インタビュー
ルーンファクトリーの新プロジェクトは,次のナンバリング作に向けた“挑戦”。開発のキーマンに「ルーンファクトリー3 スペシャル」とシリーズの今後について聞いた
一つは,先日,2023年3月2日の発売が明らかになった,「ルーンファクトリー3」のSwitch向けリメイク作品となる「ルーンファクトリー3 スペシャル」。もう一つは“新シリーズの制作の始動”だ。
4Gamerでは,「ルーンファクトリー」シリーズのチーフディレクターである前川司郎氏にインタビューを実施。ディレクターとして「ルーンファクトリー3 スペシャル」の制作も担当している前川氏に同作とシリーズの今後について聞いた。
「ルーンファクトリー3 スペシャル」公式サイト
Switch「ルーンファクトリー3 スペシャル」,2023年春に発売決定。新たなシリーズの制作も明らかに
マーベラスは本日(9月13日),任天堂の情報番組「Nintendo Direct 2022.9.13」で,Nintendo Switch用タイトルとして「ルーンファクトリー3 スペシャル」を2023年春に発売すると発表した。さらに,新シリーズの制作が始動したことも明らかになっている。
ルーンファクトリー3は,シリーズ作品の“一つの完成形”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは前川さんが,これまでどのようにルーンファクトリーシリーズに関わってきたのか教えてもらえますか。
前川司郎氏(以下,前川氏):
それまでは本当に皆さんと同じ,ルーンファクトリーシリーズの“いちファン”です(笑)。本当に大好きなシリーズで,新作を楽しみにしながら作品をプレイしていました。
4Gamer:
その“いちファン”が,どういったきっかけでルーンファクトリー4SPの制作に携わることになったのでしょう。
前川氏:
皆さんがご存じのとおり,2012年の「ルーンファクトリー4」のリリース以降,しばらくシリーズの展開が止まっていて。私自身,ファンとして続編を期待していましたし,シリーズを手がける会社の人間としても「やるとしたら誰が続きを担当するんだろう」と考えていました。
その矢先,社内で「ナンバリング最新作を制作する。その足がかりとしてルーンファクトリー4のリメイクを出したい」という話が出て,「やらせてください」と手を挙げて今に至ります。
4Gamer:
ルーンファクトリー4SPののちリリースされたナンバリング最新作「ルーンファクトリー5」の開発には,具体的にどのように関わったのでしょうか。
前川氏:
当初はプロジェクトマネージャーとして制作進行を担当していましたが,開発の現場ではゲーム内の演出などに携わり,後半からはディレクターとしても開発に参加しました。
4Gamer:
9月に配信された「Nintendo Direct 2022.9.13」で,「ルーンファクトリー3 スペシャル」(以下,ルーンファクトリー3SP)と新シリーズの始動を発表されましたね。
なぜ「ルーンファクトリー3」のリメイクを制作することになったのか,その経緯を教えてください。
前川氏:
まず,ルーンファクトリー4SPが大変好評だったことがあります。機運が高まるじゃないですが,過去作品を,シリーズファンはもちろん新規ユーザーに遊びやすい形で届けられるチャンスなんです。
「次にリメイクするんだったらどれだ」という話になって「ファンの皆さんから高い評価をいただけているルーンファクトリー3にしよう」という形で話がまとまりました。
4Gamer:
ルーンファクトリー3をリメイクすることを,いちファンとしてどう思いましたか?
