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[CEDEC 2018]「本物」のキャラクターに会える,夢のような体験を作り出すために。「バンダイナムコスタジオによるキャラクターライブへの挑戦」聴講レポート
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印刷2018/08/24 14:05

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[CEDEC 2018]「本物」のキャラクターに会える,夢のような体験を作り出すために。「バンダイナムコスタジオによるキャラクターライブへの挑戦」聴講レポート

 ゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2018」の2日目となる2018年8月23日,「バンダイナムコスタジオによるキャラクターライブへの挑戦」と題された講演が行われた。CGキャラクターがリアルタイムで動き,ときには観客とやり取りするキャラクターライブ。これを提供するシステム,「BanaCAST」の舞台裏と運用の苦労が明かされた。

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「CEDEC 2018」公式サイト


「バンダイナムコスタジオによるキャラクターライブへの挑戦」登壇者
・大曽根 淳氏(バンダイナムコスタジオ モーション課)
・森本直彦氏(バンダイナムコスタジオ アニメーション部アニメーション1課)
・ミライ小町(本日のアクター:能登有沙さん)

バンダイナムコスタジオ モーション課の大曽根 淳氏(左)と,同アニメーション部アニメーション1課の森本直彦氏(右)
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バンダイナムコスタジオのオリジナルキャラクター,ミライ小町
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 かいつまんで説明すると,バンダイナムコスタジオが提供する「BanaCAST」とは,モーションキャプチャを使ってアクターやダンサーの動きを,ステージに投影されたCGキャラクターに反映させるシステムだ。リアルタイムで観客とのやりとりも行えるので,CGキャラクターの実在感が大きく増える。
 大曽根氏と森本氏は,そんなBanaCASTの生みの親で,「モーションキャプチャを使ってハイクオリティのCGキャラクターを現実世界に立たせたい」と考えていた大曽根氏と,「キャラクターの実在感を高めて,観客とふれ合える機会を増やしたい」と考えていた森本氏が出会い,2014年から共同で作業を開始。翌2015年には東京ゲームショウで行われたステージイベント,「鉄拳プロジェクト×サマーレッスン スペシャルステージ すごい技術もお見せしちゃいます!」で一般向けに公開された。

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 2016年9月には音楽グループ「EGOIST」のライブで使われたほか,2017年1月の「THE IDOLM@STER PRODUCER MEETING 2017 765PRO ALLSTARS -Fun to the new vision!!-」では,事前の説明なく天海春香がステージに登場した。あらかじめ収録した映像を再生したものではなく,インタラクティブな反応をする「本人」であることが分かると,会場のプロデューサー達は大いに盛り上がったという。
 2018年4月にはCGキャラクターがメインの「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」が行われ,素早いステージ転換などが話題を呼んだ。

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 さらに,スクウェア・エニックスのスマートフォンゲーム「プロジェクト東京ドールズ」では,キャラクターのヤマダがYouTuberとして活動する,という設定の動画作成に使われるなど,「BanaCAST」は着実に実績を積んでいるようだ。

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 講演では,バンダイナムコスタジオのオリジナルキャラクターである「ミライ小町」のデモンストレーションも行われた。パシフィコ横浜の別室でモーションキャプチャを行い,講演会場であるメインホールでCGキャラクターのミライ小町が動くというもので,大曽根氏とのやりとりに加え,ダンスや会場いじりのMCなどを披露した。昼食にパンを食べた人とご飯を食べた人にそれぞれ挙手してもらい,その結果に反応するなど,ミライ小町がその場に実在しているような感覚が味わえた。

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 BanaCASTには,「Unreal Engine」「Unity」,そして光学式モーションキャプチャシステム「VICON」が使われている。最近は,バーチャルYouTuberなどにも使われる,より安価で手軽なモーションキャプチャシステムも出ているが(関連記事),手間のかかる光学式を使うのは安定性に優れているからだという。ライブイベントは1時間半〜3時間におよぶことが多く,これにリハーサルも加えると,その間,ずっとシステムを動かし続けなければならない。安定性は,何にも増して重要なのだ。
 モーションキャプチャのクオリティも追求しなければならないことを勘案すると,現段階では光学式がベストなのだそうだ。

