユーマもプレイヤーと一緒に疑問を感じてくれるため,何かに向き合ったときの感情や理解がシンクロしやすいのである。
ネームドの主人公としての個性をしっかりと保ちつつも,プレイヤーの分身としての役割もこなす。探偵としては見習いかもしれないが,主人公としてはすでに第1章から優秀である。
そして忘れちゃいけないのが,そんなユーマの頼れるバディである死に神ちゃんである。お化けのような姿をしている死に神ちゃんは,気弱なユーマをときに支え,ときにいじり,ときに茶々を入れ,ときに小馬鹿にした態度を取る,事件解決には欠かせない相棒だ。
「……その説明,“いじり成分”多くない?」と思ったアナタに朗報(?)だ。これでも書き足りないぐらいで,公式サイトやトレイラーなどで紹介されているものの5倍……いや10倍はぶっ飛んでいると言えるほど,死に神ちゃんは自由奔放な存在である。
……ハッ! バディとしての紹介があまりできていないような……ユーマのサポートはもちろん,物事の解説役やヒントの提示役としてプレイヤーを導いてくれる優秀なバディである。
好き嫌いは分かれそうではあるが,刺さる人は「もっと振り回されたい! もっとちょうだい!」となるはず。マスコット的な役割も担っており,壁をすり抜けながら町中を自由に動く姿や,表情豊かな会話時のイラストなど,見ているだけでも楽しめるキャラクターとなっている。
そんなユーマと死に神ちゃんがさまざまな事件に向き合うことになるカナイ区は,後ろ暗い噂が絶えない超巨大企業・アマテラス社が実質的に支配している特殊な地域である。警察の役割も同社の保安部が担い,社にとって都合の悪い事件はもみ消し,反対する者は正当な理由なく逮捕するなどやりたい放題。その影響力の大きさによって,政府もなかなか介入できない状況だ。
そういったアマテラス社の支配に不満を持つ住民も多いようだが,「不当逮捕? 上等だ!」……と行動を起こすといったわけではない様子。不自由さのなかで賑わう街は退廃的な雰囲気を隠し切れず,まさに “ディストピア”といった印象だ。
この,街の描写が圧倒的で,本作の大きな魅力の一つとなっている。
街を歩いていると,色とりどりのネオンライトが通りを照らし,建物にはピンクに光るてるてるぼうずが飾られ,行き交う人々は,アマテラス社製だろうか,ギラリと光るドローン傘などの近未来的なガジェットを使用している。
高級店が並ぶ一帯があれば,古びた建物や雑多な通りもあり,それらに排水のために張り巡らされたパイプが複雑に入り組み,独特の景観を生んでいる雨ざらしの街・カナイ区。比較的自由に街歩きを楽しめるのだが,各地を巡っていると「ああ,この街は雨と調和しながら進化していったのだな」と想像させてくれる。
そして,とにかく雨の描写はスゴい! 石畳の路面の濡れ方や水たまり,舗装されていない場所のぬかるんだ感じなど,実写と言ってもオーバーではないリアルさを感じさせる。
雨ざらしのディストピアな街の路面に反射して映るネオンライト……実にサイバーパンクな風景だが,“雨要素多め”な本作は“レインパンク”と呼びたくなるくらい独特の雰囲気を持っている。ぜひ実際にプレイし,街歩きを楽しんでほしい。
超探偵の特殊な力を使った推理が楽しい,雨降る街での調査パート
抑圧的なものはあるものの,怪しげで素敵な街で散歩に勤しみたいところだが,探偵見習いのユーマには使命がある。第1章でユーマは,連続密室殺人鬼のクギ男の正体を突き止め,謎多き一連の殺人事件を解決しなければならない。
このクギ男とは,カナイ区で有名な都市伝説の怪人である。「望んだ人間を殺してくれる」なんていう,なんとも物騒な話で,ユーマが追う連続殺人事件が,この都市伝説と酷似していることからそう呼ばれているという。
調査パートでは,事件を解決する鍵――解鍵(かいかぎ)を集めることが目的となる。事件に関する人物や証人となりそうな相手に聞き込みをしたり,複数の事件現場を回って調査し,事件の謎を暴いていくのだ。
連続殺人事件の調査なので,犯行現場は複数ある。犯行の手口や事件発生時の状況を推理るため,事件現場を回っていく |
