インタビュー
[インタビュー]「モンスターハンターワイルズ」は,さらなる最適化と武器のバランス調整を進め,完成形を目指す
オープンβテスト時のものから製品版はどのように変わるのか,プレイヤーが気になる質問をぶつけてきた。
[プレイレポ]「モンスターハンターワイルズ」はオープンβテストからより遊びやすく進化。復活のババコンガや新モンスターの狩猟を体験できた
2024年11月に「モンスターハンターワイルズ」の一部を体験できるメディア向けプレビューツアーが,大阪のカプコン本社で実施された。オープンβテストから進化した新バージョンをゲーム冒頭から約5時間じっくりプレイできたので,レポートをお届けしよう。復活したババコンガや個性豊かな新モンスターの狩猟や,世界観を形成する演出を楽しめた。
レ・ダウの鳴き声は「ずぃーんめーんぎょー」。「モンスターハンターワイルズ」にも活用されたカプコンの自社スタジオとは
2024年11月,「モンスターハンターワイルズ」のメディア向けプレビューツアーが大阪のカプコン本社で行われた。この日はプレイ取材とインタビューに加え,カプコン本社にあるモーションキャプチャとサウンド,SEのスタジオを取材でき,同作を開発する最新技術の一端が明かされた。
「モンスターハンターワイルズ」公式サイト
さらなる最適化と武器のバランス調整を進め,完成形を目指す
――本日はよろしくお願いします。10月にオープンβテストが実施されましたが,プレイヤーからの反応はいかがでしたか。
辻本良三氏(以下,辻本氏):
すごくいい反響をいただきましたが,同時にいろいろなご意見もいただきました。ただ,βテスト時には実装が間に合わなかった要素もあるので,今後我々が「どういった部分に手を入れるか」をお伝えする機会を設けたいと考えています。
――例えばどういった部分に手を入れられるのでしょうか。
徳田優也氏(以下,徳田氏):
まず,皆さんが気にされているであろう武器バランスについては手を入れます。そもそもエンドコンテンツを見越して調整をする予定ですし,βテスト時には,我々が考える遊び方やコンセプトが届いていない部分もあったように思います。
具体的な武器種ですと,「操虫棍」「ランス」「スラッシュアックス」「片手剣」は,武器のコンセプトがしっかり感じられる調整をしていきます。
――βテストはグローバルで実施されましたが,武器の使用率になんらかの傾向は出ていましたか。
徳田氏:
世界的に「太刀」が人気で,「ライトボウガン」を組み合わせるプレイヤーが多かったですね。面白かったのが,アルマの質問に答えてオススメの武器種を選んでもらった際の結果です。アメリカと欧州は操虫棍が,日本は太刀が多く選ばれていました。アメリカと欧州のプレイヤーが好む質問が合致していたのかもしれません。
辻本氏:
現在のモンスターハンターは地域ごとにコミュニティマネージャーが配置されていて,さまざまな意見や反応を汲み取れる体制になっています。数字面だけでなく,個々のお声も届いていますよ。
――今回の試遊会では,懐かしいババコンガを狩猟できました。個人的には桃色の毛がツヤツヤしているのに感動しましたが,旧作のモンスターを出す際のこだわりなどがあれば教えてください。
藤岡 要氏(以下,藤岡氏):
毛並みの感じや生え方,長く生きているボスらしさといった表現にはこだわっています。いろんなものを食べたり,投げてくる“アレ”も含めて,リアルさを感じていただけると思います。
徳田氏:
僕が初めて担当した大型モンスターがババコンガやドドブランゴ,ラージャンといった猿系だったので,懐く感じています(笑)。制作上の話では,キノコを食べてパワーアップしたり,“アレ”を投げつけてきたり,状態異常を与えてきたり,といったところはしっかり見せていきたいと考えました。
また,トリッキーな動きのラバラ・バリナのあとで戦うので,腰を落ち着けて狩猟できる,アクションとしては遊びやすい形にしていこうというコンセプトになっています。これまでのババコンガはさまざまなキノコを食べてもブレスの色しか変化しなかったんですが,今回はモーション自体も変えています。
――今回の狩猟でも手下のコンガたちがたくさん出てきましたが,ババコンガ自体の習性も従来のものを引き継いでいるということでしょうか。
藤岡氏:
