企画記事
PlayStation 2が今日で20周年! 史上最も売れたゲーム機と,ここから生まれた名作タイトルを振り返る
.hack//感染拡大 Vol.1 2002年6月20日発売
2002年にバンダイが「.hack Project」というメディアミックスプロジェクトをスタートさせた。このプロジェクトは架空のオンラインゲーム「The World」を舞台した作品群からなるもので,これまでに大きく分けて3つのシーズンで展開されてきた。
本稿で紹介する「.hack」はその1stシーズンの中心的存在であり,記念すべき第1作目となるPS2用のRPGだ。ちなみに,「.hack」の開発はサイバーコネクトツー。同じくオンラインゲームを題材にした作品として引き合いに出される「ソードアート・オンライン」は同時期の作品(Web版の連載が始まったのが2002年11月)であった。
「.hack」の物語は,主人公のカイト(キャラクターネーム変更可能)が,友人ヤスヒコに誘われ,「The World」をプレイするところから始まる。しかし,初の冒険でカイトたちは謎のモンスター「スケィス」に襲われ,ヤスヒコは意識不明の“未帰還者”となる。カイトは友達を救う手がかりを探すために,あらためて「The World」という世界の謎に迫っていく。
当時「.hack」で何より驚いたのは,その展開方式だ。2002年6月に発売された「.hack//感染拡大 Vol.1」を皮切りに,約3か月に1本のペースで続編をリリース。全4部作で完結するという連載形式で展開されたのだ。
メディアミックス展開も大規模で,ゲーム本編の前日譚を語る「.hack//SIGN」や,「The World」で起きた事件の裏で現実世界に何が起きていたのかを描くOVA「.hack//Liminality」(ゲームにDVDアニメが付属していた)など,さまざまな作品を並行して見ていくことで,「.hack Project」という作品群の全容が分かる仕掛けになっていた。
ソフト4本+αを追っかけなければならないというのは,当時学生だった身としてはお財布にやさしくなかったなあ……と今振り返ってみると思う。ただ,ゲーム内の出来事が現実世界に影響を与え,それぞれの様子が別の媒体で描かれていく。そして,最終的に各作品の歯車がガッチリとかみ合っていくのにはワクワクした。
ゲームのストーリーも,「未知のNPC」や「規格外のアイテム」「ライフ表示がバグっていて絶対に倒せないモンスター」といったオンラインゲームにありそうな都市伝説に端を発したもので,次第に「The World」というゲームに隠された真の目的に迫るというインターネットとリアル,そしてオカルトをうまくミックスさせた魅力的なものだった。
システムやUIもオンラインゲームっぽさ満載で,ゲームを始めるとPCのデスクトップ画面が表示され,そこから「The World」へのアクセスや,ニュースの閲覧などが行えた。
さらに「The World」にも,オンラインゲームらしくしっかりBBSが用意されていて,初心者が上級者にゲームシステムを教えてもらうやり取りがそのままプレイヤーへのチュートリアルになっていたり,カイトたちの調査がBBSの書き込みをきっかけに進展したりと,世界観を踏まえて作られた演出もとにかく秀逸だった。
ところで,本作はほかのキャラクターと仲良くなると,メールで他愛のない雑談メールができるようになり,うまくやり取りすることで,だんだんと彼,彼女らが現実世界でどういった人間なのかを明かしてくれるようになるのだが,これが当時の筆者にとっては結構な衝撃だった。
基本的には,キャラクターのイメージ通りな人が大半なのだが,中にはキャラクターと現実の姿にギャップがありすぎる人がいたのだ。
「ネット上のキャラクターと,現実の人はイコールではない」というのは,もはやというか,あらためて言うに及ばない常識だ。ただ2002年当時,家庭にインターネット環境がなかった筆者はネット耐性がほぼゼロの状態だった。“ネットを通じて顔の知らない人と交流する”ということを疑似的ではあるが,初めて体験したのがこの「.hack」だったのだ。
