インタビュー
マーベラスによる開発者支援プログラム「インディーゲームインキュベーター」が始動。その狙いをキーパーソンに聞いた
このプログラムはインディーゲーム開発者の支援を目的とする試みとして,6年間にわたり優れた開発チームの育成に成功している,スペイン・バルセロナのインキュベーションプログラム「GameBCN」の監修のもとで実施されることが明らかになっている。
今回,4GamerではiGi発足の経緯やその狙い,参加チーム(個人でも可)の条件などをマーベラス 海外事業推進室 山崎マイク晴樹氏,ヘッドハイ 代表取締役 一條貴彰氏,ルーディムス 代表取締役 佐藤 翔氏に話を聞いてみた。また,iGiにメンター(講師)として参加するえーでるわいすのなる氏とこいち氏にも話をうかがっている。
マーベラス 海外事業推進室 山崎マイク晴樹氏 好きなインディーゲームは「Subnautica」。50時間以上プレイしているのだとか |
インディーゲームインキュベーター 公式サイト
クリエイターが継続してゲーム開発ができる環境作りを
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,インディーゲームインキュベーター(iGi)発足の経緯から教えていただけますか。
山崎マイク晴樹氏(以下,山崎氏):
私はマーベラスの海外事業推進室に所属しており,海外の商談会に参加して新しいコンテンツや支援したい開発チームを日々探しています。その中で,2019年にGameBCNを知り,プログラムの責任者と協議した結果,Marvelous Europe(マーベラスの海外法人)がスポンサーとして関わることになりました。
私自身もGameBCNにはメンターとして参加しているのですが,このようなプログラムは日本にはありません。そこで,6年間の運営実績と成功事例を持つGameBCNと協力関係を結び,日本初のインキュベーションプログラムを発足することにしたんです。
4Gamer:
佐藤さんと一條さんは「運営協力」とのことですが,参加することになった経緯をお願いできますか。
佐藤 翔氏(以下,佐藤氏):
2020年9月,私がルーディムスを起業したタイミングで長年,お付き合いのある山崎さんと会い,マーベラスさんがインキュベーションプログラムを始めるという話をお聞きしました。「どんな座組みで進めていけばいいのか」を山崎さんと相談していく過程で,一條さんにお声がけをして,iGiの原型が固まっていきました。
4Gamer:
プログラムに参加する意思は早くから決まっていたわけですね。
佐藤氏:
はい。私は以前,ヨルダンに勤務していたのですが,そこで中東やアジア,ラテンアメリカといった新興国や地域のゲームクリエイターと触れ合う機会がありました。2015〜16年には,マレーシアのアクセラレーションプログラム「GameFounders Asia」にメンターとして参加し,現地のクリエイターに向けて日本市場の動向などに関するアドバイスをしていました。
当時のマレーシアには,日本のゲーム会社のアウトソーシングを請け負っている会社が多く,自社のゲームを作って,世界に売っていこうというところは少なかったと認識しています。それが,GameFounders Asiaに参加して世界各国のメンターからアドバイスを受けた人達がハブとなり,マレーシア国内に情報やノウハウを伝え,世界的の有力なメンターのネットワークにつなげていくというサイクルができた結果,ゲーム開発のレベルが非常に高くなりました。マレーシアのゲーム会社や開発スタジオがアワードを獲得する機会も増えており,「GameFounders Asiaの影響は大きかった」と感じていたんです。
一條貴彰氏(以下,一條氏):
私の会社(ヘッドハイ)では小規模なゲーム開発のほか,インディーゲームクリエイター向けの製品やサービスを提供する会社へコンサル事業を展開しています。その一環として,iGiでは日本国内のインディーゲーム開発シーンに関する知見を生かして,アドバイザーとして提供する運びになったんです。
