イベント
[NDC19]PUBG corporationのクリエイティブ室長が語る「ゲームブランドにクリエイティブが必要な理由」
イ氏は現在の職につく以前,広告会社のコピーライターとして,さまざまなクライアントのためにクリエイティブを作ってきたという。クリエティブとは,広告に使う画像などの素材を指す言葉だが,講演ではさらに広く「広告全般」というニュアンスで使われていた。
さて,イ氏がゲーム会社に就職したのは偶然で,そう長く関わることはないだろうと,最初は思っていたという。しかし,別のゲーム会社へ転職したことをきっかけに,ゲームやブランドが成長するために必要なクリエイティブとは何なのかを考えるようになった。
イ氏は就職した当時を振り返って,コピーライターがゲーム会社に就職することは珍しいため,最初は肩書に悩んだという。結局,「クリエイティブコミュニケーター」と名付けられたそうだが,昔は電話にプラグを刺すだけの仕事をする人がコミュニケーターと呼ばれていたと補足して,会場の笑いを誘った。
続いて,イ氏の制作したクリエイティブの事例が紹介された。最初に担当したのは,Riot Gamesの「League of Legends」(リーグ・オブ・レジェンド。以下,LoL)の2017年シーズン開幕を伝えるために作られた映像だ。こうした目的のために映像が制作されたのは,初めてのことだったという。
当時のLoLは,評判があまり良くなかったという。チートツールの使用者や,暴言を吐く人がゲーム内にいても,対処が十分に行われていなかったからだ。そのため,多くのプレイヤーから「働けライオット」と言われていたとイ氏は述べた。
イ氏は,折からのLoLのキャンペーンにその雰囲気を持ち込むことにした。キャンペーンのタイトルはそのまま「働けライオット」。狙いは,Riot Gamesのやっていることをプレイヤーにもっと深く知ってもらうことだ。不正防止プログラムの実装,チートツール販売者への対応などが行われたときには,このキャンペーンに影響なのか,「働くライオット」といった声も聞かれるようになり,LoLに対する評価も上向きになっていったという。
続いて紹介されたのは,イ氏がPUBG corporationで制作した「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)と「PUBG MOBILE」のクリエイティブだ。
これらのクリエイティブには,視聴者からポジティブなコメントが多く寄せられたという。
イ氏としては,PUBGはすでに多くの人に遊ばれているため,ゲームの内容を詳細に知らせるつもりはなかったという。
次に,どのようなクリエイティブが優れているのかが解説された。
イ氏によれば,ゲームに限らず,クライアントの企業が使いたがる単語があるという。「まごころ」や「分かち合い」などがそれだが,そうした誰でも好むような言葉は避けるほうがいいとのこと。「まごころ」をクリエティブの中心に据えていた建設業社で,ずさんな工事が発覚し,悪い方向に効果を発揮したケースもあるという。
また,品質がとても高ければ使うことがあるものの,イ氏としては,どんなに優れていても,クライアントの企業(あるいはゲームやゲームブランド)が見えてこないクリエイティブには疑問を抱かざるを得ないという。
イ氏は,良いクリエイティブを作るには,対象に対する理解と愛情,そしてクリエイターとしての専門知識が必要不可欠であるとする。また,講演のタイトルである,「ゲームブランドになぜクリエイティブが必要なのか」という点については,そうした対象を熟知した良いクリエイティブが,ブランドの成長に寄与できる部分があるためだとイ氏は述べた。
最後にイ氏は,ゲームで重要なのは,結局のところゲームそのものであるのは当然で,クリエイティブで問題が解決できるケースは少ないと語る。しかし,解決できることもあるのもまた事実だと続けて,講演を締めくくった。
Nexon Developers Conference公式サイト(韓国語/英語)
4Gamer:「NDC19」記事一覧
- この記事のURL:
キーワード