そうですね。もともと「モンスターハンター2」の時点でババコンガとコンガが群れで生態系を形成しているという設定はありました。ただ「2」のようにコンガが容赦なく襲ってくるとなると,ゲームの難度が著しく上がってしまいます。そこで今回は,群れの習性としていろいろな制御を入れました。
一言に群れといっても,ババコンガとコンガの場合はそこまで統制が取れていないんです。そこで今回は,「乱戦になりすぎず,それでいて群れ感はある」というバランスを目指しました。
徳田氏:
ババコンガとコンガがテリトリーを作ってるんですが,開発内部では「コンガ山」と呼ばれてますね。はちみつをガメてるんですよ(笑)。
――今回の試遊ではラバラ・バリナやケマトリスといった新モンスターも狩猟できました。序盤に登場するモンスターこそ,プレイヤーを脱落させないためにもレベルデザインに力を入れていると思いますが,制作での難しさやこだわりを教えてください。
徳田氏:
モンスターハンターとしては,段階を踏んでアクションを習熟していただくという考えのもと,モンスターを設計しています。順番としてはチャタカブラ→ケマトリス→ラバラ・バリナの順で狩猟するため,それぞれの立ち位置を決めたうえで制作しました。
チャタカブラは,点での攻撃を多くしてきます。モンスターの行動を見分け,回避やガードといった選択を学べるような設計です。攻撃できるポイントも塊状にしてありますから,精密に狙わなくても攻撃が当たるわけです。
ケマトリスの場合,範囲のある攻撃をさせたかったので,尻尾を長くしています。属性攻撃についても学んでいただけるよう,獣竜種で炎を使ってくる現在の形になりました。
そして,チャタカブラとケマトリスでアクションの基礎を学んだあとに狩猟するのがラバラ・バリナです。方向転換や回り込みといった行動が多く,カメラ操作への意識が高まるようになっています。また,麻痺効果を持つ綿毛を空中に漂わせるのですが,これは空間を意識して立ち位置を決めてもらうための設計になっています。
藤岡氏:
デザイン面では,プランナーが取り入れたいゲーム性を反映させたものになっています。ケマトリスの場合は立ち位置が分かりやすいよう,いろんな要素を入れるのではなく,特徴でありゲーム性でもある尻尾に集中していただけるデザインにしました。
ラバラ・バリナはトリッキーな動きをさせたいということで,トリッキーさが分かりやすくなるように足をすごく細くしてあります。バレリーナのように動くなか,尻尾を薔薇のように開いて綿毛を降らせてくるという,個性を際立たせるデザインになっています。
ババコンガについてはもうお馴染みのモンスターですので,現在だからこそできる表現をしっかり取り入れました。
徳田氏:
初期段階で「こういう遊びをしてもらいたい」「どれくらいの習熟度の人に狩猟してもらいたい」というテーマを企画から出していき,その後にデザイナーが動きを作っていくという流れですね。
――試遊のラストに出てきたウズ・トゥナは,ひととおり学んだ締めくくりとして狩猟できるという設計なのでしょうか。
徳田氏:
どちらかというとドシャグマがその立ち位置になります。「傷」や「弱点集中攻撃」「群れ」といったシステムを理解していただいたうえで,学んだことを発揮していただく形になります。
ドシャグマを狩猟してワイルズを理解したあとに登場するモンスターが,それぞれの地域で生態系の頂点に君臨する捕食者たちです。彼らはそれぞれの個性に特化していて,そのうえでアクションを楽しんでいただけるような設計を心掛けています。例えばウズ・トゥナだとパワーであったり,波を起こしたりといった要素です。
――生態系の頂点のモンスターはどういった特徴を持たせているのでしょうか。
徳田氏:
各属性の生態系の頂点ということで,緋の森だと水を使うウズ・トゥナが出てくるわけです。ヴェールをまとった部分が水に触れると波を起こしてきます。こうしたパワフルな攻撃を,ハンターの位置取り調整やセクレトを使って避けて,反撃を与えていきます。
ヴェールについてはデザインを遊びに組み込んだ要素でもあります。先に破壊すべきか,無視して別の部位にダメージを与えていくか,といった判断が迫られる応用編的な意味合いがあります。ただ,最初に出会うウズ・トゥナはあくまでも撃退で,ガチ勝負というよりは体験というイメージですね。
