プレイレポート
「マルチジャンル・ホラーRPG インセイン」の新シナリオ「機械仕掛けの未来へ」CBT版をTRPGカフェ“モノドラコ”で先行体験プレイ
冒険企画局の二大タイトル「インセイン」と「シノビガミ」の新シナリオを制作するという今回の企画は,ゲームオンと冒険企画局の共同プロジェクトとして発足。今回の「機械仕掛けの未来へ」は,100本以上ものTRPGシナリオを公開してきた芥邉雨龍氏が制作を担当している。
ゲームオン,TRPG「インセイン」新シナリオの“クローズドβテスト”の参加者を募集。一部要素を再構築したシナリオを楽しめる
ゲームオンは2022年12月1日,同社が12月中にリリースを予定している,冒険企画局のテーブルトークRPG「インセイン」に対応した新シナリオについて,クローズドβテストの参加者募集を開始した。CBTで体験できるシナリオは“シナリオの一部要素を再構成したもの”とのこと。
「インセイン」は,その名にマルチジャンル・ホラーRPGという言葉を冠する通り,ゴシックホラーからコズミックホラーまで,バリエーション豊かなテイストを表現可能な作品だ。ホラー系TRPGでおなじみの恐怖判定なども用意されているが,何といっても特徴的なのは,プレイヤーキャラクターが各自で「秘密」を抱えており,その探り合いと秘密の内容によっては対人戦に発展する場合もあるところだろう。「機械仕掛けの未来へ」でも,秘密の探り合いと対立に焦点を当てたシナリオが展開される。
そんな本作について,東京都新宿区のTRPGカフェ「モノドラコ」にて,プレイヤーとしてCBT版のシナリオを体験する機会が得られた。本稿では現地で体験したシナリオに加え,一般向けCBTの会場の1つとなるモノドラコのスタッフから寄せられたコメントもお届けしよう。
※記事にはシナリオに関するネタバレが含まれます
濃密な人間関係をベースとした3人固定シナリオ
まずは新シナリオ「機械仕掛けの未来へ」の基本ルールとプロローグについて紹介しよう。本シナリオは,プレイヤーの人数が3人で固定され,ゲームマスター(GM)を含め計4人で物語を進めていくことになる。
プレイヤーキャラクター(PC)の作成に関しては「インセイン」と共通しており,暴力,情動,知覚,技術,知識,怪異といったカテゴリで大別された11種類のリスト(計66種類)から6種類をキャラクターの特技として選択する。
そして調査判定,回復判定,感情判定の3種類のいずれかを選ぶドラマシーン(ゲーム進行上で発生するイベント)では,2D6(6面ダイス2個)でのダイスロールをベースに,特技を適用できる場面なら5以上の値,特技以外の場合は7以上の値を出すことで成功と失敗を判定していく。
ちなみにCBT版シナリオの体験時には,特技の決定前にPCの大まかな人物像とゲームにおける「使命」が表面に記載(全プレイヤーが確認可能)されたハンドアウトカードが配られた。
その一方で裏面には,調査判定で他プレイヤーがダイスロールの判定に成功するまで本人しか確認できない,そのキャラクターの秘密と真の人物設定が記載されている。
そのほか,アビリティは基本攻撃と戦場移動が初期アビリティとして設定されており,基本攻撃時の指定特技は,最初に選んだ6種類の特技から決定する。追加のアビリティは「頑健」や「資産」など,定番どころをはじめとした「インセイン」のブック上アビリティを2種類選択することが可能だ。
開始時に持てるアイテムは2個で,武器やお守りといったダイス振り直し系,鎮痛剤のような生命力や正気度の回復系などとなっている。
キャラクターシート上の作成事項は,上記のオーソドックスな形式となっているが,今回のCBT版シナリオでは物語上のキーパーソンとなる「マリナ」という女性について,生い立ちから人間性まで,3人のプレイヤーで自由に決めることになった。
ただしマリナは,シナリオ開始時点で故人。彼女が生前にPCたちとどのような関係があったのか,ハンドアウト記載の使命や秘密に沿ってプレイヤー間のトークセッションを交えながら(秘密はゲームルール上で口外禁止)決定されていった。
なお「機械仕掛けの未来へ」のプロローグでは,突如異空間に転送されたPCたちが,閉ざされた空間の中で「調停者」と名乗る少女と出会う。彼女とのやり取りを通じて,プレイヤーが作成したキャラクターの設定や抱える秘密に沿った未来を手に入れられるのかどうか,という展開が繰り広げられるのだという。
当日のプレイでは,マリナの死を知ったPCが突如として歯車だらけの異様な空間に転移させられ,自分以外のPC,そして調停者と対面することに。調停者は,おもにGMが言動を担当し,序盤のシーン移行はGMが発する調停者の会話によって進んでいった。
序盤のターンでは,調査判定の成功後に裏面を確認可能なハンドアウトカードとして,3種類の「歯車」が提示される。各PCは1シーンずつ順繰りに行動できるため,3人全員が歯車の調査を選択して判定のダイスロールに成功すれば,早々に異空間の謎やゲームの終了条件を知ることができるかもしれない。