私自身もインディーとしてゲーム開発に打ち込む中で,インキュベーションプログラムというものが諸外国では多数存在していることを知り,「こういった仕組みを日本でも展開できないか」と常日頃から周囲に話していたところ,旧知の佐藤さんからお誘いをいただいた形になります。
4Gamer:
GameBCNやGameFounders Asiaのほか,世界各国のインキュベーションプログラムにはどのようなものがあるのでしょうか。
一條氏:
最近注目を集めたのは,スウェーデンのシェブデで行われている「Sweden Game Arena」ですね。このプログラムからは,500万本のセールスを記録した「Valheim」を始め,ヒット作が輩出されています。「Valheim」は5人のチームで開発したと聞いていますが,たいへん大きな成功事例です。
佐藤氏:
最近はアジア諸国やヨーロッパでも,インキュベーションプログラムやアクセラレーションプログラムが一般的になってきました。先ほどお話したマレーシアを筆頭に,インドネシア,アメリカ,カナダ,トルコ,セルビア,ウクライナ,中国など,世界中でゲーム開発を支援するオプションとして広まっています。ただ,日本にはこれまでなかったので,今回,私達がiGiを始めるわけです。
4Gamer:
iGiはGameBCNの監修のもとで実施されるとのことですが,GameBCNのシステムをそのまま日本に持ち込むのでしょうか。
GameBCNには6年間の実績があり,50万本以上のセールスを記録するヒット作も出ています。しかし,そのノウハウをそのまま日本に持ってくるわけにはいかず,教材やカリキュラムなどを,日本で活動しているクリエイターに適した形にする必要があります。
また,日本初のインキュベーションプログラムとして,プログラムがクリエイターにどのような利益をもたらすのかを,まず伝える必要もあります。とくに個人や小規模チームの場合,まだ企業や団体から支援を受けた経験のある人は少ないので,そうしたガイドも含めてローカライズをすることになります。
山崎氏:
GameBCNのプログラムでは,「成果物を提出する」という最終工程があります。具体的にはデモデイを設けて,クリエイターがパブリッシャや投資者に対して作品のプレゼンテーションを行います。ここには「産・官・学」の連携が存在しているんです。
現在,さまざまなプログラムが展開しているものの,産官学のすべてが関わるケースはまだ少ないです。GameBCNでは産官学の連携により,持続性が担保されていますので,日本でも同様の形で展開したいと考えました。
また,GameBCNはNPO法人なので,プログラムの事業展開によって利益を得ることはなく,クリエイター育成やエコシステム構築の資金は,すべてバルセロナやカタルーニャ州から出ています。
GameBCN 公式サイト
4Gamer:
産官学の連携構築については,iGiの発表時(関連記事)にも触れられていますが,すでに参加企業や団体は確定しているのでしょうか。
山崎氏:
官公庁については神戸市に後援いただくことが決定しました。神戸市とバルセロナは姉妹都市の関係にあり,今回はバルセロナとカタルーニャ州から神戸市に声をかけていただきました。また,学にあたる教育・研究機関についても,現在さまざまなところにお声がけをしているところです。
そして,産に関しては,iGiのプログラムにご賛同いただける企業に広くお声がけをして,スポンサーになっていただこうと考えています。現時点でインテル様やエヌビディア様,Epic Games Japan様やValve様など,8社様からスポンサードいただくことが決定しています。
佐藤氏:
ただ,産官学連携のロジックは,日本と海外では大きく異なります。海外のシステムをそのまま日本に持ってくると,参画してくださる方が苦労することになりますので,日本のインディーゲーム事情に合わせた形で整えていきます。
一條氏:
海外のインキュベーションプログラムには,産官学が連携してゲームクリエイターをサポートすることで「自国のゲーム産業を発展させよう」という共通認識があります。
日本でも近年のeスポーツ業界では,官公庁と一緒になって盛り上げていこうという動きが見られますので,同じようにインディーゲームに対しても産官学と連携することで,業界がさらに活性化する,そういう認識が広がってほしいと考えています。
