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NVIDIAがデスクトップPC向けGPU「GeForce RTX 40 SUPER」を発表。ハイエンド〜ミドルハイGPUを強化
本稿では,3製品の概要に加えて,ゲーマーに関連した発表をざっくりとまとめてみたい。
「SUPER」の登場でGeForce RTX 40シリーズは合計7モデルへ
今回,発表となったGeForce RTX 40 SUPERシリーズは,GeForce RTX 40シリーズGPUのバリーションとして追加される3製品になる。GeForce RTX 40シリーズは,2023年の段階で最上位の「GeForce RTX 4090」からエントリーモデルの「GeForce RTX 4060」まで,計6モデルがラインナップされている。
それに今回,GeForce RTX 40 SUPERシリーズ3製品が加わるわけだが,その代わり,「GeForce RTX 4080」と「GeForce RTX 4070 Ti」が終息するそうだ。なので,GeForce RTX 40シリーズ全体としては,7モデルとなる。スペックの上下関係が分かりにくい面もあるので,そのあたりを整理しつつGeForce RTX 40 SUPERシリーズを紹介していこう。
GeForce RTX 4080 SUPER
既存のGeForce RTX 4080を置き換えるのが,GeForce RTX 4080 SUPERだ。GeForce RTX 4090のひとつ下という位置づけになる。1月31日の発売予定で,北米におけるメーカー想定売価は999ドルと,1000ドルを切る点がアピールされている製品だ。
GeForce RTX 40 SUPERシリーズのすべてに言えることだが,本稿執筆時点では,まだGPUコアのコードネームやシェーダコア(以下,CUDA Core)数,GPUクロックといった詳細は明らかになっていない。GeForce RTX 4080 SUPERのスペックで明らかになっているのは,次のスライドにあるとおりだ。
CUDA CoreやAI処理の演算性能というざっくりとしたスペックしか明らかではないのだが,ここからある程度は推測できる。目安になるのがメモリバス帯域幅だ。ひとつ下のモデルになるGeForce RTX 4080は,メモリバス帯域幅が716.8GB/sに対して,GeForce RTX 4080 SUPERは736GB/sなので,わずかな向上にとどまっている。つまり,メモリインタフェースはGeForce RTX 4080と同じ256bitだろう。
また,CUDA Coreの演算性能は,GeForce RTX 4080の公称48.83 TFLOSに対し,GeForce RTX 4080 SUPERは52 TFLOSなので約6%程度の向上にとどまる。NVIDIAによると,「GeForce RTX 4080よりもコア数は増加している」とのことなので,GPUクロックを向上させているわけではなさそうだ。おそらく,GeForce RTX 4080 SUPERのGPUコアは,GeForce RTX 4080と同じ「AD103」と考えられる。
AD103は,フルスペック仕様で10752基のCUDA Coreを持つと考えられていたが,AD103ベースのGeForce RTX 4080は,一部を無効化した9728基だ(関連記事)。そうなると,GeForce RTX 4080 SUPERのGPUコアは,AD103のフルスペック版か,それに近いものと考えるのが妥当であろう。
そんなGeForce RTX 4080 SUPERだが,NVIDIAによると,「4K解像度やフルレイトレーシングを使用したゲーム,そして生成AIのユーザーに最適なGPU」とのこと。4K解像度のゲームに関しては,前世代の同クラスとなる「GeForce RTX 3080 Ti」に対して,「DLSS 3」のフレーム生成を使用しない場合でも平均1.4倍,フレーム生成を利用すれば2倍以上の性能を有するという。
高い性能を持つにも関わらず,ゲームプレイ時の平均消費電力(Average Gaming Power)はGeForce RTX 3080 Tiなどよりも低いので,前世代から「驚異的なアップグレードになる」とNVIDIAは主張している。
一方,生成AIの処理性能に関しても,GeForce RTX 3080 Ti比で4倍近いTensor Coreを持つため,2倍以上の性能が得られるとのこと。容量16GBのグラフィックスメモリと合わせて,高い処理性能で生成AIを活用したいユーザーに最適だ,とNVIDIAは述べている。
GeForce RTX 4070 Ti SUPER
GeForce RTX 4070 Tiに代わる新GPUとなるのが,GeForce RTX 4070 Ti SUPERである。1月24日発売の予定で,北米におけるメーカー想定売価は799ドルだ。
現行のGeForce RTX 4070 Tiは,グラフィックスメモリ容量が12GBで,メモリインタフェースはGDDR6Xの192bitである。それに対してGeForce RTX 4070 Ti SUPERは,グラフィックスメモリ容量が16GBに増えており,メモリインタフェースも256bitになった。672GB/sというメモリバス帯域幅からすると,メモリクロックはやや控えめのようだが,それでもGeForce RTX 4070 Tiの504GB/sに比べて,大きく向上しているのが見どころだ。
またNVIDIAによると,「コア数もGeForce RTX 4070 Tiに比べて増加している」とのこと。CUDA Coreの演算性能は,GeForce RTX 4080とGeForce RTX 4070 Tiの間に位置する数字が挙げられている。
既存のGeForce RTX 4070 Ti/4070は,GPUコアとして「AD104」を使用しているが,グラフィックスメモリ容量やコア数の増加を考慮すると,あくまでも推測であるが,GeForce RTX 4070 Ti SUPERはGeForce RTX 4070台の製品として初めて,AD103コアを使用したGPUと見るのが妥当ではなかろうか。
