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[CEDEC 2017]観客のための画面を作り,e-Sportsを分かりやすく。セガ独自の「ゲーム大会実況システム」とは
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印刷2017/09/05 17:48

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[CEDEC 2017]観客のための画面を作り,e-Sportsを分かりやすく。セガ独自の「ゲーム大会実況システム」とは

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 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2017」の2日めにあたる2017年8月31日,セガ・インタラクティブ 第一研究開発本部の野口洋介氏と,チーフプログラマの山本宗平氏が,同社独自の「ゲーム大会実況システム」について語るセッション「これからのeSportsへの取り組み 〜大会実況システムの開発と運用を通して得られた知見〜」が行われた。本稿でその模様をレポートしよう。

セガ・インタラクティブ 第一研究開発本部の野口洋介氏(左)と,チーフプログラマの山本宗平氏(右)
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ゲームと選手のメンタル,2つのデータから「観戦する人のための画面」を作る


 セガは,e-Sportsという言葉が現在のような認知度を得る前から,さまざまなゲーム大会を開催してきた。しかし,大会はトッププレイヤーが集まるためコア化し,ある程度の知識がないと楽しめないという問題があったという。

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 野口氏はその原因の1つとして「開発者がプレイヤーに向けた画面(ゲーム画面)しか作ってこなかった」ことを挙げた。つまり,ゲーム画面をそのまま大会で流しても,そこで何が行われているかは,予備知識を持つ人にしか分からない。
 以前はそれでも良かったが,ゲーム大会が「e-Sports」として一般化しつつある現在,観戦者にも配慮する必要が出てきたわけだ。

 そういった事情から,「ゲーム大会実況システム」の開発がスタートした。一部のPCゲームは観戦モードを実装しているが,それらが個人利用を主眼としているのに対し,「ゲーム大会実況システム」では,多くの人が観戦するゲーム大会に特化した画面作りが志向された。
 大会の実況を分かりやすくできれば,新たな層を取り込むことができ,結果としてタイトルの長期的な成長も視野に入るため,その役割は大きなものがある。

 観戦者用の画面を考えるうえで,ヒントになったのは放送の分野,中でもスポーツ中継や証券取引,選挙報道だったという。こうした番組では打率やポジション,得票率といった情報をグラフや表とし,放送画面に挿入する(On Air Graphics)ことで分かりやすくしているが,この手法をゲーム大会実況に応用することとなった。視聴率争いが激しい世界で洗練されてきただけに,効果は実証済みというわけだ。

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 「ゲーム大会実況システム」では,ゲーム側からさまざまなデータを抽出して,その場でOn Air Graphicsを生成し,実況画面と合成できる。

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 各種機材との連動も可能だ。例えば照明の場合,赤チームが勝つと赤色に光るなど,ゲーム状況と連動した演出が自動で行える。また,会場の中継カメラをリモート制御することも可能で,選手のプレイ光景を映す画面上で,ピックアップしたい選手をタッチするとその手元がアップになるといった機能もある。実況の対象となる筐体が多数の場合も,1台のカメラですべてフォローできるというから,設営の手間やコストを削減する意味でも,メリットは大きい。

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画面上のタグをタッチする(左)と,その筐体がクローズアップされる(右)
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 選手に生体センサーを装着してもらい,心拍をグラフ化して実況画面にオーバーラップさせるという取り組みも好評を博している。つまり,生身の人間同士が対戦する際のプレッシャーや,その影響を可視化しているのだ。

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 e-Sports好きなら分かると思うが,舞台が大きいほど,本命の選手がミスしたり,思わぬ選手が大活躍したりといった番狂わせが起こりやすくなる。プレッシャーは選手の力を引き出すこともあれば,逆に萎縮させることもあるのだ。「ゲーム大会実況システム」は,こういったe-Sportsならではのドラマも,より分かりやすい形で演出できる。