さて,本稿を書くにあたって筆者は本作をプレイし直したのだが,そこで改めて感じたのは,作品全体にネットワーク社会に対する「非現実感」や「得体の知れなさ」,そして「期待」がただよっていることだった。
「.hack」が世に出た2000年代前半というのは,インターネットが一般家庭にも本格的に普及し始め,現実社会との距離が急激に縮んだ時期である。しかし,それと同時に初めて触れるインターネットというものに対し,人々がまだ“得体の知れなさ”を感じ,オカルト的な“神秘性”を抱いていた時期でもあった。
「.hack」は,「ゲーム内で遭うと意識不明になる謎のモンスター」という都市伝説じみた導入から始まり,ゲームで起きた出来事が徐々に現実世界へと侵食していく様子。そして,ネットを介して知り合った,顔も知らない人々がそれに立ち向かう姿が描かれた。本作には当時の時代背景が反映されていたのかもしれない。
スマホやSNSが普及し,インターネットが私達の身近にあるごく当たり前に存在するものになった今,ネットの世界に対して“神秘性”を感じている人はさすがにいないだろう。現に筆者自身も再プレイするまでその感覚を忘れていたくらいだ。
インターネットへの“神秘性”が失われた今,プレイしてみると,あらためて新しい見え方が生まれるような気がする。
ときめきメモリアルGirl's Side 2002年6月20日発売
「ときめきメモリアル Girl's Side」(以下,「GS」)は,コナミの男性向け恋愛シミュレーションゲーム「ときめきメモリアル」(以下,「ときメモ」)シリーズから派生した,女性向けタイトルだ。ここでは,PS2で発売された「GS」シリーズ1作目を紹介する。なお,本作の舞台は「きらめき高校」ではなく「私立はばたき学園」のため,おなじみの“伝説の木”は登場しない。
主人公(プレイヤー)は,引っ越しを機に,私立はばたき学園に入学する高校1年生。そこから3年間の高校生活をとおして,さまざまな男性と出会い,恋を育んでいく。「ときメモ」を遊んだことがある人ならば,1週間の予定を決めるゲームサイクルは馴染み深いだろう。それに加えて「GS」では,バイトをしたり,貯めたお金で買い物をしたり,デート服をコーディネイトしたり,乙女心をくすぐる要素が多数用意されている。
攻略にはパラメータも大事だが,好感度を上げるために意中の彼とこまめにデートしておく必要がある。勉強やバイトばかりしていると,誰にも告白されないまま高校生活の幕が閉じるので注意。ただ,好感度を上げすぎずに特定の行動をとっていると,隠し攻略キャラクターが登場することもある。
また,同性キャラクターと交流できるのも「GS」ならではのポイントだ。ただ,彼女たちと友情を育める一方で,それぞれ女の子たちには片思いの相手がいて,ライバル宣言されることも……。ちなみに「ときメモ」では女の子の情報をくれる心強い友人(早乙女好雄)が存在したが,そういった役回りは主人公の弟が担っている。
このほか,借り物競走や枕投げ,バレンタインチョコを作るミニゲームなど,さまざまな学園行事,季節のイベントが楽しめる。現実がどんな高校生活だったとしても,「ときメモ」シリーズの3年間は,いつでも何度でも“青春”を過ごせる夢の世界だ。
ちなみに,「GS」をプレイして筆者が一番衝撃だったのは,EVSモードでプレイヤーの名前を呼んでもらえることだった。当時,かなり感動したのを覚えている。ただ,文字数や発音によっては妙な発音になってしまうので,いい雰囲気のシーンで名前を呼ばれると萎えてしまうことも少なくなかった。
さて,ある程度ゲームの概要を紹介したところで,筆者と「GS」……いや,1作目の王子“葉月 珪”(CV:緑川 光)との出会いを語っておこう。
そう。あれはちょうど,高校1年の夏――
筆者は当時PS2を持っていなかった。というか,女性向け恋愛ゲームの存在すら知らなかったが,それでも発売後まもなく遊べたのは,筆者が「ときメモ」好きだと知った友人が,「いいのがあるよ!」と,PS2本体と本ソフトを持ってきてくれたからだ。