――禁足地に住む人々の異文化感もよく表現されていると感じました。苦労された点や,見てほしい点などありますか。
藤岡氏:
今回は当初から「人も生態系の一部として描きたい」というコンセプトがありました。禁足地にはハンターがいないので,環境が変化するなかでモンスターと人がどう対応しているかをかなり細かく設定しました。
それは異文化を描くことであり,挨拶や座り方といった基本的な部分を考えるところからのスタートでした。食生活ひとつをとっても「農耕できない環境で何を食べているんだろうか?」「フィールドから採ってきた雑穀でパンみたいなものは作れるだろうし,豆も採れるだろう」「家畜は飼えるんじゃないか?」「それなら乳でチーズも作ってるんじゃないだろうか」……といった風に設計にかなりの時間を使いました。
ハンターが乗るセクレトにしても,しっかりとした設定が必要でしたし,ゲームとしてやりたいことが出てきたら出てきただけ設定を考えないといけない。苦労はしましたが,その甲斐あって,異文化にハンターたちが入って交流していくさまがきちんと表現できたように思います。
――世界観を見せる部分も力が入っているという印象です。例えば,村でのイベントが終わったあとに出席者たちがいったん解散するけれど,彼らについていくと会話を交わしていたりする。NPCが生きている感がありました。
藤岡氏:
今までのモンスターハンターですと,NPCは「設置されている感」がありました。一方,本作のキャラクターたちはそれぞれが自分のタイムスケジュールを持っています。移動中に巡り合えば会話を始めるなど,自分の判断で行動するので,より生活感がにじみ出た作りになっています。
徳田氏:
NPCをプレイヤーさんのための存在というより,ちゃんと生きた存在であり,それぞれの生活や心を持つ存在として描きたいと考えています。とはいえ,世界観の深堀りについては,すごく好きな方とそうでない方がいらっしゃいます。ですので,強制的に見せてしまうというより,選択肢として用意し,アクセスするかどうかは自由にしています。
藤岡氏:
情報量が多いため,すべてをイベントのカットシーンや歩きながらの会話としてしまうと,ずっと話を聞いているだけということになりかねません。プレイヤーが手を止めることなく情報を教えてくれるようにするところもかなりこだわりました。
――群れについてはどのような扱いになるのでしょう? コンガの群れは「そこまで統制が取れていない」という話がありましたが,より洗練された群れを形成するモンスターも登場するのでしょうか。
徳田氏:
モンスターを同時に出せる最大数というのはシステム的に決まっていますが,たくさん出るときもあれば,そうでないときもあります。このあたりはオープンβテストでも見ていただけましたが,本編ではよりパワーアップした形になります。
モンスター同士の連携については現状お伝えできないので,今後の情報をお待ちください。大型モンスターで群れを形成するものもいますし,大型モンスターと小型モンスターで群れになることもあります。生態や個性にあわせた展開があるということですね。
――試遊できた範囲では,主人公であるハンター自身のバックボーンが垣間見えるところもありました。かつてはプレイヤーの分身に徹していた主人公も,近年のシリーズでは少しずつキャラクターが立ち始めています。
徳田氏:
特定のキャラクターとしての強烈なバックボーンと個性をプレイヤーに押し付けるようなことはしていません。あくまでプレイヤーの分身という立ち位置は保っています。ただ,ほかの諸々がリアルになっているなか,ハンターに何も設定がないのでは不自然になってしまいます。禁足地を調査するハンターとして選ばれるのにふさわしいバックボーンは持たせています。
辻本氏:
「ハンターとはなにか」を描いていくという感じですね。
藤岡氏:
モンスターハンターの世界は人とモンスターが共存する世界で,そこにハンターという職業の人がいます。ただ,今回の舞台となる禁足地には,ハンターという職業自体がそもそも存在していません。そこに住む人たちが武器を背負ったハンターを見てどういった反応をするのか,ハンターでない人々がハンターとどう接するのか。ハンター像をあらためて描くというのが「モンスターハンターワイルズ」なんです。
