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[SPIEL'18]アナログゲーム見本市「SPIEL'18」は,過去最大規模でドイツ・エッセンにて開催
ボードゲームやカードゲームといったいわゆるアナログゲームはいまや世界的な盛り上がりを見せているだけでなく,デジタル・アナログの垣根も越えた人気を博しつつある。
例えばアナログゲームを楽しむ様子が有名な実況者によってストリーム放送されることも珍しくないし,最近人気のバーチャルユーチューバーも「人狼」のようなアナログゲームに興じるようなシーンはしばしば見られる。
もはやアナログゲームは「アナログゲームが全世界的に流行っている」という範囲を越えて,「エンターテイメントコンテンツとして広く認識されている」と言うべきだろう。
世界最大規模のボードゲーム見本市であるSPIELにおいても,この盛り上がりははっきりと現れている。
SPIEL'18の出展者数は50か国から1150ブース(昨年は1100ブース)となり,これに伴い会場となるエッセンメッセの8万平方メートルがSPIEL'18で利用される形になっている(昨年は7万2000平方メートル)。そろそろ歩いて回るだけでも疲れ果てる広さだ。
昨年はのべ18万人以上がSPIEL’17を訪れたが,今年はさらなる増加が見込まれている。それを迎える側も1400の新作を用意しており,まさに「アナログゲームのお祭り」と呼ぶに相応しい巨大イベントといえる。
過去の試みの成功と,新しい挑戦
毎年のようにとてもユニークなゲームが発表されているSPIELだが,開幕日の前日(10月24日)に行われたプレスカンファレンスによると,年ごとの大きな流れというものもあるようだ。以下,簡単にまとめてみよう。
・協力型ゲームの発展
「パンデミック」からこのかた,プレイヤー全員で協力して目的を達するという「協力型(Co-op型)」のゲームは安定して増えている。だが協力型ゲームにはデザイン上のさまざまな問題があり,より根底的な疑問として「それってPCのオンラインゲームとして遊べたほうが良くない? むしろ便利じゃない?」といった論点もあり得る。
一方,協力型ゲームの可能性を探る試みは続いており,SPIEL'18でも新しい挑戦が多数行われているようだ。
・「LEGACY」スタイルの定着
従来,アナログゲームは「同じゲームをずっと遊び続けられる」のが大きな特徴となってきた。しかしながら,プレイを通じてカードを破ったり,ボードにシールを張ったりするなどして,ゲームのコンポーネントに不可逆的な改変を加えつつ,複数の「シナリオ」を遊んでいくスタイルのゲーム(俗に「LEGACY」スタイルと呼ばれる)も増えている。
かつては物珍しさで注目を集めたスタイルだが,現在ではもう「そういうスタイルのゲーム」として定着しようとしているのだ。ちなみに,毎年開催されているゲーム開発者会議「GDC」でのボードゲーム講演では,LEGACY系のゲームデザインに関する講演が多い。
・プレイ層の拡大
PCゲームがカジュアルプレイヤーをどんどん取り込んでいったように,アナログゲームもまたさまざまな年齢・ライフスタイル・プレイスタイルのプレイヤーを獲得していっている。このため,より幅広いプレイヤー(あるいはプレイされる状況)が想定されたゲームが着実に増えている。
「AZUL」強し! ドイツゲーム大賞と年間ゲーム大賞をダブル受賞
最後に,SPIELといえば“ゲーマーが選ぶアナログゲーム賞”である「ドイツゲーム大賞」の発表も重要なイベントだ。
今年のラインナップは以下のようになっている。
順位 | タイトル | デザイナー | メーカー |
---|---|---|---|
大賞 | AZUL(邦題:アズール) | Michael Kiesling | Next Move / Vertrieb Pegasus Spiele |
2 | GAIA PROJECT(邦題:テラミスティカ:ガイアプロジェクト) | Helge Ostertag, Jens Drögemüller | Feuerland Spiele) |
3 | RAJAS OF THE GANGES(邦題:ガンジスの藩王) | Inka, Markus Brand | HUCH! |
4 | CLANS OF CALEDONIA(邦題:クランズ・オブ・カレドニア) | Juma Al-JouJou | Karma Games |
5 | HEAVEN & ALE(邦題:ヘヴン&エール) | Michael Kiesling, Andreas Schmidt | eggertspiele + Pegasus Spiele |
6 | PANDEMIC LEGACY SEASON 2(邦題:パンデミック:レガシー シーズン2) | Matt Leacock, Rob Daviau | Z-Man Games / Vertrieb Asmodée |
7 | KLONG! | Paul Dennen | Schwerkraft-Verlag |
8 | DIE QUACKSALBER VON QUEDLINBURG(邦題:クアックザルバー) | Wolfgang Warsch | Schmidt Spiele |
9 | THE MIND(邦題:ザ・マインド) | Wolfgang Warsch | Nürnberger-Spielkarten-Verlag |
10 | ALTIPLANO(邦題:アルティプラーノ ) | Reiner Stockhausen | dlp games |
○子供向け部門受賞作品
MEMOARRR!(邦題:メモアァール!)
デザイナー:Carlo Bortolini
メーカー:Edition Spielwiese + Pegasus Spiele
大賞をとった「AZUL」は,評論家によって選ばれるドイツ年間ゲーム大賞にも選ばれており,ダブル受賞となる圧倒的な強さを見せた。実際,このダブル受賞に異議を唱えるゲーマーは少ないのではないだろうか。
また,ドイツゲーム大賞にノミネートされた10作品のうち,実に9作品が公式に日本語化されていることにも注目したい。優れたゲームを,そのゲームが出版されてからそう待たずに日本語で楽しめる環境が作られているということは,ゲーマーにとってとてもありがたい限りである。
そんなわけで,今年も4GamerではSPIELの模様を現地からお伝えしていく。参加者全員が思わず沈思黙考にふけってしまう大作から,家族や友達と一緒にワイワイ遊べる作品まで,なるべく幅広く紹介していく予定なので,注目してほしい。
プレス向け展示より
プレスカンファレンス終了後には,プレス向けの展示会も行われた。ここからは,展示作品の中でもとくに異彩を放っていたり,興味深かったりした作品をいくつかピックアップしていこう。
なお話を聞いたインストラクターが必ずしもルールに精通しているとは限らないという,おおらかな内覧会なため,キャプションと実際のゲーム内容が食い違う可能性があることはご了承頂きたい。
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