前川氏:
そもそも私自身がシリーズの中でもルーンファクトリー3がすごく好きなんですよ。なので,その思いがリメイクに至った経緯の一つになっているかなと(笑)。
4Gamer:
なるほど。いちファンとしても思い入れのある作品のようですが,リメイクの決め手になったのはどのあたりにあると考えていますか。
前川氏:
ルーンファクトリー3はルーンファクトリーシリーズの一つの完成形に至ったと作品だと思っています。
その理由はさまざまありますが,まずはユーザーインタフェースや操作感,ゲームのテンポでしょうか。そういったプレイアビリティに関する部分が一気に向上したんですよね。
大きいところだと,ヒロインや町の住人を誘ってパーティを組み,冒険に行けるようになったところです。今では当たり前になっている要素ですが,「そうそう。これがやりたかったんだよ」という,シリーズが本来目指していたであろうゲームの形ができた作品なんですね。
4Gamer:
プレイヤーとしてはもちろん,開発者としても重要度の高い作品だと感じていたと。
前川氏:
あと,ヒロインが皆,個性的で可愛い(笑)。まだ主人公の性別選択がなかったのもありますが,ヒロインが11人と多いんですよね。今回,岩崎美奈子さんに描いていただいた限定版用のイラストを見て,あらためて「みんな可愛いな」と思いました。
開発者としても,ファンとしても,その魅力を挙げだすとキリがない作品で,その後のシリーズの原型となったタイトルでもあると私は捉えています。
4Gamer:
リメイクで,まずこれは直したかったという部分はどこでしたか。
前川氏:
3Dモデルですね。ルーンファクトリー4SPの反省点として,3Dモデルにオリジナルの3DS版のものを使用したというところがありました。武器モデルの一部は直しましたが,全部を作り直すことはできなくて。
ゲーム自体はとても好評をいただけましたが,もとが携帯ゲーム機用に作ったモデルで,Switchの大きな画面でプレイするとアラが目立つんです。プレイヤーの皆さんには,もっときれいなモデルで,もっとゲームを楽しんでいただけたのではと,心残りがあったんです。
4Gamer:
それが実現できたと。
前川氏:
そうですね。よりキャラクターたちの魅力が感じられるものに仕上がっているので,ファンにはぜひ見てほしいポイントです。
4Gamer:
新要素としてはやはり「しんこんモード」が目玉でしょうか。ルーンファクトリー4SPで登場した同モードを本作でも追加した意図を聞かせてください。
前川氏:
なによりもまず,ルーンファクトリー4SPでとても多くのファンの皆さんに喜んでいただけたというのがあります。
ただ,これはシリーズ全般に言えることなんですが,結婚はゲームにおける一つのゴールでありながら,結婚したあとは淡泊というか,そこから先に新しいドラマがなかったんですね。それは大きな反省点になっていて。
せっかく好きな相手と結婚できたのだから,甘々な新婚生活を送りたいと思うはず。そう思って追加した「しんこんモード」は,本当に大きな反響をいただけました。なので,次のリメイクがあるならこれは欠かせないだろうと。
4Gamer:
オリジナル版のプレイヤーにとっても,お気に入りのキャラクターの新たな一面が見られるモードになっていましたね。SNSなどでも盛り上がっていました。
前川氏:
ありがとうございます。本作でも,ファンの皆さんが求める新たな恋愛要素として「しんこんモード」が機能すると思うので,楽しんでほしいですね。
4Gamer:
新要素で言うと,オープニングアニメも新たに制作されたものですね。
前川氏:
はい。楽曲もアニメーションも本作のために作成した新規のものです。
あと,これはシリーズの伝統なんですが,ゲームの進行度に応じてオープニングが変化します。本作では新規で2つのオープニングを用意していますので,ぜひ期待してください。
4Gamer:
DS向けタイトルをリメイクするうえで,どのような部分に気を配りましたか。
前川氏:
あとは3Dモデルを一新したぶん,2Dのイラストや背景もHD化などによってしっかりクオリティアップを図っています。
4Gamer:
現行機に合わせて,遊びやすさやグラフィックスはしっかり仕上げていったと。
前川氏:
そうですね。
……あっ,大切なことを話し忘れていました。セーブ数はかなり増えています!