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 機材の設営・セッティングと映像生成は,モーションキャプチャチームと映像チームがライブやイベントの会場に赴いて行うことになる。
 舞台にはCGキャラクターを映し出すLEDディスプレイを設置。その裏側にトラス(鉄骨の柱)を組んでカメラをセットし,仮設モーションキャプチャルームを作る。光学式の場合,アクターがカメラで捉えられる範囲内にいなければならないこともあり,モーションキャプチャルームは3.5m×8mの広さが必要になる。実際にアクターが動けるのは,そのうちの2m×5m程度のエリアだ。
 カメラの数が多いほど映像のクオリティは上がるものの,限られた時間内に設置・撤収しなければならないため,だいたい14台ほどセットする。この仮設モーションキャプチャルームで,4〜5人の同時出演が可能になるという。

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 次いで,ステージ全景を見わたせる位置には映像チームのスペースを用意し,ここで映像の生成や調整を行う。仮設モーションキャプチャルームやLEDディスプレイはすべてLANでつながれ,アクターのモーションデータや完成した映像などをやりとりする。
 CGキャラクターの生成には特殊な機材が必要だというイメージがあるが,実際にはNVIDIAのGeForce GTX 1070を搭載したノートPCが使われているという。さまざまな会場に持ち込むため,携帯性が重視されるからだ。出力する解像度はフルHD〜4Kだが,フルHD以上になると会場の機器が対応していないことが多い。PC画面上の各種メニューを操作するデバイスとしては,マウスではなくゲームパッドが使われている。

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 もっとも,機材を設置するのに必要な時間はわずか1時間半ほどに過ぎない。テストにかかるのも約1時間で,「9時に機材を搬入し,昼飯を食べ終わる頃にはリハーサルが始められる」(森本氏)のだからスタッフの動きは迅速だ。会場を借りられる時間は限られており,設営や撤収は時間との勝負。こうした事情でスタッフ達が鍛えられ,現在のタイムを実現したという。

 キャラクターライブを提供するうえで重要なのは,「優れたモーションキャプチャエンジニア」「リアルタイムCG技術」「プロが用いるオーディオビジュアル機材や用語の知識」,そして「ライブ現場での経験と知識」だそうだ。前2者はゲーム制作の現場で培ったノウハウを持っていたが,残りはゼロから学ばなければならなかった。普通のライブ現場で使われる専門用語は,会場スタッフとコミュニケーションをとるために絶対必要だったという。

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 学ぶべきことは多かったものの,森本氏は「刺激的な経験だった」と述べる。また,会社の設備や人材を活用し,給料をもらいつつ新しいことにチャレンジできたのもありがたかったと,森本氏は振り返った。

 講演の最後に森本氏は,キャラクターライブの魅力を「本人に出会ったかのような体験と,そこで感じられる,夢の中の世界が現実になったような楽しさ」と定義した。今後やってみたいこととしては,「10人ほどの同時出演」「ドームクラスの会場でのイベント」,そしてさらに「2年後のスポーツの祭典でぜひお手伝いしたい」とした。果たして,“2年後のスポーツの祭典”で「BanaCAST」が生み出したCGキャラクターが全世界に放送される日はくるのだろうか。楽しみだ。

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 講演終了後,大曽根氏と森本氏は,モーションキャプチャを行っていた別室に聴講者を招いた。本日のアクターを務めた能登有沙さんが動くと,ほとんどタイムラグなしにミライ小町が同じ動きをする様子は,まるで魔法のようだ。アクターとのやりとりからも,モーションキャプチャ技術や,キャラクターを演じることについてのさまざまなノウハウが得られ,蓄積されているという。

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「CEDEC 2018」公式サイト

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