GPUコアの高性能化と容量16GBのグラフィックスメモリを搭載したことにより,GeForce RTX 4070 Ti SUPERは,「4K解像度でのゲームプレイ,あるいは超高リフレッシュレートの1440pディスプレイをフルに活用できる」製品であると,NVIDIAは主張している。GeForce RTX 4070 Ti SUPERでは,フレーム生成を利用することで1440pなら多くのタイトルが100fpsを超えて,超高リフレッシュレートのディスプレイが活かせるというのがNVIDIAの主張だ。
GeForce RTX 4070 SUPER
GeForce RTX 40 SUPERシリーズの最後がGeForce RTX 4070 SUPERだ。1月17日の発売が予定されており,メーカー想定売価は599ドルである。
GeForce RTX 4070 SUPERは,CUDA Core演算性能が約40 TFLOSのGeForce RTX 4070 Tiと,同約30 TFLOSを謳うGeForce RTX 4070の間に位置する性能を持つGPUだ。NVIDIAによると,「GeForce RTX 4070 SUPERのコア数は,GeForce RTX 4070に対して20%増えている」とのこと。おそらく,GPUコアはAD104のままであろう。
GeForce RTX 4070 SUPERについてNVIDIAは,「GeForce RTX 2070」や「GeForce RTX 3070」からのアップグレードに最適であるとアピールしている。とくに強調していたのは,「GeForce RTX 4070 SUPERでさえ(前世代の最上位モデル)GeForce RTX 3090よりも高性能」という点だ。前世代の上位モデルを超える性能を持つGPUが,600ドル以下で手に入るというのがGeForce RTX 4070 SUPERのアピールポイントということだろう。
以上が,発表となったGeForce RTX 40 SUPERシリーズ3製品の概要だ。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERやGeForce RTX 4080 SUPERは,従来製品よりも明らかに性能が向上しているので,これまでGeForce RTX 40シリーズの購入を様子見していたゲーマーにとっては,ちょっとしたサプライズといえるのではなかろうか。一方,GeForce RTX 4070 SUPERは,終息するGeForce RTX 4070 Tiよりも少し性能が劣るかもしれない。価格によっては微妙な位置付けになりそうだ。
1000Hzに匹敵する鮮明さを実現する「G-SYNC Pulsar」の登場を予告
GeForce RTX 40 SUPERに合わせて,NVIDIAは,独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」の新機能として,「G-SYNC Pulsar」を発表した。G-SYNC Pulsarは,G-SYNCの同期技術を応用してディスプレイの鮮明度(=残像感の低さ)を著しく向上させる技術と,NVIDIAは予告している。
事前説明によると,いわゆる黒挿入技術の応用版であるようだ。「可変オーバードライブとバックライトストロボ技術を組み合わせる」ことで,画面の残像感を減らすのがG-SYNC Pulsarであるという。
ちなみにNVIDIAは,2023年に「G-SYNC Ultra Low Motion Blur 2」(以下,ULMB2)という残像感低減技術を発表している。残像感を減らす黒挿入技術では,画面のリフレッシュに合わせてバックライトを点灯,消灯するのだが,ULMB2では,液晶のピクセルが正しい色になったときに,タイミングを合わせてバックライトを点灯させることで,1000Hzクラスのシャープな画像を得ることが可能とされていた。
ゆえに,今回のG-SYNC Pulsarは,ULMB2のG-SYNC向け拡張版ではないかと,筆者は推測している。実際,G-SYNC Pulsarでも,「リフレッシュレート1000Hzクラスの鮮鋭度が得られる」と,NVIDIAはアピールしていたりもする。
なお,G-SYNC Pulsar対応ディスプレイは,2024年後半にASUSTeK Computer製の「Swift PG27」シリーズから登場するとのことだ。具体的な技術の詳細は,そのときに明らかとなるだろう。
ゲーム内NPCと自然に会話できるACEがいよいよ実装段階へ
NVIDIAの講演ではゲームに関連する話題として,これまで技術デモの披露にとどまっていた「ACE for Games」(関連記事)がいよいよ実装段階に入ると予告された。
ACE for Gamesは,大規模言語モデルと音声認識,発声にあわせて顔や口を動かすリップシンクの技術を組み合わせて,ゲーム中のノンプレイヤーキャラクター(NPC)と自然な会話が行えるという,NVIDIAが提唱するAI時代のゲーム技術だ。
2022年のSIGGRAPH 2022で基本コンセプトが明らかにされて以来,ACE for Gamesは,さまざまなデモが披露されていた。それが2024年になり,いよいよゲームに実装するための「ACE Production Microservice」というサービスをスタートさせるという。
ゲームデベロッパには,「Audio2Face」という顔と音声を合わせる技術と,「Riva Automatic Speech Recognition」という自動音声認識技術が2024年1月中に提供されるという。
また,Unity向けのキャラクタプラグインを開発しているConvaiの製品に,ACE for Gamesが統合され,ACE for Gamesを実装したキャラクタをゲームに組み込める「Convai Unity Plugin」のリリースも予告された。
注目すべきは,スライドに記されているmiHoYo, Ubisoft Entertainment,NetEase Gamesといった大手ゲームデベロッパとACE for Gamesにおける協業が発表となった点だろう。NVIDIAは,「2024年中には,ゲーム中に自然な会話ができるNPCが登場するようになる」と予告しているので,今後登場するタイトルに期待したい。
NVIDIAのCES特設Webページ
NVIDIAのGeForceグラフィックスカード情報
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