オリジナル版は3つしかセーブできなかったので,11人の花嫁候補の物語を見るために泣く泣くセーブデータを消したという人がたくさんいたと思います。
4Gamer:
もうそういった辛い思いはしなくていいと。
前川氏:
はい。安心してすべてのキャラクターとの物語を楽しんでください。
新たに始動したプロジェクトで,今後のナンバリング展開を見据えた“挑戦”を
4Gamer:
続いて,新たなシリーズ展開について教えてください。ルーンファクトリー4SPの発表時はナンバリング最新作としてルーンファクトリー5が発表されましたが,今回はどのような作品になるのでしょう。
前川氏:
Nintendo Directでの発表のとおり,本当に始動したばかりのプロジェクトです。なので,まだゲーム内容といった具体的な話はできませんが,ナンバリング作品ではなく,新機軸となるような作品を制作するため,さまざまなアイデアを考えているということはお伝えしたいです。
Switch「ルーンファクトリー3 スペシャル」,2023年春に発売決定。新たなシリーズの制作も明らかに
マーベラスは本日(9月13日),任天堂の情報番組「Nintendo Direct 2022.9.13」で,Nintendo Switch用タイトルとして「ルーンファクトリー3 スペシャル」を2023年春に発売すると発表した。さらに,新シリーズの制作が始動したことも明らかになっている。
4Gamer:
SNSなどで「ルーンファクトリー6が来るか!?」という反応が大きかったですが,それではないと。
前川氏:
ええ。過去にも「ルーンファクトリー フロンティア」や「ルーンファクトリー オーシャンズ」といったナンバリングタイトルとは異なる作品がありますが,位置付けとしてはそれらに近いと思います。
4Gamer:
なぜ今,外伝ではないですけど,そういったナンバリングではない作品を制作しようと考えているのでしょう。
前川氏:
「そろそろここで,シリーズ作品として大きなジャンプが必要ではないか」という考えがあるからですね。
最初に少し触れましたが,ルーンファクトリーシリーズは3で一つの完成形を迎えたと捉えています。実際,以降の作品は,基本的に3でできあがったものがゲームのベースになっていますから。ただ,次のナンバリングでプレイヤーに新しい冒険を体験してもらうには,それを続けるだけでは難しいと思っています。
4Gamer:
もとが13年前のゲームで,3を含めてこれまで3作品続いている。そう考えると,たしかに継承していくだけでは新しいものを生み出すのは難しそうです。
前川氏:
そのとおりです。もちろんナンバリングである「ルーンファクトリー6」も開発しますが,新しいシリーズを展開するには,これまでの作品展開を見直し,大きく変える必要のある部分が出てくると思います。
そうは言っても,ナンバリングでいきなりがっつり変えても,みなさん戸惑いますよね。なので,一旦どこかで“新しい挑戦”をしないといけないなと。今回,ナンバリングではない作品に取り組むのは,そういった意味もあります。
4Gamer:
まだプロジェクトが動き始めたばかりということですが,今話せる範囲でゲームシステムや世界観などのイメージを聞かせてもらえますか。
前川氏:
どちらも「こんな感じで行こうかな」というところがやっと見え始めた段階で,本当にまだお話しできることがほとんどないんですよ。
ただ,ルーンファクトリーがこれまで大事にしてきた「冒険」「生活」「恋愛」という3つの柱はしっかりと守っています。そこは変わらず,新しい作品にチャレンジしていこうと。
4Gamer:
前川さんはシリーズ作品の中心メンバーとして制作に関わるという話を聞きました。具体的にはどのような立場になるのでしょうか。
前川氏:
シリーズのチーフディレクターとして,全体的な作品展開や方向性を定める役割を担っています。
もちろん一つひとつの作品もですね。新プロジェクトではディレクターとして原案から担当しているんですが,全体をしっかり見ながら,個々のタイトル単体にも長期的に関わっていきたいと考えています。
4Gamer:
シリーズ全体のかじ取りを担う前川さんにお聞きしたいことがあります。
まず,ちょっと気が早いかとは思うのですが,リメイク作品の展開について。4の次に3がきたとなると,続いて2,1と遡っていくのかなという期待があるんですが,このあたりは構想などあるのでしょうか。
前川氏:
さらに古い時代のゲームとなるぶん,相当手を入れないとリリースは難しいとも思うので,3や4のようなペースで出せるかというと厳しいという部分もあります。それはそれでチャレンジし甲斐がありますけどね。
あとは,ファンの皆さんの反応次第というところもあります。そういった意味でも,ぜひルーンファクトリー3SPの応援をお願いします(笑)。
4Gamer:
