KDDIは,2013年1月24日,新型Androidスマートフォン「
INFOBAR A02」を発表した。
INFOBAR A02は,独特かつ意欲的なハードウェアデザインとソフトウェアデザインで定評ある,INFOBARシリーズの最新機種。2003年の登場後,2007年まではフィーチャーフォンとして展開され,2011年の「INFOBAR A01」からスマートフォン化し,2012年にも「INFOBAR C01」が登場するなど,長く支持されてきたシリーズに,2013年モデルが登場してきたわけだ。
INFOBAR A02。3モデル用意されている
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型番でいくと,INFOBAR A02はINFOBAR A01の後継にあたる製品。INFOBAR A01およびC01はシャープ製端末だったが,今回は
HTC製の端末だ。上の写真でも分かるように,テンキーのない,一般的なスマートフォン風な外観となっている(※INFOBAR C01はテンキーを搭載し,フィーチャーフォンとスマートフォンの中間的なデザインになっていた)。
今回,報道関係者向けに都内で開催された発表会ではタッチ&トライコーナーが併設されていたため,こってりと弄ってきたので,その結果を中心に,2月中旬発売予定とされるINFOBAR A02を紹介していきたい。
ラインナップは「NISHIKIGOI」「ICE GRAY」「AOAO」の3つ。1製品あたり,基調色が3色という,INFOBARシリーズ伝統のものとなっている
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「iidaな見た目」のINFOBAR A02
本体正面。バックキーとホームキー,メニューはオンスクリーンになっている
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さて,冒頭でも述べたとおり,INFOBAR A02の外観は一般的なスマートフォン然としている。側面にスイッチが用意され,背面はフラット,といった具合だ。
ただ,色合いや細部のデザインからは,INFOBARシリーズで一貫して採用されてきた「iida」デザイン端末としてのこだわりを感じる。フルフラットながら,4つの側面は半円を描くように丸みを帯びており,握ったとき手に馴染むようになっているのは,iPhoneやXperiaといった“とんがり系”端末とはまた別の形で所有感をくすぐられるものになっていると述べていいだろう。
本体サイズは約70(W)×9.7(D)×138(H)mmで,重量は約147g。その本体頂部には電源/スリープボタン,本体左側面にはボリュームボタンが用意されるのだが,それとは別にもう1つ,独自の「
ファンクションボタン」を持つというのが,INFOBAR A02における大きな特徴となっている。
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本体頂部(左)と底部(右)。頂部には電源/スリープボタンと3.5mmミニピン対応のヘッドセット(ヘッドフォン)端子がある。底部の写真下側中央で横に伸びる溝の部分は,裏蓋やUSB Micro-B端子用キャップを開くときの“指かかり”以外にも,スピーカーとストラップホールとを兼ねている。写真左に見える穴はマイク部分だ |
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本体左側面(左)と右側面(右)。左側面にはボリュームボタンとファンクションボタンが並ぶ。右側面には接点が見えるが,これは専用クレードルとの接続用だ |
本体背面はとてもシンプル。800万画素アウトカメラとLEDフラッシュ,ノイズキャンセリング用のセカンドマイクがあるのみだ
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ボリュームボタンの下に用意されるこのファンクションボタンは,後述する独自のリスト式ランチャー「
List View」の呼び出しボタンや,カメラのシャッターボタン,人差し指や親指で押しやすいもう1つの電源/スリープボタンなどとして機能する。基本的には,実行中のアプリに応じて,自動的に機能が切り替わる仕掛け。ファンクションボタンの機能は,店頭での動作チェックにおける重点要素となりそうだ。
左の写真で右端に見えるボタンがファンクションボタン。この配置はほどよい感じで,本体を左手でホールドしたとき,親指でラクに押せる場所となっている
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四辺を走るフレームはアルミ製でアンテナを兼ねている。パッ見だと,アンテナだとは分からない
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ハードウェアデザイン面での見どころは,アルミ製のフレーム部がアンテナとなっており,本体正面から見て右上の逆L字部分がワンセグアンテナ,左下のL字部分がメインアンテナになっていることだろうか。iPhoneと同じ路線というわけだが,デザインがデザインなので,「iPhoneぽさ」はうまく回避できている印象だ。
USB Micro-B端子のキャップを開いたところ(左)。右は本体背面のカバーを開いたところだ。防水&防塵仕様ということもあって,背面カバーは開きにくい。展示機のバッテリーにスペックシールは貼られていなかったが,製品仕様上,容量は2100mAhだ
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液晶パネルは視野角,発色ともに良好。色味としてはやや青に傾いていた
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搭載する液晶パネルのサイズは4.7インチ。「CG-Silicon液晶」を搭載とされているので,シャープ製の「CGSilicon」液晶パネルを採用している可能性が高い。解像度は720×1280ドットだ。
搭載するSoC(System-on-a-Chip)はQualcomm製の「
Snapdragon S4 Pro APQ8064」。最大1.5GHz動作のCPUコア「Krait」を4基と,「Adreno 320」GPUを搭載するもので,これは,
NTTドコモの2013年春モデルにおけるハイエンド製品と同じということになる。
メインメモリ容量は1GBで,最近のハイエンド端末としてはやや少なめ。パネル解像度が720×1280ドットなので1GBでも問題ないということなのかもしれないが,ハードウェアスペック向上の激しいスマートフォンのなかにあっては,やや不安がないでもない。