4Gamer:
今回,iGiのプログラム参加費は無料,募集対象は5チームとのことですが,資金面はどのような仕組みになっていますか。
山崎氏:
本プログラムの運営資金は基本的にマーベラスが拠出します。
4Gamer:
そのリターンは何でしょう。
山崎氏:
マーベラスは収益化を目的に,このプログラムを立ち上げてるわけではありません。このプログラムで当社が得るものは,パブリッシングの優先交渉権のみです。そのほかの権利を行使することはなく,またパブリッシングをお約束することもありません。クリエイターの皆さんをサポートしていくことで,インディーゲームが盛り上がれば,ゲーム業界全体も盛り上がっていきます。その環境作りに貢献したいと考えています。
一條氏:
iGiが目指すのは,日本から多くのゲームとクリエイターが生まれることと,それらが生まれてくる過程に必要なステークホルダーのエコシステムを作ることです。個人や小規模チームのクリエイターがゲームを完成させて販売するサイクルに対して,そのチャレンジが大きく成長できる環境を作れば,その先にゲーム産業全体の盛り上がりが望めるというイメージですね。
佐藤氏:
やはり,人のつながりはすごく大事なんですね。iGiでは参加者の皆さんにいろいろなものを提供したいと考えていますが,特定の分野における信頼できる人とのつながりを作っていただく。それが,私達にとって最も重要であると捉えています。
例えば,アートやローカライズといった分野において,誰かにアドバイスを受けたいと思ったとき,いきなり一人で適切な人につながることは難しいでしょう。さらに法律などの専門性の高い分野や海外展開については,専門家でなければ分からないことが多い。こうした人とのつながりを,iGiを通じて構築してゲーム開発に役立ててほしいです。
それは次回作以降の開発にも役立ちます。クリエイターの皆さんが継続してゲームを作れる土壌を形成することが,iGiの目標なのです。
海外進出を前提としたトレーニングを
4Gamer:
iGiのプログラムに参加する開発チームは,具体的にどのような支援を得られるのでしょうか。
山崎氏:
まずは,ゲーム産業のさまざまな分野のスペシャリストがメンター(講師)となって,開発チームをサポートします。
一條氏:
具体的には,「レクチャーセッション」と呼ばれる60分程度のメンターによるオンラインセッションを行います。例えばローカライズのセッションであれば,ローカライズ専門のメンターがつまずきやすい部分や勘どころについて講義をするというわけです。
また「メンタリングセッション」では,開発チームが作っているゲームのうまくいかない部分について,メンターに相談しつつアドバイスが受けられます。
4Gamer:
メンターとして,「天穂のサクナヒメ」を開発したえーでるわいすの参加が発表されています。
一條氏:
はい。ちなみにiGiにおけるメンターは先生や講師というより,先輩クリエイターに近い立ち位置になります。メンター自身,現役でゲーム開発をしたり,コンテストに出展したりしていますので,クリエイター同士,それぞれの知見を共有し合う機会にもなると思います。
そのほか,iGiに参画していただくゲーム開発ツールやゲームエンジンのデベロッパによる「トレーニングセッション」もあります。このようなセッションを半年間提供しつつ,開発チームを支援していきます。
4Gamer:
なるほど。
山崎氏:
さらに,海外進出を前提として「ピッチ」と呼ばれる短いプレゼンのトレーニングを予定しています。先ほどお話ししたように,プログラムの最終工程にはデモデイがあり,クリエイターは自らのゲームをアピールすることになりますが,英語でのプレゼンも行ってもらいます。
また,ゲーム自体や開発チームを国内外のメディアにアピールする場も用意したいと考えています。
佐藤氏:
英語でのプレゼンというと,相当ハードルが高そうに聞こえますが,具体的には1〜2分の短いものですね。事前に用意した書類を読み上げるだけでもいいんです。ピッチができれば,海外の方とのスムーズなファーストコンタクトができる機会も増えるはずです。