1作目の王子“葉月 珪”(「ときメモ」でいう藤崎詩織の立ち位置)。見た目や仕草,声,口調……好きなところをあげるとキリがないが,ほぼ一目惚れ。気がつけば葉月 珪をターゲットとした3年間をほぼ丸1日でクリアしてしまった。そのときの感動が忘れられず,PS2本体と「GS」を購入することが筆者の当面の目標となったことは言うまでもない。
今回,何年かぶりに「GS」をプレイしたが,あのときの“ときめき”はすぐに蘇ってきた。それは「GS」が“ときめきメモリアル”である所以としか言い様がない。恋愛モノに興味が少しでもあれば,「ときメモ」シリーズは一度は通ってほしい作品だ。
なお「ときめきメモリアル Girl's Side」は,PS2版では告白EDのみだったが,移植作となるニンテンドーDS版「ときめきメモリアル Girl's Side 1st Love Plus」では,親友告白ED,親友EDが追加されているので,こちらもチェックしてほしい。また,今回紹介した1作目のほか,新たな舞台と攻略キャラクターが登場する「ときめきメモリアル Girl's Side 2nd Season」「ときめきメモリアル Girl's Side 3rd Story」が発売されている。こちらも個性豊かなキャラが揃っているので,どのタイトルでも1人は気になる王子が見つかると思う。
現在は,「ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart」が開発中ということもあり,まだまだ「GS」シリーズから目が離せない。続報に期待しつつ,PS2,DS,PSPを持っているなら,この機会に過去作を遊んでみることをおすすめしたい。
太鼓の達人 タタコンでドドンがドン
2002年10月24日発売
アーケードで話題を呼んだ和太鼓リズムアクションゲーム「太鼓の達人」は,和太鼓に模した筐体を音楽のリズムに合わせて専用のバチで叩く,という人気作品だ。本物の和太鼓を叩いているかのような感覚を味わうことができ,令和を迎えた現在でも多くの人に愛され続けている。
その家庭用パッケージとして発売されたのがPS2「太鼓の達人 タタコンでドドンがドン」であり,アーケードと同様のプレイが楽しめることで注目を集めた。サブタイトルにもなった「タタコン」は,本作のために生み出された太鼓型専用コントローラ。家庭でも太鼓を叩く感覚を味わえるように開発されたもので,もちろん専用のバチもセットになっていた。通常のコントローラでもプレイはできるが,正直,このタタコン無しでは本作を語れない。
なお,筆者の家庭でもタタコンは購入していたのだが,タタコンは1台しかなかったため「〇〇分経ったから今度は私がプレイする番だよ!」「えーあともう少しいいじゃん!」と,2つ上の姉と言い争いをしながらプレイしていたものだ。いちおう,2人プレイ可のゲームなのだが,筆者には2人プレイで遊んだ記憶が頭のどこを探してもない。きっと,筆者も姉も通常のコントローラでプレイするのが嫌だったんだろう。
収録されている楽曲を確認してみると,J-POP,アニメ,音頭,クラシック,民謡,ポップス,ナムコといった7つの幅広いジャンルが用意されており,誰しもが一度は耳にしたことがあるであろう「おさかな天国」や「サザエさん一家」,「新世界より」といった名曲がズラリと並んでいた。
当時小学生だった筆者はミニモニ。やモーニング娘。にどハマりしていたので,曲を聴きたいがためにそのアーティストの楽曲を遊んでいたな〜と振り返って思う。また,当時はとくに気にも留めなかった楽曲の選定だが,今,改めて見返してみると老若男女が楽しめるラインナップになっていたことも発見だった。
「太鼓の達人」には,演奏中にさまざまな種類の音符が出現する。これにより,叩く場所や回数などが異なっていたので,難度が高めだとコンボを狙えないこともしばしば。とくに連打系は,叩いていると疲労を感じるほどの仕打ちだった……。採点機能も充実しているので,より良い成績を狙うため,ひたすら太鼓叩きに打ち込んで筋肉痛になった人もいるのでは?
