プレイレポート
インディーゲームコーナーで「ミニチュア」をプレイ。子供の頃のような,想像力が暴走してしまう感覚が思い出せるアドベンチャーだ[TGS2024]
Other Tales Interactiveは2019年に「チックタック:二人のための物語」(Tick Tock: A Tale for Two)を送り出したデンマークのデベロッパ兼パブリッシャだ。前作は2人で遊ぶアドベンチャーの先駆け的な作品でもあり,世界はもちろん,日本でもそこそこヒットしている作品だったりする。
「ミニチュア」は画面に映るものをクリックして進めていく,パズル要素のあるアドベンチャーなのだが,その独特なビジュアル表現と演出により,得も言われぬ物語体験が生まれている。
ゲームをスタートするために最初の謎を1つ解くと,机の上に仕切りのついた箱が置かれていることに気づく。そこにしまわれていたドライバーやトカゲのおもちゃを手に取れば(クリックすれば),そこから展開が大きく動いていく。
例えば,こんな展開である。
画面には,いくつかの手がネジやナットをより分けている場面が映る。大きな手には結婚指輪が腕時計がはめられており,小さな手には絆創膏が。親子が工作かなにかをしているようだ。
しかし,これがなかなか捗らない様子。ネジを回すうちに板にヒビが入ったり,取っ手のような部品を取り合っている間に部品が壊れたりする。どうもその場には大人2人,子ども2人がいるようだが,家族だろうか?
それにしても,大人たちは少し大人げない。組み立て説明書らしきものを交互に自分の前に引き寄せては,子どもに食い違った指示を出している。大人であれば,まあご家庭でよくある微笑ましい一場面とも受け取れるのだが……。そんな中で何かモヤモヤとした「闇のようなもの」が育ち始める。
それでもなんとか,引き出しや扉の付いた歪んだ家具のような箱(?) ができあがるのだが,いつしかこの箱の中から「闇のようなもの」が溢れ始める。テープを貼ってフタが開かないようにしたり,緩んでしまうネジを締め直したりして,ケンカ気味だった両親? も力を合わせて闇を箱の中に押しとどめようとするのだが……。
あるいは,こんな展開もある。
広い家の中にエミールという名の少年が1人り。
両親はまだ帰ってきていないらしく,彼(プレイヤー)は手持ちぶさたな様子でテレビのチャンネルを変えたり,食卓に座ったり,人工衛星を操作するゲームを遊んだり,水道の蛇口をひねったりしている。
そうこうするうちに,家の中には新しい扉が現れ,庭のような場所に出られるようになった。
庭で植え込みの影に隠れているカタツムリを探したり,水面に映る自分の顔を見たりするエミール。
そんな彼は,以前にパルダリウム(熱帯雨林を再現した水槽)を父親と一緒に作っていた。そこでヒューゴというトカゲを飼っていて,エミールは庭でカタツムリを集めてはヒューゴのエサにしていたようだ。
そうやって家の中をウロウロしていると,いつしか部屋の中に植物が増えていく。
ここは家の中だっけ? それともパルダリウムの中だった? そういえば,ヒューゴはどこに行ったんだろう……。
と言った具合に,なんとも非現実的で,でもどこか懐かしい気持ちになる展開が続いていく。作中でははっきりしたことは何も語られないが,ここまで書いてきたように,場面がプレイヤーの中で勝手につながり,物語が生まれていく。どうも人間というのは,与えられた情報から自分勝手に物語を生み出してしまうものらしい。
本作はSteamでデモ版をプレイ可能だが,TGS 2024の会場でプレイできるバージョンでは,新たにトカゲに関係するシークエンスに触れられる。
そしてリリース後は,ゲーム冒頭の箱の中に4つの品が並ぶという。それらの4つの物語はやはり関連したものになるのだろうか。いや,結局のところはプレイヤーの解釈次第ということになるのだろう。
2024年11月15日のリリースを目指して開発が進められているそうなので,まずは会場,もしくはSteam版で触れてみて,結末が気になったらリリースを待って本編も遊んでみよう。
4Gamer「TGS 2024」関連記事まとめ
- 関連タイトル:
ミニチュア
- この記事のURL: