インタビュー
[インタビュー]進化するハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」,シームレスな狩猟体験を目指して[gamescom]
「モンスターハンターワイルズ」メディア向けハンズオンレポート。変化に富んだフィールドで,新要素満載の狩猟を体験!
「モンスターハンターワイルズ」の国内メディア向けハンズオンイベントのレポートをお届けする。今回は「隔ての砂原」にて,纏蛙「チャタカブラ」,闢獣「ドシャグマ」の狩猟を体験できた。そこには変化に富んだフィールドと,さまざまな新要素が詰め込まれていた。
そんなgamescom 2024では,「モンスターハンターワイルズ」の開発に携わる辻本良三氏,徳田優也氏,藤岡 要氏への合同インタビューも実施された。ワイルズで導入された新規要素や,シリーズ全体の振り返りなどが語られたインタビューの内容をお伝えしよう。
――モンスターハンターワイルズのプレイアブルデモがgamescom出展され,一般の方が触れられる初めての機会となりました。一般の方がプレイしている様子を見たときの,率直な感想をお聞かせください。
徳田優也氏(以下,徳田氏):
長年モンスターハンターの開発に携わってきましたが,やっと皆さんに触れていただける機会が来たことをとても嬉しく思います。開場から多くの方々が私たちのブースに押し寄せてくださり,何時間も並んで楽しそうにプレイしてくださる姿を見て,感無量でした。
藤岡 要氏(以下,藤岡氏):
自分たちがテストプレイするのとはまったく違い,一般の方々がプレイする様子を見るのは,とても緊張感がありました。皆さんが楽しそうにプレイする姿を見たら,今回出展して本当に良かったとあらためて思いましたね。
辻本良三氏(以下,辻本氏):
gamescomでのモンスターハンターの出展は5年ぶりですが,5年前と比べてもユーザー層が広がっていると感じました。その熱意が本当にすごく,この感動をしっかりと開発チームに伝えてメンバーのモチベーションを上げ,より良い製品作りにつなげていきたいです。
――「モンスターハンター:ワールド」が終わってから開発を続けていたとのことですが,具体的な開発期間はどれくらいでしょうか。また,開発中に最も苦労した点を教えてください。
徳田氏:
2019年頃に開発に着手しました。もちろん,最初からフルメンバーで開発していたわけではなく,徐々にチームが大きくなっていきました。コンセプトを具現化する段階までは比較的順調でしたが,本格的な開発に入ってからが大変でしたね。
今回のゲームでは,人間も含めたモンスターハンターの世界をシームレスに描くというコンセプトがあり,フィールド間のローディングをなくすことを目指しました。ですが,ローディングをなくすということは,膨大な情報を常に計算し続けなければなりません。この技術的な課題を克服することが最も大変でした。
――gamescomにあわせて公開された新モンスター「ラバラ・バリナ」について教えてください。蜘蛛型のモンスターは過去作にも登場していましたが,どのように差別化を図っているのでしょうか。
藤岡氏:
ラバラ・バリナは,これまでのシンプルなモンスターの流れとは異なり,より複雑なモンスターとして設計しました。ラバラ・バリナは「緋の森」という赤い水が流れる環境に生息していて,毒素を含んだ糸を吐き出し,それが時間差で落ちてくるという攻撃パターンがあります。プレイヤーはこの攻撃をどう回避するかを考えながら戦う必要がありますね。
――新モンスター「煌雷竜 レ・ダウ」の特徴や生態について教えてください。
藤岡氏:
レ・ダウは雷を操るモンスターです。レ・ダウ自体は雷を起こし,それを結晶化する能力を持っています。この結晶化した雷を身にまとうことで,独特の戦闘スタイルを展開します。デザイン面では,シンプルながらもコントラストの効いた外見を持ち,その能力をビジュアル的にも表現しました。
――本作では人々の生活も描くということですが,具体的には,過去作とどう違うのでしょうか。
徳田氏:
ワイルズでは,フィールド間のローディングをなくすことで,よりシームレスな体験を提供しています。その中で人々の生活を垣間見られ,季節や環境の変化に適応する様子を観察できます。例えば,豊穣期には水を汲みに行く人々がいる一方で,荒廃期には危険を冒して鉱石を採取しに行く人々がいます。そして,モンスターの接近を察知して早めに避難する様子を描くなど,モンスターハンターの世界に生きる人々の生活も表現しているところが,過去作にはなかったところです。
――モンスターの生態系の描写で進化している点について教えてください。
藤岡氏:
開発初期から,モンスターを限界まで多く出したいと考えていました。もちろん,ただ数を多くしてもつまらないので,群れをなして登場するモンスターというのを用意しました。草食モンスターは集まることで外敵から身を守りますが,そういった生態を描いています。同じ群れの中でもバリエーションを出すことで,見ているだけでも楽しめるような緻密な描写を心がけています。