その後は翻訳ツールを使うなりしてメールでやり取りすればいいのですが,ピッチのトレーニングは最初に「私はこういう人間です」「こういうゲームです」と伝えるためのスキルを身に付けていただくことが目的です。
一條氏:
最近では,海外のゲームイベントにオンラインで参加できる機会も増えています。ただ参加したからといって,いきなり海外のパブリッシャや投資家と話ができるかというとそうではありません。しかし,いざ機会が訪れたときに,英語で1分間だけでもプレゼンができれば,「おっ」と思ってもらえるかもしれない。そこから実際にゲームを触って評価してもらうといった,アピールにつながるチャンスが増えていくのではないかと思います。
4Gamer:
現状,日本のクリエイターは自分のゲームをアピールすることが苦手だと思いますか。
一條氏:
苦手にしているとは全く思いませんし,そこは人によると思います。しかし,おそらく「英語が下手でも,事前に準備してアピールすれば自分のゲームを知ってもらえるチャンスが掴めるかもしれない」ということは,あまり認識されていないんじゃないでしょうか。
今回,iGiに参加していただくのは5チームと限られていますが,彼らが英語でのピッチでチャンスを掴もうとしている姿を見て,日本のインディーゲーム開発者クリエイターが「英語でのピッチはこうするといいのか」と,真似をしていくような流れが出てくることを期待しています。言わば,5チームはモデルケースですね。ピッチでアピールすることの重要性を伝えたいと思っています。
山崎氏:
この1年,100社以上の開発チームと商談をしていますが,成功しているところはピッチが上手な傾向があります。自分のゲームの強みや,既存のゲームと比べてどのように差別化をしているかを,ズバリとアピールができているんですね。そして,その強みをゲームでもしっかりと強調しています。
私は「自分の強みをアピールすること」以上に,チャンスを掴む方法はないと考えているので,ピッチのトレーニングもiGiの強みとしてアピールしていきます。
佐藤氏:
そのほかの支援としては,東京ゲームショウやgamescom,Penny Arcade Expo(PAX)など,ゲームイベントへの共同出展があります。とくにヨーロッパのイベントでは,GameBCNとの共同出展を予定しており,個人やチーム単体では難しい海外出展も実現しやすくなります。
4Gamer:
参加チームはどのような基準で選考しますか。
山崎氏:
総合的に審査していきたいと思っていますが,ある程度の新規性などがあると選ばれやすいと思います。
一條氏:
基本方針としては,ゲームそのものに関して「ここは誰にも負けない」「ここは世界初」といった強みとなるものを持っているチームが選ばれやすいでしょう。ただし,それが必須条件ではありません。
また,ゲームのジャンルや開発にかけた時間,グラフィックスが2Dか3Dか,といったところは選考には影響しません。
4Gamer:
GameBCNでは「ビジネス精神を植え付ける」といった目標を掲げていますが,iGiもそれに倣うのでしょうか。
一條氏:
私個人の見解も含まれるのですが,日本では「ビジネス」という言葉のニュアンスがクリエイティビティと正対するイメージがあります。ですので,「ビジネス精神を植え付ける」という考え方はフィットしないと思います。まずは,作ったゲームをより多くの人に届ける過程において,「マーケティングやパブリッシャとの交渉など,事業的な側面を考えることも必要になる」ということを紹介していきたいです。
その意味ではビジネスというより,「自分の作ったゲームを知ってもらう機会の作り方を紹介する」というのが適切かもしれません。
4Gamer:
個人の開発者も応募可能ですね。
山崎氏:
はい。応募条件は「個人から少人数のチーム」としています。これは,チームが十数人を超える規模ですと,私達の手に余ると考えられるからです。また,GameBCNなどのインキュベーションプログラムも参考にしたうえで決めています。
一條氏:
講師として参画していただくえーでるわいすさんもコアメンバーは2人ですが,外部の開発会社と協力してゲームを作っています。そういった形でもまったく構いません。