解鍵は「ダンガンロンパ」プレイヤーに分かりやすく言うならば,言弾(コトダマ)のようなものだ。それがどのように事件解決に生かされるのか? 詳しくは後ほど…… |
主要キャラクターはもちろん,事件に関わる人物も固有の3Dモデルや会話時の2Dイラストが用意されている。2Dイラストの表情が豊かで,話を聞いてみると,3Dモデルから描き起こしたそうだ。いちから描くよりは効率よくできるのかもしれないが,それにしてもかなりのパターン数である |
気になるモノや注目すべきところなどは,2Dイラストのカットインが入る。それらのイラストも,3Dモデルをレタッチしたものとのこと |
未解決事件が多発するカナイ区の調査は一筋縄ではいかない。事件自体が複雑怪奇なものだったり,アマテラス社の保安部によって自由に動けなかったりと,その理由もさまざまだ。
そんなときに役立つのが,世界探偵機構の“超探偵”たちが持つ探偵特殊能力。第1章では,行動を共にするハララ=ナイトメアの過去視を使い,犯行現場を調査することになる。
では,過去視の力をどう使うのか。ハララに「お願いします!」と頼むのではなく,ユーマはその力を共有してもらい,自分自身で見たものを推理するのである。探偵としては見習いのユーマだが,相手の超探偵から承諾を得て,探偵特殊能力を発動時する際に手をつなぐことでその能力を借りられるという,不思議な力を持っているのだ。
この過去視,ユーマの立場で考えると“すっっっっげえ便利”であり,プレイヤーとしても分かりやすい推理能力である。事件現場の第一発見時の状況を“視る”という力なのだが,事件現場の現在と過去を見比べながら調査できるので,状況の変化が理解しやすく,調べるべき場所がとても見やすいのだ。
このきれいさっぱり片付けられた現場を過去視すると…… |
こうなる。白い幻影が現在の時間における物の位置で,例えばスタンドライトの高さが当時とは変わっていること,当時の現場にはたくさんの人形が散乱していたことがひと目で分かる |
おかげで,過去視を使った調査はとてもスムーズに進められる。事件の起きた当時と現在を行き来するような感覚も新鮮で,プレイしていても面白い。事件現場の調査に超能力という要素が加わることで,本作独自のゲーム体験が生まれていると感じられた。
全体的に,調査パートはとても分かりやすいつくりになっている印象だ。進むべき場所は死に神ちゃんが先に動いて教えてくれるし,事件現場でもやっぱり死に神ちゃんが多くのヒントを与えてくれる。先に紹介したときしっかり伝えられていなかったが,死に神ちゃんはつくづく有能なバディなのである。
あくまで第1章をとおしてプレイした感じではあるが,ヒントとなる死に神ちゃんの言葉に耳を傾けていれば,「調査パートでどこを調べればいいか分からない!」みたいな事態に陥る心配はなさそうだ。少々(いや,かなり……か)やかましかったり,無駄口も多かったりするので,「ちょっと騒がしいぞ」と思った人や自分で謎を解きたいという人は,軽く聞き流すくらいでいいかもしれない。
見たことのない異世界が視界に広がる。予想できない展開が待つ「謎迷宮」を踏破せよ
調査を行い,十分な数の解鍵が集まると,物語は真相を究明する「謎迷宮」のパートへ進む。ここは事件の謎が具現化した謎の空間で,構造は事件の内容に影響されるため,迷宮ごとに大きく雰囲気がことなる。第1章では,雨の降りやまない薄暗い街並みとはうってかわって,非常に明るい極彩色の迷宮内を進むことに。
謎迷宮では,なんと死に神ちゃんがこれまたかわいい女の子の姿に! ぶっ飛び方は変わらずで,現実と異なる世界でやりたい放題してくれる(もちろん,バディとしての活躍も!)。
移動を兼ねた会話パートでは,進めば進むほどまわりの風景が変わっていく。息つく間もない謎迷宮パートの始まりだ。風景は「いったい一つの謎迷宮に何パターン用意されているんだ!?」と驚くほど目まぐるしく変化する。ほんとにいったい,すべての謎迷宮を足したらどれくらいのボリュームになるんだろう……。
謎迷宮パートは,複数のミニゲームで構築されている。犯行が行われたときの重要なものや場所を見つけ出す「スポットセレクト」,密室の構造を再現して犯人の行動を暴く「密室再現」など,さまざまなアプローチで真相へと迫っていく。