また,環境の変化によってモンスターの行動も変わります。例えば,土地が痩せる荒廃期には攻撃的な肉食モンスターが多くなり,今まで群れていなかったものも群れるようになります。そして砂嵐の中でしか出てこない捕食者が現れたりもします。豊穣期には大型モンスターの数は少なくなりますが,さまざまな小型生物が増えるなど,環境に応じた生態系の変化を表現して,コントラストをつけていますね。
――新しい騎乗動物として「セクレト」が登場していますが,その特徴を教えてください。
徳田氏:
セクレトは,広大になったフィールドでの移動をサポートする存在として設計しました。環境の変化に適応し,ハンターに寄り添ってくれる存在です。攻撃能力はありませんが,ハンターが危険な状態になると駆けつけて守ってくれます。また,支給品をセクレトのポーチに入れられるようにするなど,シームレスな体験を損なわないよう工夫しています。
――実際にプレイしてみたら,アクションの手触りが過去作とは変化していて,レスポンスが速くなっているように感じました。私の気のせいかもしれませんが,実際に変更した部分はありますか。
徳田氏:
実は,アクションの速度自体は大きく変えていません。ですが,動作のつながりを滑らかにしました。これまでだと動きが止まっていたように見える部分や,つながりの悪い動作を改善し,移動しながらさまざまなアクションが展開できるようになっています。その結果として,アクションの速度が上がったように感じるのだと思います。
――それぞれの武器は,細かいところを変更していますか。
徳田氏:
はい,各武器のコンセプトはしっかり保ちながら,それぞれの特徴を伸ばすように調整しています。全体的な方針として,これまで制限されていた動きをなるべくフォローし,よりシームレスな動きができるよう心がけていますね。
――本作では「集中モード」と,モンスターに傷をつけられるシステムが導入されていますが,その理由を教えてください。
徳田氏:
モンスターハンターシリーズの醍醐味は,モンスターの状態や特徴を見極めて適切なアクションを選択することです。「傷」システムは,モンスターの弱点をより分かりやすく示す役割があります。通常の攻撃で傷ができ,その傷を攻撃することで大きなダメージを与えられるようにしました。これにより,長いクエスト中でも短いサイクルで成功体験を味わえ,プレイヤーの爽快感や達成感を高められると考えています。
――gamescomで装備スキルに関して「グループスキル」が発表されました。その詳細を教えてください。
徳田氏:
これまでは一つのモンスターの装備セットを揃えることで強力なスキルが発動するシステムでしたが,今回は異なるモンスターの装備を組み合わせても恩恵が得られるようにしました。例えば,特定のグループに属する装備を一定数そろえることで,グループスキルが発動します。これにより,より多様な装備の組み合わせが可能になり,プレイヤーの戦略の幅が広がると考えています。
――モンスターハンターシリーズの20年の歴史の中で,本作はどのような位置づけになると思いますか。また,これまでのタイトルと比べて最も大きく変化している点はどこでしょうか。
辻本氏:
本作では,モンスターの群れの制御など,これまで技術的に難しかった表現が可能になりました。より深くモンスターハンターの世界観を体験できるゲームになると考えています。また,シナリオやストーリーにも力を入れています。
グラフィックスの進化で世界の細部まで表現できるようになり,より没入感のある体験をプレイヤーに提供できるようになりました。できることは全部やった作品と言えるでしょう。
そしてシリーズのこの先については……まだ分かりません(笑)。ですが,ワイルズでチャレンジして成功したことはその先に生かし,良くなかった部分はあらためていきます。
――モンスターハンターシリーズは,モンスターハンター:ワールドで,グローバル市場を意識した展開をしていたように見えました。世界を意識したときに,それまでと変えたことはありましたか。
辻本氏:
明確にここを変えたというのはないんですが,作品のリリーススピードを落としました。ワールドまでは1年〜1年半ぐらいの検証期間でしたが,世界同時発売となるとそれ以上に時間かける必要があったので。
徳田氏:
ワールドでグローバル市場に向けて展開したときには,モンスターハンターの根本的な魅力を失わないよう注意を払いましたね。変えてはいけない部分と変えてもいい部分を慎重に分析し,モンスターハンターの本質的な面白さにたどり着きやすくするよう心がけました。
――シナリオとゲームデザインの融合について,今回新たに挑戦していることはありますか。
藤岡氏:
これまではモンスターを中心に物語を組み立てるのが主でしたが,今回は生態系全体,そして人間社会も含めた世界観を描くことに挑戦しています。自然の脅威や豊かさをゲームデザインに落とし込み,それを引き立てるストーリーを作る視点で制作しています。
また,今回は「ナタ」という少年キャラクターを前面に打ち出しました。ストーリーのためにキャラクターを立てるという,これまでのモンスターハンターシリーズではあまり行ってこなかった新しいアプローチだと思います。
――ありがとうございました。
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