4Gamer:
選考委員はどなたが務めるのでしょうか。
山崎氏:
今はまだお答えできません。
4Gamer:
それでは,メンターの顔ぶれは決まっているのでしょうか。
一條氏:
現時点では,えーでるわいすさん,「カニノケンカ」を開発したカラッパゲームスさん,illuCalab.のEIKI`さんの参画が決定しています。また,Steamなどを介してゲームを販売した経験のある方,海外展開を経験した方を予定していますが,ゲーム開発に関するメンターは順次,お声がけをして決めていくことになります。
メンターの顔ぶれが最初に固まっていないのは,実際にどの分野のスペシャリストが必要になるのかは,参加チームによって異なるからです。例えば,2Dグラフィックスのシューティングゲームを作っているチームには,その道の先駆者が望ましいですよね。
佐藤氏:
ビジネス分野のメンターとしては,英語圏のローカライズに詳しい矢澤竜太さん(元架け橋ゲームズ),中国語圏のローカライズに関しては高橋玲央奈さんにお願いしています。高橋さんは福建省在住の日本人としてゲーム開発に携わり,中国の事情に精通しています。それから,4Gamerにも寄稿しているアトリエサードの徳岡正肇さんには,海外マーケティングについてのアドバイスをしていただく予定です。
また,ピッチのトレーニングのために,海外の方にメンターを依頼しているところです。ゲーム開発とビジネス分野のメンターを合わせて,20名前後になるのではないでしょうか。
4Gamer:
参加チームにとって,頼もしいサポート体制になりそうですね。
今回のサポート期間は6か月間の予定とのことですが,その後の長期的な展望を教えてください。
山崎氏:
単年ということではなく,持続的に開催することを前提にiGiを開始しています。マーベラスの方針として,インディークリエイターを長期的に支援していくのと同時に,クリエイター達が健全で持続的に創造力を発揮できる環境を,産学官連携を通して築いていきたいと考えています。
インディーゲーム開発に取り組む人に“先輩”とのつながりを作る
4Gamer:
続いて,iGiにメンターとして参画するえーでるわいすのなるさん,こいちさんにお聞きします。今回,メンターに就任した経緯を教えてください。
一條さんからオファーを受けました。一條さんとはもともと,同人ゲームを通じて顔見知りだったんです。iGiの概要を聞いて,私達としてはまったく異論のない取り組みだったので「ぜひ協力させてください」と。
一條氏:
なるさんは5年くらい前に,同人ゲームサークルのための勉強会を開催していたんです。それもあって,メンターのお声がけをするなら外せないと思っていました。
4Gamer:
日本初のインキュベーションプログラムが発足すると聞いたときは,どのような感想を持ちましたか。
なる氏:
私達は同人ゲーム出身ですけれども,以前は同人ゲーム作家が集まる50人規模の飲み会があったんです。そこではサークル同士の横のつながりを作ったり,情報を共有したりしていました。例えば「ショップにゲームを卸すにはどうすればいいのか」「CD-ROMのプレスはどうやるのか」「売上の確定申告は」といった情報のやり取りですね。
こうした飲み会は事実上,なくなってしまいましたが,今になってみると,とても大きい存在だったんです。iGiの話を聞いたときには,「インディーゲームでも横のつながりができるのはいいことだ」と思いました。
4Gamer:
えーでるわいすは「同人ゲーム出身」とのことですが,インディーゲームとの違いをどのように捉えていますか。
なる氏:
私だけでなく周囲も含めて,場面によって使い分けているだけですね。最近はインディーを名乗ることが多いですが,例えばコミケが近い場面では同人ゲームを名乗ることが増えます。
4Gamer:
それでは,iGiのメンターとしてどんな活動をしていこうと考えていますか。
なる氏:
担当するチームによって必要としている技術や情報が違うでしょうから,そのマッチングがうまくいけば,私達にできることは多いと思います。えーでるわいすとカラッパゲームスさん,illuCalab.さんがメンターであれば,ゲーム開発について伝えられることはもっと多くなるでしょうね。