試合ログから筐体の撮影まで,ゲームに合わせて柔軟に対応


 続いて「ゲーム大会実況システム」の運用例などが説明された。システムは「ゲーム機」「実況コントロールPC」「CG合成機」「バイタルコントローラ」「照明などの設備」から構成されており,それぞれの機器は有線接続されている。
 無線のほうが設営に手間が掛からず,自由度も高くなるはずだが,「リハーサルでは無線で問題なく動作していたものの,会場に観客が入ると不調になった」というケースに遭遇した経験から,できるだけ有線で接続するようにしているという。

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 舞台裏の「実況コントロールPC」にはブラウザベースのユーザーインタフェースが用意されており,ゲーム機から得たデータで作ったOn Air Graphicsを画面に合成したり,場面転換などのコマンドを出したりできる。また,解説者にはタブレットが渡されており,ここから実況画面を操作することも可能だ。
 また,全てのゲームを画一的に扱うのではなく,以下のように,タイトルの特性に合わせたさまざまな手法が用いられている。

●「コード・オブ・ジョーカー」
 実況画面のカードをクリックすれば能力などの情報が表示されるほか,選手の行動をログで辿ることができる。

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●「戦国大戦」
 筐体上でカードを動かすハンドスキルが重要なゲームなので,「ゲーム大会実況システム」では筐体をカメラで撮影し,映像の歪みを補正しつつ,筐体の情報をもとにカードの絵をリアルタイム合成している。
 試合終了後は,通常のプレイでは見られないデータを出したり,ゲージで表現されているところを数値で明示したりして,試合内容を分かりやすく解説できる。

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●「Wonderland Wars」
 MOBAというジャンルの性質上,画面上で敵味方が入り乱れるうえ,注目しなければならないところも多い。予備知識がないと何が起こっているか分からないタイトルだが,チームごとのエリア支配率をゲーム画面にオーバーラップさせて,理解しやすくしている。

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 試合終了後の「バトルタイムライン」では,各選手の撃破・被撃破をタイムラインで並べ,エリア支配率をオーバーラップ。さらにワンタッチでその時点のリプレイまで再生できる。ゲーム内部にアクセスできる「ゲーム大会実況システム」ならではの画面というわけだ。また,実況席の映像には2つのお城のバーチャルセットが合成されており,ゲーム内で負けた方が崩れるのがユーモラスである。

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こちらは「ゲーム大会実況システム」の機能の一つである,観戦者参加型コンテンツ。観戦者がスマホで投票すると,その内容がグラフ化される
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 ゲーム大会の運営をレベルアップするため,社内大会「SEGA e-Game Championship」も開かれているという。運営やマーケティング,開発といったさまざまな部署から社員が選手として参加し,本番さながらの雰囲気とのこと。リサーチのために他社タイトルを使うこともあるという。

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 「e-Sportsを分かりやすくするにはどうしたらいいか」と聞かれてまず考えつくのは,実況の文言を工夫したり,あらかじめ見どころを解説したりといったアナログ的な手法だろう。
 しかし「ゲーム大会実況システム」では,ゲーム機そのものからデータを抽出したり,通常なら見られない形で試合の記録を出すなど,技術的な側面から解決を図っている。もちろんこれはたゆまぬ研究開発の結果であり,セガ・インタラクティブという大手ならではの取り組みと言えるだろう。

 特に印象深かったのが,選手の心拍計測など,人間へのアプローチだ。“魔物”が猛威を振るって大逆転や番狂わせが起こるというドラマはe-Sports観戦の醍醐味。これは長い間,ゲーム大会に向き合ってきたからこそ生まれたアイデアではないだろうか。

 「ゲーム大会実況システム」は,機能の拡張はもちろん,ユーザー主催の大会に使ったり,他社にライセンスアウトしたりといった,さまざまな可能性が感じられる。実況が分かりやすくなれば,もっとe-Sportsが面白くなるはずで,今後の発展が楽しみだ。
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