“現実世界”での調査をもとに,あらためて事件の謎に向き合う |
密室の手順をいちから組み立てる「密室再現」。犯人と同じ順番で行動し,怪しい場所を選択していく。最初は苦戦したが,うまくピースがハマり密室が完成したときの達成感はなかなかのものだ |
ときには複数の選択肢から一択を選ぶことも。冷静に,前後で起きたことを整理して正解を導き出そう |
さらに謎解きだけではなく,「推理デスマッチ」というアクション性の高い“バトル”のようなものが発生することも。謎解きを邪魔する謎怪人を相手に,解鍵をセットした剣で矛盾点を指摘し,撃退や無力化を狙う。
相手の発言が攻撃となって襲い掛かる推理デスマッチは,うまく攻撃を回避しつつ,相手の主張を読み取り,矛盾点を指摘する必要がある。「ダンガンロンパ」シリーズのプレイヤーなら,「ノンストップ議論」を思い浮かべると分かりやすいかと思う。
アクションに慣れるまでは少し大変だったが,操作はシンプルなので慣れてしまえば問題ない。落ち着いて相手の主張を見て,矛盾している言葉を見つけてそれを切り裂こう。
かわいい女の子姿の死に神ちゃんも大活躍。事件に関するさまざまなヒントをくれるだけではなく,自らも体を張って謎を解く手がかりをくれる。
印象的なのが「死に神ちゃん危機一髪」。某黒髭のおもちゃのような感じでぐるぐる回る樽の中に入り,樽に書かれた文字を撃ってアナグラムを完成させるというもの。なんと,樽の中の死に神ちゃんは水着姿である。ううむ……素晴らしい。
謎怪人を追い詰めるアクションゲーム「大進撃 死に神ちゃん」では,死に神ちゃんが巨大化! 豪快なタックルにジャンプ,キックなどを駆使し,障害物(往生際の悪い謎怪人の主張)を粉砕しながら突き進む,単純明快で爽快なミニゲームだ。
鉄球はキックで蹴り飛ばす! |
壁はタックルでぶち壊す! |
最後に残った頑丈な壁は,渾身の一撃とともにクリティカルな解鍵をドーン! 相手の抵抗をすべて打ち砕く,無慈悲な死に神ちゃんの姿がそこにはあった |
そしてもちろん,最後の最後には「超推理フィナーレ」が待っている。
こちらはダンガンロンパファンであればみんな大好き(のはず)な「クライマックス推理」のようなもので,長い事件を振り返りながら漫画の形式でまとめ,犯人を当てることでフィナーレを迎えられる。
体験会という限られた時間でのプレイだったため,細かい部分や個々の事件のつながりなどをしっかり確認できなかった部分があったが,プレイヤー自身が考えながらそれらをまとめていく超推理フィナーレのおかげで,しっかりと事件を理解できた。
パズルを楽しみながら物語をまとめ,理解できる。推理ゲームの事件の〆として実に素晴らしい発明だとあらためて感じる。
謎迷宮パートをプレイしていて特に感じたのが,キャラクターを操作しての事件現場の再現や,場面によって異なるミニゲームへの挑戦などがあることで,「謎を解いた!」という実感が非常に強いことだ。
テキストをしっかり読み,自分自身で隠された謎や矛盾を見つけて真実を突き詰める,推理ゲームならではの考える楽しさ,プレイヤー自身がキャラクターを動かすというアクションゲームとしての楽しさの二つがリンクすることで,より強烈な“謎を解いた実感”を得ることができたのだろう。
気になる難度だが,印象としては「ダンガンロンパ」シリーズより易しい印象だ。といっても謎解きが簡単ということではなく,“間違いを選んでしまっても取り返しがききやすい”ということである。
謎迷宮内では,答えを間違えるとユーマの体力が削られていき,ゼロになるとゲームオーバーとなるのだが,その体力消費量はわずかなもので,けっこう失敗できる。探偵スキルを強化することでチャンスの回数や効果がよりアップするなど,推理モノに不慣れな人でも遊びやすい仕組みが用意されているのだ。
“寄り道”にさまざまな利点があることも嬉しい要素だ。
街中の気になるところを調べたり,サブクエストをクリアすることで,「探偵ランク」を上げるのに必要な「探偵ポイント」がもらえる。これは後述する謎迷宮パートで有利に働く「探偵スキル」を覚えるために必要なもので,つまり街歩きをすることで攻略が簡単になるのだ。