通常の演奏以外にも,コースによって決められた曲数をすべて演奏していくサバイバルモードや,遊び心満載のミニゲームモードなどが用意されており,飽きることなく遊べるゲームだった。
THE 地球防衛軍 2003年6月26日発売
PS2中期となる00年代,ディースリー・パブリッシャーからは「SIMPLEシリーズ」という一連のソフト群が発売されており,それらは2000円という低価格でゲームを買えるのがウリだった。このシリーズ31番目のタイトルとなったのが「THE 地球防衛軍」だ。今や人気作品となっている「地球防衛軍」も,1作目は意外といえば意外な形で世に出てきたのだ。
SIMPLEシリーズは,隠れた名作があれば,尖りまくったゲームもあり,イメージとしては現代のインディーズゲームに近い。そんなシリーズのなかの一作品で,事前にはさして宣伝もなかったし,パッケージの絵もB級レトロSF調。当時はあまり期待もせずに,ただ安いからという理由でレジへ持っていったのだ。
しかし,実際にプレイしてみると,これがまあ面白い。ワラワラとわいてくる巨大アリに銃弾を撃ち込むと,黄色い体液をブチまきつつ次々とダウン。無造作に置かれた戦車に乗って大砲を撃てば,大爆発とともにアリが吹き飛び,ビルも一緒に倒壊。京都タワーっぽい建造物に無数のアリがまとわりつき,これをヘリコプターの機銃で一掃する……と破壊の快感が吹き荒れる。
勝つときが爽快なら,負けるときも爽快だ。無数のアリにまとわりつかれて秒殺。自らのロケット砲に巻き込まれ,大爆発と共に昇天。気がつけば夜中の3時頃に一人でゲラゲラ笑っているという有様で,次の日の仕事は寝不足で散々だったことを憶えている。
ちなみに,1作目では味方は歩兵である「陸戦兵」(後のレンジャー)のみで,敵は巨大アリ,UFO,巨大ロボット,怪獣,マザーシップなど。「地球防衛軍」といえば巨大アリと巨大クモというイメージが強いと思っていたが,巨大クモはこの時点ではいない。
無数の敵を銃器で倒していく快感にフィーチャーすると同時に,感知範囲にプレイヤーが入ると一斉に反応する無数の敵をいかにさばくかという遊びは初代作で既に完成を見ている。最近の作品から入った人でも,本作を遊べばきっと,「地球防衛軍している」ことに驚くことだろう。
この当時は右スティックによる照準操作が一般的ではなかったので,デフォルトの「ノーマル」操作は[□]と[△]で敵を狙うというものだった。しかし,そのままでは細かく狙いがつけられなかったため,右スティックで照準を動かし,R1ボタンで攻撃する「テクニカル」操作に変更した人も多かったのではないだろうか。
当時は「これだけ面白いゲームなのだから,雑誌も放っておかないに違いない……」と思い,本屋を巡ってみたのだが,筆者が望むような「THE 地球防衛軍 64ページ大特集」とか「THE 地球防衛軍 2万字スタッフインタビュー」なんて記事はどこにもなく,少々落胆した記憶がある。こんなイカしたゲームはどこが作っているのだろうか……と起動画面やパッケージの裏面を眺めてみると,そこには「SANDROT」※の文字が存在し,アリや戦闘ロボットなど“巨大なるもの”へのこだわりに納得できた。
※SANDROT……PS用ロボットアクションゲーム「リモートコントロールダンディ」を開発したスタッフが独立し,設立したゲームメーカー。町をつくって,その町を壊すデカいロボットをつくるのがとても得意な会社だった。
そして2005年,ついに「THE 地球防衛軍2」が発売されることとなった。SIMPLEシリーズで特定のゲームがシリーズ化されることはあまりないので,素直に嬉しかった。周囲のゲーム屋数件を巡ったところ,「THE 地球防衛軍2」“だけ”が売り切れており,その人気ぶりには驚いたものだ。
翌2006年には「SIMPLEシリーズ Awards 2006」で「THE 地球防衛軍」と「同2」がそれぞれ出荷本数10万本と15万本を突破したことで「SILVER PRIZE」「GOLD PRIZE」を受賞。そして,フルプライスとなる「地球防衛軍3」が発売され,まるでマイナーバンドの出世を見守るかのような感覚があった。
