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イベント
「RTA in Japan Summer 2023」最終日レポート&走者ミニインタビュー。完走後の走者達に聞く,RTAの魅力とは
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6日間で90作以上のゲームタイトルによるRTA(Real Time Attack)が披露され,会場となった東京・四ッ谷のnote placeに集まった観客達,そして配信を通して全世界のゲームファンを楽しませた同イベントから,最終日となった15日の現地の模様をレポートする。
また「ファイナルファンタジーVI」「ときめきメモリアル〜forever with you〜」「スーパーマリオ64」の各部門では,完走後の走者へのミニインタビューも掲載しているので,YouTubeで公開されているアーカイブと合わせ,ご一読いただきたい。きっとその狂気(?)の一端が,感じ取れるはずだ。
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凄腕のプレイヤーが集うRTAの祭典「RTA in Japan Summer 2023」が開幕。運営チームにその意義や展望を聞いてみた
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ゲームのクリア時間を競うRTAイベント「RTA in Japan Summer 2023」が,2023年8月10日に開幕した。今年も約100のゲームタイトルが選定され,腕に覚えのあるRTA走者達がそのやり込みを披露している。本稿ではその初日の現地レポートをお届けしよう。
最終日を迎えた「RTA in Japan SUMMER 2023」を振り返る。直接寄付だけで860万円が集まり,今冬の開催も決定
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2023年8月10日より開催されていたチャリティイベント「RTA in Japan SUMMER 2023」が,本日(8月15日)をもって最終日を迎えた。今回は直接寄付だけで860万円が集まったとのことだ。
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- 編集部:早苗月 ハンバーグ食べ男
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「RTA in Japan Summer 2023」公式サイト
「RTA in Japan Summer 2023」各部門アーカイブ
「ファイナルファンタジーVI」部門
スーパーファミコンでは最後のファイナルファンタジーとなった本作のRTAは,「Any% Sketch」というレギュレーションで行われた。作中の登場キャラクター,リルム・アローニィの専用コマンド「スケッチ」を特定条件下で失敗させることで発生するさまざまなバグ――通称スケッチバグを利用してゲームのクリアを目指すというものだ。
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走者であるToru氏は,「さいきょう」コマンドを用いた強制装備によるキャラクターの強化や,乱数調整による「ジョーカーデス」の発動といった,さまざまなテクニックを駆使しながら快走。リルムが仲間になってからは崩壊後の世界にワープしたり,グラフィックスが崩れた中で強敵を瞬殺したりと,スケッチが引き起こす怪異が世界を蹂躙し,3時間39分17秒で完走を果たした。
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「ファイナルファンタジーVI」走者インタビュー
4Gamer:
完走お疲れ様でした。今のお気持ちを聞かせてください。
Toru氏:
無事にエンディングまで走り抜けられてホッとしています。スケッチバグの性質上,セットアップがうまくいかなかったり,バグ自体がうまく発動しなかったりといったことが起こりえます。なので,それらをケアしながら慎重に進めて行きました。おかげでスケッチバグ自体にはミスもなく,進められました。
4Gamer:
今回,一番大変だったのはどこでしたか。
Toru氏:
ゲーム開始,ウィンドウを「Demon Chocobo(デーモンチョコボ)」※にしながら解説もするのが難しくて。解説もプレイもちょっと中途半端になってしまいました。
※Demon Chocobo…… ウィンドウの背景をチョコボにし,カラーを調整するとDemon(悪魔)のような姿のチョコボが浮かび上がる……という海外RTAでお馴染みのネタ。今回は寄付が目標額を達成したことへの返礼として披露された。
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4Gamer:
スケッチバグによるRTAには,どのくらい取り組まれているのでしょうか。
Toru氏:
5〜6年前から取り組んでいます。元は海外で発見されたテクニックなので,海外の皆さんと交流しつつ,チャートを完成させました。