内蔵ストレージは容量16GBで,別途,microSDHCカードによって最大32GBを追加可能。そのほか,おサイフケータイ,NFC,赤外線,テザリング,防水(IPX5/IPX7),防塵(IP5X),ワンセグといった機能はひととおり用意されており,いわゆる全部入り端末とまとめることができそうだ。
ぺしぺしIkinaのテスト結果。93〜96回に到達する速度で連射して,66タッチに終わった。飽和からの復帰が遅いのも気になる
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連打測定アプリ「ぺしぺしIkina」でのチェック結果は,制限時間内に66タッチと,やや残念なスコアになった。開発機なので,最終製品と同じではないかもしれないが,7タッチめでタッチを一瞬受け付けなくなる飽和が起こり,そのあとも7〜9タッチごとに飽和が発生したほか,飽和からの復帰もやや遅めだったのは気になるところである。メールやSNSといった文字目的のキー入力ならば問題ないが,連打を要するゲームに対してはやや非力といわざるを得ない。製品版で向上していればいいのだが……。
なお連射は,制限時間内に93〜96回へ到達する速度で行っている。
自己主張のできるiida UI
iida UI。2×2や4×4といったパネルを組みあわせて,自分専用にカスタマイズできる。ローカル/クラウドの写真アルバムだけでなく,SNSのフィードや音楽(※プレイリストにも対応)なども配置可能だ
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さて,INFOBAR A02を象徴するのは,外見だけではない。従来製品から引き続いて,インタフェースデザイナーである中村勇吾氏が手がけた新しい「iida UI」は,Androidのリファレンスとは似ても似つかないものになっている。TwitterなどのSNSや連絡先,クラウド・ローカルの写真,アプリなどを縦に並べていく,パネル型のUIだ。
……と書くと,「Windows Phone風?」と思うかもしれないが,まったく別のものだ。実際に直撮りムービーを用意してみたので,独特の“動き”を感じてみてほしい。
シンプルなリスト形式となるList View。よく使うものはiida UIから,ときどき使うものはList Viewからが便利そうだ
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上下に大きくスクロールするホームUIだと,検索性に難が生じてしまいがちだが,その点INFOBAR A02では,ファンクションボタンの押下,もしくはiida UI上での右フリックから,「List View」というUIに切り替えられる。iida UIが直感重視とするなら,List Viewは操作性重視のリストUIといったところか。
正直に言うと,INFOBAR A02の使い始めから3分くらいは筆者の頭上に大きな「?」マークが浮かんでいたのだが,iida UIとList Viewの構造を把握すると,俄然,スムーズに操作できるようになってきた。なんとなく「使いこなしているぞ」感も得られたので,すでにスマートフォンを使っている人が,楽しみながら乗り換えていけるよう,配慮されているのだと思われる。
iida UI上のアイコンは自由に移動可能で,かつサイズも可変。優先度が高いものを最上段に配置するような使い方を意識しているようだ。
発表会で登壇したプロダクトデザイナーの深澤直人氏は,「(かつて)『本棚がその人を表す』と言われたが,現在では本棚に代わってSNSやクラウドサービスがその役割を果たしている」と述べていたので,氏としては,「どういった情報を活用しているのか」をiida UIで示し,自己主張してほしいということなのだろう。
またINFOBAR A02では,ガムランボール(※バリ島に伝わる真鍮製の丸い楽器)の音色にヒントを得たという6つの異なる音色が,iida UI上のパネルに割り振られているのも特徴となる。サウンドが再生されるタイミングはパネルの移動時で,パネルを移動させると,パネル同士が触れあっているのが音で分かるというわけである。
深澤氏は,「音と動きと全体の塊が1つの世界になっている」と,楽しそうに話していた。INFOBAR A02では,深澤氏と中村氏が協力し,ハードウェアとUIを「合わせる」ようにデザインしたのだそうだが,その一端が,この「UIと音」に表れているといえそうだ。
KDDIの新モデル一斉発表会は別途?
KDDI代表取締役社長の田中孝司氏。妙にいい笑顔を連発していた
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NTTドコモの2013年春モデル発表会直後となるKDDIの発表会だったので,春モデルがズラりと並ぶと思った読者は多いのではないかと思うが,サプライズもなく,発表会で公開されたのはINFOBAR A02だけだった。
KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏はこの点について,「(KDDIの謳う)『選べる自由』は,本当に実現できたのか」と自問したうえで,「次に欲しいもの,もっと先のもの」の1つとして,まずはINFOBAR A02のみを発表したと述べ,春のうちに複数の新モデルを投入する可能性を示唆していた。auユーザーはそちらにも期待しておくとよさそうだ。
田中氏を挟んで左が深澤直人氏,右が中村勇吾氏
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ともあれ,INFOBAR A02は,個性的な見た目と個性的な操作性を追求したい人なら,注目の1台とまとめられそうである。展示機を見る限り,ゲーム用途だと100%の信頼性を与えられるわけではないので,現状で判断するなら,ソーシャルゲームやカジュアルゲーム向けといったところだろうか。
夜が明けて1月25日から,KDDIデザイニイングスタジオおよびau NAGOYAでの展示を開始するとのことなので,発売前にタッチしたい人は訪れてみるといいだろう。
最後にカメラもチェックしておこう。左は800万画素アウトカメラの撮影結果だ。環境光は暖色系で,肉眼視の色合いに近いホワイトバランスになった。F値は2.0。格子状部分の描写を見るにゆがみも少なめである。晴天下で撮影してみたかった。右は210万画素インカメラの結果で,F値は2.0。発色傾向はアウトカメラと似ているが,金髪の色とびで確認できるように,ダイナミックレンジの幅はやや狭い。ただ赤色(マフラー)の飽和がそれほど激しくないため,インカメラとしては上々ともいえる
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