タイトルによっては裸一貫からスタートするようなこともありましたが,今回の主人公はルーキーではありません。これは「モンスターハンターワールド」を世界中の皆さんにプレイしていただいた状況をメタ的に反映しているところでもありますが,ゲーム自体は初心者でも楽しんでいただける設計になっています。
――オープンβテストでは最適化に苦労されている印象を受けました。今後も最適化には力を入れていき,製品版ではより美しく遊びやすくなるという理解で大丈夫でしょうか。
藤岡氏:
もちろん最適化には力を入れていますし,状況が良くなければ改善するように心がけます。現状が完成形でないのは確かで,開発チームは一丸となって取り組んでいます。
徳田氏:
オープンβテストと今回試遊していただいたバージョンでも状況は違います。オープンβテストをフレームレート優先で遊ばれた際は描画の不具合などもあり,解像度という以前にきれいに見えない部分もありました。しかし,今回のバージョンではそうした部分も改善されていますし,フレームレートも確実に良くなっています。
「モンスターハンターワイルズ」オープンβテストでPCとコンシューマ機のフレームレートを計測。やはりウルトラ設定はかなり重かった
カプコンが2025年2月28日の発売を予定している「モンスターハンターワイルズ」。クロスプレイが実現し,機種を選ばず遊べるが,それでも機種ごとのプレイフィールやグラフィックスは気になるというもの。今回はオープンβテストを活用して,PCとコンシューマ機のフレームレートを計測してみた。
――攻撃をヒットさせた際の感触も,オープンβテスト版から変わっていますよね。
徳田氏:
オープンβテストでは,そもそも設定が漏れている部分もありましたし,ヒットストップやSEが意図通りに動いていなかったところもありました。今回試遊していただいたバージョンでもこうした設定が入っている部分とそうでない部分が混在しています。現状はまだまだ開発中の段階で,武器種ごとに進捗状況も異なるんですが,発売までしっかりと手を入れていきます。
辻本氏:
オープンβテストのものが最終形ではありませんし,開発チームは皆様のお声をすべて見ており,手を入れるべき部分はしっかりピックアップしています。
――蜘蛛系モンスターの外見を変更できる「蜘蛛恐怖症対策モード」も話題となりましたが,実装の経緯について聞かせていただけますか。
藤岡氏:
ワイルズはグラフィックスが向上したことにより,鮮明な状態の虫の群れが作れましたし,虫らしさもよく表現できました。ただ,蜘蛛を苦手とするプレイヤーもいるのは確かで,それが原因で手に取っていただけないのであればすごく残念です。
大型モンスターのデザインを変えるのは遊びそのものに関わってくるので難しいのですが,群れを成す小型の蜘蛛系モンスターは表現を変えてもいいのではないだろうかということになったのです。スライム状になったのは,いろんな形に対応でき,嫌悪感を感じないような表現を考えていったからです。
――プレイヤーが一番気になっているのは「オープンβテストを経て,ゲームがどのように進化していくか」だと思います。メッセージをお願いします。
徳田氏:
オープンβテストでいただいたご意見はすべて確認していまして,手を入れるべきところはしっかりと手を入れていきます。オープンβテストで体験していただいたのはゲームのほんの一部分です。モンスターハンターらしさを維持しつつ,さらに深くなったゲーム体験を楽しめるよう挑戦していますので,楽しみにしていてください。
藤岡氏:
オープンβテストではあまりきれいに見えないところがあったり,一部にバグが残っていたりもしてしまいました。こうした部分は開発チームでも把握しています。皆さんに楽しんでいただけるように頑張っていますので,発売を楽しみにお待ちください。
辻本氏:
オープンβテストには技術検証的な部分もありましたが,思った以上にご意見をたくさんいただくことができました。発売に向けてやらなければならない部分も見えてきましたので,しっかりと手を入れていきます。どのような部分を改善したかは,お伝えする機会を設けます。どんな形で発表するかは未定ですが,中途半端な形でやるのはよくないため,少しお待ちいただければと思います。
――本日はありがとうございました。
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