4Gamer:
このレギュレーションの面白さは,どういった部分にあるとお考えですか。
Toru氏:
ゲームの主要なイベントをこなしつつも,バグを駆使できる楽しさ。そして終盤の見た目の迫力が魅力だと思います。
4Gamer:
これからRTAに挑戦しようと思う人に向けたメッセージをお願いします。
Toru氏:
月日を重ねたことでバグが発見されていき,さらなるタイム短縮が可能になるのが「ファイナルファンタジーVI」のRTAの面白いところです。複雑な内容だけに,実践しようと思うと色々な疑問が出てくると思いますが,先達に聞いてぜひ挑戦してみてください。
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「ときめきメモリアル〜forever with you〜」部門
PS版を用いた本作の今回のレギュレーションは,「藤崎詩織エンド 目隠し」という,なかなか衝撃的なもの。最難関ヒロインとされる藤崎詩織を,目隠しした状態で攻略するという離れ業だ。
画面が見えないので,自分がどのコマンドを選んでいるかはもちろん,今が何月何日何曜日であるかも確認できない。カーソルを動かした回数,SE,キャラクターの声,BGM,そしてこれまでのプレイ経験から判断して操作するしかない。
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過酷な条件にもかかわらず,Kazupoon氏のプレイは極めて正確だった。パラメータの変動や日付・曜日を正確に把握しているようで,とても目隠しとは思えない。Kazupoon氏は本レギュレーションを走るため,本作で扱われている1995年〜1998年のカレンダーを暗記しているのだとか。そもそもKazupoon氏が生まれる以前のことなので,この知識はまさに本作のみを目的に蓄えたものと言える。
またタイムを縮めるために本体にメモリーカードを差し込まない状態からスタートし,ゲームを進めてから手探りでメモリーカードを差し込むという技も披露された。RTA走者,恐るべし。
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今回はKazupoon氏がプレイしながら解説も行ったが「連休がハメ技を決めてくる(祝祭日が入ると平日と休日のリズムが変わるため)」「ノイローゼを維持しないといけない(不要なパラメータを上げすぎないため)」「今年もクリぼっちになることでタイム短縮ができる」など,次々と名言が飛び出し,会場は爆笑の渦に包まれた。
結果,1時間57秒のタイムで完走し,予定されていた1時間10分を大幅に上回る記録を打ち立てる結果となった。
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「ときめきメモリアル〜forever with you〜」走者インタビュー
4Gamer:
まずは完走された今の感想をお願いします。
Kazupoon氏:
大きなミスもなかったので安心しています。この日のために,すごく練習しましたから。
4Gamer:
どのくらい練習されたのでしょうか。
Kazupoon氏:
種目として採用されることが発表されてから,毎日1回は最後まで走るようにしました。記録を狙うというよりは,通して走ることを重視していたんです。
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4Gamer:
このレギュレーションで走ろうと思ったきっかけは,何だったんでしょうか。
Kazupoon氏:
「RTA in Japan」で行われた「スーパーマリオ64」の目隠しRTAを見たのがきっかけです。もともと自分が「ときメモ」のRTAを走っていたので,目隠しと「ときメモ」を組み合わせたワケです。このレギュレーションで走っているのは自分だけだと思います。
4Gamer:
チャートの開発や,精度を上げていく上での苦労はありましたか。
Kazupoon氏:
プレイ中は自分で何をしているか確認できないので,録画を後から見返すんですが,これが大変でした。画面ではなく,当時のカレンダーを見ながらの練習もしましたね。
4Gamer:
これからRTAを走ろうと思う人へのメッセージと,今後の抱負をお願いします。
Kazupoon氏:
自分は「RTA in Japan」を見てRTAを走るようになったので,皆さんも自分の好きなゲームで始めてみてください。抱負としては,目隠しに加えて音を聞かない状態でのRTAを,いつか実現できればと思っています。
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「スーパーマリオ64」部門
「RTA in Japan Summer 2023 」のトリを飾った「スーパーマリオ64」のレギュレーションは「70枚RTA」だ。ステージ各所に隠された「パワースター」を70枚集めて,クッパを倒すまでのタイムが競われる。