しかし,PCが抱える秘密を暴くための調査判定や調停者とのコミュニケーションによる感情判定,さらに状況によっては秘密を知る前からの戦闘シーンもあり得るので,「機械仕掛けの未来へ」の真相にたどり着くのは,2サイクル(1サイクル=3PCの1周)後にあるクライマックスフェーズ終了後となる。
実際に今回も,PC同士の調査判定が頻発し,公開情報に反する秘密を抱えたPCのハンドアウトカード情報が早々と明かされていくが,歯車や調停者の情報はそこまで深掘りされない状態になっていた。
体験プレイは1サイクルめを回ったところで終了。本シナリオは,3サイクル目の終盤へ突入すると,秘密と使命にまつわる対決も激化するそうだ。
今回のCBT版シナリオ体験では,調停者によるシーンの移行に加えて,閉ざされた空間で秘密を探り合うシチュエーションから,オカルト要素よりもサスペンス要素が際立っているという印象を受けた。
従来の「インセイン」でも楽しめた心理戦をより深く直接的に味わえるので,ホラーTRPGに限らず心理戦の要素が多いボードゲーム好きにもオススメできるシナリオだと言えるだろう。
スタッフが語るモノドラコの魅力とは
取材当日には,CBT版シナリオのプレイにあたってGMとプレイヤーを担当されたモノドラコスタッフのあねもねさん,くるるさんの2名から店舗についてのコメントを得られたので,以下にお届けする。
モノドラコは,2022年12月15日から実施されるオフラインCBTの対象店舗にもなっているので,ぜひ現地へ赴く際の参考にしてほしい。
4Gamer:
お二人がGMを担当されているとき,月にどれくらいの人が店舗を訪れていますか。
あねもねさん:
同じお客さんの重複もありますが,100から120名ほどの方々とプレイしています。
くるるさん:
30名ほどの方と遊ばせてもらうことが多いです。
あねもねさん:
お客さんがGMをやって人を集める場合もあるので,私たち二人がいっしょにプレイして過ごす人数よりも,実際に来店されるお客さんは多いですね。
4Gamer:
お二人の滞在時間はどれくらいですか。
あねもねさん:
モノドラコでは,特定の時間帯ごとに料金が決まっているので,それに合わせて5,6時間ずつ担当させていただくことが多いです。
4Gamer:
お二人のTRPG歴もお聞きしてよろしいでしょうか。
あねもねさん:
7年めとかですね。
くるるさん:
私は5年ぐらいです。
4Gamer:
外観のとおり,モノドラコはアットホームな雰囲気で初心者でも入りやすい場所だと思いますが,お二人からはいかがでしょうか。
あねもねさん:
女性でも入りやすい雰囲気を目指しています。私もこういった店舗に初めて入るときは緊張したので,そのハードルをお店の外観から低くしていきたいなと思っています。
くるるさん:
ダイスとかも店内に用意してあるので,何も持たずにふらっと入れる,仕事帰りに遊んで帰ってもらえる,そういった気軽な部分もいいところだと思います。
4Gamer:
モノドラコという店名にもポップな雰囲気はありますが,そういった意図が込められているのでしょうか。
あねもねさん:
モノはギリシャ語の1の意味で,ドラコはドラゴンです。「ドラゴン1匹」ぐらいのイメージで,語呂の良さとカタカナにしたときの字面のバランスの良さを意識しています。
4Gamer:
お二人が思うGMの魅力についても教えてください。
あねもねさん:
プレイヤーによって違う物語を見られることですね。今回もシナリオはあるものの,プレイする人によって,全然違う物語になると思います。
くるるさん:
人と対面で遊ぶことが魅力だと思うので,卓を囲んだ後も遊べるような関係性ができたりだとか。皆さんがそうして仲良くなっていく過程を見ることができるのも,GMをやっていてうれしい瞬間です。
4Gamer:
今回のCBT版シナリオを最初に見たときの印象をお聞きしたいです。
あねもねさん:
余白が良い塩梅で用意されていて,マリナやPCの個性を出していけるので,プレイヤー次第で物語の雰囲気がガラっと変わるだろうと思いました。何回遊んでも新鮮さを味わえる気がしましたね。
4Gamer:
CBT版シナリオを実際にプレイしてからはいかがでしたか。
あねもねさん:
どんな展開になるのか楽しみです。進行役の立場で内容は分かっていますが,それでもハラハラするシナリオなので(笑)。
くるるさん:
終盤のサイクルでは,思いもよらないパターンのドラマが生まれそうだったので,ぜひ実際に体験してもらいたいです。
TRPGカフェ「モノドラコ」公式サイト
『インセイン』『シノビガミ』新シナリオTRPGリプレイコンテスト特設ページ
「冒険企画局」公式サイト
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