スーパーマリオの世界にシームレスに飛び込める。USJ内「SUPER NINTENDO WORLD」の世界展開や最新技術が紹介されたプレゼンをレポート

　ユニバーサル・スタジオ・ジャパン（以下，USJ）にて，東京2020オリンピック・パラリンピック開催前のオープンが予定されている「SUPER NINTENDO WORLD」は，任天堂のキャラクターと世界観をテーマとしたアトラクションやレストラン，ショップが並ぶ巨大複合エリアだ。
　この新エリアのグローバル展開や，アトラクションに使用される最新技術などを紹介する「グローバル・キックオフ・プレゼンテーション」が，USJにて本日（2020年1月14日）に行われた。同プレゼンで明かされた情報をお届けしよう。

「SUPER NINTENDO WORLD」公式サイト

誰もが“超元気”になる新時代のテーマパーク体験を

新技術のツールでシームレスにゲーム世界に飛び込める

J.L.ボニエ氏

　プレゼンは，ユー・エス・ジェイの社長CEOであるJ.L.ボニエ氏の挨拶で始まった。
　世界初披露となった着工式からおよそ3年。東京2020オリンピック・パラリンピック開催という，日本が世界中から注目を浴びる2020年に新エリアをオープンできることへの喜びを語ったJ.L.ボニエ氏からは，日本の次にアメリカのハリウッドとフロリダ，続いてシンガポールと，「SUPER NINTENDO WORLD」が各地のユニバーサルスタジオにて順次展開される予定であることが明かされた。

　世界最高峰のゲームブランドとして数十年にわたり，さまざまな“アソビ”を創造し，世代や国境を越えた驚きと楽しさを届けてきた任天堂と，それらを生み出してきた代表取締役クリエイティブフェロー 宮本 茂氏をはじめとした同社の人たちに感謝を述べながら，「（このコラボによって生まれる新エリアの）クオリティには絶対的な自信がある」と話したJ.L.ボニエ氏は，続けて「社会に革新性をもたらし続けている任天堂とともに，USJが世の中を驚かせる体験をお届けするときがきた」と意気込みを語り，ユー・エス・ジェイ マーケティング部の部長である山本 歩氏にバトンタッチ。山本氏からは，USJの新たなブランドキャンペーンと，その一端を担うSUPER NINTENDO WORLDでの任天堂とUSJの関係について語られた。

山本 歩氏

　国内のアミューズメント施設の先駆である東京ディズニーリゾートに肩を並べられるようなブランド力を目指し，「世界最高を，お届けしたい。」というスローガンを立てたのが2012年。その後，「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」やクリスマスショーなど世界的なアトラクションやイベント展開でブランド力を上げ，昨年（2019年）にはブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン2019」でトップ13にランクインするといった結果を残し，このスローガンは1つの達成を迎えた。


　本当のUSJらしさ，社会的価値を打ち出す新たなブランドキャンペーンはなにか。次なるスローガンとして生まれたのが，この日発表された「NO LIMIT」だ。USJと言えば，興奮のライド系アトラクションやゾンビが会場を埋め尽くすようなイベントなど，刺激的なコンテンツが魅力となっている。「東京ディズニーリゾートが夢の国なら，USJは目覚めの国」と双方で異なる魅力があると話す山本氏は，圧倒的な刺激で「NO LIMITな元気＝超元気」を提供し，誰もが“超元気”になり，活気あふれる世界に変える力が生まれる場所を作り出したいという。


　その一角を担うのが「SUPER NINTENDO WORLD」だろう。ゲームでさまざまな遊びを創造してきた任天堂と，アトラクションにて多くの人たちに遊びを提供してきたUSJ。この両者のコラボによって生まれる化学反応によって，さらなる“遊びのイノベーション”を起こしたいと考えているようだ。
　山本氏は「SUPER NINTENDO WORLD」について，現実でゲームのキャラクターになったかのようなプレイ感覚が味わえる“マリオ体験”や，競争や成長を楽しめるゲーム性，周りの人と一緒に挑戦することで生まれる一体感，身体全体を使ったアトラクションなどの特徴を挙げ，「子供から大人まで，全身をフルに使って楽しめる，遊びの本能をとき放つ場所。思いっきり楽しんで“超元気”になってほしい」と語った。


　続いて登壇したのは，ユニバーサル・クリエイティブの副社長でチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるティエリー・クー氏。「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」や「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド 4K3D」といったアトラクションを世に送り出した，世界的なテーマパーク・クリエイターだ。
　ティエリー・クー氏は，ゲスト（来場者）が現実世界にいながら，まるでゲームの中のマリオのように全身を駆使し，躍動できるアクティビティが体験できる「SUPER NINTENDO WORLD」にて使用されている新技術について説明した。