これは直接シリーズの展開とは関係ないのですが,もう一つだけ。昨今,農作業をプレイサイクルに組み込んだ作品や,スローライフを謳うゲームが,一つのジャンルとなるほどに増えています。
「牧場物語」やルーンファクトリーシリーズの影響も大きいと思うのですが,それについてどのように考えていますでしょうか。
前川氏:
そういった質問は最近とても増えていますね(笑)。
たしかに,人々の生活や農業に視点を当てたゲームや,それを軸にRPG的な側面を持った作品は増えてきたと感じています。それらと比較するわけではないですが,「ではルーンファクトリーって,そのなかで何を強みとしている作品なのか」と聞かれたら,キャラクター性なんですよ。
4Gamer:
パイオニアみたいなところでゲームサイクルやシステムはもちろんだと思うのですが,さらにキャラクター性も,と。
前川氏:
はい。ゲームサイクルやシステムはもちろんそれ自体が重要で,ルーンファクトリーならではのものです。
それらによるゲーム性をちゃんと楽しんでいただけるように,キャラクターの個性やそれらを際立たせる見せ方,ファンの皆さんのニーズに応えるバリエーションを生み出すといった部分もとても大事にしているんです。
4Gamer:
先ほど,「ルーンファクトリー3はヒロイン11人がそれぞれ個性的で可愛い」という話もありましたね。
前川氏:
ええ。ゲームをプレイしていただくと,いかにしてその一人ひとりに命が吹き込まれてきたか,どれだけ心を砕いて制作されたかを感じてもらえると思います。
そういったキャラクターを大事にしている部分がファンの皆さんに伝わっているからこそ,これまでシリーズが続いてきたんだと思います。そして,その考えは今後のシリーズ展開も変わらず重要な部分になっています。
4Gamer:
ひとつ気になったのですが,ルーンファクトリー4SPでは登場キャラクターをさらに深堀する「アナザーエピソード」がDLCとして配信されていましたが,そういった追加コンテンツも予定されているんでしょうか。
前川氏:
シリーズの歴代主人公が作品の枠を超えて競演する,ファン必聴のドラマCDが入っているんです。
4Gamer:
それは豪華ですね。
前川氏:
はい。そもそもルーンファクトリーシリーズって,プレイヤーの分身である主人公はほとんどしゃべらないですからね。会話の中に出てはくるけど,主体的に動くことはないというか。
でも今回,主人公が主体的に物語を動かすドラマCDを制作してみて,あらためて主人公のキャラクター性の重要さを再確認しました。ファンの皆さんにもぜひそれを味わってほしいですね。
4Gamer:
もちろん,いちファンとしてもオススメしたいと。
前川氏:
はい。それはもちろん(笑)。シナリオを読んでいると,どのような仕上がりになってくれるか本当に楽しみで。
ほかにも,本作のヒロイン候補たちのショートドラマが収録されたCDも入っているので,これも楽しみにしてほしいです。
4Gamer:
これだけ長いシリーズで,オリジナル版が10年以上前となると,本作で初めてルーンファクトリーシリーズに触れるという人も少なくないと思います。そういったプレイヤーにオススメのポイントをお願いできますか。
前川氏:
ルーンファクトリーシリーズは,どのタイトルからでも始められるような作りになっています。その中でも今回のリメイク元である3は,いま遊べるシリーズタイトルのベースになっている作品なので,これから始める人にはとくにオススメできる作品だと思います。
農業するのも自由,冒険に出かけるのも自由,恋愛するのも自由と,本当に自由度の高いゲームなので,自分なりのファンタジー世界の生活を楽しんで,もし気に入ったらほかの作品にも手を広げていってほしいです。
4Gamer:
では,オリジナル版のプレイヤーやシリーズファンにメッセージをお願いします。
前川氏:
グラフィックスや遊びやすさといったところは大きく作り変えていますが,基本のゲーム部分はオリジナルの要素を大切にして制作を進めました。実際に手に取って懐かしい気持ちになっていただきたいですし,「昔遊んだルーンファクトリー3が,こんなに綺麗になって帰ってきたんだ」ということをぜひ確認していただきたいです。
そして,これは初めての人とシリーズファンの両方にお伝えしたいことですが,「ルーンファクトリー3 スペシャル」は,期待以上のいいものに仕上がっていると感じています。本作はもちろんですが,ルーンファクトリー4SPやルーンファクトリー5もプレイしていただき,新作の続報を待っていてもらえると嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ルーンファクトリー3 スペシャル」公式サイト
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