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今回はkanno氏(日本4位・世界8位), いこりお氏(日本1位・世界2位),Goldrush氏(日本5位・世界13位),parsee氏(日本2位・世界3位)が併走※。kanno氏とparsee氏は会場から,いこりお選手とGoldrush氏はオンラインでの参加となった。全員がこつこつと腕を磨き続ける職人タイプのプレイヤーとのことだが,今回はkanno氏の尽力によりイベントでの併走が実現したそうだ。
※順番は「RTA in Japan」公式サイトに準拠。
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走者の4人は,タイムを短縮するさまざまなテクニックを駆使し,流れるようなプレイで次々とスターを集めていく。筆者としては,自分がプレイしたときの四苦八苦を思い出し,あまりの違いに驚くばかりである。中でもparsee氏は,クッパを効率よく投げるために持参した「ホリパッドミニ64」を,クッパ戦で素早く差し替えるテクニックを披露し,道具にこだわるRTAらしい工夫も見てとれた。
こうして多数の観客が見守るなか,4人の走者はいずれも完走。いこりお氏は47分7秒,Goldrush氏は47分46秒,parsee氏は48分58秒,kanno氏は51分42秒という記録を達成し,今回の挑戦は幕を閉じた。
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「スーパーマリオ64」走者インタビュー
4Gamer:
お疲れ様でした。まずは完走された感想をお願いします。
kanno氏:
皆さんが素晴らしい走りを見せてくれて,「スーパーマリオ64」の素晴らしさやカッコ良さが伝わったんじゃないかと思っています。
parsee氏:
オフラインイベントは初めてだったので,普段はしないようなミスをしてしまいました。ただ「ここだけは見せたい」という部分はちゃんと披露できたので満足しています。
4Gamer:
今回の走りで,一番苦労したのはどこでしょうか。
kanno氏:
普段はリセットをよく使うので,最初から最後まで通して走ることの難しさを痛感しました。練習方法を改めないと……という気付きがありましたね。
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parsee氏:
たくさんの人が見ているなかでの一発通しなので,緊張しました。自分も普段はリセット多めで,それなら攻めた動きもできるんですが,今回はそうも行きません。なので,リセットなしで最後まで走りきれる動きを練習してきました。
kanno氏:
parseeさんは,普段とはまったく違うこの環境で48分台を出しているんだから,本当にすごいと思います。世界3位の地力が出たんじゃないでしょうか。
4Gamer:
今回のイベントのために合同練習をしたそうですが,何か面白いエピソードはありますか?
kanno氏:
あまり併走をしないプレイヤーが集まったので,新鮮でしたね。「スーパーマリオ64」のオタクトークで盛り上がって,お互いの知識を共有できたのが楽しかったです。中でもparsee選手は技を安定させるための独自理論を持っていたので,皆の刺激になったんじゃないでしょうか。
parsee氏:
話しながら皆で一緒にプレイできたのが楽しかったですね。
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kanno氏:
得られた知識は,今後皆に共有されていくでしょうし,界隈がさらに盛りあがるきっかになるんじゃないかと。企画して良かったですね。
4Gamer:
「スーパーマリオ64」のRTAに,これから挑戦しようという人に向けて,何かメッセージをいただけますか。
kanno氏:
あまり気負いすぎず,自分のペースでステップアップしていって欲しいですね。今はSwitchでも「スーパーマリオ64」が遊べるので,楽しんでプレイしている人も多いですので。
parsee氏:
自分もほかの人が走っているのを見て,「楽しそうだから,やってみようか」と思ったのが最初のきっかけでした。なので当初は走るというより,通常のプレイの中でRTAの技を真似して楽しんでいた感じだったんです。だから,まず簡単な技を真似するところから初めて,自分のやり方でゲームを楽しんでもらうのがいいと思います。
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大きな盛り上がりの内に幕を閉じた「RTA in Japan SUMMER 2023」。最後には「RTA in Japan Winter 2023」の告知も行われ,日程は未定ながら次回開催の決定が明らかとなっている。詳細は今後,X(旧Twitter)の公式アカウントで発表されるとのことなので,続報を楽しみにしておこう。
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「RTA in Japan Summer 2023」公式サイト
「RTA in Japan Summer 2023」各部門アーカイブ
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