　それが，ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 公式アプリと連動させることで，全身で味わう体験をより革新的なものにするというツール「パワーアップバンド」。これを使って楽しめる，まったく新しい“アソビ体験”の1つとして紹介されたのが，ゲームファンならおなじみの「ハテナブロック」だ。
　「ハテナブロック」はエリア内の各地に設置されており，これを叩くとコインが手に入り，獲得数がアプリに記録されていく。スマホアプリに表示されるマップを見ながらエリア内を冒険し，ほかのゲストと獲得数のランキングをリアルタイムで競ったり，仲間とともに集めて回ったりといった楽しみ方ができるほか，さまざまな条件を達成することでキャラクタースタンプなどのコレクタブルアイテムも入手できるという。
　なお，実際にオープンしたときには，「ハテナブロック」以外にもマリオの世界でおなじみのオブジェクトが，ポイントとして数十か所以上設置されるとのことだ。

パワーアップバンドとアプリを紹介するティエリー・クー氏

パワーアップバンドはUSJ内で購入できる。グランドオープン時にはこの6種類が用意される予定とのこと

こちらはプレゼン後に行われた「ハテナブロック」体験会の模様。こぶしで叩くところが柔らかくなっており，パワーアップバンドを着用した手で叩くとゲーム内でおなじみの効果音が鳴って「？」マークが光る。写真は撮影位置の都合上，左向きかつ右腕でブロックを叩いているが，実際に体験して記念撮影をする際は，2Dマリオの基本の進行方向である右向きで左腕を上げたバージョンも撮るとより“らしくなる”かもしれない

　また，「キーチャレンジ」というアトラクションが用意されていることも明かされた。エリアの各地を回って敵に守られた3つのキーを集め，クッパJr.に盗まれたゴールデンキノコを取り戻すという物語性のあるアトラクションで，仲間やほかのゲストと協力しながらさまざまな敵キャラクターとの戦いに挑めるという。


　ゲームの世界に入りこむだけでなく，自分自身がキャラクターの1人になって，スーパーマリオを象徴するキノコ王国のピーチ城やクッパ城などを冒険し，カートで走ることができるという「SUPER NINTENDO WORLD」。ティエリー・クー氏は，「彼らの創造したものに命を吹き込めることが嬉しい」と，スーパーマリオの世界を作り上げた任天堂に敬意を表しながら，「実在するビデオゲームだと考えてほしい。このシームレスで独創的なゲームプレイとの連携は，ユニバーサル・スタジオのテーマパークで作られた最も革新的な体験といえるもの」と，ユニバーサル・スタジオとしても新たな挑戦であることを語った。


　最後にJ.L.ボニエ氏が再度登壇し，「2020年は『SUPER NINTENDO WORLD Year』にする」という，世界戦略についてあらためて触れた。本日を皮切りに情報発信を開始し，2月にはニューヨークで「グローバル・プロモーションイベント」を開催。その後にグランドオープン日やアトラクションの詳細といった情報を公開する予定とのことだ。
　プレゼンの最後には，ローンチ・ミュージックビデオ「WE ARE BORN TO PLAY」が公開され，ステージにスーパーマリオとダンサーたちが登場した。


　ゲームファンおなじみのマリオサウンドがふんだんに散りばめられた同楽曲は，ダンスミュージックデュオで音楽プロデューサーとしても活動する「Galantis」とイギリスのポップシンガー「Charli XCX」のコラボレーションで生まれたダンサブルなナンバーだ。ゲームの世界に入り込むような「SUPER NINTENDO WORLD」の魅力を伝えるムービーと合わせてチェックしておこう。


　プレゼン終了後には，山本氏のカコミ取材が行われた。詳細は今後発表するとしたものの，地上と地下の複数階層となることやアプリはハテナブロック以外のアトラクションとも連動すること，アプリなしでも十分楽しめる施設であることなどが語られた。また，いまのところはスーパーマリオのみだが，将来的にはほかの任天堂作品を使ったアトラクションなども追加したいという考えもあるようだ。
　気になるのが，2017年6月の建設着工式での合同インタビューにて話題に上がったNintendo Switchとの連動について。およそ3年前に宮本氏が理想として語ったとおり，Switchは市場としてもハードとしても大きな成長を遂げている。現段階ではこれについては語られず実施されるかどうかも不明だが，とても気になるところだ。

「SUPER NINTENDO WORLD」公式サイト