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英バンド「ザ・スミス」のモリッシーが主人公のコモドール64向けアドベンチャーゲームが登場。ソロデビューのため,失った楽譜を捜し出せ
「……ザ・スミスのゲームがコモドール64向けに?」と,知らないうちに1980年代にタイムリープしたのかと思った人もいるかもしれないが,間違いなく2023年の出来事である。
本作の配信ページ(リンク)の紹介文を見ると,モリッシー氏がザ・スミス解散を経てソロアーティストとして活動を始めた1987年のイギリスを舞台としたゲームとのこと。プレイヤーはMozことSteven Patrick Morrissey――つまりモリッシーその人となり,各地を探索したり周囲の関係者に聞き込みをしたりしながら,紛失したというソロ・デビュー曲(氏の代表曲の1つである「Suedehead」)の楽譜を見つけ出し,レコーディングに向かうという話を追うことになる。
関係者として登場するのは,マネージャーのゲイル・コクソン(Gail Colson)氏やレコーディングに参加したドラマーのアンドリュー・パレシ(Andrew Paresi)氏とギタリストのヴィニ・ライリー(Vini Reilly)氏といったモリッシー氏のソロキャリアスタート時に関わる人物たちだ。
ザ・スミスのレコードパブリッシャであるラフ・トレード・レコード(Rough Trade Records)の創始者ジェフ・トラヴィス(Geoff Travis)氏,ザ・スミスとの仕事や本作で描かれるモリッシーのソロデビュー作(アルバム「Viva Hate」)でプロデューサーとしてその名を揚げることなるスティーヴン・ストリート(Stephen Street)氏という,インディーカルチャーを語るうえで欠かせない2人も“当然”登場する。
「……そもそもザ・スミスってなに?」というところを簡単に説明すると,ザ・スミスは1982年にマンチェスターで結成されたインディーバンドである。その楽曲や歌詞,そしてバンドの姿勢(アティチュード)で,5年ほどの活動ながら,音楽シーンのみならず,のちのインディー/オルタナティヴ・カルチャーに大きな影響を与えた。
とくにフロントマンのモリッシー氏,ギタリストのジョニー・マー(Johnny Marr)氏の活動は顕著で,モリッシー氏は当時から変わらぬ孤高のアーティストとして(+皮肉屋・偏屈ぶりで),現在も(政治的スタンスや発言で昔からのファンを複雑な気持ちにさせながら)楽曲制作にライブと精力的に活動している。
ゲームで言えば,須田剛一氏および氏が代表を務めるグラスホッパー・マニファクチュア(GhM)の作品中に,それらをモチーフとしたものがさまざまな形で登場することを知る人は少なくないだろう。
分かりやすいところだと,登場人物の名前で,「シルバー事件」(シルバー2425)のコダイスミオや「花と太陽と雨と」のモンドスミオ,“けっこうまんま”なところだと「Killer 7」のスミス姓を持つ主要キャラクターたち(スミス同盟)がいる。さらにさかのぼれば,須田氏がGhMを立ち上げる前に初めてゲームのシナリオを担当した“アーリーGhMゲー”である「スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL」内のストーリーモード「チャンピオンロード」の主人公の名前が純須杜夫(すみすもりお),つまり“スミス+モリッシー”な名前だ(関連記事)。
もっと言えば,「ノーモア★ヒーローズ」シリーズ作品の1つ「Travis Strikes Again: No More Heroes」は,ザ・スミスの代表曲の1つ「Bigmouth Strikes Again」を思い起こさせる。
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開発者のメッセージによると,モリッシー氏のソロデビュー曲である「Suedehead」のリリース35周年を記念して企画されたものとのこと。
どの程度ザ・スミスの元メンバーが知っているか不明であり,「“主役”のモリッシーはどう思ってるのだろう」「ジョニー・マーとマイク・ジョイス (Mike Joyce)は?」(そして「R.I.P.偉大なベーシスト,アンディ・ルーク(Andy Rourke)」)とも思うが,Amiga Store.EU(リンク)ではパッケージ版も販売されており,日本からも購入可能だ。
なお,ゲーム内やパッケージで使用されているビジュアルは,ザ・スミスをはじめとしたマンチェスターのバンドやポストパンク期のアーティストの写真で知られるフォトグラファーのスティーブン・ライト(Stephen Wright)氏の写真が使用されており,サイトにもその名がクレジットされている。
いろいろと経緯に不明なところがある作品だが……個人的な話になるが,世の中にうまく馴染めなかった中学生時代に,ザ・スミスとモリッシー氏の作品に“救われて”以来のファン(世の中には未だ馴染めていないが)としては,これは触れずにはいられない。そして,偏屈で皮肉屋のモリッシーが,コマンドに従ってゲームが進行するのかどうかも気になるところだ。
コモドール64向けのゲームに加え,対応言語が英語,スペイン語,カタルーニャ語というところでもプレイするハードルが高い。だがしかし,あまりゲーム映えしない(?)バンドがこのようにゲームになることも珍しく,(ゲームを含む)インディーカルチャー好きなら,サイトをチェックしてみるといいだろう。
「The Smiths Are Dead」の配信ページ
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