4Gamer:
「聞いてくれれば何でも答える」というスタンスですよね。
なる氏:
はい。答えられることであれば,何でも答えます。また,答えられないことがあっても,iGiを通じて「この分野であれば,この人に」といったように,ふさわしい方を紹介することができます。つい最近も販売に関する質問を受けて,illuCalab.のEIKI`さんを紹介したばかりなんですよ。
4Gamer:
担当するチームは,えーでるわいすよりキャリアが短いクリエイターになると思います。現在,そうした世代との交流はあるのでしょうか。
なる氏:
同人ゲームではあります。ただ,この1年はコミケが開催されなかったこと,またステージがインディーゲームに移行していることもあって,世代間でやや分断しているところがあるとは思っています。
一條氏:
年齢やキャリアを問わず,新たにインディーゲーム開発に取り組んでいる人に話を聞くと,先行して活躍している開発者とのつながりがなかったり,オフ会などで一緒になる機会があっても,おそれ多くて話しかけられない……と思うケースがあると言います。そこで,iGiではインディーゲームにチャレンジする人達に向けて,“先輩”とのつながりをお手伝いすることを目指しています。
4Gamer:
それでは,どのようなチームに応募してほしいですか。
個人的には「長期的にゲームを作り続けたい」という人やチームですね。「お金を儲けたい」「超すごいゲームを作りたい」というのも決して悪くはないんですが,それよりも「どこかの誰かに刺さればいい」というモチベーションを保ち続けて,今後もゲームを作っていく人に会いたいです。
4Gamer:
インディーゲーム開発に取り組んでいる人のなかには,何年も何年も作り続けた結果,完成に至らないケースもありますね。
こいち氏:
それが良くないとは思いませんが,ゲームを完成させることによって,伸びるスキルもあります。どんな形であれ完成させて,1つのゲームとして形を整えるところまでやって,可能ならばリリースする。こうすることで実力も付くし,経験にもなります。私達にその支えができたらいいですね。
4Gamer:
もし5年前や10年前,iGiがあったら応募していましたか。
なる氏:
その当時だと,それこそ同人ゲーム作家の横のつながりがあったので,私達は応募していなかったかもしれません。
こいち氏:
私達はもともとゲーム会社の出身ですから,情報を共有したり交換したりできる同業者には恵まれていたんです。
なる氏:
また,数年前と今ではかなり事情が変わっています。当時は自作のゲームを同人ショップに卸していれば良かったんですが,今はPS4やNintendo Switch向けにもリリースできますし,加えて海外展開のハードルも低くなりました。こうしたノウハウは個人では,なかなか調べきれるものではないですから,今のほうが情報収集の難度が上がっていると思います。
4Gamer:
iGiの発足によって,インディーゲームにどのような影響を期待していますか。
なる氏:
こいちさんも言いましたが,長期的にゲーム開発を続けてくれる人が増えると嬉しいですね。
こいち氏:
クリエイターが増えると,自然に良いゲームも増えると思います。そのための場を作れたら,自然に結果も出てくる。そんな状況になることを期待しています。
なる氏:
単純に「仲間が増えると嬉しい」という気持ちが大きいですね。
作りたいゲームがある人がそれに取り組めて,最終的に結果を残せる。そういうサイクルができればいいと考えています。作りたいゲームがある人は,ぜひ応募してください。
こいち氏:
私達が伝えられることは少なからずあると思いますし,逆に,これからゲーム開発に取り組む人が見られる世界を私達は知りません。お互いにとってプラスになるといいな,と考えています。
4Gamer:
皆様,本日はありがとうございました。
インディーゲームインキュベーター 公式サイト
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