「THE 地球防衛軍」シリーズには,一朝一夕では作り出せない物語がある。低価格帯のSIMPLEシリーズからスタートし,プレイヤーの期待を裏切ることなく作品を重ね,動画サイトや実況の隆盛にも助けられてフルプライスのソフトになった。そして,プレイヤー側も,当初は口コミで,そして動画やTwitterで……と様々な手段で良さを広めていった。優れた作品が埋もれることも多いだけに,これは喜ばしい事態といえるだろう。シリーズの今後の発展を期待しつつ,筆を置かせていただく。
ドラッグ オン ドラグーン 2003年9月11日発売
「ドラッグ オン ドラグーン」(以下,DOD)は,2003年にスクウェア・エニックスから発売されたアクションRPGだ。
主人公カイムを操り,「無双」シリーズのように多数の敵を相手にする地上戦に加え,ドラゴンに乗って地上の敵を炎で焼き尽くす低空戦,そして「パンツァードラグーン」のようにドラゴンを操るシューティングアクションが展開する空中戦,ステージによって異なる3つの遊び方が存在するのと,割と鬱になるのが特徴的だった。
本作はヨコオタロウ氏(当時の名義は横尾太郎)がディレクターを務めた作品であり,後に発売される「ニーア レプリカント/ゲシュタルト」「NieR:Automata」へと世界設定が繋がっていることもあって,定期的に話題になる。筆者も4年ほど前,「NieR:Automata」が発表されたタイミングで知人に勧められて「DOD1〜3」「ニーア レプリカント」を買い揃えた。シリーズ作品を一気にやろうとしていると,勧めてきた知人から心配されたが,おそらく「(メンタル的に)大丈夫?」という話だったのだろう。
「ヨコオタロウ氏」と言うだけでもう説明不要なのかもしれないが,「DOD」はいわゆる鬱ゲーと言われる作品。筆者はそれまで鬱ゲーとは物語の結末が救われない話のことだろうと思っていたのだが,ちょっとレベルが違った。
まず,説明書からして空気が非常に重い。主人公カイムは幼いころに目の前で両親を惨殺されている。単に「殺されている」ではなく,「惨殺」と書いてある段階でちょっとハードルが高い。
そして妹のフリアエは「女神」という義務を課せられて自由を失い,フリアエの許嫁だったイウヴァルトとの関係もそのために崩れてしまう。誰一人として明るい話がない。物語の終着点どころか,ゲームを始める前から重い。
それでも進めていけば,ハッピーと言わずとも,少しくらい明るい話とか,登場人物が笑ってくれるようなシーンがあるでしょ。と思っていたが……。
本作はマルチエンディングとなっているが,進めれば進めるにつれ「これが最良の選択だよな」という納得のいくバッドエンドから,「なんでこうなった?」というバッドエンド,「ヨコオタロウ……ッ!!」という感じのバッドエンドまで,バッドエンドまみれだった。ここまで振り切ったゲームはこの当時,いや,今探しても珍しいのではないだろうか。
当時のTVCMで使われていたキャッチコピーは「抗え。最後まで。」だったが,プレイした後にこれを見ると,なかなか酷なことを言うなと思えてくる。
プレイヤーの立場だと,目を覆いたくなるような光景の連続かもしれないが,それでも魅力的に感じたのは,一見普通に見えるキャラクターがときおり見せる暗い影,そしてそれがどんどん明るみに出て狂っていく様だった。
最初に見る「Aエンド」でゲームをやめれば,物語は悲しいながらも綺麗に終わって見えるかもしれない。しかし,さらにゲームを進めていくと,物語はより複雑に深みを増していく。正直,より良い展開にならないだろうとは思えるが,それでももっと物語を見たいと思わせる魅力が「DOD」にはあり,それを表現できることが凄くもあり,恐ろしくもある。
「NieR」シリーズをプレイして,本作に興味を持ったプレイヤーも多いだろう。残念ながら,現在もゲームアーカイブスやリマスターなどは発売されていないので,遊ぶにはPS2を用意するしかない。本作をまったく知らない人に「面白いゲームがあるよ!」と紹介すると後で怒られそうだが,毎日が楽しくて幸せで明るい未来しか見えないようなら,ぜひ本作にも挑戦してみてほしいと思う。
SIREN 2003年11月6日発売
「どうあがいても、絶望。」というキャッチコピーの通り,あまりの難度にプレイヤーを絶望させた「SIREN」。遊んだことがある人のなかには,所持している友達に「難しすぎるから手伝ってほしい」と言われ,挑戦した人も多いのではないだろうか。筆者もその1人だ。