カナイ区で何が起きているのか。住民がアマテラス社をどう思っているのかといった,この世界のバックボーンを知ることができるのもサブクエストの魅力。より深くゲームを楽しみたい人は,サブクエストのエピソードも追いかけてみてほしい。
刺さる人には刺さって深みにハマる,死に神ちゃんの魅力
さて,いろいろと書いてきたが,最後にこれだけは絶対に伝えたい。
「死に神ちゃん,あまりにもかわいすぎるっ!」
以前のインタビューでもお伝えしたとおり,死に神ちゃんは“マスコットとバディとヒロインをひとまとめ”にし,「モノクマみたいな,人をおちょくるようなマスコットがバディにいると楽しい」という思いから誕生したキャラクターだ。
[TGS2022]「超探偵事件簿 レインコード」のキーマン,小高和剛氏にインタビュー。“2020年代のエポックメイキングな推理ADV”を目指す新作について聞いた
「ダンガンロンパ」シリーズ制作陣と,スパイク・チュンソフトがタッグを組んだ新作として注目を集めているダークファンタジー推理アクション「超探偵事件簿 レインコード」。そのキーマンであるトゥーキョーゲームスの小高和剛氏に、TGS 2022の会期中にインタビューをする機会を得た。
口が悪く,モノクマばりのブラックジョークもガンガン飛ばす死に神ちゃんは,人によっては不快に感じるかもしれない。しかし,このテの“人をおちょくるタイプの美少女”が大好きで,「そんなかわい子ちゃんが,自分に対して小馬鹿にしたような態度をとりながら周りを浮遊してくれないものか」と常日頃から考えている筆者のような人には,刺さりまくる見事なキャラクター性を持っているのだ。
極めつけは,主人公でプレイヤーの分身でもあるユーマの呼び方が,“ご主人様”なのである! 傍若無人な言動が多い死に神ちゃんが,ユーマ……いや,筆者のことを“ご主人様”と呼んでくれる。これは,狂わない方がどうかしているとさえ思う。それぐらいに,いい。ほんとに。とても。
美少女の姿だけではなく,オバケのようなマスコット形態(?)もかわいい。いたずらっ子なかわいい声でからかってきては,建物を透けて街中をスイスイ飛び回る。うーん。たまらない。
それに,このつるもちな感じのフォルム! 実体がないようなのでギュッとはできなそうなのが残念……そもそもゲーム内の存在だから触れられないけど。とにかく,ぬいぐるみが販売されたら絶対に買うだろう。
なお,謎が多いユーマと死に神ちゃんの関係だが,それについては本編中でしっかりと語られるとのこと。どのように出会い,なぜともに行動することになったのか。「そもそも死に神ちゃんって何者? ほんとに死神?」と,とにかくいろいろ知りたくなる死に神ちゃん,そして記憶を失っているユーマの“真実”も気になるところだ。
これまでにない超濃厚なゲーム体験が待っている,新時代の推理アクションゲーム
死に神ちゃんにかまけて暴走してしまったが,そういったキャラクターの魅力も本作の大きなポイントの一つであることは間違いないだろう。超探偵もみな個性的で,第1章ではハララ以外に登場したのは数人だが,ほんのわずかなシーンの登場からもかなりクセの強いキャラクターが揃っていることがうかがえた。
敵対(?)するアマテラス社の保安部の面々もまた強烈で,どのように物語に関わってくるかワクワクする。
「超探偵事件簿 レインコード」は,世界観と物語の深みや謎解きの“骨太さ”といったコアな推理ゲームの要素をしっかり持ちながらも,間口の広さやゲームとしての遊びもしっかり考えられた一作だ。
今回の体験会では,およそ4時間でぴったり第1章をクリアできた。サブクエストは進めず,セリフも飛ばし飛ばしでこのプレイ時間で,さらに複数の章があるわけなので,プレイ時間的にはかなりたっぷりと遊べるのではないだろうか。
「ダンガンロンパ」のプレイヤーであれば“変わらぬノリ”で,初めての人は,推理ゲームの根本にある面白さに触れながらゲームを楽しめるはず。そのどちらにも“これまでにない,超濃厚なゲーム体験”が待っているので,ぜひ新時代の推理アクションをプレイしてみてほしい。
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