プレイレポート
[TGS2022]一風変わったストラテジー「MORSE」をチェック。モールス信号で世界を変えた女性のストーリー
「MORSE」は,第一次世界大戦が泥沼化していく中,電信通信士の主人公アイダ・ブロケットが苦境に陥る国軍をサポートするために,とてつもないパワーを秘めたモールス信号機を扱う任務を託されるというストーリーだ。このモールス信号は,時間どおりに正確な文字を打ち込むことで船を沈め,戦闘機を撃墜し,さらに塹壕に乗り込んでくる敵軍から味方を守る援護射撃を行っていく。すべては,アイダの指一本にかかっているのだ。
モールス信号とは,電話やテレックスが発達したことにより,1920年代から1930年代にかけて次第に使われなくなった電信技術の1つ。“電鍵”と呼ばれる専用の装置,または音や光を利用して,短点(日本語では“トン”)と長点(日本語では“ツー”)を組み合わせ,離れた場所との交信を行うものだ。
有名なところでは,世界標準となった危機信号の”トントントン・ツーツーツー・トントントン“で,これは「トン・トン・トン」の短点3つの組み合わせが「S」,そして「ツー・ツー・ツー」の長点3つの組み合わせが「O」という符号になり,つまり「S・O・S」を意味したモールス信号になる。
「MORSE」は,ゲーム中に表示される英単語を,敵の進軍に合わせて時間どおりに打ち込むことで,マス目に合わせて進軍してくる敵を爆撃していくというゲームシステムだ。つまり,プレイヤーのタッピングスキル,タイミング,そして戦略性が1つになったゲームであり,そこにモールス符号を学んでいくという教育的ソフトの側面を持ったユニークなゲームなのである。
ちなみに,モールス符号は国によって異なり,日本語の場合は短点と長点を使って50音を表現している。そのため,英語モールス符号がベースになった本作をプレイしたからと言って,日本国内で活用できる知識とはならないものの,モールス信号のコンセプトはしっかりと理解できるはずだ。
「MORSE」の面白いところは,このゲームが単なるモールス信号をテーマにしたストラテジーゲームなのではなく,入念なストーリーが盛り込まれていることにある。アイダは休憩時間に軍事施設内を散策し,そこで同僚や軍部関係者らと会話することによって主人公の苦悩を反映した物語が進行するというナレーティブデザインが秀逸となっている。
指先1つで,敵であっても多くの人命を消してしまうという能力を持ってしまったアイダの心境が,どのようなものになっていくのか。モノクロを基調にしたアートワークと相まって,暗く切ない時代に生きる彼女の姿が描かれていくようだ。
ゲームシステムからして,この「MORSE」の日本語化は難しそうだが,ダイアログシーンだけでも翻訳されて,ストーリーを追えるようになれば……と思う。すでに公開されているSteamストアページでは無料体験デモが公開されているので,気になる人はプレイしみるのも良いのではないだろうか。
「MORSE」公式サイト
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