シリーズ化されて後に「SIREN2」「SIREN: New Translation」の2作品が発売されているが,2以降は難度がちょっと可愛くなっているので,たぶん開発側にもやりすぎの自覚があったのではないだろうか。
シリーズを通して,SIRENのキャラクターは実在する俳優をモデルにしており,声もその俳優が担当する。そのため,妙に生々しいリアリティのあるキャラクターがゲーム上で動き回ることになるのだが,それがより恐怖を引き立てることにもつながっている。
1作目である「SIREN」のストーリーは,オカルトが大好きな主人公「須田恭也(演者:篠田光亮)」(Web上では「SDK」と名乗っていた。以下,SDK)が,ある掲示板の書き込みを見て,羽生蛇村を訪れ,そこで異界へと引きずり込まれてしまうというもの。
異界へ引きずり込まれる際,タイトルにもなっているサイレンが鳴り響くのだが,それがとにかく耳障りで,プレイヤーのなかにはサイレンの音がトラウマになった人もいるかもしれない。参考までに筆者はこの音を聴くとワクワクする。
PS2環境だと,まずポリゴンやグラフィックスの話が多いと思うが,こういった音を含めた臨場感の進化もすごかったように思う。
また,本作の特徴的なシステムとして「視界ジャック」というものがあり,これはその名の通り,他者の視界を乗っ取ることで,操作するキャラクターから離れた場所の状況を確認できるというもの。攻略上欠かせないのだが,屍人の視界をジャックすると,彼らの息遣いが聞こえてくる。これがなかなか気持ち悪い。
異界には「屍人」と呼ばれる異形のものが闊歩しており,彼らにとって「人間」は敵対する相手である。ただし,人間であっても「赤い水」を体内に入れると,人間もやがて屍人へと変化していくため,プレイヤーが操作するキャラクター達が物語を進めていくうちに屍人へ変化してしまうことがある。
プレイヤーは自キャラクターと敵である屍人の位置を視界ジャックによって把握し,極力屍人を避けて,目標を達成し,目的地にたどり着かなければならないのだが,これがとにかく難しい。「あそこに屍人がいるからいまのうちだ!」と思い,急いで移動してみれば,別の屍人が待ち構えているということがたびたび発生し,何度も何度も同じステージをやり直した。そのうち絶望して,コントローラを投げ出してしまうのだから,キャッチコピー通りのゲームだった。屍人のなかには狙撃してくる者もいるのだが,とにかく彼が厄介。開始数秒で狙撃され続けたときは,そっとPS2本体の電源を切った。
これだけ殺されまくっても,なぜか遊んでいたSIREN。なにが楽しかったのかを思い返して,まず出てくるのはアイテムだ。
本作に登場するアイテムは,1つ1つ実際に現物を用意し,それを撮影してゲーム内に落とし込んでいる。これらのアイテムは「アーカイブ」で詳細を確認でき,その解説を読むことで,よりSIRENの世界を知ることができる。
もう一つ,この作品の面白さに挙げておきたいのが,ゲーム内とリンクしているようなリアルのWebコンテンツだ。主人公が羽生蛇村に向かうきっかけになった掲示板も,書き込みはできないものの,しっかりとWeb上に存在している。この掲示板には「血塗れの集落」というスレがあり,その話題に反応するSDKの書き込みも確認できる。
ほかにも「都市伝説調査隊」という,1作目と2の舞台を紹介するオカルトサイトが公式に存在しており,現在も閲覧可能だ。
ゲーム内での出来事は,8月3日から6日までに起きている設定なのだが,その3日間は“異界入りの期間”ということで,Twitterではハッシュタグが1日中トレンド入りするくらい,毎年大きく盛り上がっている。その期間になると,出演していた俳優も積極的に「SIREN」についてツイートしてくれたりもする。
発売からはもう16年以上が経つが,SIRENはれっきとした現在のコンテンツなのだ。こないだ,この原稿を書くために久々にゲームをやって絶望したばっかりだし……。
近年では「どこでもいっしょ」シリーズや「サルゲッチュ」シリーズとのシュールなコラボも行われている(関連記事)。君たち……どうしてこうなっちゃったの。
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